死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


夢 VS 正義

 

 

   視点は戻り超巨大UFO内部─

 

 

 

「ソニックマーキュリー!」

 

 グレートフューチャーがダークマーラに接近していく。

 いくら肉体が化け物になろうと接近戦ではグレートフューチャーに分がある。

 しかし、それはダークマーラが無対策だった場合だ。

 

「なにも対策をしてないとでも? 夢生成(ドリームクラフト)・マッスル!」

 

 直後、ダークマーラの体が更に肥大化していく。

 今回生成されたのは筋肉、これにより両者のパワーが並んだ。

 

「アースフィスト!」

「ドリームフィスト!」

 

 両者の拳が激突する。

 それにより生じた衝撃波によって周囲のガラスが砕け散った。

 

「本当邪魔なんだよグレートフューチャー、なぜ俺にここまで執着する?」

「それは、お前が沢山の人を不幸にしてきたからだ! これ以上被害を出さないために、今日ここでお前を倒す!」

 

 間髪入れずにもう片方の拳をダークマーラの腹に叩き込む。

 更にもう一発入れようと拳を引き突き出す。

 

「ぐ…、それなら他組織でもいいだろう。俺はてっきり先輩の敵討ちだと思ってんだがな」

「なっ!」

 

 ダークマーラの発言に気を取られたグレートフューチャーの拳が止まる。

 

「おらぁ!」

「がはっ!?」

 

 その隙を見逃すはずが無くダークマーラのもう片方の拳が腹に直撃した。

 グレートフューチャーはそれにより吹き飛ばされ、壁を数枚ぶち抜いてようやく停止する。

 

「ダーク…マーラ、何処で…それを?」

 

 グレートフューチャー─高雄英奈には魔法少女を始めたばかりの頃にお世話になった先輩魔法少女がいた。

 その先輩は七曜の円卓には所属しておらず、お世辞にも強いとは言えなかった。

 しかし、困っている人には後先考えず手を伸ばし身を挺して市民を守り抜く、そんな優しさと正義感を持っているお人好しの塊のような先輩だ。

 グレートフューチャーに魔法少女のノウハウを教えたのもこの先輩であり、師匠とも言えるかもしれない。

 そんな先輩だが、今はもうこの世にいない。

 強大な敵と接敵してしまった時、まだ弱かったグレートフューチャーを逃がすために自ら囮役を買って出て、帰ってこなかった。遺体すら未だ見つかっていない。

 当時最後までその場に居たのはグレートフューチャーと敵、そして先輩の三人だけだ。

 そもそも、グレートフューチャーに先輩がいたという話は七曜の円卓メンバーにも話していない。

 なのにダークマーラは先輩の存在を知っていた。

 これが示すことはただ一つ。

 

「なに、お前が先輩と呼ぶ魔法少女─フリーグライダーを殺したのは当時のナイトメアグループ幹部だ。まさか、最後の力を振り絞って相打ちまで持っていくとはな。おかげで組織が混乱したぞ」

 

 先輩を殺害したのがナイトメアグループだったという事実だ。

 直後、グレートフューチャーの中の何かが切れた。

 

「…ダークマーラ!!!」

 

 グレートフューチャーが咆哮を上げる。

 自分の尊敬する先輩を殺され、あまつさえ小馬鹿にされたのだ。完全に怒り狂って我を忘れてしまっている。

 

「そうだ、怒り狂え。そうすれば動きも読みやすくなる」

「おらぁ!」

 

 急接近してきたグレートフューチャーが拳を振るう。

 しかし先ほどまでの切れは無く、ダークマーラに全て捌かれている。

 

「技名すら叫ぶ余裕が無いか」

「私はお前を、絶対に許さない!」

「そうか。だが、今のお前に俺が倒せる訳ないだろ!」

 

 ダークマーラの拳が腹に直撃する。

 これにより再度グレートフューチャーは壁に直撃した。

 普段なら当たるはずの無い攻撃だが、今のグレートフューチャーに防ぐ余裕は無い。

 

「ぐっ…」

夢生成(ドリームクラフト)・黄金戦闘機!」

 

 そこに戦闘機も突撃し追撃してくる。

 突撃の衝撃によってUFOの壁の一部が崩壊し、グレートフューチャーを覆い隠す。

 

「ま…まだだ!」

 

 瓦礫を吹き飛ばしグレートフューチャーが復帰してくる。

 瞳は未だ怒りに燃えており冷静ではない。

 その証拠に再度拳を突き出すが、先ほどよりも更に切れが悪くなっている。

 

「はぁ…はぁ…」

「何だ、もう限界か?」

「そんなわけ…ないだろ!」

 

 しかし、グレートフューチャーの言葉とは裏腹に心身は限界を迎えようとしていた。

 身体のダメージだけならば十止進珠の魔法とヒーロー魔法によるバフでどうにかなるが、それでどうにかなるダメージを既に超過している。

 さらに、先輩を殺害したという発言が思考を乱しヒーロー魔法の効きを悪くしていた。

 

「その割にはもう焦点があっていだろ」

「うる…さい!」

 

 再度拳を振るう。

 しかし、今回は防ぐまでもなく躱された。

 超巨大UFOと一体化した身体にだ。それほどまでに速度が落ちてしまっている。

 

「お前を…倒さないと…」

「ならば、更に悪夢を与えて心を壊してやるよ!」

 

 ダークマーラの背後にあった扉が開く。

 その中から異形の人影が出てくる。

 

「武器怪人:ウェポングライダー、初陣だ」

「…え?」

 

 その怪人は右腕が二本あり、それぞれ火炎放射器とチェーンソーが取り付けられていた。

 左手は巨大な銃になっており、銃口がグレートフューチャーに向けられている。

 しかしグレートフューチャーが思わず声を出したのはそのどちらが原因でもなく、ウェポングライダーの顔が今一番見たくなかった顔であったためだ。

 

「先輩…? 何で…?」

「そうだ。お前にはこれが一番効くと思い、研究室から連れてきた!」

 

 先輩─フリーグライダーの遺体が見つからなかった理由が今判明した。

 ナイトメアグループが遺体を回収し、怪人へ改造していたからだ。

 

「行け!」

『了…解…』

 

 瞬間、ウェポングライダーがグレートフューチャーの目の前に現れる。

 どう考えてもその巨体ではあり得ない速度だ。

 

『メイス』

「っ!?」

 

 火炎放射器をメイスに切り替え殴りかかってきたが、咄嗟に左腕を盾にすることでダメージを軽減する。

 しかし今の攻撃で左腕が使い物にならなくなってしまった。

 それでも、この初見殺しともいえる攻撃を防げたのは幸運だろう。

 なんせグレートフューチャーはこの移動方をずっと近くで見ていたのだから。

 

「さっきの移動方法は…まさか!?」

「お前の予想通り、フリーグライダーの滑空魔法だ。苦労したんだぞ、魔法少女の魔法と怪人の能力を組み合わせるのは」

 

 滑空魔法、自身が受けた風により発生した揚力を何十倍にも増幅させ飛行する魔法である。

 先ほどの高速移動からのパンチはフリーグライダーの十八番だった。

 

「ダークマーラ…、どれだけ先輩を侮辱したら気が済むんだ!!」

 

 怒りに任せダークマーラに突っ込む。

 だが、その行動は悪手に決まっている。

 

夢生成(ドリームクラフト)・レーザー!」

「こんなの当た─!」

『ショット』

「グハッ!?」

 

 ダークマーラの放ったレーザーは回避できたが、横からウェポングライダーの放った弾丸が直撃した。

 当然身構えているわけが無く、頭から出血し血液によって右目が霞む。

 

「クソッ、先に先輩を─」

 

 ウェポングライダーに向け拳を振るう。

 先に止めを刺さないとまともにダークマーラの相手ができない。

 しかし─

 

「…え?」

 

 グレートフューチャーの拳はウェポングライダーの顔の脇を通り抜けていた。

 僅かな迷いが、無意識に拳の軌道を逸らさせたのだ。

 

「捕まえろ!

「!、しまっ─」

 

 一瞬の隙を付きウェポングライダーがグレートフューチャーの頭を掴む。

 そして連続で頭を地面に叩きつけた。

 頭の傷が更に広がり顔半分が血まみれになる。

 

「あ…が…」

 

 出血と頭へのダメージによりグレートフューチャーの意識が遠のいていく。

 いくら魔法少女とはいえ人間だ、無敵じゃない。

 脳にダメージを食らった上で大量出血ともなれば気絶する可能性がある。

 そして戦いの場で気絶するということは、死と同義だ。

 

(意識が…もう…)

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「…ここは?」

 

 グレートフューチャーが目を覚ましたのは何もない空間だ。

 辺り一面真っ白であり、地平線の彼方までよく見える。

 そんな空間に、ただ一人ポツンと立っていた。

 

「…少し移動してみよう」

 

 何もない空間を歩き始める。

 不思議な事に怪我は消えており体が軽い。

 しかしいくら移動しても白い空間は続いていた。

 そのため徒歩から早歩きへ、早歩きから小走りになっていく。

 

「これは…川?」

 

 しばらく移動していたら目の前に川が現れる。

 岸一面に小石が広がり、向こう岸は遠くて見えない。 

 

「三途の川…かな?」

 

 これらの特徴と今の状況から、この川は三途の川であると推測した。

 

「…そっか。私、死んだのか」

「あれ? フューチャーちゃん?」

 

 突然、グレートフューチャーを呼ぶ声が響く。

 その声は何年も聞いていな、しかし今もはっきりと覚えている声だ。

 

「先ぱ…何してるんですか?」

 

 声のした方向へ向くと、死亡したはずの先輩─フリーグライダーがそこにいた。

 しかし、グレートフューチャーは再開を喜ぶよりも先に疑問を口にする。

 

「えへへ、見ての通り石積みだよ。見て見て、こんなに高く積めたんだよ」

 

 フリーグライダーは身長より高く積まれた石の塔の周りを旋回する。

 石積み、それは親より先に死んだ子供が課される罰だ。

 いくら沢山の人を救った上で死亡したとしても、親より先に死んだことは変わりない。

 生前にどれだけ善行を積んでいたとしても、平等に罰は与えられる。

 

「はぁ…先輩はいつも通りですね」

 

 肝心な時は役に立つのに、普段は楽観的な性格。

 そんな様子を久しぶりに見て、グレートフューチャーは安堵した、”いつも通りの先輩だ”と。

 

「そんなことより、何でフューチャーちゃんがここにいるの?」

「…ダークマーラに、やられました」

 

 グレートフューチャーは何があったのか説明する。

 今、現世で何が起きているのかを。

 そして、先輩の遺体が怪人にされてしまったことも。

 

「あのとき私は、怒りに呑まれてしまった。その結果がこれだ。もう、私はヒーローとは名乗れ─」

「えいっ!」

「痛っ! ちょ、いきなり何するんですか?」

 

 突然フリーグライダーがグレートフューチャーの額にデコピンを食らわせた。

 それに驚き数歩後退る。

 

「フューチャーちゃん前に言ってたよね。”ヒーローはどんな(ヴィラン)が相手でも負けない、最後は絶対に勝ってみんなを笑顔にする”って」

「!、そんな前の事覚えてたんですか!?」

「当たり前じゃん。初めてフューチャーちゃんと出会った時に言ってたでしょ」

 

 フリーグライダーが初めてグレートフューチャーと出会ったのは怪人との戦闘中だ。

 その時はまだ弱かったのもあるが、背後にいた市民を庇っていたのもありグレートフューチャーが一方的に怪人に殴られていた。

 しかしグレートフューチャーは倒れず、怪人に言い放ったのがさっきの言葉である。

 

「そういえばそうでしたね。あの後、先輩が怪人を倒してくれましたっけ」

「そうだよ。今、私を改造したダークマーラと戦ってるんでしょ。どんな(ヴィラン)相手でも負けないんだったら戻らなきゃ」

「…けど、私はもう…」

「まだフューチャーちゃんは死んでない。今だって体透けてるでしょ」

「え?」

 

 そうして体を見て見ると、下半身が透けていた。

 現世では死者は半透明になるが、三途の川では逆になり生者が半透明になる。

 つまりグレートフューチャーはまだ生きているのだ。

 

「それに思い出して、フューチャーちゃんが守る者を」

「私が…守る者…」

 

 そうして思い浮かべたのは今まで守ってきた市民、応援の声、お礼の言葉。

 怪人に襲われた時の絶望、そして、助けた時の笑顔。

 それらが頭の中で反芻する。

 

「ほら、どんどん体が透けてきた」

 

 死者でないのに三途の川へ来た者が戻る方法は二つ。

 一つは肉体が目覚めること。

 そしてもう一つは、現世のことを強く思い、強く思われていることだ。

 

「…フューチャーちゃんを求めている人間は沢山いる。その思いに答えるためにも、ちゃんと決着付けてこなきゃ」

「そう…ですかね」

「も~そんなネガティブになんないの。ほら笑って笑って、フューチャーちゃんに落ち込んだ顔は似合わないよ」

 

 フリーグライダーが指でグレートフューチャーの口角を上げ笑顔を作る。

 生前、落ち込んだ時に毎回やっていたおまじないのようなものだ。

 

「ぷ…、あははは! そうですよね。助ける側がしけた面してたら、助けられる側も笑顔になりません」

 

 笑ったことにより、グレートフューチャーの顔に笑顔が戻る。

 多くの市民を助け、安心させてきたあの笑顔に。

 

「うん、いい笑顔になった。そうだ、これ、フューチャーちゃんにあげる」

 

 突如フリーグライダーの体から淡い光を放つ球が出現した。

 その光の球をグレートフューチャーの体へと押し込む。

 

「先輩、さっきのは?」

「私の魔法、滑空魔法の源みたいな物だよ。それを渡したから、フューチャーちゃんは滑空魔法を使えるようになったはず」

「渡すなんてことできたんですか?!」

「多分死人しかできないよ」

 

 肉体に多少転写されるが、基本的に魔法は魂に刻まれている。 

 フリーグライダーは魂の魔法が刻まれている箇所を切り取りグレートフューチャーに渡したのだ。

 

「ここじゃ魔法を使えても意味無いしね」

 

 ”石を高く積むくらいしか使い道が無い”とフリーグライダーが愚痴を零す。

 ここには理不尽な災厄によって助けを求める人などいない。

 賽の河原にいるのは親より先に死んだ子供と、仕事をこなす鬼だけだ。

 

 

「フューチャーちゃん、あなたがここへ来るのは何十年も先の未来よ。だからまたここへ来るまでに、あなたの魔法と私の魔法で沢山の人を救って来て! それが、先輩からの最後のお願いだよ!」

「…はい! 先輩、行ってきます!」

 

 そうしてグレートフューチャーの姿が光となって消える。

 残ったのはフリーグライダーと、三途の川が流れる音だけだ。

 

「…行っちゃったか」

 

 フリーグライダーは物悲しそうに立ち尽くす。

 先ほどの約束が守られるなら次に会えるのは何十年後か、そもそも会えるのかすらわからない。

 

「フューチャーちゃんがここへ来たのもヒーロー魔法の影響だったのかな?」

 

 ヒーロー魔法の効果の中に”どんなに強大な敵であっても確実に勝ち筋が残る”というものがある。

 グレートフューチャーがフリーグライダーに会うことが勝ち筋だったのか、今となってはわからない。

 しかし、たとえ違ったとしても今回二人が出会ったことは確実にいい方向へ向かうであろう。

 

「ま、そんなこと考えても仕方ないか。フューチャーちゃんに久しぶりに会えたし」

 

 フリーグライダー─本名、高英由宇奈(たかはなゆうな)は再度石積みを始める。

 親不孝の罪を償いながら。

 そして、グレートフューチャー(高雄英奈)との再会が来ないことを願って。

 

「…頑張れ、私の後輩(ヒーロー)

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「…気絶したか?」

 

 ウェポングライダーに頭を掴まれているグレートフューチャーの動きが止まる。

 体中血まみれになり、瞳は白一色に染まっていた。

 

「ウェポングライダー、そいつをこっちに持ってこい」

 

 グレートフューチャーは引きずられながら運ばれていく。

 そしてダークマーラの前に無造作に投げ捨てられる。

 一連の動作の間も死体の様に一切の反応は無い。

 

「この時を待ちわびたぞ。やっと貴様を始末できる。夢生成(ドリームクラフト)・魔剣:レーヴァテイン!」

 

 ダークマーラは生成した魔剣を構え、振りかぶる。

 狙いはグレートフューチャーの首、ただ一つだ。

 

「死ね、グレートフューチャー!」

 

 魔剣は目の前の首に吸い込まれるように向かっていく。

 しかし、ダークマーラは気付かなかった。

 投げ捨てた数秒後にグレートフューチャーの瞳に色が戻っていることに。

 

「アースフィスト!」

「なっ!?」

 

 拳と魔剣が激突する。

 これにより魔剣レーヴァテインが破壊された。

 

「グレートフューチャー、お前、何時の間─」

「もう一発!」

「がはっ!」

 

 ダークマーラが怯んだ隙に拳を腹に叩き込む。

 その威力は超巨大UFOと一体化していた下半身を引きちぎり壁に激突させるほどだ。

 

「はぁ…はぁ…。グレートフューチャー、まだ動けるのか」

「おかげさまでね…。今の私は、過去のどの私より強い!」

「そうか…。ならもう被害など二の次だ! 夢生成(ドリームクラフト)・青龍!」

 

 再度超巨大UFOと一体化したダークマーラが壁内部へと潜り姿を消す。

 変わってこの部屋に現れたのは神獣である青龍。

 その瞳が食い殺さんとばかりにグレートフューチャーを睨みつける。

 

『グオォォ…』

「!、ソニックマーキュリー!」

『グロアァァ!』

 

 攻撃を察知しすぐさまその場を離れる。

 直後、青龍のブレスがグレートフューチャーの居た場所を通過した。

 ブレスの威力は壁に激突しても減衰せず、中央部から外部まで続く風穴が開く。

 

「これは…とっとと倒さないとマズい!」

 

 速度を維持したまま壁を蹴り更に加速する。

 青龍はその巨体故グレートフューチャーを見失う。

 

『グオオォォ!』

 

 見失ったならば無差別に攻撃すればいいとばかりに青龍が暴れ中央部を破壊していく。

 既に中央部は最初の見る影もない。

 

「掴んだ!」

 

 そんな猛攻を搔い潜りグレートフューチャーは青龍の背後を取る。

 目的はその長い尾だ。

 

「ジュピタートルネード!」

『グロアァァ!?』

 

 そして尾を掴んだまま高速回転する。

 当然、青龍の頭部は高速で振り回され壁や床に衝突していく。

 

「止めだ!」

 

 最後に青龍を思いっきり床に叩きつけた。

 このダメージに青龍は耐えられず霧散し、床が抜け地上が良く見えるようになる。

 

「…ダークマーラはどこに─」

「こっちだ!」

 

 直後、グレートフューチャーの背後にダークマーラが出現した。

 その手には剣が握られ、心臓を貫こうと突き出す。

 しかし、その攻撃に気付かないほど気配察知は鈍っていない。

 

「ソニックマーキュリー!」

 

 奇襲は失敗しグレートフューチャーは再度高速で動き回る。

 当然ダークマーラは追い付けるはずがなく、このままでは攻撃が後手に回ってしまう。

 

「チッ、夢生成(ドリームクラフト)・ニードル!」

 

 そのためダークマーラが取った行動はカウンターだ。

 身体から無数の針を生成し。待ち構える。

 グレートフューチャーは炎などのエネルギーによる遠距離攻撃手段を持たない。出来て瓦礫などの投擲ぐらいだ。

 そのため攻撃するにはそうしても近づかなければならない。

 だが、今のダークマーラに拳を叩き込もうものなら無数の穴が空くことが目に見えている。

 

「…先輩、使わせてもらいます」

 

 しかし、そんな武装は覚悟を決めたグレートフューチャーには何の障壁にもならない。

 加速しきった速度を維持したまま拳を構えダークマーラへと突撃する。

 

「お前!? こちらは針山だぞ?!」

「そんな物、攻撃をためらう理由にはならない! シューティングスター!」

「ガッ!?」

 

 脇を通り過ぎる瞬間、思いっきり拳を叩き込む。

 そして直後に壁を蹴り方向転換することで再度ダークマーラに攻撃する。

 この動作を何十、何百と繰り返しダメージを与えていく。

 シューティングスター、それは生前のフリーグライダーの必殺技だ。

 その技を使い、仇を着実に追い詰めていく。

 

「ダークマーラ、お前は今までどれだけの人を悪夢で苦しめてきたか知らないだろう。だが、どんな夢もいつかは覚める。それが今日だ!」

「そんなの…認められるか!」

 

 ダークマーラが力を振り絞り流れ星を捕まえる。

 ついに速度に目が慣れてきたのだ。

 動き自体は直線的なため、後は予測が出来ればどうにかなる。

 

「この…、離せ!」

「…お前、さっきウェポングライダーに攻撃できなかったな。ならそこを攻める!」

 

 ウェポングライダーが刃物を構え取っ組み合う二人に近づく。

 フリーグライダーの遺体を使用しているウェポングライダーは、無慈悲にかつての後輩へ得物を向けていた。

 

「…すいません」

 

 グレートフューチャーは組み合ったまま足を振り上げる。

 確かに先ほどは攻撃を無意識に外してしまった。

 しかし、覚悟を決めた今はその限りではない。

 今の謝罪は、これから攻撃する先輩に対してのものだ。

 

「サターンリングサルト!」

『グガ…ガ…』

 

 振り上げた足がウェポングライダーに直撃する。

 その蹴りは刃物の様に胴を切り裂いた。

 これで暫く行動できないだろう。

 しかし、今の行動によりグレートフューチャーの両足が地面から離れた。

 

「今だ!」

「何を…まさか!」

 

 この隙をダークマーラが見逃すはずがない。

 掴んだままの両腕を振りかぶりグレートフューチャーを投げ飛ばす。

 そして投げ飛ばした方向は、青龍との戦闘により抜けた床の大穴だ。

 

「私をUFOから追い出す気か!」 

「本当はお前を殺したかったが、これ以上の戦闘は負ける可能性があるからな。空中で何もできないまま、地上が火の海になるところを指銜えて見ていろ! 夢生成(ドリームクラフト)・トルネード!」

 

 生成したトルネードによりグレートフューチャーを超巨大UFOから引き離す。

 トルネードンの風力は凄まじく、僅か数秒で数百メートル吹き飛ばされてしまった。

 グレートフューチャーは拳を振るった反動で空中を移動できるが、それは短い距離に限る。その上、トルネードにより発生した乱気流によって移動先のコントロールができる状況ではない。

 しかし、ここで諦めるような者はヒーローと呼ばれないのだ。

 

「まだだ!」

 

 勢いよく空中を蹴る。本来ならば何の意味も無い行動だ。

 しかし、今は違う。

 

 

 

   ふわり

 

 

 

 グレートフューチャーの落下が、止まった。

 それどころか、赤いマントを棚引かせながら上昇していく。

 

「これが、先輩の魔法…」

 

 フリーグライダーが譲渡した滑空魔法、それが今発動したのだ。

 グレートフューチャーは多少バランスを崩したがすぐに持ち直す。

 先輩の魔法をずっと近くで見てきたのだ、使用方法は把握している。

 

「さぁ、これが最後の攻防戦だ!」

 

 勢いよく超巨大UFOに向け飛んでいく。

 ”先輩が付いている”、そう思うと自然に笑顔が溢れてきた。

 

『グレートフューチャー?! 何故飛んでいる!? UFOども、あいつを打ち落とせ!』

 

 グレートフューチャーの接近に気付いたダークマーラがUFOを出撃させる。

 その数およそ百機、大量のUFOがハロウィンの空を埋め尽くす。

 UFOに取り付けられている全ての銃口がグレートフューチャーを撃ち抜かんと狙いを定めていた。

 

「こんな物、いくらでも破壊してやる!」

 

 UFOに向け更に加速する。

 同時に銃口からレーザーが発射されるが、レーザーよりグレートフューチャーの方が速い。

 そして猛攻を掻い潜りUFOに肉薄した。

 

「シューティングスター!」

 

 グレートフューチャーが赤い流れ星となり夜空に光の線を引く。

 光はUFOを次々に貫きながら突き進む。

 今の彼女にとってこんなもの障壁にもならない。

 

『く…。ならばこれだ!』

 

 超巨大UFOの下部から巨大な主砲が姿を現す。

 グレートフューチャーとの戦闘中、ずっとチャージし続けていたレーザーがついに発射可能となったのだ。

 その威力は凄まじく、過去に発射した際は首都級の都市を一つ地図から消している。

 ダークマーラは、これだけの兵器をグレートフューチャーという一個人に標準を合わせていた。

 

『この町もろとも消し飛べ! ダークナイトレーザー!』

 

 極太レーザーがグレートフューチャー目掛け発射される。

 レーザーが通った後は何も残らず、UFOを巻き込みながら標的を目指す。

 しかし、目の前から絶望(レーザー)が向かって来ている今もグレートフューチャーは笑みを絶やさない。

 

「レーザー程度で、今の私は止められない! ロッシュリミットライナー!」

 

 前進し続けるグレートフューチャーの前に揚力で生成された空気の膜が現れ、勢いそのままにレーザーと衝突する。

 双方一歩も譲らず、衝突により発生した衝撃波が空気を揺らす。

 しかし、競り合ったのは僅か数秒間だった。

 

『な、なに?!』

 

 レーザーが押され始め霧散していく。

 空気の膜により乱反射したことでただの光となったのだ。

 こうなってしまってはグレートフューチャーを押し返すほどのエネルギーは無い。

 少しずつ、しかし確実に超巨大UFOに接近していた。

 

「ここか!」

 

 空気の膜と主砲が接触する。

 すると、主砲に対し発生した揚力によってUFO下部が崩壊していく。

 膨大な揚力を発生させ制御しなければならないためビル風などが発生する市街地では発動が難しい上速度は出せないが、動かない物体に対しては無類の破壊力を誇る。

 フリーグライダーが発動した時は精々真正面の攻撃を受け止める程度だったが、グレートフューチャーのヒーロー魔法と合わさることでロッシュ限界の名を関するに恥じない技に進化した。

 そして下部を破壊しながら突き進み中央部へ向かっていく。

 

「…まさか戻ってくるとはな」

「先輩のおかげだよ」

「そうか。だが、これで終わりとしよう!」

「そうだなっ!」

 

 中央部へ戻ってきたグレートフューチャーは再度ダークマーラと対面する。

 これが最後の正念場、次の技で決着がつく。

 そのため双方互いの隙を伺う。

 空気が張り詰める、一瞬の油断も許されない。

 

 

夢生成(ドリームクラフト)・─」

 

 

 先に動いたのはダークマーラだ。

 夢生成(ドリームクラフト)のエネルギーが一点に集約されていく。

 

 

「ソニックマーキュリー!」

 

 

 僅かに遅れ、しかしほぼ同時にグレートフューチャーも動き出す。

 停止した状態から一気に速度を上げダークマーラの眼前へと飛び込む。

 

 

 そして、双方最後の技が放たれる。

 

 

 

   「ドリームビックバン!!!」

   「ギャラクシー・スマッシャー!!!」

 

 

 

 夢のエネルギーと渾身の拳がぶつかり合う。

 その衝撃は超巨大UFOを破壊し、夜空に浮ぶ雲を吹き飛ばした。

 

「グレートフューチャー、お前にだって夢はあるのだろう? なら、夢を追う人間のエネルギーがどれほど強大か、知っているだろ!」

 

 エネルギーが拳を押し返し始める。

 ダークマーラの夢は世界征服。そんな子供じみた夢だが、子供の頃の夢を本気で実現させようとしている人はどれほどいるだろうか。

 そして、そんな人ほど夢に対するエネルギーは無限にあふれてくる。

 

「…良く知ってるよ。私だってその一人だ」

 

 しかし、拳も負けじと巻き返す。

 グレートフューチャーの夢はヒーローになることだ。

 きっかけは小学生の時に河原で拾って読んだコミック、その物語に登場した多くの市民を救い笑顔にするヒーローが登場した。

 ヒーローはどんなにボロボロになろうと市民を救い出し(ヴィラン)を倒す。そんなありふれた物語だったが、そのキャラクター(ヒーロー)が幼かった高雄英奈の夢となった。

 コミックのタイトルは汚れてて読めなかったが、今も私室の本棚に大切に保管してある。

 幼い頃の夢を追う、この点において二人は良く似ていた。

 

「だったら分かるだろ! 夢そのものを操る俺に勝てるわけが無いと!」

「…いいや、勝てるさ!」

 

 しかし、決定的な違いがある。

 

「夢を操ることができても、一人でなし得るには限界がある!」

 

 それは、他者の夢を否定し利用するか、肯定し協力するかだ。

 ダークマーラは常に一人で夢を追ってきた。他者の夢を嘲笑い、自身の夢に賛同しなかったら殺す。ナイトメアグループを創設して部下ができてからもそれは変わらない。

 グレートフューチャーは常に他者と夢を追ってきた。時には夢を語り合い、協力し、対立もしたが、様々な経験が夢への一歩となる。

 その差が今、表れた。

 

「…これは」

「な!? ゆ、夢のエネルギーが?!」

 

 グレートフューチャーの体に数多の光が集まる。

 これまで助けた市民や協力した魔法少女、その夢がドリームビックバンによって生じた揺らぎによってエネルギーとなりグレートフューチャーへと吸い込まれていく。

 

「みんな…ありがとう。さあダークマーラ、悪夢から覚める時だ!」

「ぐ…!」

 

 拳が着実にダークマーラへと接近する。

 負けじとエネルギーの出力が上がるが、数多の夢がグレートフューチャーへ集まった今、勝る要素などない。

 

『が…が…』

「な?!」

「!、ちょうどいい。ウェポングライダー、グレートフューチャーを撃ち抜け!」

『撃…つ…』

 

 しかし、ここで機能停止していたウェポングライダーが起きる。

 右手に生成した銃口が二人の方向へ向けられた。

 両者ともに競り合っているため回避することはできない。

 そんな状況で、弾丸は無慈悲に発射された。

 

 

 

   "バンッ"

 

 

 

「…は?」

 

 ダークマーラの腹から血が流れる。

 弾丸はグレートフューチャーではなく、ダークマーラに命中した。

 

「…まさか、先輩が?」

『がん…ばれ…』

 

 その言葉を最後にウェポングライダーの機能が完全に停止する。

 怪人となっても、最後まで後輩を助けたのだ。

 

「この…不良品が!」

「そんな事言っている場合か?」

 

 ダークマーラが一瞬目を離した隙にグレートフューチャーが目の前まで移動していた。

 その目はしっかりと標的を捉え、拳は力いっぱい握られている。

 

「これで、終わりだ!」

 

 そして、正真正銘最後の攻撃が放たれた。

 

 

 

   「宇宙の彼方まで飛んでいけ! マルチバース・スマッシャー!!!」

 

 

 

 数多の夢を纏い放たれた拳はダークマーラの中心を捉える。

 ダークマーラは痛みで声も出せず後方へと吹き飛ぶ。

 その威力は壁を破壊しても、空中へ飛び出しても減少しない。

 

「こんな…こんなところで…」

 

 今にも風にかき消されそうな声を発し、ダークマーラは空の彼方へと飛んで行った。

 それと同時に、夢実現によって生成された物体が消滅していく。

 当然、超巨大UFOも例外ではない。

 

「あ…足場が…」

 

 グレートフューチャーが立っていた足場も消滅する。

 しかし、大技を放った反動により揚力をコントロールする気力は残っていない。

 

『智加古さん、フューチャーさんを発見しました!』

「了解、回収する!」

 

 そこへ、戦闘に巻き込まれないよう予め脱出していたクロニクル・ゲーマーズのメンバーと鍛冶屋智加古が落下していくグレートフューチャーを発見し回収する。

 もし回収してくれる者が現れなければ、グレートフューチャー高度約3000メートルから地上に叩きつけられていた。

 

「ちょっと! 怪我大丈夫なのこれ?!」

「見るからに大丈夫じゃないだろ! 」

 

 グレートフューチャーは全身血まみれであり生きているのが不思議なほどだ。

 その上、一気に気が緩んだのか気絶してしまい一見すると遺体と見分けがつかない。

 

「確かクイーンの魔法って医療出せたよな!?」

『う、うん。今出す!』

「私が支えてるからボードとドローは治療してくれ!」

「「了解!!」」

 

 レティクルクイーンが操縦するプロペラ機の羽上で治療を開始する。

 シューティングゲーム魔法はゲームに登場する回復アイテムも出せるのだ。

 元なっているのがゲームのアイテムであるため、医療の心得の無いサード・ボード・Pとドローエフェクトでも治療を行える。

 鍛冶屋智加古はグレートフューチャーが落下しないようにするためのアシストだ。

 

「…あれ、ここ─痛っ!?」

「お、起きたか。今治療中だからおとなしくしてろ」

「…そっか、私、勝ったんだ」

 

 今になって勝利の実感が湧く。

 何年も続いたナイトメアグループとの因縁が、今日終わったのだ。

 

「…先輩、勝ちましたよ」

 

 グレートフューチャーは右腕を空に突き出し呟く。

 それは、悪夢を終わらせた魔法少女(ヒーロー)の勝利宣言だった。

 

 

 

 






グレートフューチャーが主人公の物語があったら、この話か次くらいで最終回ですね。
それと、初めて一万字超えました。
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