死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


第十三章 誰も知らない危険地帯
どうすんだよこれ


 

 グレートフューチャーとダークマーラによる戦いの決着がついたころ。

 聖魔連合本部の一室はお通夜のような雰囲気に包まれていた。

 

「…ねえ兄さん、私たちあれと戦うの?」

「…最終的にな」

「…嘘でしょ」

 

 このような雰囲気になった原因は、衛星で撮影していた先の戦闘で判明したグレートフューチャーの実力だ。

 ヒーロー魔法という効果だけ見てもチートだと分かる魔法を所持していながら本人の戦闘スキル、パワー、速度、判断能力共に一級品。

 その上、聖魔連合視点では後半に何か飛行しだしたのだ。

 守ってもらう側からしたら頼もしいが、敵対する側からしたら絶望以外の何物でもない。

 そして、聖魔連合は敵対する側である。

 

「それもそうですが、七曜の円卓の方々も実力が凄まじいですね」

「本当に良く死ななかったなお前ら。というか別に倒すことが目的じゃなかったとはいえ幹部数名で喧嘩売るって正気の沙汰じゃないぞ」

「いや白夜は相手が第四席だったとはいえタイマンしただろ」

 

 キャットガールが中継した戦闘に映っていたのは、ナイトメアグループ最高戦力を七曜の円卓第二席(神田神子都)七曜の円卓第三席(メンデルキャップ)が一方的に叩き潰す映像だった。

 両者ともに聖魔連合との戦闘経験があるが、その時は手加減していたのかと思わせるほど映像内の戦闘は凄まじい。

 神田神子都は火球により周辺を消滅させ、メンデルキャップは手数と相性で相手に反撃の隙を潰す。両者との戦闘で負傷者こそいたが死者が出なかったのは奇跡と言っていい。

 

「ちなみに、戦うことになったら誰がグレートフューチャーの相手をするんですか?」

「…白夜、勝てそうか? 言っとくが俺は無理だぞ。負ける未来しか見えない」

「…見た感じ行けなくはなさそうだが、最後の一撃は完全に俺のパワー超えてたしヒーロー魔法の効果で負ける可能性ある」

 

 ヒーロー魔法の効果の一つ”どんなに強大な敵であっても確実に勝ち筋が残る”という効果により、どれだけ相性の良い相手をぶつけたとしても100%勝てる確証は無いのだ。

 しかし、正面切っての戦闘となるとまだ一番勝ち目がありそうなのが白夜しかいない。

 レイヴンは奇襲やヒット&アウェイに徹すればいい線まで行けるかもしれないが、近づかれた瞬間に終わる。

 

「…あの、もし戦闘になったら私が相手します。私なら勝てなくとも負ける可能性は低いかと」

「そういう理由なら私もかな。ダメージ受けても死ぬことは無いし」

 

 そのため、戦闘になった場合グレートフューチャーの相手をするのは民守かオウルだ。

 民守のバリア魔法は貫通されない限りどんな攻撃も防ぐ。オウルの生命魔法は強力な再生能力により不死性を得ている上、死んでもダンジョンコアからのリスポーンが可能。

 両者ともに決定打には欠けるが、レイヴンや白夜が相手をするよりは負ける可能性が低い。

 しかし、圧倒的耐久を誇る二人をもってしても”負けない”と断言できないことがグレートフューチャーの強さを物語っている。

 

「けど、二人はどの相手に当てても対応できるJOKERみたいなもんでしょ? 菫とか即死持ち当てた方がいいんじゃないの?」

「いや通波、確かに菫の魔法は強力だよ。だけど菫がグレートフューチャーに勝てると思う?」

「…無理だね。菫には悪いけど対格差が有りすぎる」

 

 確かに菫の毒魔法は並の魔法より強力だ。

 それこそ集団戦においては無類の強さを誇り、この魔法を対処できない敵を足切りすることができる。

 しかし、近接戦となると話は別だ。

 大鎌を振り回すだけの筋力はあるが、あの武器は一応変身アイテムであり見た目に反し結構軽い。

 その上ある程度改善こそしたが、これまでの生活と体質により未だに骨が浮き出ている。近接戦なんてしたら秒殺待ったなしだ。

 

「いや本当、マジでどうしよう。通波の言う通り二人をグレートフューチャーにあんまぶつけたくないんだよな。かといって戦力を各個投入するのは愚策中の愚策だし…」

「そもそも連合って突出した強者あんまいないでしょ、白夜たちは例外だけど。連合って幹部の平均実力が他の悪の組織より高いって感じだし」

 

 伊吹山の時から白夜の幹部をしていた面々は、元々白夜から扱きを受けていたので実力は保証されている。

 しかし他の悪の組織の突出した幹部と比較すると、どうしたって敵わない。

 全ての悪の組織の幹部全体で見たら中の上から上の下くらいの実力はあるが、他組織─例を挙げるとナイトメアグループの最高戦力クラスにはスペック差で劣る。

 そして、聖魔連合にはその最高戦力クラスが数名しかいないのだ。

 数名いればいいだろと言われるかもしれないが、七曜の円卓全員並びに全悪の組織に喧嘩を売る場合圧倒的に足りない。

 

「それについては問題無いぞ」

「何でだ?」

「以前レイヴンたちに魔法少女の血液採取頼んだだろ。それの研究の試作ができたんだ」

「マジか、一か月そこらでできるもんなのか」

「白夜のとこの構成員に元研究員が結構いたんだよ。それも優秀な」

 

 伊吹山の面々は悪の組織に改造されて今の姿になった者が大半だ。

 中には元々悪の組織に科学者・技術者として所属しており、改造され戦力にするという形で処分されかけた者もいる。

 そのような今まで十分な研究設備が無く何もできなかったため燻っていた者たちが、聖魔連合の潤沢な資金と研究設備により本領を発揮した。

 結果、魔法少女の遺伝子から魔法の解析と抽出とか言うイカれ作業を僅か一か月弱で終わらせた。

 過去に菫の毒魔法の抽出を行ってはいたが、本人がおりいつでもサンプルを確保できる魔法とでは抽出難易度が違いすぎる。

 これだけのことが出来るほど、レイヴンたち上層部が知らない所で聖魔連合の技術力は上昇していたのだ。

 

「で、これがその研究成果だ」

 

 灰崎が瓶に入った錠剤を三つ机の上に置く。

 この錠剤が、魔法少女の遺伝子から抽出した魔法を使った試作品だ。

 

「赤と青の錠剤がゲノムプラス、緑の錠剤がエイジコントロール、そして紫の錠剤がリミットブースターだ」

 

 それぞれメンデルキャップ、リバーヤーズ、上下限子(かみしたきりこ)の遺伝子から生成した錠剤である。

 魔法を錠剤に込めるまでに様々な苦労があったが、今回の大筋とは関係ないので割愛。

 

「これが完成すれば七曜の円卓とかの強敵相手に回せる戦力が増えるぞ」

「マジ? 何では早く言ってくれなかったの? さっきまでの戦力の話無駄じゃん」

「いやまあそうだが、これまだ臨床試験による安全性保障ができてないんだよ。ただでさえ非合法だってのに」

 

 新薬の安全性や有効性を確認するための臨床試験は、動物などを使用して3~5年、そこから更に健康的な人に3~7年かかる。

 そしてこの錠剤は一応新薬の扱いだ。

 実戦投入するための臨床試験期間が全然足りていない。

 

「あの、オウルさんやセイさんの魔法で臨床試験を短縮することはできないんですか?」

「…それは有りだな。普通臨床試験に魔法なんて使わないから頭から抜けてた」 

 

 オウルやセイの魔法は回復系だ。

 そのため、臨床試験中に異常反応が出たとしても即座に回復させることができる。

 

「じゃあ今週の土曜日にでも開始する?」

「それで頼む。早い方がいいからな。目標は再来年までに一般構成員全員が使用可能な量の量産体制を整えることだ」

「あぁ、聴聞会で召が話してたあれがあるからか」

 

 召が傍受したという魔法少女連盟トップの謎の計画。

 その計画が再来年に実行されるらしいのだ。

 内容まではわからないが、聖魔連合にとって邪魔になることは間違いない。

 

「それまでに完成するといいですね」

「完成するといいじゃなくて完成させるんだよ。腕が鳴るよまったく」

「まあその錠剤が完成すれば戦力問題一気に解決するしな、よろしく頼む。とりあえず今日はもう疲れたから解散ということに─」

「皆様お待ちください」

 

 話すことが終わり解散しようとした時、セレネが全員を呼び止めた。

 各々が不思議そうにしている中、セレネが口を開く。

 

「どうしたセレネ、他なんかあったか?」

「全日本魔法少女連盟の所在については話さなくてよろしいのですか?」

「そういえばハッキングしてましたね。話題に出なかったのでてっきり後日話すと思ってました」

「…すまんセレネ、キャットガール。そのことについて完全に忘れてた。見つかったのか?」

 

 ナイトメアグループが突き止めたという全日本魔法少女連盟の所在地、そのデータを入手するために灰崎、セレネ、通波がハッキングを試みていた。

 グレートフューチャーの強さに持っていかれて今まで話題に上がらなかったが、むしろこっちの情報の方が重要まである。

 

「はい、全日本魔法少女連盟の所在ですが、判明しました」

「よくやった! それでセレネ、場所はどこだ?」

「はい、全日本魔法少女連盟の所在は、端島です」

「…兄さん、端島ってどこだっけ?」

「おっま、社会で習ったろ」

 

 端島、長崎県長崎市にある島であり通称は軍艦島。

 明治から昭和にかけ海底炭鉱によって栄えた。

 1974年の閉山に伴い無人島になったが、今は観光スポットになっている。

 そんな端島の地下に、全日本魔法少女連盟の本部があるらしい。

 当たり前だが周りは海水で囲まれている。海水対応前のアルではたどり着けない場所だ。

 

「…あ~、思い出した。あそこね。あんな所にあったんだ」

「それで、場所わかりましたけどどうするんですか?」

「休みの日に偵察行ってくる。あそこ第六席のお膝元だからな、俺一人ならすぐに撤退できる」

 

 端島のある九州地方は七曜の円卓第六席、ストーリーテラー、栞・M・ケントニスの担当地区である。

 ナイトメアグループとの戦闘でグリム童話の登場人物を召喚できることが確定した以上、組織としての人数有利というメリットは無いに等しい。

 それに、今全日本魔法少女連盟と全面戦争を行う必要も無いため少数での調査の方が有効だ。

 

「以上で今話すことは全部か?」

「そのはず。それより…もう眠い! 明日も学校あるんだよ!」

「そうだな、流石に疲れた」

 

 本日はハロウィンだが普通に平日で休みとかではない。

 レイヴンは学校が終わった後にパーティーに参加していた。

 過密スケジュールにもほどがある。

 

「それではもう各自就寝しますか?」

「だな。もう今日は話すこと無いし」

 

 そうして、波乱に満ちたパーティーは幕を閉じた。

 ”七曜の円卓をどう対処するか”という最大の問題は残ったままだが、それは今後聖魔連合がどの程度強くなるか次第である。

 

 

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