Don't Think. Feel ~史上最強の赤龍帝~ 作:70-90
一誠は悪魔にはなりません!
一誠は悪魔にはなりません!
大事なことなので二度いいました
どうやら昨日のように、うまく誤魔化すことはできなかったようだ。授業が終わった後うまく誤魔化しては帰ろうとしたが、祐斗だけではなく、小猫までにも逃げ道を塞がれた。この時、松田や元浜に遊びに誘われていたが、なしになってしまった。また、小猫が一誠の側にいるためか元浜は血涙を流していた。また、イケメン2人が並んでは女子の方も恍惚せずに入られない。
「……大人しくついてきてください」
「悪いね。これ以上、部長の機嫌を損ねるわけにはいかないんだ」
「なんだよそれ…。まぁ約束守れなかった俺に非はあるから仕方がないか」
一誠は大人しく、部室に向かうことにした。とりあえず、リアスから話を聞かせてもらわなければわからない。新校舎を抜け、敷地内の森の中を歩く。あまり通ったことのない道を渡っているので、一誠は見回している。しばらく歩けば、古びた建物、旧校舎に辿り着く。だが旧校舎にしては手入れの施しはされており、汚いというわけではない。祐斗もしくは小猫曰く、オカルト研究部の他にも幾つかの部活が借用しているそうだ。この時、「俺の世渡りはまだまだ甘いなぁ…」と呟いていた。
内装もボロボロではない。隅々までいきわたって手入れされている。幾つかの人達が使用しているので言うまでもないが。入口の前に立つと、祐斗がドアを開けようと手を伸ばす。しかし、突如一誠は「待てよ」と声をかけた。
「どうかしたのかい、兵藤君?」
「……隙を突いて逃げるつもりですか、先輩?」
「違うわ。なんか聞こえるだろ?」
耳を澄ませば、微かに水の音がする。何かが流れる音がする。「まさか…」と徐々に一誠の表情が怪訝になっては、苦笑している祐斗に確認してみた。
「部室にシャワーなんてあるのか? てか誰が使ってんだ?」
「あはは…。多分部長だね。徹夜していたらしいから」
「てか今頃シャワーかよ? 時差ありすぎだろよ」
「……先輩、いやらしいです」
じっと小猫が一誠を睨む。それに対し、一誠も彼女以上の睨みを利かせる。不協和音が聞こえるほどの威圧を発していたために、犬に睨まれた猫のように「にゃっ」と鳴く。
「何をしたんだ俺は? てか何いやらしいことを考えてたんだ塔城さん?」
「……何を根拠に私に振るんですか? 私は何も汚らわしいことなど―」
「ありありだよ。下ネタ言った覚え無いし、早とちりしたあんただよ。つい何破廉恥なこと考えてんだと発狂しかけたわ。俺そういうの嫌いだからさ、誘導尋問やめてくれる?」
マシンガンの如く、反論が小柄の身体にのしかかってくる。しかし、これは明らかに小猫の早とちりとしか結べない。一誠は下心を見せたわけではないので、即ち正当防衛である。
少しの間が空いて、小猫が恐縮した様子で謝った。
「……すいません」
「……いや、謝られるとなんか複雑な気持ちになるな…」
さらに反論してくるかと思っていたがすぐに撃沈してしまった。一誠は目の前の事実に対して虚しさを感じては、若干の焦りを感じた。悪魔が目の前にいるにも関わらず、謝られている自分がまるで悪役のようである。やはり、すぐに口に出してしまったのが悪かったか。
「只今戻りました」と祐斗がノックすると、艶やかな黒髪をポニーテールで纏めた女性が出てくる。朱乃である。
「2人ともおかえりなさい。貴方が兵藤一誠くんね? 来ていましたなら入ってもよろしかったのに」
「姫島先輩ですか? あの、部長がシャワー浴びているようなので入りづらい状況なんですけど」
「あらあら、ちょっと待っていてくださいね」
ドアが閉まる間際、赤髪の女性がタオルを持って出てきたのを一誠の目は捉えてしまった。そして、目を細めては凝視している。いや、睨んでいる。「だったら前もって済ましとけよ」と不満を漏らしそうになったが心に止めた。
***
「粗茶をどうぞ」
「どうも」
コトンと、一杯のティーカップが置かれる。西洋風のものには朱色の紅茶が入っており、湯気が立ってはアールグレイの香りが一誠の鼻に届く。吸い込まれそうな紫の瞳で、笑顔で見つめる朱乃。一誠は1つ言葉を放つと、コップを手に取り一口飲んだ。程よい苦さだ。元々彼にはお茶に関して、緑茶あるいはほうじ茶にしか、お茶に関して嗜好がなかった。だが淹れ方が旨いのだろう、詰まることなく、いや心地良く飲むことができた。
「おいしいです」
「お粗末さまですわ」
一誠は1つ感想を述べる。うふふと、朱乃は貴婦人のように優しく笑う。
ここの部員を確認してみれば、どれも個性が豊かであるように一誠は感じた。今のところまともそうな人は、朱乃か祐斗かもしれない。リアスは言わんばかりに粘着質で、小猫も表情を表さない割には一誠には覚えのないことに対して毒を吐いてくる。
オカルト研究部にしては、一誠のイメージよりも十二分に上品だった。怪奇現象に関する情報、例えば新聞の切り抜きやポスターが張り巡らされている、ファイルがぎっしりと本棚に詰まっているなど、部室自体は綺麗ではないというのがイメージであった。だが西洋の貴族を思わせるような内観であり、代わりに魔法陣などが描かれてある。
コホンと、話を整えるために1つ咳払いをしたリアス。
「悪いわね。昨日は徹夜して、シャワーを浴びる暇がなかったのよ」
「いえ、別に気にしてませんよ。ところで、話したいこととは?」
ソーサーにコップを置くと、一誠が敬語で尋ねた。
「その前に、ご存知でしょうけど紹介するわね。私はこの部の部長のリアス・グレモリーよ。朱乃、貴方からお願い」
「わかりましたわ、部長。私は副部長の姫島朱乃といいますわ。どうかお知り置きを」
「僕は木場祐斗。よろしくね、兵藤君」
「……1年の塔城小猫です。よろしくお願いします、兵藤先輩」
「俺は兵藤一誠といいます。2年ですのでよろしく」
リアスの呼びかけで、彼女を筆頭に部員全員が自己紹介をした。日常茶飯事のごとく見られていることは承知しているが、名前ぐらい知らなければという計らいなのだろう。一誠もまた紹介をした。リアスとは既に顔見知りの関係だが、名前は知らないだろう。
一見、友好的な一面を見せている一誠。そんな彼の身体は、僅かな魔力を感じ取っている。ちなみに、魔力は“魔”繋がりで悪魔しか持たないわけではなく、彼自身も魔力についての知識は持ち合わせている。そのために、万が一のためにと警戒心を潜めていた。
「ようこそ、オカルト研究部へ。私達は貴方を歓迎するわ――悪魔としてね」
決まったと言わんばかりに、笑みを浮かべるリアス。まるで、一誠がどう反応するかを期待しているかのようだった。
背中から黒い翼を広げている。堕天使のように鴉ではなく、まるで言葉通り枝分かれしたようなものである。
「ふ~ん」
それに対し、部員を一瞥しては無興味を示す返事をする一誠。コップと取ってはまた一口啜り、一息つく。
何1つ無駄話をすることもない。只々沈黙が走るだけである。隙間風が微かに聞こえ、耳に当たる。この時のリアス達の表情はどうだろうか。朱乃は相変わらずの微笑み、小猫は相変わらずのポーカーフェイスで羊羹を食べ、祐斗は何かを見て苦笑している。そして、リアスは口端を吊り上げたままだが、額に11の文字を立てては睨んでいる。
何一つリアクションすることもない。驚くこともおろか、笑うこともない。どうして何一つ反応を見せないのか。徐々にリアスの心は沸々となるばかりである。
「……ねぇ」
「何ですか?」
業を煮やしたリアスは、愛想笑いを浮かべながら話しかける。ただ、愛想笑いとしても、口元が僅かに痙攣している。
「貴方、驚いたりしないの?」
「勿論驚いてますよ。だからなんです? こうしてもらいたいんですか?」
シェアッ!!
「うぐあぁぁぁっっ!!」
悲鳴が上がる。ソーサーを机に置き、一誠はこの前と同じく、腕を組んでは“必殺光線”のポーズを取っているからだ。再び強い頭痛がリアスを襲い、頭を押さえては悶える。そうだ、私の下僕達は!? 力を振り絞って首を動かし、部員達の様子を窺う。
「あの、兵藤君?」
「……なにしてるんですか?」
「うふふ、一誠くんったら可愛いところもあるんですのね」
ところが、眷属達には無反応である。祐斗は困惑し、小猫は突っ込みを入れ、朱乃は意外な一面を見れたのか微笑んでいる。一誠は驚きのあまり、思わず腕を解いてしまった。体を起こしては、リアスも3人を見て驚愕している。
「ええっ!? どういうことなの!?」
「あれ? もしかしてこれにかかってるの部長だけですか? 自己暗示強すぎでしょ部長…」
「何よそれ!?」
どうやらこの“十字架”に過敏に反応したのはリアスだけだった。しかし、今一納得がいかないリアス。何故自分だけこんな仕打ちなのか。しかし、紛らわしいものでも大敵を目の前に見せびらかせば命にかかわることに変わりはない。
「一誠君、わかっているわよね? 私達悪魔は十字架が大敵なのよ!? 朱乃達は何ともなかったけど、この部ではそのポーズは禁止!」
「えーっ、部長だけでしょ」
「いいわね!?」
そこで、リアスは怒気を含めて注意した。最も、これからも正当防衛の一つとして一誠は使い続けるつもりなのだが。呆れたかのように、一誠は溜息をついた。
「はぁ、…話を進めてください」
「貴方が止めたんでしょう、全く…! …それでは一誠君―いえ、イッセーと呼ばせてもらうわね―、この写真を見て」
ここで閑話休題。リアスは一枚の写真を取り出す。そこには1人の美少女が可愛らしく写っている。しかし、リアスが深刻そうな表情を浮かべているのは、一誠はすぐに理解した。一誠にも彼女に見覚えがあるのだ。このピンクの服装も、この誰もが見とれてしまう笑顔も。
「あっ、こいつはあの時の…」
「彼女の名はレイナーレ。この世界では天野夕麻と名乗っているわ。貴方は既に彼女を含めて堕天使のことを知っているようだけど、彼女は貴方のような
リアスの発言を聞き、一誠の冷静な視線が彼女に向く。
「それは堕天使側が不都合になるからと?」
「物分かりがいいのね…。神器は特定の人間にしか持っていないし、それにどれほどに強大か、どの種類かを見極めるのは困難だわ。だから、彼女達は人当たりのない道に誘いこむなどして、無差別に命を狙っているの。ひょっとしたら堕天使全員を滅ぼしてしまうかもしれないからよ」
なるほど。利己的な人外もいるのだと、一誠は理解する。
神器は必ず目覚めるものではない。なのに、自分の都合を良くするために人の命を狙うなど馬鹿げた話である。だが、どおりで堕天使に襲われる回数が近頃増えたわけだ。勿論、その先は言うまでもないだろう。ただ、“禁手”なしで仕留めていることは言っておくことにする。
「では、イッセー。貴方の神器を見せてくれるかしら?」
「えっ、それは恥ずかしいですよ」
「部長は私よ。貴方に躊躇う義理などないわ」
「冗談ですって」
渋々と左手の袖をまくっては手の甲を見せる。そして手の甲が緑色に光り、瞬く間に朱色の鎧に覆われる。
「これが俺の神器、
「!?」
その名を聞いて、初めて部員達が驚愕した。開いた口が塞がらない。リアス達は
13種類も存在する神滅具の1つとして挙げられる神器であり、毎10秒に全てのステータスを倍加―2倍、さらに2倍なので2の累乗をしていくとも言える―していくという強大な力を持っている。即ち、最強の神器であるのだ。
「どうしたんです? わさびを突っ込んでくださいと言わんばかりに口が大きく開いてますけど?」
「もう既に…、覚醒したというの…!?」
ここで空気のギャップが生じている。“赤龍帝の籠手”はリアス達にとっては使い方次第で脅威になりえる代物である。一方で、一誠はそれほど気にしてはいない。慣れとは恐ろしい物で、どれほどの価値もしくは強大な力があるものとしても、使う時期が長ければ人によっては然程気にしなくなるのである。有名高校に受かって達成感を得ても、しばらくしては『高校に出かけてる』とごく当然にしか思えなくなることと同じだ。
「ドライグ、頼む」
「わかっている一誠。初めましてというべきだな悪魔諸君。
籠手の宝玉が点滅し、同時にドライグが話しだした。普段はテレパシーの如く内面で話すことが多いが、宝玉を通じて直接第三者にコミュニケーションを取ることができる。
「俺が目覚めたのは、こいつが生まれて間もない頃だ。物心がつく前に顔だけ“禁手”を発動したからな。相棒が6歳の時に再び俺は目覚め、そして使いこなせるようになったのは数え年12の時と意外にも遅いほうだ。だが、相棒にはかつての赤龍帝を凌駕する素質があると見ている」
「まぁ、顔だけ“禁手”というパターンは、俺には恥ずかしいんですけどね…」
腕を元に戻し、膝の上に置く。リアスの方は驚いていたが、直ぐ様何やら思いついたのか、笑みを浮かべる。
「そうとなれば話は早いわ。貴方、私の眷属にならないかしら?」
「それに対して、何かメリットがあるとでも?」
一誠の問いにリアスは答える。
「貴方の神器はあまりにも強力すぎる。堕天使だけではなく、他にも神器を狙う連中がいる中、貴方も対象外ではないわ。そのために私の眷属になること、要は悪魔側につきなさい。そうすれば、貴方の安全も保証できるわ」
「そうですか。なら、お断りします」
考える暇もなく、躊躇する態度も見せず、コップを持ち上げて一誠は即答した。彼は既に読み取っていた。どうせ自分の神器欲しさに自分の陣地に入れて独占するつもりだろうと。別にリアス達と敵対するつもりはないが、冗談ではない。一誠の返答に対し、リアスの顔から笑顔が消えた。
赤龍帝として生を受け、あらゆる人達に会ってきた。あらゆる人達を助けてきた。あらゆる人達から様々なことを学んできた。その人達のために、好き勝手に使われる訳にはいかないのだ。
「……理由を聞かせてもらえるかしら?」
「言っときますけど、俺は客としてここに来ているつもりなんです。別に貴方の下僕になるために望んで赴いたわけではありません」
スラスラと事務的な口調に、リアスの眉間に皺が寄る。
「言ってくれるわね…。別に悪魔になることに不都合なことなどないと思うけど?」
「それは貴方が悪魔そのものだから言えるんですよ。俺達人間として、貴方の顔を立てるのにかつての生活を捨てろとか、冗談を言うにも甚だしい限りですよ――俺はあんたの都合に構うほど余裕はないので」
一誠もまた笑顔を消しては、リアスを睨む。両者が目で牽制し合う中、誰も中に入ろうとはしなかった。特に小猫の場合は、わざと椅子を後ろにずらしていた。この時、ドライグに注意されるまで底知れぬ怒気を漏らしていた。それを感じ取ったのか、蟀谷に汗が滴り落ちる。
「それはつまり、貴方が私達の敵になると捉えてもいいのかしら?」
「別に敵対するつもりはありませんよ。ですが貴方の傘下に入るつもりはありません。悪魔側に付くわけには行きません。言い換えれば、俺は雲のように気ままに世渡りしたいだけです」
それだけ言い切ると紅茶を飲み干し、ソーサーを置くと一誠は立ち上がった。
「では俺は帰ります。姫島先輩、お茶ごちそうさまでした」
紅茶を淹れたことについて朱乃に礼をいうと踵を返し、ドアの方へと歩いて行く。
「私は貴方のことを憂慮してあげてるのよ!?」
リアスは立ち上がっては、爆発したかのように思いを放つ。一誠は立ち止まった。何やらこの人は勘違いしていると読んだからだ。『してあげてる』って言ってしまえば、もはや『してあげればそれでいい』と重く見ていないように聞こえて仕方がない。
「自己満足なら、尚更安心することができませんよグレモリー部長。部長のパシリにされるどころか、人間であることを捨てなければならないなんて、屈辱の極みですよ。それに昨晩、部長に言ったでしょ? 『俺なりに防犯対策はしている』って」
昨晩述べたはずの台詞を引用し、一誠はリアスに反論を仕掛けた。
「でも、貴方だけじゃ―」
「当然です。この赤龍帝の力は俺だけでは対処できないでしょう。ですが、この力を悪魔に独占させるわけにはいかないんです。堕天使側にも、天使側にも世話になっている方々がいますし」
「なんですって…!?」
一誠が他の派党にも関わっていることに、リアス達は驚愕する。
それにしても、彼女は何一つ理解していないのではないのか。一誠は不信感を持つようになった。一誠が見えるリアスという存在は、悪魔にしてはルーキーである。人間のいる世界どころか、人間の習性についても全く無視している。無視しては、まるで自分が法律よと言わんばかりにエゴをむき出しにしている。最も、一誠が苦手なタイプである。あまり一緒にはいたくはないというのが本音である。
あまりにも耐え難いので、つい言葉にして発してしまった。
「とりあえず、保身のために俺が人間を捨てることしか考えられない無能
リアスの静止を求める声が聞こえたが気にせず、一誠は部室を出て行った。静かにドアが閉まる。
「あらあら…。交渉決裂ですわね」
朱乃が気の抜けたかのように口を割る。一方でリアスは強く握りしめては、一誠が通ったドアをじっと睨みつけていた。自身のプライドに大きく傷をつけたことに怒り心頭に発しているのであった。
「小猫、聞いたかしら…? この…、この私に対して無能って…!」
「……確かに向こう見ずな所はありますけど」
「小猫ちゃん!?」
それに対し、小猫は相変わらずも羊羹を食べては何気なく呟いたのであった。だが、小猫の容赦無い内容に、リアスは思わず『ちゃん付け』してしまっていた。
腕時計を見れば5時前を過ぎている。「遅くなったなぁ」と呟いては、一誠はスタスタと廊下を歩く。すると、後ろから「待って」と男子の声が聞こえる。一誠は立ち止まって振り向いた。
「木場さんか」
「兵藤君、部長については僕が謝るよ。ごめん」
「なんであんたが謝る必要があるんだよ? 部員だからとか言わせないぞ」
一誠の発言に、祐斗は控えめな笑顔で答えた。
「でも、リアス部長は負けず嫌いがお強いからね」
「ああ、わかるわ~」
「あっ、これは部長には内緒だよ? 怒ると怖いんだ…」
リアスと朱乃が見えなくなって、普段通りの語気に戻る一誠。『謝っても入らねぇぞ』の一点張りだった。しかし、意外にも同情できる言葉だったので、時折言葉で賛同しては慰めもした。それにしても部長のことをよく観察していると思っていた。そのため、再び心の声が漏れてしまった。
「あのさ木場さん、なんであんたが部長じゃないんだよ?」
「へっ?」
あくまで気紛れで漏れたジョーク擬きである。しかし、僅かにその切望を抱いていることは、一誠自身は悟っていた。
「ただ、仲間になるのに『魂売れ』って大袈裟だと思わないか? 部長が人間に対して下に見ていることはないと信じるけど、普通に友達にすればいいのに悪魔が人間を同じ種族に転生させて眷属にするなんて道徳に反するんじゃね? まぁ、悪魔にも色々と事情があるし、これは俺の持論ってやつだけど」
リアスの発言には不可解な点が多すぎる。この為に持論を展開したのだが『言い過ぎたか?』と一誠の頭を過る。
「転生した悪魔の僕はもう人間じゃないけど、言われると確かにそうだね。でも、僕はあの人に助けてもらったから、今頃責め立てる気はないんだけど…」
それに対し、笑顔で答える祐斗。しかし、その笑顔には影が潜んでいた。
「どうしたんだ木場さん?」
「えっ…? あっ、いや、なんでもないよ。今日はありがとう」
一誠に呼びかけられると、すぐに普段通りの表情に戻った。
「ああ。…やっぱな、あんたが部長の器に相応しいわ」
「お世辞といえどもそれは大袈裟だよ」
「そうか。じゃあな」
後ろ向きで手を振っては、一誠は歩いて去っていった。この時、彼は「また来ようかな?」と思っていた。
最後怪しいですが、別に一誠は“アッチ”の人ではありませんよ!