死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
オウル視点です。
「…うん、予想はしてた」
以前ライズはダンジョンには必ずダンジョンコアが存在すると言っていた。
なのにこの前のドラゴンのダンジョンにもこの海底神殿にもダンジョンコアらしき者は見当たらない。このことについてはさっきライズの鑑定で『三途の桜花』ってダンジョンの内部エリアの一つだと判明した。
じゃあ『三途の桜花』のダンジョンコアがどこにあるのかって言ったらもう候補は
となるとダンジョンマスターが誰になるかというと、必然的に
「正直我は自身の魔法を疑った。なにせ元居た世界にはダンジョンマスターになった人間など存在しなかった上なれないとされていたからだ。無論、魔法によって人工的に生み出されたダンジョンコアも同様だ。そんなもの作れてしまったら禁忌指定まっしぐらだ」
「…何で
「真か!?」
「地下でライズと召と戦闘した時、私一回死んだでしょ。その時何かバグったんじゃない?」
「…ありえそうな話だな」
一度死んで生き返った人間は本当に人間なのか?
もし人間なのだとしたらアンデッドなんて言葉は生まれないはず。
そうなると、気付いてないだけで私は人間ではない何かになっていても不思議じゃない。
人間でなくなっているのなら、人間はダンジョンマスターになれないというこれまでの法則を無視できる。
まあ、死ぬ前はどうだったんだと言われたら知らんとしか答えられないけど。
「オ~ウ~ル~、ちょ~と聞きたいんだが?」
「な、なに白夜? 肩痛いんだけど」
突然、白夜がいきなり肩を掴んできた。
何だろう、すっごく振り返りたくないんだけどひょっとして白夜怒ってる?
「一度死んだってどういうことかな?」
「どうって文字通り…あ!」
そういえば兄さんが混乱を防ぐために私の死亡に対して箝口令を敷いてたの忘れてた!
箝口令の影響で私の死について知っているのは地下で戦闘していたメンバーのみ! 白夜は当然このことを知らない!
「オウル、死んだってどういうこと?」
「えっと…その…。はい、隠しててすいませんでした」
兄さんごめんなさい、さすがに隠しきれませんでした。
こんな純粋な目で心配されたら隠し事できるわけないじゃん。
「じゃあ、洗いざらい吐いてもらおうか」
「…はい」
《─魔法少女説明中─》
「─以上が事の顛末です」
あ、足が、説明中ずっと石の床に正座してたから足が痛い。
「…何があったのかと箝口令を敷いた意味も理解した。たしかに
「わ、わかってくれてよか─」
「誰が立っていいと言った?」
「…はい」
立とうとしたら白夜に笑顔で圧を掛けられた。
やっぱ相当怒ってるよねこれ。表情は笑顔だけど『俺はブチ切れてます』って笑顔だもん。
「はぁ…、もう過去のことだからとやかくは言わない。オウル殺害の件は当事者同士で納得してるっぽいしな」
「そ、そう」
ゆ、許された? ともかくこれでやっと正座から解放される。
「おい、今の話口外すんなよ。レイヴンが箝口令敷いた意味なくなる」
「わかりやした」
「おう、わかった」
「同じく」
ありがたいことに私が死亡したことについて白夜たちは黙っててくれるみたい。
まあワザと言いふらす意味無いし、バレた時面倒だしね。
「それでこの後だけど、どうする?」
「先ほど話してた『三途の桜花』のダンジョンコアと思われる
「いいよ。私も詳しく知りたいし、いったん港に戻ろ」
「ねえ、それはいいけど蟹はどうするの?」
「…忘れてた」
私の魂を打ち込んだ巨大蟹は微動だにしなくなったから忘れて放置してた。
戻るにしても放置していくわけにもいかないしどうしよう。
「オウル様、この蟹操作できないのか? 魂打ち込んだら止まったんだし」
「…どうだろう、やってみる」
河原に言われ巨大蟹に打ち込んだ魂の感覚をたどる。
…こんなかんじかな? 脳波を使って操作する機械を動かすイメージで…。
『グ…ラ…』
「あ、動いた」
ゆっくりとだが巨大蟹を動かすことができた。
今は倒す前みたいに俊敏な動きはできないけど練習すればできそう。
「で、だからどうしたって話だけど」
動かせることがわかったのはいいけど、眼下の課題はこの巨大蟹をどうするかだ。
根本的な解決にはなってない。
「…なあ、この巨大蟹って食えるのか?」
「白夜マジで言ってんの?」
「いや確かにモンスターの類かもしれないが蟹は蟹だろ。食えない道理は無いぞ」
いやまあ言い分は理解できるけどさぁ、蟹は高級品だし
「それは有りだな。これだけ大きいと可食部も多そうだ」
「え、食べれるのこの蟹?」
「さっき鑑定したところ問題なく食べらるそうだ」
…ライズが言うなら問題ないんだろう。食べて何か起きたとしても死ぬ前なら私かセイが回復させればいいしね。
「アギト、この蟹冷凍してくれ。さすがにこのまま持ち帰ると腐りそうだ」
「わかった、コールドブレス!」
アギトの放った超低温のブレスによって巨大蟹が瞬く間に凍り付いていく。
「俺たちはここまで来たついでに船釣りでもしようと思ってんだが、オウル達だけ先に戻るか?」
「そうさせてもらうよ。海面に出たらライズとアルを連れて先に港に戻る」
「わかった。調査頑張れよ」
◇◇◇
モンストルオ・サルバドル号で海面まで浮上したのち、
「ここがその桜だよ」
「…近くに来たことはなかったが、すごい迫力だな」
「そういえばライズは近くに来たことなかったね」
この桜は本部である逢魔ヶ時神社のさらに奥にある。
遠目からも見えるけど近づこうとするとまあまあ距離があるため、ここまで来る人はあまりいない。
「それじゃあ行うぞ。
そうしてライズは桜を鑑定していく。
さてさて、結果はどうなるかな?
「…やはりこの桜は『三途の桜花』のダンジョンコアになっておった」
「あ~やっぱりね。この桜以外ダンジョンコアらしき物無いもん」
「だがこの桜、これだけ立派な大樹なのに名称すら無いとは」
「…そういえばこの桜、桜以外の名前で呼ばれてるの聞いたこと無いよ」
確かに、今まで困ったこと無かったから気にしなかったけどこの桜の名称まだ未定だった。
そろそろ呼び方決めた方がいいよね。
「そうだな…、月に咲く魂を導く桜と書いて
「どうと聞かれてもこの桜を咲かせたのはオウルだ。命名権はオウルにある。それに今のでこの桜の名称は魂導月になった」
「ライズ、名称ってそんな簡単に決まるものなの?」
「実際いましがた鑑定したが名称が無名から魂導月になっておった。無名の物に誰かが名を付ければそれが名になるのだ」
「まあ名称決めても特に変わること無いんだしいいじゃん」
「確かに」
名称を決めようとした理由も、無いなら無いで面倒になりそうだからだし。
「ところでライズ、私ってダンジョンマスターになったけど何かメリットあるの?」
今のところメリットがモンスターの操作くらいだし、それも魂を打ち込まないといけないから面倒なんだよね。
「そうだな…、おそらく一番のメリットは高い不死性を得ることだな。ダンジョンマスターはダンジョンコアが存在する限り無制限に復活できる。だが、復活は基本的にダンジョンコア周辺で行われるため地下での復活はダンジョンマスターとは無関係だろう」
「え、めっちゃいいじゃん!」
「だがこれは自然発生したダンジョンコアの場合だ。人工ダンジョンコアなんぞ前例が無いため鑑定でもわからん。その上ダンジョンマスターはダンジョンコアが破壊されると死亡してしまう、そのためダンジョンマスターは基本的にダンジョンの外に出ることはない。見方によっては弱点を増やしただけだ」
「…そんなうまい話は無いか」
というかダンジョンマスターじゃなくとも肉体が無事なら復活できるから単に弱点増やしただけでデメリットの方が多くない? 場所が月とはいえここに魔法少女が到達しない保証はないし。
…今度兄さんに頼んで魂導月の守り固めてもらおうかな?
「ねえライズ、他のメリットないの?」
「他だとダンジョン内の地理をある程度操作できることだな」
「そうなんだ。オウル、地理も操作できるって」
「いや地理操作できても今の立地崩す訳にも…あ!」
この能力を使えば魂導月の守りを固めることができる!
他の場所だと既にビルド主体で開拓しちゃってるから下手にいじって壊す可能性あるけど、魂導月の周りは森しかないからその心配はない!
「そうと決まればさっそく…、大地よ隆起しろ!」
魂導月の周りを囲うイメージで地面を盛り上げようとする。
しかし、地面は僅か数ミリ盛り上がっただけで止まってしまった。
「あれ?」
「全然できないじゃん、どうなってるの?」
「…恐らくだがこの辺り一帯は森として固まってしまったのではないだろうか。田畑だって何年も耕していないと農作物が育たないくらい固まってしまうからな、似たようなことが起きたのだろう」
「そんなぁ」
これじゃあしばらく魂導月の守りを固めることできないじゃん。
もうおとなしく兄さんたちに頼もう。
「気を取り直してオウル、わかっただけいいじゃん」
「…そうだね。この事がわからなくて死にましたってならなかっただけいいか。ともかくこれで一旦調査完了かな?」
「そうだな。元々は海底神殿の調査だったのが気付けばダンジョンコアの調査になっとったし。切りも良いからここで引き上げるとしよう」
「それじゃあ研究試験場まで送るよ。
そうしてライズを送り届けるために魂導月から飛び立った。
ダンジョンマスターになった件については後で会議でも開いて伝えよう。どうせ兄さんや灰崎さんたち研究チーム、セレネたち情報収集チームも何かしらの伝達事項はあると思うし。