(見てられんなァ。)
そいつが現れたとき世界が灰色一色となる。
そして全ての物が動きを止め、目の前にいるそいつだけがその世界で動いていた。
そいつは浅黒い肌を持ち身長は少し低い方で俺を見上げるが、顔は黒いモヤがかかっていて分からない。ただ青い目が鋭く刺さる。
そして身体は幾何学模様が彫られていて赤く点滅している。
(そんなすげェ持ってんのによォ、簡単やられちまうなんて情けねぇなァ。)
嘲笑うように言った。顔の表情は見えないがニヒルとしているだろう。
お前さんは一体誰なんだ。名乗らねえとは感心しないな。
(そう邪険にすんなよ、俺はお前と同じカイン。しっかしまァなんて言うか、
残念だなァ、運がなくて。)
なんだよこいつ急に現れて同情するんじゃねぇ。
ぽっと出の奴に同情されても虚しくなるだけなんだ。
うるさい、一体何が目的なんだ。この状況原因あんたなんだろう。
(オレァよ、取引しにきたんだ。ごちゃごちゃ言うのもあれだからこれだけ言う。
お前の体を俺に譲れ。)
今なんて...戸惑う俺をよそにあいつはお構いなしに続ける。
(なに、別にお前とっても悪くない話だがな。この状況で勝てる見込みはないだろう?)
俺に何の得がある。
(そりゃあれだ、残り数刻の生命なんだ何やっても死ぬわ。
だけどな俺だったら余命を少し先に送れるんだわ。いっても一日待つかどうかだが、まぁそれでも今死ぬよかマシだろうよ。)
そう言い顔を近づける。
(で、どうすんだ?今死ぬか後で死ぬか。俺をまんまら待たせんなよ。)
確かに俺はどのみち死ぬ。だがあの子はまだ死ぬべき子じゃない。
(わかった。お前にこの体を預けよう。だが、あの子には手を出すなよ。)
(よし交渉成立だ!安心しろよあの子を傷つけたりしないからよ。
安心して眠っててくれ。)
その言葉の後すごい眠気に襲われる。あゝどうか生きていてくれ。
弓使いを倒した。あとはあの歪な化け物を抹消するだけだ。
人形から見たとかからずっと違和感があった。あれは人と呼ぶには人の領域を超えていて、獣と呼ぶには些か違う。何と呼べばいいか、怨念?憎悪?一つの体に何万と魂が詰まっている。あれ一人でここら一帯は火の海と化す。そんなものこの世にあってはならない。
幸いだが真っ先に仕掛けてきたから何とかなった。あの類のものは放置すると後々面倒になるのだ。ならば今ここで引導を渡すほかない。
あの娘を探そうとすると、
「なぁにやってんだァ...まだ終わってねェぞ。」
なんと先程の男が立ち上がっているではないか。だが先程と違い嫉妬や悪意に満ち溢れている。そして顔には何やら印が刻まれている。あの星の魔術なのだろうか。
「ほぉ、貴様まだ生きていたのか。死に損ないが。」
「死に損ない?あァそうか。そうだ、俺は一度死んだ。
あんまりにも情けないものだからなァ、奪っちまった。」
不敵な笑みを浮かべている。
"奪った"なるほどこの悪意は奴が弱ったところを悪魔が乗っ取ったのか。
どちらしろ彼奴は我の敵であることには変わらん。ならば倒すまでよ。
体の主導権を奪えた俺はあのガキを探そうと辺りを見渡している。
あれが死なれたらあの蛇になんて言われるか。ッたくめんどくせぇなァ。
探すとジジィもあのガキを探しているようでトドメを刺す気だろう。それは困るから声をかける。
「なぁにやってんだァ...まだ終わってねェぞ。」
奴は俺の存在に気づいた。何やらあいつは驚いた顔している。
「ほぉ、貴様まだ生きていたのか。死に損ないが。」
「死に損ない?」
そういや心臓貫かれたんだっけか。手で胸の辺りを触る。中心がきれいにくり抜かれたような穴があった。
「...あァそうか。そうだ、俺は一度死んだ。
あんまりにも情けないものだからなァ、奪っちまった。」
弓を手放し地面からナイフを取り出す。そのナイフは黒く淡く光っている。あいつは薄ら笑っている、驕っているな。ならば勝機は残っている。
アベル、力を貸してくれ。
『我が弟よ、その血で大地を汚せ』
その時彼の周りから魔力が枯れた。