伊地知家の弟 作:芋けんぴ
あと、ぼざろにハマった。
あと、良い作品タイトルが思いつかなかった。
「はぁ……雨か」
雨の日。昼休み。今日で何度目かも分からないため息が出た。
周りに誰もいないせいか、自分の身体から止めどないネガティブな感情が湧き出てくる。
ははは、今の自分はいつもより3割増しで暗く見えるんだろうな。もし他人に見られたら、心配して声を掛けてくれるレベルかもしれない。
そんな淡い期待を持ちながらも、肩を落として廊下を歩く。
「勝手に友達……できないかなぁ」
目に掛かる金髪を弄りながら、一つ上の姉が作ってくれた弁当を片手にそう呟いた。
昔からそうだ。
自分には二人の姉がいるのだが、彼女らの姿を見て育ってきた自分は、常に誰かの後ろに着く人生を歩んできた。
主体性がない。能動的に動くことができない。優柔不断がすぎる。社会不適合者とも思える程に、自分には致命的なものが欠如してしまっていた。
例えば、カラオケなんてそれらが顕著に表れる。
姉たちとカラオケに行っても、自分で歌いたい曲が思いつかない。歌おうとも思えない。それのせいで姉たちに電子パッドを渡されても、曲を入れずじーっと座っているだけ。
「最近これ聞いてたよね?」とか、「この前見たドラマの主題歌だ」とか、そうやって決めてもらう事でしか歌えない。
3択以上の選択肢を与えられたらもうダメだ。
今日の日付が偶数ならば肯定寄り。奇数ならば否定寄り。そうして決めている人間からすれば、3択以上は地獄でしかない。
自分はなんてダメ人間なんだろうか。いつまで経っても独り立ちできず、高校生になっても満足に友達一人作れやしない。
みんなただの顔見知りだ。教室にいても必要最低限の会話のみ。
昼ご飯も入学して最初のうちは誘ってくれたが、今では誰も誘ってくれないので一人で食べる始末。自分が居ても居なくても変わらないとか、本当に悲惨である。救いようがない。
「自分で考えてて虚しくなってきた」
このままじゃ絶対に将来困るんだろうなー。一生、恋人なんて作れやしないのだ。未来の姉夫婦たちに迷惑を掛ける光景が目に浮かぶ。
んー、それだけは絶対に駄目だ!
何とか独り立ちできるくらいには、立派な人間にならなければ!
そんな事は分かっていても、15年と数ヶ月も掛けて育まれた性格は、そう簡単に治らない。
自発的に足も動かなければ、口も硬直したままだ。愚かで、劣等で、悪辣な人間。生きている価値も乏しい。
「あ〜あ、もう生きるの面倒くさい……もし神様がいるなら今からでも植物に転生させてくれないかな」
できれば向日葵がいい。太陽は好きだから、毎日それを眺めるだけの植生を送りたい。
いや、紫陽花もいいな。見ていて素直に綺麗だと思えるし。
無駄なことと分かっていながらも、どうでもいい考えばかりが浮かんでくる。
あぁ、ダメだ……雨が降っているせいで、心までがジメジメとしてきた。
お腹がぎゅうっと締め付けられるような気さえする。
「よし、腹が空いているから駄目なんだ。今日はここで食べよう」
階段を降りたところにある物置のような場所。使われていない机や椅子がパッと目に付く。
いつもは外に面している場所で一人食べているのだが、今日はあいにくの雨だ。
だからと言って教室でぼっち飯はきついし、便所飯なんてもっての他。臭いところで姉の手作り弁当なんて食べられない。あんなのは陰キャの生態を知らない陽キャが抱いた妄想なのだ!
少々カビ臭いし、埃が飛んでいるように思わなくもないが、まぁ仕方ない。
妥協は大事。これ以上、雨のじめじめにやられてネガティブになりたくないのである。
「んー、案外悪くないかも」
段差に腰掛けて一息つき、お弁当を膝の上に乗せる。
今日のおかずは何だろうなー。今朝は忙しいって言ってたし、昨日の残り物だろうか。それでも姉の作るものは何でも美味しいから大歓迎ではあるけれども。
胸を弾ませながら弁当箱の蓋を開ける。学校で唯一の楽しみが昼食って、何だかブラック企業の社畜みたいだな。
心なしか目頭も熱くなってきた気がする。
誤魔化すように自分は上を向く。ご飯の時くらい明るい気持ちでいたいよ。
けれど、それが失敗だったみたいだ。何となしに見上げた方向、そこには——。
「え?」
「ひえ?」
ピンクのジャージを着た女の子が、積み重なった机の上で寝そべっていた。
「うわあああああああああああああああ!!」
「びぎゃあああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
バクバクとなる心臓を抑えながら、確かめるためもう一度上を見る。
幻覚じゃない、やっぱり居た! ピンクのジャージを着ている女の子が、何でか忍者のようにそこにいる。
昼休み中の隠れんぼ、にしては些か違和感がある。さっきまで廊下を歩いていたが、鬼であろう学生を見かけていない。
だったら、やはり幻覚か!? あまりのストレスに良くないものが見えだしたりしたのか!?
三度目の正直と言わんばかりに視線を上げてみれば、今度はガッツリ目が合った。
「ひっ……!」
ピンクの女の子が短い悲鳴をあげる。
いやいや、驚きたいのはこっちもおんなじだ!
お昼を一人で食べようと思い、ふと見上げてみれば、知らない人が寝そべっていたんだぞ! どんなドッキリ番組なんだ、と疑いたくなる。
「ふ、ふぅ……」
ひとまず落ち着け。こういう時はどうするのが正解なのか考えろ。
この状況下で話しかけてみる? いやいやいや! あのコミュ力抜群な姉と違って、主体性が無く、能動的に動けない、優柔不断トリプルコンボの自分だぞ!? そんな高難易度なことができるなら、とっくに友達も恋人も親友だってできているし、人生に諦めを感じたりしていない!
なら、逃げるか? それは大いにアリだ。昼飯を食べる場所を失うかもしれないが、この非常に気まずい場所から立ち去れるのなら必要な犠牲と言える。
というか、自分にしてはとても珍しく、もう既に足が逃げるようスタンバイしてる。いつ走り出したって可笑しくない。今ならボルトすらも越せる速さでダッシュができる気がした。
「っ!!!」
そうと決まれば全力で逃走だ。
さっと弁当箱を片しソフトクーラーに詰め込めば、自分は風となるべく立ち上がる。
でも。
ふわり、と立ち上がった自分を無視し、ピンクの女の子が倒れた。
机を三段くらい上に積んだ高所からのダイビング。パッと見ただけでも落ちてくる時の体勢が悪い。気でも失っているように、脱力した体が地球の法則に従い落下する。
「ちょ、やばっ!」
流石の自分でもこれは受け止めなければ、と思った。
女の子には優しくしろ。一番上の姉が口を酸っぱくするほど言い聞かせてきた言葉。
それを脳内で反芻しながら、自分は両手を大きく広げ少女の体を庇うべく下に潜り込む。
「キャッ、チぃぃぃ!??」
腕と体を滑り込ませることには成功したが、思ったよりも少女の体が重かった。
いや、男して言い訳はよくない。認めよう。思ったより自分の体が脆弱だったのだ。
そのため、少女の体を硬い地面から庇うように、自分が下敷きになるしかできなかった。
「ぐえっ」
車に轢かれたヒキガエルのような鳴き声。
ああ、人生最後の言葉がこんな汚い呻き声になるなんて……せめて今まで支えてくれた家族への感謝で締めくくりたかった。
だが今更悔やんでも無理な話である。少女と地面に挟まれた自分の体は、あまりの激痛に意識を落とすことを選択したらしい。
掠れゆく意識の中。ピンクの少女がせめて無事であることを祈り、自分——伊地知
「知らない天井だ……」
目を覚ますと見慣れない天井が広がっていた。体の感触から察するに、どうやら自分はベッドで横になっているらしい。
ということは、ここは保健室だ。
そうやって現況を把握していけば、次になんで保健室にいるのかを思い出す作業へ移行する。
最後の記憶はっと……あぁ、ピンクのあの子を受け止めてそのまま気絶したのか。
はは、我ながら女の子一人も助けられないとは、自分の価値の無さに涙が出てくる。いや、これはきっと花粉症のせいだな。そうに違いない。
頭がぼーっとしていないのを感じるに、かなりの間寝てしまっていたのだろうか。ここまでスムーズに意識を覚醒させられたのは、実に何ヶ月ぶりだっけ。今日は店の手伝いが入っていないから、身体が勝手に油断していたのかもしれない。
でもそろそろ、起きよう。
帰りが遅いと姉たちに余計な心配をかける。
「……う〜ん、ちょっと体は痛いかな」
「ひっ、ご……ごめ…さ……!」
「えっ?」
独り言に今誰か返してきた?
あまりに小さい囁き声だったから、もしかしたら聞き間違いかもしれない。
保健室をぐるぐると見渡してみるが、人影らしきものは見当たらなかった。それどころか、人の気配すら感じ取れないのだが。
え、怖っ。
もしかして、自分が知らないだけでこの学校って曰く付き? 幽霊とか出るのかな。
まぁ、そうだと分かっていれば平気だけど。逆に自分はそう言う類のもの大歓迎である。
「あ、あの」
今度はさっきよりも大きく囁き声が聞こえてきた。
……これってもしかして、一度生死の境を彷徨った的な何かだろうか。
霊感なんて生まれてこの方一度も感じたことないけれど。良くないアレ的なものに目覚めてしまったのだろうか。
厨二病とやらを経験したことない自分からすれば、こう考えること自体が新鮮である。
「えーと、なんて言えばいいんのかな、こういうときって。とりあえず……自己紹介いります?」
まさかの幽霊相手でも自分の主体性の無さは発揮されるらしい。
物理的に存在しない相手に選択権を委ねるって、本当に重症だな、くそぅ。
「じ、じこ……うっ、心の準備が……!」
どうやら幽霊さんは自己紹介に慣れていないらしい。
かなり奥手な霊なのだろう。心なしかベッドの下から声が聞こえてきた気がする。
普通って幽霊は上からじゃないの? んー、”事実は小説より奇なり”とはまさにこのことだな。
「……」
「……」
ひとまず、幽霊さんから自己紹介がいるかどうかの答えを待っていると、会話が何故か無くなった。
うーん。やってしまった。今のは自分に会話の球が渡されていたのか。
能動的に動かないせいで、こう、会話が終わったか終わってないか微妙なラインの時、どうすればいいか分からない。
気まずいな。
相手が幽霊なのに、まさか会話で気まずさを感じてしまうなんて。
あぁ、やっぱり自分はその程度かと自虐に笑みを浮かべてしまう。
「ふふ、どうせ自分なんて」
「ふふ、どうせ私なんて」
「……」
「……」
いやいや、まさかシンクロするなんて思わないじゃん。
本当にどうしよう。この幽霊はどう考えても自分と同じ系統だ。コミュニケーションがとても取りにくい。
周りの人から見た自分ってこんななのか、と軽く絶望してすらいる。いや、姉たちからは「会話は普通にできてる」と言ってくれていたから、まだマシか。マシだと信じよう。信じなければやってられない。
でもなー。この幽霊と会話ってしなきゃダメなんだろうか。そう思ってしまっている。
だが珍しく、ちょっとは会話を続けてみたい気持ちも内在していた。基本、姉たちとしか会話を続けようとしない、この自分がだ。
やっぱり相手が幽霊だからだろうか。自分ってこんなスピリチュアル系統に興味あったけ。
うんうんと頭を悩ませた結果、今日の日付が肯定よりの偶数であることを思い出した。
「えーと、初めまして。透華って言います。1年3組です。趣味は……と言うより、今でも何故か続けられているものは楽器を弾くことです」
「あっ……ゴトウヒトリデス」
「ゴトー⤴︎ヒトリ⤵︎?」
なんか呼称が長いな。幽霊ってそんなもんなのか。
自分はポケットに入れていたメモ帳を取り出し、パラパラと捲る。
あった。”絶対盛り上がる初対面会話チャート ver7.4.0”だ。幽霊用に作っていないから、これを見ながら会話を進めてみよう。
ちょっとワクワクしてきた。
「ゴトーヒトリさんは、えー、どこから来たんですか?」
「えっ……県外で片道2時間のとこ、です」
ヘェ〜。なんかリアルだな。
でもここから会話を掘り下げるのは難しいし、次の話題にしよ。
「じゃあ、好きなものってありますか?」
「あっ……わ、私もおお同じしゅ……いえ、なんでもないです」
「?」
少し返事の内容が変わったな。
ふむふむ。会話チャートには相手が言い淀んだ時にどうするかが書かれている。
正直その対処法については、今更見返すまでもなく体が覚えていた。
「もしかして、楽器がお好きなんですか」
「っ!!?」
がたん、とベッドが急に揺れた。
地震かな?
まぁ、いいや。返事が返ってこないってことは図星なんだろう。
本当に好きじゃなかった場合は、素っ気なく返されると会話チャートに書いた記憶がある。
うんうん、会話のとっかかりが見えてきた。最終ゴールに近づいたな。
メモ帳を一枚捲り会話を続けることにする。
「へぇー、どんな楽器がお好きなんですか?」
「ギ、ギター……」
「ギターですか! 良いですよねー。弾ける人ってカッコいいですもんねっ」
とりあえず特記事項の”褒めることは大事”を実践。
さらに、”声のトーンをあげる”も忘れない。姉の喋り方を真似てるのだ、これで外すまい。
「うひぇ、えへへへへへ、カッコいい……」
……正直、予想以上だった。
幽霊って褒められるの好きなのかなー。成仏できないくらいだし。
それにしても、よりによってギターか。
確か同じ学校に姉のバンドでギターを担当してる子がいたよな。
名前なんだっけ。顔も一度だけ見せてもらった気がするけど思い出せない。妙にキラキラとしていた気がする。
姉たちと練習しているところを見たことがないせいで、記憶に薄いなぁ。
と、思考がずれてしまう。
危ない。今は現実に存在している人はどうでもいいや。ゴトーヒトリさん幽霊に集中しよう。
「ゴトーヒトリさんも(幽霊だけど)弾けるんですか?」
「あっ、え、はい」
スゴっ。今時の幽霊はギターを弾けるのか。
「凄いじゃん。もし良かったら聞かせてくださいよ。無理なら無理で仕方ないけど」
「い、いいい今!?」
あれ、やっぱり下から声が聞こえてる気がするな。もしかして、体乗り移られたとかじゃないよね。
ちょっと、気になったので掛け布団をひっぺがしてみる。
……うん、何も居ない。
となれば、やっぱり自分の体か、もしくはベッドの下の地縛霊ということになるのだが。どちらにせよ、なんか嫌だ。
一応、ベッドの下を覗いてみることにする。
「……」
「あ、あ、あわわ、せせせめてギターがある日なら……で、でも……!」
なんか居た。
昼休みの時、助けたピンクの少女とそっくりだ。ベッドの下で身悶えながら、涙目になっている。
「……幽霊、な訳ないか」
ボソっと自分がそう呟くも、ゴトーヒトリさんはこちらに気がつかない。
あれは完璧に一人の世界に入ってしまっているな。自分とは系統が違う意味で彼女もコミュ障くさい気がする。
もういっそ面倒くさくなってきたし、逃げてしまおうか。
そんなことがふと頭に浮かんだ。いつもいつも逃げてばかりで、変に逃げ癖がついている気がする。
そんなだから学校で誰とも友達になれないんだぞ、と自分を叱ってみるが何ら心に響かない。愚かすぎて頭が痛くなってきた。
でも、やっぱり帰ろうかなって気持ちが脳裏にチラつく。
「……今日は偶数だしな」
そうだよ、偶数は肯定する日だ。本当に悩んだら、これで決めるのが数少ない自分のルール。
だとすれば、逃げることを肯定したとして誰が責められようか。奇数の日であれば、もう少し頑張ったかもしれないが、あいにく運が無かったらしい。
ベッドから降りて、さっさと教室に戻り私物を取って帰ろう。
ゴトーヒトリさんに挨拶もせずに出て行こうとした時、後ろから足首が掴まれた。
「あ、ああああの!」
「ちょ、ぅお!?」
引き止められたからには止まるしか無い。慌てて後ろを振り返って、ベッドの下を見下ろす。
すると、ホラー映画でよく見る構図が視界に入ってきた。彼女の後ろ髪が全て前髪と合流しているため、某井戸の幽霊そっくりである。
今の俺の顔は完全に引き攣っていることだろう。頬がぴくぴく痙攣しているのが分かった。
「えぇと、な、何、かな……?」
「そ、その……え、あ……」
ゴトーヒトリさんも言葉に詰まったらしく、前髪に隠れた瞳をぎょろぎょろと動かす。
呼び止めたはいいものの、なんて言ったらいいか分からないって感じだ。
「と、透華さんは……何の楽器がす、好きですか……?」
「……」
精一杯の笑顔? だったのだろう。目を細めて頑張って目を合わせる努力が感じられる。
会話するかしないかで悩む自分とは違い、彼女は人と話すこと自体が苦手なタイプに違いない。
それでも勇気を振り絞って。呼び止めて。慣れない会話を続かせるため、恥を覚悟で問いかけた。
凄いな。逃げようとした自分とは大違いだ。
素直にそう思った。自分には無い特別なことだ。苦手を克服するなんて、それを乗り越えるなんて中々できない。
例えそれが、今だけかもしれない限定的なものであっても。自分は心から賛辞の言葉を送りたい気持ちである。
「あー、ボクはどんな楽器も好きだよ。弾けるのはほんの一部だけどね」
だからかな。
生まれて初めて、心から他人と話し続けようと思えたのは。
===============
============
=========
「あっ、え……? も、もしかして……透華さん……男の、人?」
「……声で分からなかった?」
私が不躾にも掴んだ人は、どうやら男の人だったらしい。ちょっと申し訳なさそうな顔をしている。
あああああ、私の馬鹿! ちょっと声が低い女の人かなって思うとか、失礼すぎる!
お昼で見た時だって、偶然視線があっただけで、あんまり記憶に残ってないし。寝ている時には顔しか見えなかったから、女の子にしか見えなかった。
「ごごごごごごごめんなさい!! あ、あまりにっ……!」
「あぁ、気にしないで気にしないで。姉たちにも良く揶揄われるし、慣れてはいるんだ」
渾身の土下座を披露すれば、透華さん——ではなく透華くんは困った様子で頬を掻いた。
うー、見れば見るほど、女の子に見える。
金髪の頭髪は男の人にしては少し長く切り揃えられていて、側頭部らへんは緩いウェーブが掛かっている。薄い赤の眼鏡なんて、ただのオシャレ要素でしかない。絶対に「眼鏡 美女 金髪 クール」でヒットする。
心なしか透華くんの制服からもいい匂いが……。
「あ、えっと、ごめん。電話きたみたい。出させてもらうね」
私が黙って匂いを嗅いでいると、透華くんはそう言って電話に出た。
きっと、私なんかと違って友達多いんだろうなぁ。
いや、でも昼食あそこで一人食べようとしてたし、もしかしたら同類かも。
ううん、こんなカビ臭い人間と一緒にするとか失礼に違いない。
すみません、勝手に私と同類とか思って(涙)
「ヘルプ? あー…………うん、わかった。虹夏は練習で忙しいんでしょ。いいよ、ボクだけが入る」
そう言って透華くんはスマホをタップし、通話を終わらせた。
「あー、もう少し話したかったんだけど……ちょっとバイト行かなきゃだから、お先に失礼するね?」
「あっ、はい」
「えーと……」
「……」
透華くんが何て言えばいいのか分からないのか、少し落ち着かない様子でいる。
ごめん、私も分からない。こういう時ってどうやって別れればいいんだろう。
アデュー? グッバイ? チェケラ?
陽キャの挨拶って難しすぎる……!
「うん」
諦めたように透華くんは一人で勝手に頷くと、そのまま保健室を出て行った。
なるほどぉ、あれが陽キャの真の挨拶なんだね。参考にしよう。
たった一人取り残された私は、もう少し寝てから帰ろうと思い、透華くんの寝ていたベッドに寝転がった。
そして、ふと思い出す。
「あっ、お礼と謝罪……」
私が落下したことによってぶち撒けられたらしい弁当と、それにより壊れてしまった箱。
保健室の先生が出ていく時に、壊れた弁当箱を渡しながら倒れていた時の状況を教えてくれたのだ。
ああああああ……壊れた弁当箱渡せてない。
どうしようどうしようどうしよう。
ベッドに顔を埋めながら、ああでもないこうでもない、と考えて数分。
結局、私は思考放棄したまま家に帰ることを選択した。
伊地知透華
いじちとおか
誕生日:8月15日
身長 :173cm
女の子と間違われるほどの端正な容姿をしており、小さい頃には女の子として育てられた経験もある。
顔付きは虹夏や星歌と似ていることもあり、ウィッグを被れば顔は大体誤魔化せるほど。
もう姉に頼るのはやめようと、高校は違うところに進学するも、既にぼっち街道を歩き出している。
本人曰く「主体性がなく、能動的に動けず、優柔不断な人間」
自分から友達を作ろうという努力ができない系統のぼっち。
全部、他力本願なところがどこぞのぼっちと一緒である。彼女は努力しているだけマシ。
イメージ画:
通常時
https://i.ibb.co/JB0QvYZ/19569-5g-Y1-YFDg.png
虹夏変装時
https://i.ibb.co/YDk02Xh/19569-KIqxtk-Q8.png