戦乙女が放浪する話   作:猫を乗っけた青髪の女

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勝利すべき剣

わたし何してたっけ。

憶えているのは何かとてもでかい奴と戦っていたこと。

そうだ確かそいつに腕喰われたんだ。

左腕のあった所を触った。感触がある。

槍も手に持っていた。

あれは夢だったのか...?

 

空は雲一つなく澄んだ青が続いていた。

海は穏やかな波が立っている。

ただ私が乗っていたはずの船は見当たらなかった。

 

辺りに船がないかと探しているとある一匹の猫が目に入った。

普段なら気にも留めないはずなのに猫は不思議な雰囲気を醸し出していた。

 

その猫の毛は黒く澄んでいて、その瞳は深緑であり宝石かと思わせるほど綺麗である。

毛艶が良くスラッとした身体、座る姿が美しく上品なところの子であろうと思われる。

猫は私の存在に気づくと立ち上がり、

 

「ニャー」

 

その鳴き声は私について来いと言っているようで、

森の奥へと進んでいった。

 

私はその猫のあとをつけ奥へ奥へと進んでいき、とある廃村にたどり着いた。

家々は何か鋭利な刃物で綺麗に切られ、そこら中に判別のつかないほど腐敗した死骸ばかりが見つかり、それも同じようにバッサリ切られたことが分かりさらに骨までも両断するほどの鋭利な刃物であることわかった。

 

 

腐敗した臭いがそこらかしこに漂っており、吐き気を催すほどである。

また獣もいたのか微かに獣臭さを感じた。

 

鼻をつまみ臭わないようさらに進み中心部に行く。

中心部に進むごとに獣臭さが濃くなっていき、

何かしらがいて、この状況の元凶があるのかもしれないと思った。

 

廃村の中心部が見えてくると臭いの元であろう人がいる。

いや、人と呼べない、それほどそいつは醜かった。

 

そいつの髪は地面につくほど伸びきっておりボサボサある。

体付きから男であるとかろうじて分かったが、

骨と皮だけしかなかった。

顔は痩せこけていて、目が腐り落ちている。

手には赤黒くひどく錆びてしまってる剣が握られている。

 

そんな奴が佇んでいる。

その身体のどこに力があるのか仁王立ちで待ち構えていた。

 

貴様はなにものだ

 

何かを呟くが言葉が捻じ曲がって聞こえ、何もわからない。

 

余の剣奪いに来たのか、この剣は誰にも渡さぬ

 

そいつは呟き、急に襲ってきた。

私はバックステップで避けたはずが、振り下ろされた剣は軌道を変え私目掛け切り込んできた。

隙の生じぬ二撃目に対応できるはずなく当たってしまうが、ギリギリ射程外に出て、かすり傷で済んだ。

すぐさま私は槍を構え、戦闘態勢に移る。

 

 

運のいい奴め、次は無いぞ

 

相変わらず言ってる意味は分からないが、やることは変わらない。

穿って勝つ、それだけだ。

 

 

相手はまた突っ込んで来た。

さっきはたまたま避けることが出来たがそんなこと奴が許すはずがない。

奴の剣を捌き頭に槍を入れ込む。そう決めた。

 

奴はさっきと同じように切り込んで来た、

よし、いける。そう思い剣を捌いた、が、奴は超人的な動きで剣の軌道を変え、私の槍をあっさりと切り、そのまま身体を切り裂いた

 

私の身体から赤黒い液体が飛び散り、奴の身体にかかる。

幸いなのか致命傷には至らなかったが、身体から液体が流れ続けている。

私は大きく飛び退いた。

 

槍はもう使い物にはならなそうだ。

手元には壊れた槍と斧だけであり、とてもではないが間合いに入れそうにない。

 

あいつはなぜあんなにも早いのだろうか。

見た感じ素早く動けるようではないが、私の今の状況で追撃を入れないのは不思議に感じる。

 

あいつは私にじりじりと近寄っていき、私の次の行動を伺っているようだ。

私も如何にして相手を私の間合いに詰めるか考えるが、

…ダメだ。

何をしてもあの剣撃で遮られあいつに届かない。

どうにかしてあれを対処しないと倒せないだろう。

 

近距離がだめなら遠距離で、私は手元にある壊れた槍を相手の顔目掛け投げつけた。

当然だがやはりあいつは真っ二つに切った。

 

ダメだったが分かった事がある。

あいつは剣を支配していない、剣が支配しているのだ。

あいつが槍を破壊した時もそうだ。

あいつ自身は何もしていない、筋肉一つ動かしていない。

剣が一人でに動いていた。

よく見たら手は握っているというよりも張り付いている方が正しい。

 

これまで異常なほど素早い剣捌き、硬いものをいとも容易く切れる切れ味、そして

そしてあの剣だが、聞いていた話と見た目が大きく違うがあれはフレイの剣ではないか。

でもなぜその剣がここにあるのかは分からないが面白い。

 

持つものに勝利をもたらす剣、相手にとって不足なし。

武器を破壊されるなら素手で戦った方が身軽だな。

 

私は武器を捨て今まで羽織っていたローブを脱ぎ捨てた。

病的なほど白い肌が空気に触れる。少し肌寒く感じる。

 

「貴様、なぜその剣を持っているのかは知らないが、私が勝つ。」

 

あいつの反応はない、ただ真っ直ぐとこちらを見ているだけだ。

私は低い姿勢になり相手の懐に突進する態勢になる。

あいつもなにかを察したのか、歩みを止めこちらの攻撃にタイミングを合わせるかのように剣を振り上げた。

 

対する私は「風よ我を護り給へ」と呟く。するとどことなく風が私を中心として吹き始め、その勢いはだんだんと強くなり周りにあるものが舞い上がる。

 

あの剣に勝つにはあいつが反応出来ないほどのスピードで攻撃するしかない。触れさえ出来れば勝ちは確実だろう。

また風を纏うことにより相手の攻撃も当たりづらくなる。

いうなれば【竜の巣(ストームライダー)】というべきか。

 

ただこの状態は相当強い風が吹いているせいで、武器が風で壊れやすくなるから必然的に素手でしか戦えない。

 

 

私は手を地につけ、今一度集中する。

狙うは奴の頭一点のみ、互いに構えを解くことなくただ風がうるさく鳴き吹いている。

そんな音も次第に無くなり、体の内側から聞こえる心音だけしか聞こえなくなっていく、ドクン、ドクンと全身に流れる感触を分かる。

息を吐く。相手は身震い一つも動かない。

 

 

 

 

....今!

身体は目にも止まらない速さで動き、相手の顔目掛け左の拳で殴ろうとした。

勝った!そう確信した。

しかし次の瞬間、剣は拳を防いでいた。

だがこれはまだ想定内、そう想定していた事態だ。

殴った方の拳は剣を握った、これで剣を振るえない。

刃の部分を持ってるからめっちゃ痛いけどこれくらいどうというのではない。私は空いている右の拳で顔を掴んだ。

 

「ウォラアァァァァ!!!」

 

そう馬鹿みたいに叫び、そのまま背負い投げた。

後頭部を地面にダイレクトに叩きつけ頭を破壊した。

頭はまるで瓶みたいに割れ、小さく干上がった脳が飛び散った。




おはようございますそしておやすみなさい
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