死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 元花視点です。


閑話 元花と赤川くん家

 

「ここが赤川くん家ですか?」

「そうだぞ…」

 

 報告会が終わったその日の午後、私は赤川くんと一緒に赤川家へ来ました。

 私が赤川くんに付いていくよう言われた理由は、今の赤川くんの状態と聖魔連合について説明をお願いしたいからだそうです。

 たしかに攫われた時の赤川くんの状況を知っているのは私だけですが、レイヴンさんかオウルさんのどちらかが付いてきてくれてもよかったのではと思います。前よりマシになったとはいえお二人は私が未だに口下手なのご存じですよね?

 

「というかさっきからどうしたんですか、暗い顔して。そんなに宿題したくないんですか?」

「それもあるけど、何日も帰ってないから父さんと母さんから怒られると思うとちょっとな…」

「その時は私が擁護しますよ」

「助かる」

 

 赤川くん自身に帰れなかった原因はほぼありませんから。説明したら分かってくれますよ。

 

「とにかく、まずは赤川くんの両親に挨拶しないとですね」

 

 赤川家である戸建てのチャイムを押し、ピーンポーンという音が響く。

 

「…はい、どちら様でしょうか?」

 

 中から目の下に大きな隈を作った女性が出てきました。姉妹はいなかったはずなので恐らく赤川くんの母親でしょう。

 

「わ、私は苗又元花と言います。あなたが赤川くんのお母さんですか?」

「…あなた、操のお友達?悪いけどあの子なら数週間前から行方不明よ。操に用事があるなら帰って」

「じつは赤川くんについて話がありまして」

「…話ってなに?」

「赤川くん」

「よ、よお母さん。久しぶり」

「…え、操?」

 

 赤川くんのお母さんが驚愕の表情を浮かべる。そりゃあ数週間も帰ってこなかった息子がいきなり帰ってきたらそんな反応にもなりますよね。

 

「なかなか帰れなくてごめ─」

「今までどこ行ってたの!?」

「おっと」

 

 赤川くんに勢いよくお母さんが抱き着く。

 

「もう、一生会えないかと…、死んじゃったのかと思ったわよ」

「う~ん、死にはしたんだよな」

「え、それってどういう…」

「それについては私から説明しますが、お母さんはまず顔を拭いたほうがいいのでは?」

 

 赤川くんのお母さんはさっきから顔の穴という穴から水分があふれておりとても人に見せられる状態ではありません。

 

「そ、そうね。苗又ちゃんだっけ、とりあえず上がって待ってて」

「お、お邪魔します」

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「苗又って食べちゃダメな物あったっけ?」

「あ、私一応怪人なので猫が食べれない物が食べれないとかは無いですよ。そういえばお父さんは?」

「さっき母さんが父さんの職場に電話かけてたからもう少しで戻ってくると思うぞ。俺の父さんは医者だかなら、日曜日でも普通に仕事あんだと。はい、リンゴジュース」

「そうなんです。あ、リンゴジュースありがとうございます」

 

 日曜日なのに赤川くんのお父さんがいなかったのはそういう理由だったんですね。あ、このリンゴジュース美味しい。

 まあ赤川くんのご両親が来るまではゆっくりさせてもら─

 

「操、帰って来たのか!?」

「父さん!」

 

 ─えなそうですね。

 

「今までどこへ行っていた!こちらがどれだけ心配したと思っている!」

「ご、ごめんなさい!」

「あ、あなたが赤川くんのお父さんですか?」

「そうだが、あなたは?」

「あ、私は苗又元花と言います。赤川くんがなかなか帰ってこなかったことについての説明をしに来ました」

「…色々言いたいことはあるが、とりあえず後にしよう。少し待っていてくれ、荷物を置いてくる」

「は、はい」

 

 そうして赤川くんのお父さんは二階へと上がっていく。

 

「…こ、怖かった。赤川くんのお父さん怖すぎません?」

「昔から過保護気味だったからな、俺が行方不明になってピリついてたんだろ。それに父さんは理由なく怒ったりはしない」

 

 だとしても怖すぎますよ!チビりかけましたって!

 世の中のお父さんってあんななんですか?!

 はぁ、今から説明が憂鬱です。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「あ、改めまして私、苗又元花と申します」

「こちらこそ、私は操の母、赤川牡丹(あかがわぼたん)と申します」

「同じく、父の赤川器一郎(あかがわきいちろう)です」

 

 今、私は食卓のテーブルに赤川夫妻と対面して座っている。そして赤川くんは私の隣だ。

 これより、お二人には何があったのかを説明しなくちゃいけない。しかし何というか、お父さんの圧が凄い!

 だけど、やらないことにはどうしようもない。覚悟を決めろ、キャットガール。

 

「まずは、私の正体についてお話しておきます」

 

 透明化猫耳カチューシャを外し、猫耳を露わにする。

 

「!、その耳!」

「怪人か!」

 

 赤川夫妻があからさまにこちらを警戒してくる。一般人にとって怪人は恐怖の象徴とはいえ、この視線はなかなかに応えますね。

 

「私は赤川くんの同級生兼お友達の苗又元花。そして悪の組織、聖魔連合幹部猫型怪人、キャットガールです」

「っ、そんな大それた怪人が操を連れて家になんの用だ?!」

「あなた方の息子さんに何があったのか説明するためです。赤川くんが攫われた後、何があったのか私が連合長以上に一番知っています」

「…わかった、話は聞いてやる」

「ありがとうございます」

 

 そうして赤川夫妻にこれまでの事を説明していく。

 大阪にあったマジックアイテム社開発研究所で人体実験をされたこと、赤川くんが得た魔法で脱走しようとしたこと、赤川くんが薬の副作用で死亡し怪人として復活したこと、マジックアイテム社開発研究所のトップらしき男を倒したこと。

 そして、今現在赤川くんが聖魔連合幹部ブラッドとして活動していること。

 

「…なるほど。さっき操が死にはしたって言ってたけどそういうことなのね」

「あぁ、そんで今はこんな感じになってる」

「本当、みたいだな」

 

 赤川くんが背中から蝙蝠の羽を生やし両親に見せる。

 

「私からの説明は以上です」

 

 説明中、赤川夫妻は何も言わず聞いてくれました。

 

「…色々言いたいことはあるが、まずは操の命を救ってくれたことに感謝する」

「あ、頭を上げてください!それに私たち聖魔連合は赤川くんを怪人にしてしまったのですよ!」

 

 器一郎さんが机にぶつかるほど深く頭を下げた。

 

「確かに息子が怪人にされたことに思うところはある。だが、もう会えないと思っていた息子にこんな形であれ合わせてもらった。それだけで感謝する理由になる」

「私からも、操を助けてくれてくれてありがとうございます」

 

 そうして、牡丹さんも深くお辞儀をする。

 

「…わかりました。お二人が感謝していたと連合長に伝えておきます」

 

 怒りを向けられる覚悟もしてましたが無駄な覚悟でしたね。けど感謝されたのは予想外です。

 

「ちなみに、操は何で今までで帰ってこなかったの?苗又ちゃんの話だと帰れる時間はあったと思うけど」

「!、えっと…、その…」

「何で?」

「…すいません、帰るの忘れてました!」

「ふ~ん」

「ほぉ…」

 

 !、何かお二人から不穏な気配が─

 

 

『『この、バカ息子が!!』』

 

 

 ─おかしいですね、急に何も聞こえなくなりました。

 

「せめて無事なら連絡を入れろ!」

「私たちがどれだけ心配したと思ってるの!」

「な、苗又、擁護してくれんだろ。今こそしてくれ!」

「お、お二人とも、なかなか帰れなかったのは聖魔連合幹部として活動していたためなのであまり怒らないでもらえると─」

「それでも無事な連絡ぐらいできただろ!」

「…確かに」

「苗又!」

 

 いやこれに関しては反論のしようが無いですよ。だって電話などが無くとも手紙などで無事の連絡くらいはできましたし、そもそもレイヴンさんから連絡するよう言われてましたよね。

 

「てなわけでおとなしく怒られてください」

 

 私はさっきのリンゴジュースでも飲んで待ちますか。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「「お見苦しい所お見せしました!!」」

「い、いえ、別に気にしてませんよ」

 

 一時間近く説教するとは思いませんでしたが。

 

「ぅ、ぅぅ…」

「…大丈夫ですか赤川くん?」

「なえまた~」

「本当に大丈夫なんですよねこれ?」

「大丈夫よ、ちょっと怒りすぎたかもしれないけど」

「ちょっと?」

「牡丹はめったなことでは怒らないが一度怒ると長いからな。今回だって短い方だ」

「えぇ…」

 

 さっきから涙やら鼻水やらで呂律回ってないこの状態で?

 

「ところで先ほど操は聖魔連合の幹部として所属していると言っていたが、既に魔法少女と戦闘しているのか?」

「は、はい。既に京都にて鍛冶屋智加古という魔法少女と交戦しました。…あの、何かマズかったですか?」

「その戦闘で操が死んだらどう責任を取るつもりだったんだ?」

「!」

 

 聖魔連合では怪我をしてもオウルさんかセイさんに治療してもらえば大抵の怪我は何とかなります。しかし、それでも死亡する確率がゼロとは言い切れません。

 

「操を助けてくれたことには感謝している。しかし、いくら恩人の指示であろうと操を命の危険がある戦場へ送り出すことはできない」

「…たしかに、そうかもしれません」

 

 私には子がいないので赤川夫妻の気持ちは正確にはわかりません。しかし、自身の子を戦地へ喜んで送り出そうとする親は、その時代が狂っているか相当の毒親じゃない限りいないはずです。

 

「分かってくれたか」

「はい。ですが、聖魔連合の目的のため赤川操という戦力を手放すわけにはいきません」

 

 しかし、こちらにも赤川くんを戦闘へ出す理由がある。 

 

「目的だと?」

「聖魔連合の目的は聖なるものも魔のものも争わずに生きれる世界を作ること。今の世界では怪人というだけで、魔法少女でないのに魔法を使用できるというだけで魔法少女に殺されてしまいます。その上、家族が怪人に改造され魔法少女に殺されてしまったり、怪人と魔法少女の戦闘に巻き込まれたりしてしまっても、『魔法少女だから』で許されてしまうのが今の世の中です。実際、連合長と副連合長の両親は魔法少女の魔法に巻き込まれ死亡しています」

「だが─」

「この世界を変えるためには少しでも多くの仲間、そして力が必要です。そのため器一郎さんの要望にはお答えできません」

「っ…、死なない確証はあるんだろうな」

「聖魔連合には高度な回復魔法持ちがいますが、残念ながら絶対死亡しないとは言い切れません。しかし、そうならないよう全力で彼を守ります。その上で死亡してしまったら、その時は私の身を火口へ投げましょう」

「!」

「おい、苗又それは!」

「止めないでください赤川くん」

 

 落ち着いた赤川くんが心配してくれますがこれが私なりの責任の取り方です。

 私はプラナリアの力によって高度な再生能力を持っています。しかし、全身を焼かれ続ければそのうち再生が追い付かずに死亡するでしょう。もしかしたら再生能力が上回るかもしれませんが、溶岩に落ちれば永久に身を焼かれ続けることになります。

 

「…なぜ、そこまでする?」

「私は赤川くんが聖魔連合へ所属することになった原因の一端です。目が覚めてすぐに一緒に逃げ出していれば、逃走中に頼らなければ、怒りで我を忘れなければ、赤川くんは怪人にならず普通の生活に戻れたかもしれません。普通の生活を壊し命の危険がある世界へ引き込んでしまった責任は、私の魂を懸けて全うします!」

 

 レイヴンさんやオウルさんはこの判断に怒るかもしれませんが、赤川くんを引き込んだ責任に魂を懸けさせてください。死が隣り合わせの世界へ引き込んだ責任は、これくらいしないと釣り合いません。

 

「…苗又ちゃんの気持ちは分かったわ」

「牡丹?!」

「これだけの覚悟を見せてくれたのよ。それに怪人になってしまった以上、魔法少女にばれたらどうなるかわかったもんじゃないわ。それなら聖魔連合で活動していた方がまだ安全よ」

「…そうだな。わかった」

「で、では!」

「キャットガールさん、息子を聖魔連合に託します。連合長にもそうお伝えください」

「は、はい!わかりました!」

 

 よ、よかった~。一時はどうなるかと思いましたが何とかなりました。

 

「それにしても、操に命まで懸けてくれるなんてね。責任云々抜きにしても」

「初めてできた友達ですからね。組織関係無しに赤川くんは大切なんです」

 

 私が口下手なのもあってクラスこそ違いますが積極的に話しかけてくれる赤川くんは本当にありがたいです。自分のクラスだとオウルさんとしかまともに会話できませんから。

 

「そうだ、苗又ちゃん今日家で晩御飯食べていかない?いろいろ話してみたいし」

「いいんですか?ではお言葉に甘えさせてもらいます」

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「何これ凄く美味しいです!」

「久々に食べたけどやっぱ母さんのレバー炒めうめぇな」

「だろ、牡丹の作る飯は美味いんだ」

 

 牡丹さんが晩御飯に作ってくれたのは赤川くんの好物であるレバーを大量に使ったレバー炒めです。

 レバーって聖魔連合の食事に出たことが無いので初めて食べましたがこんなにも美味しいんですね。普段はどかすくらい野菜嫌いのはずの赤川くんが野菜と一緒にバクバク食べてるくらいです。正直違和感がすごいです。

 

「牡丹さん、後でレバー炒めのレシピ教えてもらっていいですか?」

「いいけど、どうして?」

「組織だとレバーを使った料理が出てきたことないんですよ、だから時々赤川くんに作ってあげようかなって。赤川くんは幹部なのでなかなか帰れなくなると思いますし。それと組織で料理の手伝いもしているのでレシピを増やしておきたいんです」

 

 聖魔連合の構成員全員が増えたことによりつい最近新築された食堂では料理が出来るメンバーが交代で料理をしているのですが、その食堂で私も料理をしています。

 というのも単純に料理が出来るメンバーが構成員に比べ圧倒的に不足しているので私の分身が駆り出されています。

 私のデータバンク魔法を使用したラーニングによってあらゆる作業を一瞬で記憶できますから分身は埋め合せにはちょうどいいんですよね、自我や思考力は無いので融通が利きませんが。

 

「そりゃいいな。苗又が覚えてくれればいつでもレバー炒め食えるし」

「たしかにな。しっかり覚えてってくれよ苗又ちゃん」

「ありがとうございます。…あの、さっきからビール呑みすぎでは?」

「操が帰ってきてめでたいんだからいいんだよ」

 

 いや器一郎さん今持ってる350ml缶ビールで三本目ですよね。牡丹さんも二本目開けてますし。

 たしかビールってロング缶一本で一日のアルコールの適量に到達するはずなんですが。

 まあ悪酔いしなければ別に何も─

 

 

「ねえ、二人って付き合ってないの?」

『『ブーッ!!』』

 

 

 ゲッホゲッホ、この人何いきなりヤバい事ぶっこんでくるんですか?!

 

「母さん何言ってんだ!俺と苗又はただの友達だって!」

「そう?けどさっきのレバー炒めのレシピ教えてくれるよう頼んでた苗又ちゃん完全に彼氏の胃袋掴みに来てる彼女のそれだったわよ」

「…どうしよう、何も否定できない」

 

 さっきまでの私の行動を思い返してみましたが、たしかに牡丹さんの発言通りですね。

 

「それに器一郎さんに操の責任を取りたいって交渉してたでしょ。あれ彼女を妊娠させてしまった彼氏が彼女の両親に土下座しに行く姿にそっくりだわ、二次元でしか見たことないけど」

「おい母さんそれ以上は!」

「…して…殺して…」

「苗又が羞恥心でダウンしちまう!」

 

 ヤバい、羞恥心で死ぬ。なんて行動したんですか数時間前の私!

 

「父さんも何か言ってくれよ!」

「あっはっは、牡丹は他人の恋愛見るのが大好きだからな。しかも今は酒が入ってると来た、こりゃしばらく根掘り葉掘り聞かれるぞ」

「ねえねえ、学校ではどんな感じなの?!」

 

 もう…やめて…。

 

 

 

    ◇◇◇

 

 

 

「ガーッ、ガーッ」

「スーッ、スーッ」

「や、やっと終わった」

「そ、そうだな」

 

 しばらく続いた質問という名の尋問は、赤川夫妻が寝落ちしたことで終了しました。

 

「なんか、ごめんな、俺の両親が」

「い、いえ。元はと言えば私の行動がきっかけでしたし」

 

 今にして思えば、もっと他の言い方というか何かあったでしょと過去の自分に言いたいです。 

 

「…なあ、何もなかったってことにしとかないか?気まずいし」

「そ、そうですね!それがいいです!」

 

 こういうことはきれいさっぱり忘れるに限ります。

 

「宿題は明日からするか」

「そうしてくれると助かります。今は疲れで手伝える気しないので」

「わかった。それじゃあ宿題回収してくる」

 

 そうして赤川くんが宿題を回収したのち、皿を洗い書置きを残して本部へ帰還しました。

 さて、明日から宿題頑張りましょう。

 なお、赤川くんが行方不明になった件は高校の方にも伝わっていたらしく、それにより宿題が免除されることになるのは今はまだ知らない。

 

 

 

 

 

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