死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
オウル視点です。
「はい、じゃあこれから一週間毎日記入してくださいね」
よし、これで全患者に健康観察シートの配布完了っと。
集まってくれた患者に試す薬の臨床試験はこれで終了だから、患者はこれで解散かな。もうやる事無いし。
あ、薬を摂取した者も含め幹部メンバーは全員この場に残ってる。この後少し反省会するからね。
「あのオウルさん、仕事が終わったばかりで申し訳ないですが、運動広場どうしますか?」
「…言わないでよ、忘れようとしてたのに」
民守さんの言う通り、現在の運動広場はリミットブースターの臨床試験の影響で酷いことになっている。
今の状態じゃまともに使用できない。
「おいオウル、民守。整地するから手伝え」
「え、もうするの?」
「だってお前、ここは明日も使うんだぞ。これだけ状態が酷いといつも運動広場整備やってもらってる奴らじゃ間に合わねぇ」
「あ~確かにね」
この運動広場は毎日白夜が戦闘員たち、特に戦闘主体の年齢中高校組*1を重点的に鍛えている。
いつもは訓練終了後に全員で多少整地したのち、土木関係者が完璧に運動広場を修復していたらしい。
だけど、今回は余りにも状態が酷いからある程度整地しとくってことね。
流石に完ぺきとはいかないだろうけど、いつも整地してくれる人が楽になるくらいにはしておこう。
「そういうわけでロック、岩石出してくれ。吹き飛んだ分の埋め合せにする」
「了解、砂岩雪崩!」
まずはロックが砂岩を運動広場に投下する。
学校のグラウンドと同じで運動広場は砂でできてるから、さっきの風魔法で砂が大量に吹き飛んじゃったからね。その分を、砂岩で補填していく。
「東祭、雨降らせてくれ」
「了解教官、雨雲コントロール!」
「そのまま続けろよ、盤石崩し」
続けて葵が雨で砂岩と地面をふやかし、白夜が魔法で更に柔らかくする。
イメージとしては男子が雨上がりのグラウンドで水と砂を混ぜてグチャグチャにしたプニプニしてるアレ。アレを運動広場全体でやった感じ。
プニプニになったから重力によって地面が平坦になっていく。
「民守、バリア出してくれ。整地トンボ替わりにするぞ」
「あの~白夜、多分民守さんに整地トンボって言っても伝わらないと思うよ」
「…そうなのか民守」
「その通りです。どのような道具かわかりません。なんせ生まれも育ちも地下ですので」
だよね。
整地トンボはグラウンドのような広場を平にするT字型の道具だ。
前に堕天大聖堂に行ったけど、整地トンボを使うような広場見かけなかったからもしかしてって思ったけど、案の定だったね。
「そうだな…、じゃあ持ち手がある巨大な板状のバリアを出してくれ」
「わかりました。…このような感じでよろしいでしょうか?」
「そうそう、そんな感じだ」
民守さんが生成したのは持ち手が付いた巨大なバリア。
整地トンボというより壁に漆喰なんかを塗るコテみたいな感じだけど、これでも整地する分には問題ない。
「西祭、運動広場を軽く乾かしてくれ。流石にこのままだとあまり意味がない。その後に俺がバリアを引っ張って均す」
「わかりました」
「あ、バリア引っ張るのは私がやるよ。白夜だと足汚れるだろうし」
茜で乾かすと言っても流石にね。
飛べる私が引っ張ったほうが汚れない。
「そうか、じゃあ頼む」
「了解、茜行こ」
「わかったわ」
茜が背中から炎翼を生やし先行する。
今回は地面を乾かすのが目的だから低空飛行していた。
私は
いつもは腕を翼に変えてるけど、今回はバリアを引っ張る関係上両手を開けなくちゃいけないから背中に生やした。
なんだけど、違和感が凄い。腕を変化させた時はいつもの延長として動かせたけど、本来ない部位を意識して動かすってかなり難しい。
おかげで墜落こそしてないけど、何回もバランスを崩しちゃってるし。
「…スピード落としましょうか?」
「問題ない、そろそろ慣れてきた」
茜が心配してきたけど、これくらいどうってことない。
それに、これくらいできないと今後が不安になる。
今日みたいに何かを持って飛行する場面も来るだろうし。
「そう、じゃあ速度上げてもよさそうね」
「…え?」
そうして茜は速度を上げ私から離れていく。
ふ、ふ…。
「ふざけるな~!!」
…
……
………
「─これで終了ですね」
「ありがとな二人とも」
「いえ。ですが…、オウル、大丈夫ですか?」
「はぁ…はぁ…もう…むり…」
せ、背中の翼が水を吸ったように思い。
何なのよ茜の速度、早すぎるでしょ!
炎翼魔法はあまり強くないって言ってたし私もそのことに賛同したけどさ、それ撤回する!
確かに利便性とか拡張性とかは火魔法に劣るかもしれないけど、出せる速度が並の魔法の比じゃない!
まあよくよく考えたら翼の形状は自由自在だし、飛行速度の速い生物の翼を炎で再現すれば速度出せるのも分かるけどさぁ…、速いって、速すぎるって!
「茜って…かなり…速かったんだね…」
「まあ、通常の火魔法に劣る私の魔法で唯一誇れる所ですので。地下では全く使えませんでしたが」
確かに地下は狭いから高速で動き回ったら壁に衝突するのは目に見えてる。
よくそんな状況でよく副官まで上り詰めたよ。
茜といい葵といい、二人とも魔法に頼らない戦いがうまいのかな。
「それで言ったらオウルもすごいですよ。私の翼は魔法で形成されたものですがオウルの翼は肉体と接続されているでしょ、その上民守様のバリアを牽引してましたし。よく体力持ちましたね」
「一応鍛えてるからね」
私の魔法は操作対象が自身の肉体である関係上、肉体スペックやコンディションがダイレクトに反映される。
そうじゃなくても、この世界いつ死ぬかわからないから逃走用に最低限鍛えてたのが役に立っただけ。
「それでも、背中から翼を生やしたのが初めてだったから疲れがいつもより多いけどね」
「あ、そういやオウル、一点質問いいか?」
「なに白夜」
「お前って基本的に蝙蝠みたいな翼にしてたよな」
「そうだよ」
鳥の翼みたいなのにできなくはないけど、羽毛は一本一本形成するのが面倒だからね。
指の間に膜形成するだけでいい蝙蝠のような翼の方が、いつもの延長線みたいに操作できて飛びやすいってのもあるけど。
「そうか。その上で聞くぞ、お前の翼どうした?」
「どうしたって、いつもの蝙蝠のような翼じゃ…え?」
白夜に言われ触ってみると、布団のようにモフモフしていた。
蝙蝠の翼はこんなモフモフしてない。ということは…いつもの翼じゃない!
え、何で?! 翼を形成するとき特に意識してなかったから蝙蝠の翼になるはずなのに!
「その反応じゃあ気付いてなかったっぽいな。心当たりあるか?」
「そんなの………あるね。さっき飲んだゲノムプラス、アレじゃないかな」
ゲノムプラスを摂取した際に感じた肩甲骨辺りの違和感、あれしか考えられない。
あのときは薬の影響が何もなかったけど、この翼を見る限りしっかり効果があったみたいね。
「騒がしいな、何かあったか?」
「あ、灰崎さん。聞いてよ、さっき飲んだゲノムプラスの効果で翼が…隣の人誰?」
「いやそのネタはもういいだろ」
「まあ二回目だしね」
私たちに健康観察シートの配布を任せてどっか行ってた灰崎さんが知らない若い男性を連れてきた。
だけど、今回はロックの時と違って明確に特徴があるから直ぐに誰か分かる。
なんせ背中に真っ黒な翼が生えてるからね。
「灰崎さん、ひょっとして隣の若い男性って天魔だったりする?」
「今回は流石に分かるか」
「はっはっは。そうじゃ、儂は天魔だ。さっきエイジコントロールを服用しての、若返ったのだ」
やっぱり天魔だった。
まあ初めから臨床試験のために来てもらってたからね。ゲノムプラスとリミットブースターの臨床試験が終わってるとなると、天魔が担当するのはエイジコントロールだけ。
年齢関連の薬だとは知ってたけど、まさか肉体が若返るとは。
「天魔、お前若い時そんな姿だったんだな」
「え、白夜知らなかったの?」
「俺が数十年前に出会った時には既に老人だったんだよ。若い時こんな儚げな美男子だったなんて知らんがな」
現在の天魔の姿は女性と見間違うくらいには美しい。
髪も伸びてるから真面目に女装したらモデルにスカウトされそう。
だけど白夜が若い時の姿知らなかったとなると、絶対に白夜より年上、それどころか聖魔連合内最高齢の可能性あるんだよね。
わざわざ老人攫って手術するとは考えずらいし。
「さてライズ、鑑定してくれ」
「わかった…、どうやら問題なく抗力が発揮されておる。ただし、若返ったのは肉体だけで寿命が増えたとかではないらしいな」
「そうか。やっぱ寿命が増えるとかの美味い話は無いか。効果時間はどうだ?」
「永続とかではないぞ。天魔が服用した量だとだいたい一時間程度らしい」
「やはり永続ではないか。天魔、肉体の様子は?」
「この通りピンピンしておるわい」
そういって天魔は運動広場の上空を飛び回る。
多分さっきの茜と同等か少し遅いくらいかな。だとしても高速と言っていい速度だけど。
「肉体的にも問題なしと。これで全臨床試験は終了だな。…それはそれとしてオウル、その翼どうした?」
「あ、やっと触れてくれるのね」
灰崎さんに報告しようとしたら天魔に話題持ってかれちゃったし。
「さっき運動広場を整地するために翼を背中から生やしたんだけど、そしたらこのフワフワの翼が生えてきてね。生やした場所もゲノムプラスを摂取した時に違和感感じた場所だし、何か関係あるかなって」
「いやあるだろ。100%ゲノムプラスが原因だろ」
「あ、やっぱりそうなのね」
まあ見るからに何かしらの鳥の翼だし。
なんの鳥かわからないけど。
「そうだ。ライズ、何の鳥の翼か分かる?」
「待っておれ。…どうやらワシミミズクという鳥類の翼らしい。ところでワシミミズクとはどんな鳥類だ?」
「そっか、異世界にはワシミミズクいないんだね。まあ私も知らないけど。ちょっと調べるから待って…、あったあった、この鳥だね」
スマホで調べた情報だと、鳥綱フクロウ目フクロウ科ワシミミズク属に分類される鳥類らしい。
いや活動名がフクロウの英名であるオウルだけどさぁ、まさか背中から生えた翼がフクロウ科の鳥の翼ってどういうことよ。
ちょっと運命感じるレベルだよこれ。
「動物的特徴が無い者がゲノムプラスを摂した場合、体の一部に動物の特徴が現れるのか。オウル、その翼出し入れできるか?」
「やってみる」
この翼は
動かすことは無意識でできたから、翼を折りたたむイメージで…。
「…どお? 翼消えてる?」
「消えてるぞ。次は翼を出せるか」
「消せたし多分できるよ。…どお?」
「翼出てるな。出し入れは可能と」
よし。少し肩甲骨の辺りに力込めただけだけど問題無かった。
とはいえ今後は気を付けないと。何かの拍子に翼が出ちゃったら問題だし。
それと生えたのが翼でよかった。変なところから変な物が生えてきたらもっと面倒になってたよ。
「オウル、お前も健康観察シート記入してくれよ」
「分かってるって。あ、それとゲノムプラス一錠と健康観察シート余ってたらくれない?」
「確かに余ってるが、何に使うんだ?」
「えっとねぇ─」