死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


地下エリア

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「シュタっと」

「ぐへっ!」

「…ここが地下ですか。やっぱ暗いですね」

 

 大穴の底に着いたキャットガールが着地する。

 辺り一帯は暗く、多少の照明がある程度だ。

 

「ちょっとキャットガール! 飛び降りるなら最初に言ってよ!」

「ですが、アルって浮いてますよね。なら問題ないのでは?」

「そうだけど、それとこれとは別なの!」

 

 確かにアルは浮遊して移動している。が、その速度はとても遅い。

 具体的には全速力の高校生に余裕で追いつかれる程度だ。

 上昇や下降の速度も木の葉が旋毛風で巻き上げられたり自然落下するほどしかない。

 そのため数100メートルの自由落下は普通に怖いのだ。

 

「そうなんですね、今後気を付けます。とは言え、今後こんなに落下することは無いでしょうけど」

「それは…まぁ…うん」

『二人ともどうしたの? 何か揉めてるけど』

「いえ、特に問題ありません。それより召さんは?」

『お姉ちゃんなら先に見てくるって私のドローンっと一緒に先行してるよ』

 

 大穴の底から横穴が伸びており、かなり長いのか奥が見えない。

 そのため安全確認もかねて召とドローン群が先行したのだ。

 

「そうですか。それでは私たちも行きましょう」

『だね。あ、アルはここで根を張っての調査をお願い』

 

 ここら一帯は地下洞窟をくり抜いて建築したのか岩肌だむき出しになっている。

 そのためアルが問題なく根を張ることが可能だ。

 

「わかった! あ、一応上塞いどくね」

 

 アルは根を伸ばし大穴を塞ぐ。

 これで少なくとも、直ぐに追撃されることは無いだろう。

 

「それと、私の分身体を数体置いていきます。何かあれば頼ってください」

 

 キャットガールは指を切り落とし、分身体を五体生成する。

 根を張ったアルは急な移動ができなくなってしまうので護衛は居た方がよい。

 その上、分身体がいることでリアルタイムでの情報共有が可能となる。

 

「頼みましたよ私」

「わかりました、私」

『ささ、早く行こ』

「行ってらっしゃ~い」

 

 そうしてキャットガールと通波のドローン群は横穴を進んでいく。

 横道はかなり広く、大型コンテナに小型トロッコまで設置してある。

 

「何というか…炭坑みたいですね。ここって何のために造られたのでしょう?」

『本当にね。今回の調査で分かればいいけど』

 

 現状見つけた物だけでは、ここが何の施設か断定できない。

 断定するためにも、更に奥へと進んでいく。

 

『もう少しでお姉ちゃんと合流できるはず…いた!』

「お、二人とも来ましたか」

 

 二人はしばらく進み召と合流する。

 召の背後には大きく頑丈そうな扉が設置されており、開く様子は無い。

 

『お姉ちゃん、この扉は?』

「…場所名を示すプレートが読めなくなってしまっていたので先に扉をすり抜けて中を見てきたのですが、だいぶ中は酷いことになってましたよ」

「どうなってたんですか?」

「…説明するより見せた方が早いですね」

 

 召は扉をすり抜け、反対側から解錠する。

 扉は重厚な音を立てて開き始め、新たなエリアへの道が開かれた。

 

「これは…廃棄所ですか?」

 

 目の前に広がっていたのは大量の不良品の山だ。

 それも一つや二つではない、エリアの端まで不良品で埋め尽くされえている。

 

『みたいだね。規格から外れた工業製品に不良品のおもちゃ、何でもあるよ』

「それよりですよ、何ですかこの匂いは?!」

 

 キャットガールは強烈な匂いを感じ取り鼻を塞ぐ。

 ある程度は刺激臭に馴れているキャットガールですら鼻が曲がりそうな匂いだ。 

 

「この匂いは腐敗臭です。そして、これがその原因です」

 

 召は不良品の山の中から匂いの発生源を引っ張り出す。

 

『…これって…』

「これが発生源である腐乱死体です。それも人の」

 

 男か女かもわからなくなっている腐乱死体を、召はゆっくりとその場に置く。

 

「あ」

 

 しかし、長期間乱雑に保管されていた遺体はとうに限界を迎えており、置く際のほんの僅かな衝撃で四肢が取れてしまった。

 

『うっ…、ごめん、ちょっと吐いてくる…』

「え、わかりました」

 

 通波は腐乱死体を見たことによって生じた吐き気を解消すべくお手洗いへ向かう。

 

「通波、いったいどうしたんでしょう?」

「召さん、それ本気で言ってます? 普通の人は腐乱死体(こんなの)見慣れてませんって」

 

 キャットガールは黒曜団の下っ端をしていた時に、召は東地下魔道墓地に居た時に、似たような物を見ている。

 しかし、通波は違う。

 情報収集する過程で遺体を見たことはあったが、それはスプラッターホラーのようなエンタメに出せるレベルの遺体だけだ。

 こんな原型もとどめていない、ニュースで"変わり果てた姿"や"腐敗が進んだ状態"などと報道されるような遺体を直接見たことはない。

 

「あ〜確かにそうですね」

「というか召さん、死んでから思考回路おかしくなったりしてません?」

「…ありそうですね。自覚はありませんが、否定できませんし」

 

 召の魂は本来、三途の川を渡り黄泉の国へ行くはずだった。

 その魂をレイヴンの口寄せ魔法で現世に呼びだし、ライズのアンデッドクリエイトでファントムにすることで現世に止めている。

 しかし、本来あの世へ行くべき魂がこの世にとどまっている現状で、召の魂に少しずつ変化が表れていた。

 主な変化は人間性の減少。召の精神は少しずつ、しかし確実に化け物に近づいていた。

 

「まあ、今後自覚して気を付けてくださいね」

「そうね、通波に嫌われたくはないわ」

『ふ~、今戻ったよ。二人とも何話してたの?』

「いえ特にこれと言っては何も。それでは行きましょう」

 

 そうして調査組は不良品と死体の山が積み重なったエリアを進んでいく。

 奥へ進めば進むほどに腐敗臭は強くなっていき、山からむき出しになった死体も増えてきた。

 

「…ここって不良品や死体、その他諸々の廃棄所そうね」

『確証は無いけど、多分そうだろうね』

「そうだとした場合、ここから廃棄物を運び出すか処理する施設へ続く道がありそうですが─え? アルが何か見つけた?」

 

 突如、アルの所に残していた分身体からキャットガール本体へ通信が入る。

 

『マジで?!』

「マジらしいですよ。アル、みんなにも聞こえるようにしてください」

 

 突如、地面から植物が生え口と耳を形作っていく。

 これらはアルの根の一部であり、実際の口や耳同様の機能を有している。

 

「あ、あ~、聞こえてる?」

「聞こえてます。それで、何を見つけたのですか?」

「キャットガールたちがいるエリアから更に地下へと進む通路だよ。場所はそこからそう遠くない」

 

 今アルが話している地点から少し進んだ位置に通路はあるそうだ。

 より正確に言うなら、このエリアに入って来た扉の反対側にある。

 

「そうですか、それならその通路へ向かって進みます。引き続き情報収集をお願いします」

「あ、ちょっと通波に聞きたいことがあるんだけどいい?」

『いいよアル。で、何?』

「この地下って本当に前に見せてもらった見取り図だけ? 何かもっと広そうだけど」

 

 今回の調査に当たって参加するメンバーは全員アレイオス孤児院の見取り図に目を通しており、アルも見取り図を見ながら調査していた。 

 しかしアルが根を使い調査したところ、どう考えても見取り図と実際に広さが合わないのだ。

 

『ウソ!? そんなはずは無いでしょ! いやまさか…』

「どうしたの通波?」

『いや、アレイオス孤児院が建築会社を通さずに勝手に造ったのならあり得るなって』

「確かにありそうね。それなら通波が調べられなかったのも納得よ」

 

 アレイオス孤児院の記録データは紙面かローカルネットワークで管理されているのか通波は調べられていない。

 そのため、アレイオス孤児院が勝手に拡張したエリアまでは調べられなかったのだ。

 

「ならどうします? 私の百猫夜行でロードローラーしますか?」

「それもいいですが、アレイオス孤児院の者にバレません?」

『今更でしょ、それなら早く調べて引き上げた方がいいって。じゃ、そういう事だからお願い』

「わかりました、百猫夜行」

 

 百猫夜行を発動することでキャットガールが分裂していき、瞬く間に数百体にまで増加する。

 そして、分身体は地下エリアに散り散りになっていく。

 

「これで更に早く調査が終わりそうですね」

「だね。とりあえず私たちも更に奥へ─待ってください!」

『どうしたのキャットガール、そんなに慌てて?』

「…分身体の一体が死にました。それもこのエリアで」

「「『!!!』」」

 

 キャットガール分身体も本体と同様の再生力を有している。

 そのため完全に殺しきるには細胞単位で再生不可にするしかない。

 

《─キィィィ…》

「!、皆さん─」

 

 そして、キャットガールを殺しきるための簡単な方法は二つ。

 一つは細胞を炭化させ再生を防ぐ方法。

 もう一つは…。

 

「逃げて!」

《キgー!!!》

 

 酸を掛け、細胞を溶かしきる方法だ。

 

「キャットガールさん?!」

 

 突如キャットガールが通波のメインドローンと召を弾き飛ばす。

 直後、暗闇から何者かがキャットガールに食らいついた。

 

「離…せ…」

 

 当然キャットガールも抵抗するが、相手のパワーが高すぎて振りほどけない。

 

《ギィィィ!!》

 

 そして、抵抗むなしく暗闇から現れた何者かがキャットガールを飲み込んでしまった。

 

「え、ちょ、何があったの!?」

「今はそれどころではありません! いったん逃げますよ通波!」

『わ、わかった!』

 

 目を作っていなかったがために状況を理解できていないアルを放置し召とメインドローンは逃走を開始する。

 逃走先は更なる地下へと続く通路だ。

 このエリアへと入って来た扉より通路の方が近い。

 

《キgdー!》

『お姉ちゃんあいつ追ってくるよ!』

「一応録画しときなさい、後で確認します! それよりキャットガールさんは?!」

「私なら無事です!」

 

 二人にキャットガールの分身体の一体が合流する。

 キャットガールは何者かに食われえる直後に記録転生(ログリーンカーネーション)を発動させ分身体の一体へと本体を移していたのだ。

 

『キャットガール! 無事だったんだね!』

「あれを無事というかは諸説ありますが、私を食った者は分身体が足止めしてます。それにもう少しで通路に着く…は?」

 

 三人の足が一瞬止まる。

 というのも、目の前の通路が二手に分かれていたのだ。

 片方は地下へ続く道だと分かるが、もう片方は何の通路かもわからない。

 しかもどちらが正解かも不明だ。

 

《ギィィィ!》

「!、時間がありません!」

『じゃあ右!』

「了解!」

 

 何者かが分身体を次々に食らっていっていたため、迷っている時間は無いと通波が即座に通路を選択し通過する。

 キャットガールを食らった何者かは頭から噛みついていた。そのため人一人通れるくらいの事務室の扉くらいの右の扉には、喰らった何者かは通れない。

 しかし、実際に地下へと続く通路は左だ。右の扉には次の様に書かれたプレートが貼られている。

 

 

 

   ─Discarica inutile - Piano principale─ 日本語で、”役立たずの廃棄所・メインフロア”

 

 

 

 

 

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