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戦乙女は分からない
ワルキューレ...それは神様がいつか来る戦争に備え戦いで力尽きた戦士をヴァルハラへと連れて行くものの名。
ワルキューレと言っても一つの個体ではない、何千といる総称の名であり、彼女もまたワルキューレであった。
ただ生まれて間もなく名前がない。
名前がなくては話が進まないので名づけられるまで名前をKとしよう。
Kは神様からの仕事をこなす為に今日も色々なところをまわり、
いい戦士がいないか探す。しかしそう見つかるものでもない。
まぁあちこちでぽこほこ現れても困るのだが、
....はぁ、退屈だ....
私はそう思いながら探す。
お姉様達はこんな退屈な仕事を文句の一つも言わずやっているのかと、感心していると森の方で命終わろうとしている一人の男が見えた。
遠目で見えた男は全身に矢を受けている。
私はその男をヴァルハラへ連れて行こうと近づいた。
男の近くまで来たら私の存在に気がついたのかこちらの方を向いた。
「何者だ....俺を殺しにきたのか?残念だが俺は負けねぇよ...。
テメェらが何人こようと俺に敵う筈ねぇ。」
彼は私を敵だと勘違いしているようでこちらに剣を向けている。
この感じを見るにかなりの相手とやってきたのだろう。
おまけに彼が通ってきたであろうところには血の道が出来ていた。
相当な手練れであることは分かったが哀しいかな多勢に無勢、
致命傷を負ってしまい、今に至ると理解した。
きっと神様はこんな強者を求めているだろうと思い、
私は早速彼を勧誘した。
「あなたは来る日の戦争の為の戦士なる為、ヴァルハラへと招待します。」
と言い、手を差し出し彼が手を出すのを待った。
我ながらうまく言えたと褒めてもらいたいものだ、
と思っていたのも束の間、彼は私の手を払った。
「お前がなんなのかは知らなぇがそんなもんになるわけねぇよ。
...俺はもう疲れたんだ。もう...休ませてくれ。」
私は理解出来なかった。
戦士というものは戦いこそに生きがいを感じるものではないのかと思っていたのにその為に戦っているのではないのか。
戦士とは思えない発言に混乱している私に彼は何かを理解したように、
「...嗚呼....そういうことか、俺はあそこに行くかはさらさらない、
ましてや好きでもねぇ奴に奉仕されても嬉しくもないしな、
まぁ...あんたらは理解出来ないだろうが...」
「戦士ならばこれ以上のない喜びなのでしょう?
死んだ後も神の下で戦える、名誉なことではありませんか。
なのになぜ拒むのです?」
私の質問に彼は、
「名誉なこと...ね。
あんたにとってはそうなんだろうな、...だが俺はあんたとは違う。
皆が皆あんたみたいに崇高な考えじゃないんだよ。
それがわかんねぇのならいつまでたっても理解出来ねぇよ。」
そう言うと彼は森の奥へと歩き続ける。
私は止まるよう促したが彼はそれを無視し、歩く。
きっと彼は誰にも知られず死にたいのだろう、そう直感した。
ヴァルハラに無理矢理連れて行って恨まれても困るので止めはしないのだが、このまま止めなければきっと私は後悔してまう、彼は私にとってこの退屈な生き方を変えてくれる存在かもしれないのだ。
「どうしたら、貴方の気持ちが理解出来る様になのですか?」
そんな疑問に彼は、
「知らねぇ、だがまぁ...人助けとかしたら俺の気持ちが分かるんじゃねぇの?」
と答え、私の視界から消えた。
人助け...か、確かに私は強い戦士をあの地へと導いていたが、
人を助けたことなど一度もない。
そんなこと一度たりとも考えたことがない。
やってみれば彼のことが理解出来るかもしれない。
そう思い、森を後にした。