エンジョイ勢のたのしいむしジム   作:ハッソ

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《きりさく》①

 

 

「あなたのようなマイナーリーグのジムリーダーじゃ話にならない!

 もっと別の人はいないんですか!?」

 

 

ローズ委員長に言われて向かった先に居たのは凄い生意気そうなガキだった。

第一声がこの有り様だ。俺はまだ自己紹介もしてないない。

 

 

 

「ジムリーダーが教えてくれるって言うから期待していたのに!」

 

「誰なんですあなたは!」

 

「いえ、言わなくて結構!」

 

「どうせ万年マイナーの残念ジムリーダーなんでしょう!」

 

「名前を覚える必要も感じません!」

 

 

 

 

「すっごいな、きみ」

反撃のチャンスすら貰えない。

あまりの生意気さに俺はもう逆に感心してしまった。

 

彼の名前はビート君(事前にオリーヴさんから聞いた)。

将来有望な若者で、昔からローズ委員長がポケモンをあげるくらい期待されてる子、らしい。

このままなら、今年のローズ委員長の推薦でジムチャレンジに挑戦する予定だ。

所謂エリート街道を歩んでいる真っ最中で、まぁ多少調子に乗っちゃうのも仕方ないだろう。

俺も昔は同じくらい調子乗ってたんだから、偉そうな事は言えないぜ。

うっ…マクワに散々な絡み方をしては惨敗したトラウマが…。

 

彼の言い分はすっごい理不尽。

一応ローズ委員長の指示で来た俺に対して「チェンジで」。

うーん、ただまぁ。気持ちは分かるんだよな。

ジムリーダーが来るよ!って言われたらキバナさんやカブさんをイメージするのが当然だろう。

そこにやってきたのが万年マイナーの俺。

そりゃあ怒るだろう。俺も申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 

ローズ委員長もキバナさん達は無理でもマクワとかに任せればよかったのに。この前スケジュール空いたって言ってたぞ。

あ、駄目だ。そもそもマクワが暇になったのってスパルタ過ぎて逃げられたからだった。

もしかして、俺が時々むしとりたいかい開いて指導しているのが理由か?子供の扱いが上手いと思われたとか?

俺自身が難しい事を分かってないから、簡単なタイプ相性とか簡単な技の紹介くらいしかしてない。後は自由に遊ばせている。

そもそもあれはジムにあまりに人が来ないから、ジムトレーナーの代わりに地元の悪ガキ達を構ってるってだけ。

 

まあ、でもビート君も地元のガキ共より少し上くらいだし…あいつらを初めて誘った時と同じように始めてみるか。

 

「じゃあバトルするか」

 

「はい?急に何を?指導のつもりなら遠慮しますよ。あなたから学ぶようなことは、ありませんから」

イライラを隠さずに頻りに腕時計を確認するビート君。帰って見たいアニメでもあるのかな?

そういうと思ったけどな!

生意気過ぎて逆に解りやすいぜビート君。

 

 

「指導じゃないぜ。『真剣勝負』だ。

 俺が負けたらローズ委員長に泣きついて次のジムリーダーをよこして貰うように頼んでやるよ」

 

 

ビート君は俺の言葉に不敵に笑い、「いいですね、それ」と挑発に乗った。

うーん、チョロい。

バトルが好きな辺り実に男の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸い、ここはナックルシティ。こんな都会ならバトルのためのフィールドだってある。

ストリートにあったフィールドに移動して勝負についてのルールを決めていく。

「ビート君、てもちは何匹?」

「…三匹ですよ。それが何か?」

俺が聞くと素直にポケモンの入ったボールを見せてくれる。

ふむふむ。この感じからすると…ちょうど育成中のあいつが使えるか。

ただ、あいつを使うとなると出来れば…

 

「お願いがあるんだけど」

「何ですか?早く始めさせて下さいよ」

「もちもの持たせていいか?見たところ、ビート君のてもちは持ってなさそうだけど、今から使う奴はもちもの使う想定で育ててさ」

一瞬間を置いて、ビート君の顔がカッと赤くなった。

え?俺また何かやっちゃいました?

いやもう沸点が低すぎてどれがトリガーか分からないなこれ。

「…っ!好きにしたらいいんじゃないですか!」

「サンキュー。じゃあビート君ももちもの使っていいぜ。今ないなら、俺の持ってるものの中から好きに…」

 

「必要ありません!!」

 

「お、おう…そうかい」

結構なハンデだと思うのだが、余程自信があるらしい。ボールを強く握りしめる手が震えて、相当怒ってらっしゃる。

もしかして、子供扱いしてると思われちゃったか?

むしろ、真剣勝負と言ったからには条件をフェアにしたかっただけなんだが。

仕方ない。俺の方にハンデつけていい感じにするか。

 

「じゃあ、俺のてもちはこの一匹でいいぜ」

 

いい感じのレベルの子、今はこいつくらいだし。他は捕まえたてのユキハミで残りの枠使うつもりだったけど、ユキハミはかわいいからな。かわいいからやめておこう。

「とことん馬鹿にしてくれますね!ボクが勝った後は委員長にお願いしてあなたをクビにしてもらいます!」

えっ困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すぐに後悔させてあげますよ」

「ゆらーん」

ビート君が初手に出したのは…ふわふわと浮く緑色の何かに包まれたポケモン。ユニランか。

「いけっ!スコルピ!」

「しゃああ!」

俺が繰り出したのは小さなサイズの紫色のさそりのようなポケモン。

小さな鋏を掲げてやる気をアピールしている。

 

「スコルピ!《きりさく》!」

 

「耐えて《がむしゃら》です!」

 

俺の指示に対応する指示を即座に出すビート君。流石エリートを自称するだけはある。

スコルピが爪のついたしっぽをユニランへと叩き込み、ユニランがそれを受け止める。

 

そしてそのまま指示通りに反撃しようとして…

「ユニラン?」

 

 

ユニランは、ばたりとそのまま倒れてしまった。

くるくると目を回している。戦闘不能だ。

 

 

「おっと!毒でも回ったか?」

「っ!」

つい癖で軽く煽ったらすっげえ睨まれた。

ビート君はユニランをすぐに戻して、次のポケモンが出てくる。

出てきたのは…何か空中を見つめるゴシック服着た子供みたいなポケモン。

ゴチムだ。どこ見てんだあれ。

「ゴチム、《リフレクター》を張りなさい」

ちょっと気を取られている間に『壁』を張られてしまった。《リフレクター》は場に残り続ける間、物理攻撃を受けた時のダメージを半減するプロトレーナーも御用達の便利技。

子供の内から使っているのはかなり珍しい。1人倒されたのにしっかり冷静に立て直しに来たな。

 

うーん、少し厄介だけど、このまま行くか。

 

「もう一度《きりさく》!」

 

光の壁(《ひかりのかべ》ではない)も恐れずにスコルピが突撃。壁を突き抜けてもう一度尻尾を振り回してゴチムへと切りつけた。

「ふっ、ジムリーダーの癖に馬鹿の一つ覚えですか?《リフレクター》があるのに…」

当然、本来なら《リフレクター》を通した攻撃など然したる威力はない。

 

 

 

そして、スコルピの攻撃を受けたゴチムが倒れる。

 

 

 

先程の繰り返しのようなシーン。

俺としてはとってもラッキー!ってやつだ。

「なっ…!」

まさか、だったんだろう。

スコルピはここまで無傷で全て一撃で勝負を決めている。

レベル帯は俺の見たところ大きな差はないはずだ。

 

スコルピの攻撃が何かおかしい事にはこの二回で流石に気付いたはず。

だが、その仕組みが分からないと見た。

混乱しているエリート少年に俺は朗らかに笑いかけてやった。

 

 

「さーて、あと一匹みたいだぜ。ビート君」

 

 

 

 

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