死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「まずは私から行くよ、
先手を取ったのはオウルだ。
「っ、いきなりかよ!」
その攻撃に対しレイヴンは空中を旋回し回避していく。
なおテレポートは使用しない。今回の訓練は翼を自在に扱えるようにするための物なので
「ほらほら兄さん、回避してるだけじゃ意味無いよ!」
「お前は鬼か! オウルと違ってこっちは一発喰らったらアウトなんだよ!」
「いや今使ってる
実際、発射された肉塊は着弾した瞬間にトマトの様に潰れている。
しかし、いくら柔らかくとも高速で発射されれば痛いことは誰にでも想像がつく。
「だとしても加減しろや!
レイヴンは発砲しようと銃口を向ける。
が、引き金を引いた瞬間アサルトライフルのレティクルが荒れ狂い見当違いの方向へ弾丸が発射された。
「ちょ!? 兄さん何してんの?!」
「クソッ、空中じゃ踏ん張りが効かねぇ!」
銃火器を発砲すると、当然のことながら作用・反作用の法則により反動が発生する。
普段は反動エネルギーが小さい上、地に足着けて発砲していたためあまり気にしなくてよかった。
しかし、今回は慣れない空中で発砲したため反動に耐えきれなかったのだ。
「この状態じゃ狙ったところで当たりそうに無いな。それなら、こうしよう」
レイヴンは再度銃口をオウルへ向ける。
しかし、今回は直接弾丸を打ち込む気は無い。
「当たらないのなら、全方面にぶっ放すだけだ!」
引き金を引いたアサルトライフルから弾丸が飛び出す。
放たれた弾丸はオウルの入る方向に飛んでいってはいるが、命中する軌道の物はすくない。
それもそのはず。レイヴンの作戦、それは"当たらないのなら当たるまで撃ち続ける"という脳筋ゴリ押し戦法だ。
そのためこんな無茶苦茶な戦法が可能だ。
「そんなの当たるわけないじゃん。空中戦は私に分があるよ!」
オウルも弾幕を張りながら移動する。
弾丸の大多数は空中で肉塊と相殺され、無事に弾幕を突破した弾丸は躱された。
「ならばこうする、
直後、無事だった弾丸が方向を変えオウルへと向かっていく。
レイヴンの行ったことは単純、弾丸をテレポートさせる際に進行方向を変えただけだ。
「な?!
回避できないと判断し咄嗟に
しかし反応が遅れたため全てを防ぎきることはできず、数発が翼と足を貫く。
だが、肉体に開けられた穴は時間が巻き戻るように埋まっていき、僅か数秒でどこに空いていたのか分からなくなった。
「…やっぱ意味無いか」
「ちょっと兄さん! 私のこと殺す気!? これ訓練だよ!!」
「いやお前どうせ痛覚切ってんだろ。痛み感じるなら多少は怯むはずだ」
実際、弾丸が命中したオウルは多少よろけた程度で痛がった様子は無い。
そのため、基本的に
「それでもねぇ、少しは加減するものでしょ」
「魔法の相性悪いからこうでもしないと勝てないんだよ」
オウルは魔法により、肉体にいくらダメージを受けようと再生する。
レイヴンの空間魔法は様々な搦め手が可能だが、結局のところ肉体を抉り取る事や切断することしか攻撃できない。
そのため絶対に起こることはあり得ないが二人が敵対した場合、レイヴンはオウルに対して決定打が無いのだ。
しかし、今回は訓練のためそんなこと気にしなくともよい。
「そう…、なら!」
「嘘だろ!?」
翼を閉じ、オウルは一気にレイヴンへと接近していく。
当然レイヴンも近づかせまいと弾幕を張るが、そんなの関係ないとばかりに隙間を縫って距離を詰める。
接近戦となった場合はオウルに分があるため近づかれる訳にはいかない。
「クソッ、近づいてくんな!」
「近づかなきゃ、兄さんに攻撃できないでしょ。…捕まえた!」
「っ?! しまった!」
弾幕を掻い潜り足を鉤爪に変化させたオウルがレイヴンの肩を掴む。
テレポートを使用すれば脱出できるが、今回は意図的に縛りを掛けているため逃れる手段は無い。
「離しやがれ!
銃を片手に持ち替え、空いたもう片方の掌でオウルの足を削り取る。
切断された箇所から血液が止めどなく流れ出すが、今は痛覚を切っている上に流れ出る血液より生成させる血液の方が多いため怯む様子は無い。
「食らえ!」
「がっ!?」
そしてそのまま低空飛行を行うことで、レイヴンの背を地面で摩り下ろしにかかった。
今はレイヴンの背に翼が生えているため直接ダメージを受けることは無いが、代わりに翼がボロボロになっていく。
「このまま兄さんの体力を削り切る!」
「だけどこの状況なら躱せないよな!
「させるわけないでしょ!」
レイヴンは
単純なパワーは魔法の関係上オウルの方が上だ。レイヴンに振りほどくすべはない。
「こうなったら、まずはこの状況を何とかする!」
レイヴンは背中の翼を地面に突き刺す。
すると速度は徐々に減少していき、ついに停止した。
「っ、兄さんの翼の筋力強すぎるでしょ」
「渡り鳥だからな。それに背が地面についてる分、踏ん張りが効くんだよ!」
レイヴンは唯一空いている足でオウルの腹に蹴りを入れる。
しかし痛覚を切っている影響でダメージが通っているのかいないのか判別できない。
「あ~もう、テレポート無しでどうしろってんだよ」
「その様子じゃ、今回の訓練は私が勝てそう…ねえ兄さん、そうえばこの訓練って何したら決着付くの?」
「…あ」
この訓練を始めるにあたって決めたルールは”ルールは互いに障害の残る怪我を負わせず殺さない”だけである。
そのため、どうしたら決着がつくのか誰も知らないのだ。
「おい二人とも、どうした急に止まって?」
「いやそれが灰崎さん、どうやったら決着付くのか決めてなかったなって」
「…確かにな。それじゃあこういうのはどうだ?」
灰崎が提案した内容は、地面に体の一部が付いたら負けというもの。
この内容なら、今回の訓練の意味合いにも即している。
「そるほど、確かにそれならよさそうだな」
「じゃあ仕切り直しでもう一回やる?」
「そうしよう」
二人は再度空中に浮かびあがり向かい合う。
「それじゃあ再度…始め!」
「
「
灰崎の合図と同時に両者魔法を発動する。
指の弾丸と肉の鞭がぶつかり合い、肉片が空中で破裂いていく。
しかし、魂は基本的に物理が通用しない。
「ぐっ?!」
「捕まえた!」
そして魂の鞭がレイヴンの足を捉えた。
オウルはそのままレイヴンを地面に叩きつけにかかる。
「このまま墜ちろ!」
「っ、
レイヴンは地面に向け弾丸を打ち込む。
そして地面を抉ることで叩きつけられるのを回避した。
振り子の糸の様に魂の鞭は振るわれていたため、地面を掘り進んでいたレイヴンは地上へと飛び出す。
「ウソ!? そんなのあり?!」
「ルール的に問題ない。それより呆けてていいのか?」
「え? 『ドンッ!』 嘘でしょ?!」
直後、背後から飛来した弾丸がオウルの翼を貫く。
先ほど放った弾丸を
翼に穴が空いたオウルは飛行能力を失い地面へと落下していく。
「そのまま墜ちろ、
ダメ押しとばかりに放たれた無数の弾丸がオウルを貫いた。
肉体に風穴が大量に空いたことにより、なけなしの空気抵抗まで失う。
「さっき兄さん地面抉るとかいうチートしたよね。ならこっちだってチート使うよ!
直後、オウルの肉体の生命活動する。
物言わぬ肉塊と化した体は重力に従い地面へと落ちていく。
しかし、オウルの肉体は地面に激突する瞬間に消滅した。
「な?! どこ行きやがった!」
「後ろだよ」
「!?」
レイヴンは反射的に背後目掛け引き金を引くが手応えは無い。
だが、その目は確かにオウルの姿を捉えた。
「お前、それはズルいだろ!」
「さっきのセリフそのまま言い返すね、こうでもしないと勝てないんだよ!」
オウルが行ったことは幽体離脱、つまり敗北条件である肉体そのものを破棄したのだ。
これによりレイヴンはどう頑張っても勝利条件を達成できなくなってしまった。
「さあ、とっとと決着付けるよ!」
オウルはレイヴンを掴み地面へと急降下していく。
「クソッ、
抵抗とばかりにレイヴンはオウルの腕に触れようとするがすり抜ける。
レイヴンの魔法は魂関連ではあるが、肝心の使用者本人が未だ魂に触れる方法を習得していない。
「これで、私の勝ち!!」
「グハッ!!」
そして、勢いよく背中からレイヴンは地面に叩きつけられた。
「決着! 勝者、オウル!」