死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「─今回は俺の勝ちだな」
「はぁ…はぁ…、兄さんもだいぶ翼に馴れてきたね」
「まあな」
新しい武器、
黒榊兄妹は作成した日の午後からひたすらに戦闘訓練を繰り返していた。
というのも、現状聖魔連合は社内事務くらいしかやる事が無い。その社内事務もウルフを筆頭とした事務係に投げているため、トップのチェックが無いといけない書類や特定の個人しかできない仕事くらいしか本当にやる事が無いのだ。
「それとどうだ?
「いい感じ。やっぱ遠距離攻撃があると無いのとだとじゃ戦術の幅が段違いだよ」
オウルは桜血魂を見ながら呟く。
以前から
しかしこの攻撃方法で使用するのはあくまで自身の肉体や魂を伸ばした物なので、当然反撃されればダメージを受けてしまう。
だが、アームキャノンを使用することでこれらの弱点を克服することができたのだ。
「それじゃあもう一回戦するか。もう少しスムーズに空中移動できるようにしたいし」
「そうだね。じゃあ互いに準備を─『ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン、え~レイヴン、オウル、鬼頭白夜、民守祈の四名は至急情報部部室に来てくださ~い』─今の声って通波?」
「まあ声的には…、というか情報部部室ってほぼ通波の自室になってるからそうだろうな」
再度戦闘訓練を行おうとした時、突如として呼び出し放送が響き渡った。
呼び出されたのは四名、それも連合に所属している組織のトップ達である。
「というか通波のやつ、俺らはいいとしても白夜と民守さんには敬称つけるよう注意したんだがな。やっぱ直ぐには無理か」
通波は一応黒榊兄妹直属の部下だ。
そのため他組織のトップである白夜と民守には敬称を付けないといけないのだが、通波の性格的に無理だろう。
姉である召が聖魔連合に所属する前に起こしたトラブルを謝罪するなどの常識は有るが、人との関わりが希薄な環境にいたために敬語があまりできない。
正直トップ含めた幹部は誰も敬語を使えなくても気にしていないが、流石に放送や公の場などでため口はマズいので少しずつ修正していってはいる。
「まあとりあえず、いったん情報部部室行こうよ」
「そうだな。…というか通波って”ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン”って自分で言うんだな」
「それ私も思った」
◇◇◇
「通波来たよ」
「お、来たみたいね。白夜と祈はまだ来てないからそれまでゆっくりしてて」
運動広場からワープゲートで情報部部室へと移動してきたが、白夜と民守はまだ来ていなかった。
しかし当たり前である。
黒榊兄妹は放送があってから三分くらいでワープゲートを通って来たのだ。他二人とは移動距離が違う。
「じゃあワープゲートで呼ぶか?」
「いいの? じゃあお願いできる?」
「わかった。それと、一応だが敬語とか口調気を付けろよ」
「あ、すいません…」
「あ~言い方悪かった。今は別にいいって」
「え、わかった!」
「切り替え早いな…」
通波の態度に驚きつつ、レイヴンは魔法を発動させる。
「よし。
「─は? …とっとっと」
「─え? きゃ!?」
居場所を感知したレイヴンがワープゲートを開き、白夜と民守を部屋へと連れてきた。
なお、ワープゲートを展開した場所が足元であったために、二人からすればいきなり地面が無くなったことになる。
幸い白夜は無事着地できたが、民守は着地に失敗し尻もちを搗く。
「あ、悪ぃ」
「痛っつ~。レイヴンさん、いきなりワープゲートを展開しないでください、せめて一報入れてくださいよ」
「ほんと、びっくりしたぜ」
「いやマジですいません」
「はいはい、全員揃ったから説明するよ。とりあえずこれ資料ね」
レイヴンが二人からお小言を貰ったところで通波から呼び出した理由の説明が始まる。
「通波、この資料なに? 一枚目ぱっと見た感じどこかの見取り図みたいだけど」
「それはヨーロッパ、イタリアのラヴェンナにあるアレイオス孤児院、その建物の内部構造だよ」
「アレイオス孤児院…、あ~思いだした、確かハロウィンの時のパーティーで民守にしつこく絡んでたやつが運営してるっていう孤児院か」
10月31日に行われた悪の組織の交流パーティー、そこで民守はバルバラ・B・イノセンティにしつこく絡まれた。
そのバルバラ・B・イノセンティが経営している孤児院こそアレイオス孤児院である。
「そのパーティーは悪の組織しか参加しないはずなのになぜかアレイオス孤児院のトップであるバルバラ・B・イノセンティが参加してたでしょ。そのことが個人的に気になって調べてたんだよ。で、アレイオス孤児院を建てた建築会社ハッキングして見つけた見取り図がそれ」
「ちょっと待ってください。孤児院ならなぜ地下にこのようなスペースがあるのですか?」
通波が渡したアレイオス孤児院の見取り図には、およそ地下300メートルにも及ぶ謎の空間が記載されていた。
普通孤児院には、というか普通の建物にはこんなに深いスペースは存在しない。
「核シェルターの可能性は無いのか? だとしても単なる孤児院にあるのは不思議だが」
「いやそれは無いんじゃない。魔法の前には意味無いよそんなもの」
地下300メートルともなると比較対象は核シェルターになる。
しかし、土魔法などの魔法の前では核シェルターなど何の意味もないのだ。
…訂正、時間を稼ぐ分には多少効果があるかもしれない。
「そうなんだよ。だけどこの地下空間が作られた理由とかは全部紙面なんかのアナログで処理されてるっぽくてね。それで今回みんなを呼んだ理由はこの地下空間の調査に協力してほしいの」
「協力はいくらでもするぞ。資料読んだ感じ、早めに調べといて損は無さそうだからな」
バルバラ・B・イノセンティが悪の組織の交流パーティーに参加していた以上、何らかの悪事に手を染めているのは明らかだ。
その上これほどの地下空間を作れるとなると組織としての規模もかなりの物だろう。
ならば、後々敵対する可能性がある以上先制攻撃を仕掛けるのは有効である。
「そういう事なら明日にでも行く? そのラヴェンナって場所に」
「私は構いませんよ」
「俺もだ」
「よし、じゃあ明日にラヴェンナのアレイオス孤児院へ行こう。それで作戦なんだけど、トップのみんなには囮役をやってほしい。内部の調査と侵入は私が操作するドローンとロボット、お姉ちゃん、アル、それと元花で行う予定」
「打倒な人選だな。そういう事なら俺は撤退要因か」
「そういうこと」
通波と元花は人海戦術による情報収集を得意としており、即座に情報を共有できる上、いくらでも収集源を使いつぶせるため逆探知されにくい。
召とアルは上記二名のような広範囲探索はできないが、代わりにそれぞれの身体的特徴を生かし障害物を全スルー出来るのだ。
その上、召については持っている物体も霊体化できることが判明した現在であれば、更に様々な情報収集に活用できる。
「通波、ちなみに何で俺たちを囮役に呼んだ? ぶっちゃけイタリアの魔法少女って日本より強くないだろ」
日本の魔法少女の強さは世界トップクラスであり、各国のトップ層の実力は七曜の円卓末席と同等か少し下程度しかない。
正直、ただ囮として使用するならわざわざトップを呼ぶ必要は無いのだ。
「そのことね。まあ海外の組織を調査するから一応各組織のトップの了承を得といたほうがいいってのもあるけど、本当の理由は違う」
「じゃあ何だよ本当の理由ってのは」
「白夜、祈、二人とも灰崎に頼まれたゲノムプラスの摂取データ提出してないでしょ」
「「ギクッ!!」」
今から六日ほど前、幹部は全員ゲノムプラスを摂取していた。
その摂取したのちに変化した身体のデータについて、大半の幹部は三日後には提出したが、二人のデータは未だ提出されていない。
「え、二人ともまだ提出してなかったの?!」
「え、えっとですね…」
「祈はまあ分かるよ、大半デスクワークで試す機会無かっみたいだし。だけど、白夜は別だよ」
「お、俺だって戦闘訓練があってだな…」
「それなら尚の事データ集まるでしょ!」
「…はい」
通波に怒られ珍しく白夜が項垂れる。
今回に関してはデータを提出しなかった白夜が十割悪いので反論のしようがない。
「そういう事だから、明日の調査でついでに戦闘データも収集するから」
「わかった。まあ俺が悪いしな」
「本当にね。じゃ、みんな明日に向けてしっかり休んでね」