死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
レイヴン視点です。
栞・M・ケントニスの隣にいる男、あいつについての情報は一切ない。
なんせ、通波ですら存在を把握してなかったからな。把握してたら情報共有の時に言っているはず。
…しばらく様子見るか。
「だけど栞、お前が手に入れたって本ボロボロじゃないか。読めるのか?」
「このままじゃ無理。そう言えばガーディアンに見せたこと無かったね。私は魔法の副次的効果で本に限り修復できるの、一ページでも残ってればね。ブックリペア」
なるほど、数百年前の書物がきれいに残ってたのはそういうカラクリだったのか。
だけど、この量の書物を集めたのは魔法関係ないだろ。素直に尊敬するよ。
しかし…、保管や修復が魔法によるものじゃあ、その技術を盗むのは無理そうだな。
「それじゃあガーディアン、私しばらく読書するから」
「わかった。俺らはここの清掃しとけばいいか?」
「あ~、別にいいよ。ガーディアンには周りにバレないように窮屈な思いさせちゃってるし。あなたを召喚したのがバレたら面倒っていうこっちの都合で」
「それなら早く何とかしてくれよ。現状外出するにしたって栞と一緒じゃなきゃいけないんだからな」
中央の椅子に腰かけた魔法少女が手に持っていた本を開いて読書を始める。
男も本棚から一冊取り出し浮遊しながら読書を始めた。
…てか浮遊できるんだな。というかここに入って来た時点で普通の男じゃないよな。それに見た目が執事服の長髪ポニーテールだし、偏見かもだが普段からそんな服装な男いないだろ。
マジで何者だよあいつ。
「だけど、二人とも読書してるとなると都合がいい」
なんせ、ここの管理者と思われる栞・M・ケントニスがこの場にいるとなると外部からの入室者を気にしなくていい。
そうなると、気を付けるのは小人と妖精だけでいいわけだ。
「確か今は俺の反対側を清掃中だったな。なら今のうちに─」
「お前は誰ニャ?」
「!?」
あっぶな! 驚いて本棚から落ちかけた。
てか誰の声…長靴をはいた猫?
話す時点で絶対普通の猫じゃない、グリム童話の登場キャラクターか!
いつから見ていた? いや今はそんなことどうでもいい。
「そこを動くな。動けば撃つ、動かなくても撃つ」
「…銃を向けるってことは、お前は敵ニャンね。大きなネズミはご退場いただくニャ!」
「! 速い!」
そういう相手の二手目はだいたい決まってる、相手の後ろだ!
「キャットスラスト!」
「異空間倉庫!」
猫がいつの間にか手にしていたレイピアと、倉庫から取り出した剣が鍔迫り合う。
やっぱこの猫相当のやり手だな。魔法少女との戦いである程度の速度は目で追えるようになったってのに、全く追えなかった。
「っ…今のを防ぐのかニャ。だが次の攻撃はそうはいかニャい!」
猫が再度目の前から消える。
これだけの速度を出せる相手となると空間魔法で戦うのは現実的じゃない。
それなら、もう一つの魔法を使うだけだ。
「キャットレイピアアサルト!」
「がっ!」
猫が俺の脇腹を切り裂く。
痛いけど、今は好都合!
「転傷鏡!」
「ニャ!?」
外傷転移魔法で腹の傷を猫に移す。
やっぱ視界に入れれば発動可能ってのは強すぎる。スピード特化の相手には特に。
「終わりだ、
猫の眉間に弾丸をぶち込む。
すると猫は霧散しその場で消滅した。
生物だとしたら血しぶきが飛ぶはずだし、それが無いって事は予想通り魔法によって召喚されたキャラクターだったっぽいな。
てか今の戦闘で俺の存在がバレてないよな?
「ガ、ガーディアン…今銃声しなかった? それに長靴をはいた猫の反応も消えたし…」
「したな。それに反応が消えたとなると…、侵入者か」
ちっ、やっぱ気付かれた。
そうなると、これ以上ここにいるのは危険だな。
幸い侵入者が俺だとはまだバレていない。ならさっさとテレポートで撤退を─
「召喚、長靴をはいた猫」
な?! 再召喚だと!?
「ねぇブーツキャット、さっき倒されたよね。誰にやられた?」
「銃を持った男ニャ! それに紫苑の魔法とテレポートを使ってたニャ!」
「栞、この特徴ってあれだよな」
「…レイヴンだよね」
あのクソ猫、侵入者が俺だってバラしやがった!
まだ侵入者が誰か知られなかったら他の悪の組織に不法侵入罪を擦り付けられたのに。
そもそも侵入がバレた時点で今後攻め入るときが面倒になっちまう。
…マジでどうするか。本来ならバレずに撤退する予定だったから、こうなった場合どうするか想定してねぇ。
「ブーツキャット、侵入者の目的は分かるか?」
「そこまではわからないニャ。だけど、本棚をしきりに物色していたから本が目的じゃないかニャンね」
「…へぇ」
…何だ、いきなり寒気が…。
それに栞・M・ケントニスの雰囲気がおかしい。
「ここから本を持ち出す? そんなこと…誰がさせるか!!」
「!?」
え、さっきまでおどおどしてたよな? 性格がいきなり変わった?
あいつ、プッツンしたら性格変わるタイプか。
「ブーツキャット、場所は!」
「あっちの扉の方ニャ!」
「そう。ブラインド・ガーディアン、侵入者を殺害しろ!」
「はぁ…、わかりましたよ、我が主」
男の方の口調も変わった?
そんなことよりマズい。
「主のために、死んでください!」
「ッ、異空間倉庫!」
爪が鋭く伸び翼を生やした男が素早く目の前に移動してくる。
そして振り下ろされた爪を猫にやったように防ぐ。
「あなたがレイヴンさんですか。噂はかねがね」
「こっちはお前のこと知らねぇよ! そもそもグリム童話にブラインド・ガーディアンなんて登場しないだろ! 何もんだよマジで!」
「私は悪魔、主により地獄から召喚された
「そういうことかよ!」
栞・M・ケントニスの魔法は事前知識である程度わかると思いグリム童話について多少調べた。
その中に悪魔が登場する話が複数あったから、それ経由で召喚したのだろう。
しかし、キャラクターとはいえやはり悪魔だ。さっきの猫とは比べ物にならないくらい強い。まさか本物の悪魔じゃないよな?
「ちょっとブラインド・ガーディアン、今あなた
「おや、そうでしたね」
「いや知らねぇよ!」
悪魔について詳しく知らないこちらからしてみれば、
それでも、悪魔がとてつもなく強いってことは分かる。
テレポートでの撤退自体はいつでもできるが、それすると後が面倒すぎてやりたくない。
やっぱこの場で何とかするしかないか。
「キャットレイピアアサルト!」
「ッ、そういえばお前もいたなクソ猫!」
後ろから突撃してきたクソ猫の攻撃を剣で防ぐ。
これで状況は二対一。
「私のことも忘れるな! 眠りの茨!」
「あ~もう面倒くさい!」
訂正、三対一だった。
栞・M・ケントニスが放った茨をテレポートで回避する。
あれ多分眠れる森の美女のだよな。喰らったら痛いじゃすまないだろ。
「いい加減反撃しないとマズい、
「ブラインド・ガーディアン!」
「承知!」
茨の発生源目掛け弾丸を放つ。
が、その攻撃はブラインド・ガーディアンが代わりに受けた。
しかも、弾丸で抉れた肉体が再生している。さすが悪魔と言うべきか、普通の攻撃じゃダメージが通らない。
何かこの場で一人だけ世界観が違う、攻略法が分からない。
「ブーツキャット!」
「キャットスラスト!」
「ちっ!」
クソ猫の攻撃も鬱陶しい。
「三対一なのよ、いい加減倒れなさい! ブラインド・ガーディアン、取り引きを発動して!」
「承知しました、内容は?」
あいつら何する気だ?
なんにせよ俺にとって面倒な事なのは間違いない、
「私の魔法出力を十倍! 対価は後払いで私が死なない程度の血液!」
「わかりました。取り引き成立です」
?!、あいつの威圧がいきなり膨れ上がった!?
あの状態がマズいのは分かる! 急いで
「遅い!」
「…は?」
確か俺とかなり離れた位置にいたよな?
何で目の前にいやがる!?
「鉄の魔法少女!」
「がっ!」
痛っった! 油断してたとはいえ反応速度を超えてくるってどんな速度してんだ!
さっきブラインド・ガーディアンと取引とか何か話してたな、それの影響か!
「大喰らいの狼、ファングショット!」
「メンデルキャップの真似事もできんのかよ!」
狼に変身した栞・M・ケントニスが牙で斬撃を飛ばしてきたがテレポートで回避していく。
動物へ変身する魔法はメンデルキャップの専売特許だと思ってたが、確かにグリム童話には狼が結構登場してたな。
そもそも、メンデルキャップの遺伝子魔法が例外なだけで単一の動物に変身する魔法少女は要るかもだが。
「おい、栞・M・ケントニス、一応聞くが俺を逃がす気はあるか?!」
「あるわけないでしょ! そもそもここがバレた時点で私も面倒なのよ!そもそも本を盗もうとした奴は絶対に許さない! だから
相手の攻撃がより一層勢いを増す。
しかもクソ猫とブラインド・ガーディアンの攻撃も時折挟まり反撃のチャンスが全部潰される。
一応攻撃は全部テレポートで回避できてるが、もう撤退するしかないか?
…いや、さっき栞・M・ケントニスが面倒って言ってたな。それにブラインド・ガーディアンに対して行った取り引きってやつ、それを利用すれば行ける!
「おいブラインド・ガーディアン、お前を仲介人として栞・M・ケントニスと取り引きさせろ!」
「…私は主としか取り引きを行いませんよ」
一人称も変わるのか。
というかそうだよな、普通は他人と取り引きするはずがない。メリットが無いからな。
だが、逆に言えばメリットさえ用意すれば交渉のテーブルに座ってくれる。
「お前の主にも利がある話だ! いいのか、俺は今すぐにでもテレポートで撤退できるんだぞ! そうなったら現状俺しか知りえないこの場所にある情報、どうなるか予想できるだろ!」
「!、全員攻撃中止!」
「よろしいのですか?」
「…仕方ないでしょ。いつ相手の気が変わるかわからないんだから」
よし、攻撃が止まった。
それじゃあ、取り引きを始めようか。