死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「いや~まさか負けるとは。っ、背中が痛い」
「あ、兄さん今治すよ。
オウルが魔法を発動させ、レイヴンの怪我を治す。
血だらけだった背中は時が巻き戻るように再生していき、傷が塞がった。
「これで良しっと」
「ありがとな。しっかしオウル、アレは無しだろ」
レイヴンの言うアレとは、訓練中にオウルが行った
肉体が地面に接触したら負けというルールの訓練において、肉体そのものを捨てるのは反則行為に等しい。
そしてレイヴンは魂に触れる手段を持ち合わせていなかったがためにどうすることもできなかった。
「あ~あれね、ぶっちゃけ私もどうかとは思ったけどさ。というか兄さん魂に触れれなかったんだ」
「触れなくとも困ること無かったしな。そもそも、連合内でも触れれるメンバー少数しかいないだろ」
現状連合内で魂に触れられるメンバーは、オウル、ライズ、八世召、八世通波の四人だけだ。
そもそも世界単位で探したとしても数名しか見つからないだろう。
「あ~、確かにそうだね。だけど魂を知覚することはできるんでしょ? 召のこと見えてたし。なら触れるんじゃない?」
「いやその基準はあんま当てにできないだろ」
「そうだぞオウル。俺も見えてるし」
一度死亡しアンデッドとして蘇り、そこから再度あの世から舞い戻った八世召の現在の種族はファントムだ。ファントムの日本語訳は亡霊であり、普通の人は視認できない。
しかし、聖魔連合の幹部含めた構成員は認識可能だ。
市街地で実験した際は一般人に召は認識されなかったため、連合内では魔法の有無が
だからと言って召に能動的に触れられるのは、魂に触れられる上記三名しかいない。
「だとしてもだよ。兄さんの魔法は口寄せ魔法でしょ、なら触れられない理由は無いはずだよ」
「だけど現に今のオウルに触れられないからなぁ」
レイヴンはオウルへ手を伸ばす。
しかし、伸ばした手はオウルに触れること無くすり抜けた。
「オウル、何か直ぐに魂を触れるようにする方法とか無いのか? 触れるのなら研究してみたいんだが」
「う~ん、こればっかりは本人次第だからなぁ。しいて言えば経験だろうけど如何せんサンプルが少ないから何とも言えないし」
現在魂に触れられる内三名は死者、または死を経験している。
唯一違うのは八世通波だが、あれは例外中の例外のため参考にならない。
「ならオウルが魂に触れる切っ掛けを再現できないか?」
「いや無理でしょ、兄さん死ぬ気?」
オウルが魂に初めて触れたのは召に頭を飛ばされた直後だ。
あれは生命魔法を持つオウルだから何とかなっただけで、普通人は頭を切断されたら即死する。
ライズと八世召については、二人とも死者のため再現なんてできるはずがない。
八世通波? 何度も言うが例外は何にでも存在する。
「オウル、別に完全な再現でなくとも似たようなことはできるんじゃないか?」
「似たようなこと…、あ~
「確かにな。ちゃんとした機器で観測したいし」
「なら研究試験場に戻るか、ワープゲート」
◇◇◇
『…これで良し。こっちは準備終わったぞ』
「了解、こちらはいつでも始められる」
研究試験場の試験室、その部屋の中に肉体を修復したオウルとレイヴンはいた。
この部屋には工場の生産ラインを見るようなガラス張りの壁と四方八方にカメラが取り付けられており、これらの先から灰崎は計測などを行う。
「兄さん、準備できた?」
「できてるぞ」
「それと魔法を掛ける前に一つ。私は魂で肉体を動かしているって認識なんだけど、その事を頭に入れておいて」
「?、わかった」
「それじゃあ…、
オウルはレイヴンに魔法を掛け少し離れる。
しかし、魔法を掛けられたレイヴンの様子に変化はない。
「オウル、こっからどうすればいい?」
「そうだね…じゃあそこから歩いてみて」
「歩くだけか。…は?」
そうしてその場から歩き出す。
すると、レイヴンの魂は肉体から離れ数歩歩いた。
そして魂の抜けた肉体は、数秒遅れて魂の後を付いていく。
「どう? 多少は魂について掴めた?」
「いやそれ以前に何だよこれ」
「この魔法は肉体と魂の動きにタイムラグを作ったんだよ。強力だけど他人に発動するのが面倒でね、こんな場面でしか使えないけど」
オウルの認識では、肉体は魂で動かすものである。
今回発動させた魔法は、この認識を他人に圧しつけた上で魂に対して肉体を遅延させる魔法だ。
戦闘で発動させられれば強力だが、相手に触れなければならない上、発動条件にオウルの”肉体は魂で動かすもの”という認識を相手に共有させるか、相手も同様の認識を持っている必要がある。
そのため戦闘では滅多に使用できないが、今回は実験のため気にしなくてよい。
『オウル、レイヴンに対していろんなアプローチをしてみてくれ』
「わかったよ灰崎さん。とりあえず、その状態でこれ握れる?」
「やってみる」
オウルが取り出したペンをレイヴンは握ろうとする。
「?、普通に持てるぞ」
そして、差し出されたペンは床に落ちること無くレイヴンの手の中に収まった。
「『…は?」』
この事実に驚いたのは灰崎とオウルだ。
二人は、レイヴンはペンを持てないだろうと予想していた。
しかし結果はご覧の通り、レイヴンはペンを持てている。
「ちょっと兄さん、何でペン持ててるの?!」
「いやペンは持てるだろ」
「そういう事じゃなくて、何で魂の状態でペンを持ててるのかってことだよ!」
二人が持てないと予想した理由は、レイヴンが霊体状態のオウルに触れなれなかったからだ。
そのため魂の状態では何もできなくなると予想した。
「いやお前が肉体は魂で動かしてるって言ったろ」
しかし、オウルが先ほど言った“魂で肉体を動かしている”という言葉によりレイヴンは己の認識を変えてしまったのだ。
“肉体はただの器であり、動くために必要なのは筋肉や脳ではなく魂である”と。
魂で肉体という実体を持つ物に干渉できる以上、同じく実体を持つペンに干渉できない道理はない。
『おいレイヴン、マジでそれだけで触れるようになったのかよ』
「それもあるが、オウルや召が霊体であちこち触ってるのを見てるのもあるかもな」
『はぁ…まあ分かった。ともかく次だ、オウル』
「了解、
オウルはレイヴンの魂を肉体に戻した後、自身は魂を肉体から取り出す。
次に試すことは、レイヴンが魂に触れられるようになったか否かだ。
「それじゃあ兄さん、触ってみて」
「何だろうな、今は触れる気がする」
オウルが伸ばした手をレイヴンは握ろうとする。
そして、今回はすり抜けること無く触れることができた。
「よし、成功!」
『問題なく触れられたみたいだな』
「あぁ、これで一方的にオウルに負けることは無い」
「いや喜ぶとこそこ? まあ現状魂に触れても役立つとこあんま無いけど」
オウルの言う通り、魂に能動的に触れられるメリットは現状あまりない。
強いてメリットを上げると、八世召とのコミュニケーションが円滑になるくらいだ。
「…確かに使いどころ無いな。灰崎さん、何かいい活用方法あるか?」
『いや俺に聴くなよ。むしろ俺が知りたいわ。…ちょっと待て、ライズなら何か知ってるんじゃないか、異世界関係で』
「あ~確かにありそう。灰崎さん、ちょっと館内放送でライズ呼んでくれる?」
『わかった』
数分後…
『─なるほど、それで我を呼んだのか』
「それで、何かいい活用方法あるか?」
『そうだな…』
試験室へ訪れたライズに呼び出した経緯を説明する。
そして少し考えたのち、ライズはある武器について思い出した。
『そういえば、我が元居た世界に魂を原料に使用した武器があったな』
「!、本当ライズ!」
『あぁ。ただ、我も噂程度でしか聞いたことが無い上、元々母数が少なかったのか実物も見たことが無い』
「だとしても有難い情報だ。で、どんな武器だ?」
『確か…