死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
オウル視点です。
聖魔連合本部、運動広場にて。
「え~これより、灰崎さん達が作った薬の臨床試験を始めます!」
『『『オオオォォォー!!!』』』
今日はここで昨日話してた薬の臨床試験を行う。
臨床試験に集まったのは地下を調査した際の探索班70名、そして堕天大聖堂から30人、計100人。
そして運営側として私、灰崎さん、白夜、民守さん、ライズが参加している。
「いや~、昨日急に呼び掛けたのによくこれだけ集まったね」
「今日集まった面々はバトルジャンキーが多い。強くなる事には貪欲なのじゃ」
「あれ天魔、何でここに?」
「灰崎に呼ばれたのじゃよ。なんでも、儂じゃなきゃいけない薬があるらしくての」
あ~あれかな、リバーヤーズの魔法から製薬された薬エイジコントロール。
確かに効果を検証するには老体の方がいいからね。
老体の中で体が丈夫となると天魔くらいしか連合にはいないし。
「天魔も灰崎に呼ばれたのか?」
「あ、ロック。久しぶり」
「久しぶりだなオウルさん」
ロックは基本的にビルドと土木関連の仕事をしている。
だから普段生活してたらあんま合わないだよね。
「おぉロックか。そうじゃぞ、なんでも老体に試したい薬があるらしくての。そっちはどんな理由で?」
「俺の体って無機物だろ、それで呼ばれた」
あ~確かに、身体が無機物で構成されてるメンバーって母数が少ない上、大半は土木関連に行っちゃってる。
臨床試験に来てるメンバーって強くなることに貪欲な人が大半だから、戦闘を基本しない土木関係者は来ない。
だから戦闘に参加することもあるロックを呼んだのね。
「ん? そういえば、天魔はここにいていいの? 確か法整備の仕事してたよね?」
他ならぬ天魔からの提案で、日本国憲法をベースに連合のルールを作るって話があったはず。
「それは昨日全て終わったわよ」
「だから今日の臨床試験には私たちも参加するわ」
「茜、葵、二人とも来たんだ」
「えぇ、ルールを作る仕事が終わってね。民守様達に内容を審査してもらえば施行できるわ」
「おぉ」
ついに聖魔連合でもルールができるんだ。
…いや、今まで無かったのがおかしかったんだけど。よく崩壊しなかったね聖魔連合。
「ちなみに二人は何で参加希望したの?」
「…私たちってあなたみたいに強力な魔法じゃなくてね。実力的には連合でも上位と自負してるけど、どうしても頭打ちになってしまって」
「それで臨床試験に参加することにしたのよ。幸い、私も茜も薬で強くなることに抵抗ないし」
なるほどね。二人と堕天大聖堂副官だ、強さに貪欲なのも頷ける。
…ん?
「二人の魔法何だっけ?」
武器については茜が剣、葵がメイスって知ってるけど、魔法についてはどんな魔法か聞いてない。
そもそも聞く機会無かったし。
「…そういえば話したことも見せたことも無かったわね。私の魔法は
「私のは雨雲魔法、雨雲を作り出す魔法ね。まあ雨雲の実物を見たこと無くて最近までは水滴を飛ばす魔法だったけど」
「…あ~なるほどね」
二人とも固有魔法持ちだけど、両方火魔法と水魔法で代用できちゃう。ぶっちゃけ、使用用途が限られる分二人の魔法の方が弱いまである。
あれ? 最近までまともに使用できてなかったのに副官まで上り詰めた葵ってひょっとして相当強い?
…考えないでおこう、気にしても仕方ないし。
「おいオウル、そろそろ薬の配布始めるぞ」
「わかった灰崎さん。じゃ、二人ともまた後で」
二人と別れ、臨床試験の薬配布場所へ移動する。
もう灰崎さんが薬の準備をしてくれてるし、後は配るだけ。
個数はそれぞれ百と数個あるから全員に一錠ずついきわたる。
「運営側全員揃ったな。それじゃあ俺がゲノムプラスと配布する。ライズは薬を摂取した者の鑑定、民守は研究患者の誘導、白夜は緊急時まで待機してくれ」
「そうか、俺は少し寝る」
「ちょ白夜さん寝てていいんですか?!」
「いいって民守、元々無理言って来てもらってるからな」
そうして灰崎さんが列になったメンバーに薬を配布していく。
一気に試験する訳にもいかないから、先にゲノムプラスを50人に投与するらしい。
ゲノムプラスを配布されたメンバーはほぼ全員が獣の特徴を持っている。予測される効能的に獣が身体のベースにある方がいいとのこと。
「…ねぇ、これ私も飲まないとだめ?」
「それで言ったら俺もだ。何で俺に渡した?」
ちなみに、ほぼ全員と言った理由は、ゲノムプラスが私とロックにも配布されたからだ。
いや何で? 私運営側で参加するって聞いてたんだけど。
ロックについては体が無機物だから飲んでも意味無いはずだし。
「だめじゃないが、通常の人が飲んだ場合のデータも欲しいんだ。オウルなら最悪死ぬことは無いだろ。ロックについては無機物でできている者が飲んだ場合のデータが欲しいから渡した、効能的にどうなるかできないし」
「おいふざけんなよ」
「まあまあ、死ぬことは無いから大丈夫だ。そこは保証する」
「そういう理由ならまあ納得だけど」
確かに私は早々死ぬことは無い。
肉片になっても復活できるし、それが無理でもダンジョンマスター権限でリスポーンする。
臨床試験にうってつけって訳ね。
ロックについては理由はひどいけどまあ納得できる。最悪私が回復させればいいしね。
「あれ? そういえばゲノムプラスの効能って何? 聞いてないけど」
「ゲノムプラスの効能は遺伝子の活性化。予想が正しければ獣の特徴を持った者はキャットガールのビーストモードみたいな姿になるはずだ」
なるほど、それなら獣の特徴を持ったメンバーに配布したのも納得できる。
灰崎さんの言うことが正しければ通常の人が飲んでの意味が無い。
私のは本当に意味が無いのか確かめるために渡したのね。
「全員に配布したな。あの時計の長針が0の位置に来たら飲んでくれ。……今!」
灰崎さんの指示で一斉に薬を飲む。
…特に違和感はない、ひょっとして効果なし?
「オウル、体に異常は?」
「特にこれと言ってないよ。…あ~しいて言えば背中がムズムズする。具体的には肩甲骨の辺りが」
うまく言語化できないけど、何か違和感感じるんだよね。
それ以外は本当に何も無い。
「そうか。一般人が摂取しても多少違和感感じるだけで特に効果は無いと。まだ確定とは言えないがいい結果が取れた。後日何か変化があったら教えてくれ」
「わかった。さて、他のメンバーはどんな…うわぁすごい」
ゲノムプラスを摂取したメンバーは全員元の姿より少し大きくなり、ベースとなった動物の姿へ変化していた。
灰崎さんが言っていた通り、キャットガールのビーストモードみたいな感じね。
ただ何というか…全員妙に気が立ってるように感じる。
「灰崎さん、これ大丈夫なの?」
「そうだな…ライズ、鑑定してみてくれるか?」
「お安い御用だ。…どうやら興奮状態のようだな。それとゲノムプラスの効果は数分で切れるらしい」
「そうか。目標は任意でビーストモードと切り替えれるようにすることだったが、流石に一発目から成功するわけないか、体に馴染んでないし」
「…ねぇ、体に馴染ませればいいの?」
「理論上はな。体に馴染めば薬無しで変化できるようになるはずだが…できるのか?」
「私を舐めないでよね」
巨大な狼に変化した患者の一人に近づく。
近くで見るとかなり大きいね、人を上に乗せれそう。
『グルルルル…』
「はいはい落ち着いて~」
ライズが興奮状態って言ってたから予想してたけど、やっぱり近づいたら威嚇された。
だけど殺意というか、そういうのは感じない。辛うじて理性は残ってるのかな。
「ちょっと待っててね」
患者に触れ、手先に意識を集中させる。
今回の臨床試験で使われた薬は魔法少女の血液から抽出し製薬されたものだ。それなら、私の魔法で薬に干渉できるはず。
見た感じ薬が一か所に固まっちゃってるみたいだから、薬の成分が全身に行き渡るようにして…。
『グオオぉおおお、お、お? 戻った?」
「よし」
うまく行ったのか、ビーストモードから通常の姿に戻った。
後は再度ビーストモードに移行できるかだね。
「君、さっきの姿を想像してもう一回変化してみてくれる?」
「わかりやした! うおおぉぉォォオオオ! 出来ました!』
「よし、成功!」
再度ビーストモードに変化した。
いや~回復や寿命を吸い取る以外で初めて他人に魔法使ったけど何とかなるもんだね。
「ライズ、今の患者の状態は?」
「身体、意識共に安定しておる。灰崎、これは成功と見て良いのか?」
「…まあ成功だろう。本当は魔法無しでこの結果を出したかったけどな」
「それなら全員やっちゃうよ。民守さん、患者の足止めお願い」
「もう終わってますよ」
見ると、地面に張り巡らされたバリアが患者を拘束している。
流石民守さん、仕事が早い。
「それじゃあ一気にやるよ、
腕を多数に分裂させ、患者に一気に触れ薬を馴染ませていく。
…自分の体だけど絵面がヤバいねこれ。遠目に見たら触手だよ完全に。
「よし、終わり!」
「さうがだなオウルさん」
「ありがとねロッ…誰?!」
声掛けられて横を見たら知らない人がいた!
茶髪で長身の男性なんてさっきまでここにいなかったよね?!
「ねえ本当に誰この人!?」
「おいおいオウル、何言ってんだ? こいつロックだぞ」
「そうだぞオウルさん。まあ変化の瞬間見てなかったら疑うのも無理は無いがな」
この長身イケメンがロック?! 姿違いすぎるでしょ!
もはや岩石の姿だった時の原型ないよ!
「…うるさいぞオウル、何があった?」
「白夜! ロックがゲノムプラスを飲んだら姿が変わっちゃって!」
「ロックが?」
「白夜さん、この姿ではお久しぶりだな」
「おあ~ロック、確かに久々だな」
え、白夜この姿のロックを知っている?
ひょっとして…。
「今のロックの姿って改造前の姿?」
「…あぁ」
「俺が初めてロックと出会った時はまだゴーレムの姿じゃなかったからな」
「それでゴーレムになった後に白夜さんに来ないかって誘われたんだ。ちなみに俺をゴーレムにしやがった組織は白夜さんが壊滅させてくれましたね」
そういう経緯があったんだ。
白夜ってどんな人であろうと仲間になったら割と気さくだしね。兄さんとか民守さんとかがいい例だよ。
誰にでも話しかけてるから、会話好きなんだと思う。
「にしてもよかったな。またギター弾けるぞ」
「…あ、そういやそうだな。また白夜さんに聴かせられる」
「ロックってギター弾けるの?」
「あぁ。ゴーレムになってからはサイズ的に弾けなかったが、元はバンドマンだったからな。ま、あんま売れなかったけど」
そうだったんだ、初めて知った。
元々白夜の部下だったメンバーの過去ってあんま聞かないから、元バンドマンって聞いて驚いたよ。
「楽しみにしてっぞ。久々に聴きてぇよロックの演奏」
「はい! 練習して、また聴かせてやりますよ!」
…ひょっとして、白夜って結構な人数の脳を焼いてる説ない?
一般構成員からも慕われてるみたいだし。
人の上に立つ才能は連合の中で一番あると思う。
「ロック、その姿でも魔法は発動できるか?」
「ちょっと待ってな。…問題なく発動できるな」
ロックの生成した岩石が空中から落ちてくる。
やっぱ姿が変わっただけで、それ以外の変化は特に無いみたい。
「身体が無機物で構成された者がゲノムプラスを服用した時、以前の姿に戻る…っと。他に何か感じるか?」
「そうだな…しいて言えば体が軽くなったくらいかな。あ、それと姿の変化もできるっぽいぞ」
そうして瞬く間にロックはゴーレムの姿へ変化していく。
よっぽど薬との噛み合いが良かったのかな、私の魔法は一切干渉してないし。
「おぉ、俺が想定した効果そのものだ。後で別で詳しく検査させてくれ」
「それくらいお安い御用だ」
「よし、それじゃあ次の臨床試験やるぞ」
灰崎さんの掛け声で残りの約50人が移動する。
確か次は…リミットブースターだったかな?