死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


役立たずの廃棄所 ─ メインフロア

 

『な、何とか巻けた?』

「はぁ…はぁ…、みたいですね」

「それよりアルさんは?! とっさの判断とは言え置いてきてしまいましたが…」

「大丈夫ですよ。あの場にいたのは本体ではないので」

 

 先ほど人食いの化け物に襲われたフロアにいたアルは本体の根から生成された不定芽のようなものだ。

 そのため攻撃されていたとしても本体はあまりダメージを受けない。

 

「そうですか、なら心配ありませんね」

「いや少しは心配してよ。まあ実際無事だけど」

「!?、いったいどこから?」

「下だよ下」

 

 その声とともにコンクリートが割れ、一本の根が飛び出す。

 根は次第に膨らんでいき、先端に一回りほど小さなアルが形成された。

 

「あ、アル。よくこっちってわかりましたね」

「そりゃあれだけ大声出したら聞こえるって」

「まあそうですよね。それより、その技完成したんですね」

「えへへ、新技、分球体。頑張って完成したんだ」

 

 分球体、それは球根が増える要領で根から小さな分身体を生成する技だ。

 生成が遅い上に根から切り離すことができないが、今のような情報共有の場だと便利である。

 なおこの技はキャットガールの百猫夜行を参考にしているため、開発に協力してもらった。

 

「協力した甲斐がありました」

「えへへ。それより、ここどこ?」

 

 キャットガールたちがとっさに逃げ込んだこのエリア。

 内装は会社のロビーのようになっており、中央の受付のような場所には画面が分厚いかなり初期のデスクトップコンピュータがおかれている。

 

『見た感じ受付かなんかだと思うよ。それに来た通路以外にも道があるっぽいし上にも行けそう』

 

 このエリアには廃棄物の山があったエリア来た道以外にも四つの路が伸びており、そのうちの一つは上へと伸びる螺旋階段だ。

 通波が調べた見取り図に存在しなかったことを考えると、この階段もアレイオス孤児院が違法建築したものだろう。

 

「まあ今考えても仕方ないですし、映像見ません?」

「ですね。通波、さっき頼んでた映像を見せてください」

『わかった』

「ねえ、映像って?」

「逃走中に化け物を録画してもらったんです。後で見返すように」

 

 そうして通波が記録した映像が壁に投影される。

 

「…暗くてよく見えませんね」

『じゃあちょっと明るくするから待って』

「お、見えましたね。これは…ロボット?」

「それに見た目がデフォルメしたライオンのぬいぐるみっぽい」

 

 映像に映しだされたのは、分身体のキャットガールを食らっている巨大な四足歩行のライオンのぬいぐるみのような化け物。

 召がロボットと判断したのは皮膚全体が金属で覆われており、歯車の稼働音が流れているからだ。

 

『だとするとこの、この化け物はアニマトロニクスってことになるのかな多分』

 

 アニマトロニクス。それは、物や架空の生物などの形と動きを精巧に再現するロボット技術のことである。

 今回襲ってきた化け物は縫いぐるみベースではあるものの、生き物の動きを再現しているためアニマトロニクスと言ってもいいだろう。

 

「あの、この化け物って本当にロボットなのでしょうか?」

 

 しかし、通波の意見にキャットガールが待ったをかけた。

 

『どういうこと?』

「何というか、噛みつかれたときの感覚がブラッドに吸血されるときに似てたんですよね。ロボットなら違うはずですし」

 

 口などの物を切断する機構をロボットで再現するとなると、当然材料となるのは鉄などの金属になる。

 しかし、食われた瞬間キャットガールが感じたのは金属の冷たさではなく、血の通った肉の暖かさであった。 

 様々な悪の組織に侵入した際にミスして食らってしまった、ギロチンで切断されるか圧縮機に潰されるような感覚はない。

 

『…ちょっと色々聞きたいことあるけど、調べてみるね』

「お願いします」

 

 通波が映像をスキャンし、アニマトロニクスの内部構造を調べる。

 

『…マジか』

「そうしたんですか?」

『キャットガールの疑問、当たっちゃったよ』

 

 再度壁に映し出されたのはキャットガールを削除しアニマトロニクスのみを写した加工画像。

 当然、加工する際にキャットガールの血液は削除している。

 それなのに、アニマトロニクスの全身が血に濡れていた。

 

「…通波、この血液は…」

『恐らくお姉ちゃんが予想している通り、アニマトロニクス本体から流れ出た血液だよ』

「ちょっと待って! じゃあこのロボットってまさか!」

「生き物の亡骸を改造し作られたサイボーグ、ですかね。しかも以前戦ったサイボーグとは違う」

 

 以前キャットガールが阪神国際空港跡地で戦闘したサイボーグは魔法少女の遺体を材料に使用したものだ。

 遺体を改造する際は衛生面や配線の接続などの面から血液を抜いて作業するため、故障による出血は起きない。

 しかし、今回のサイボーグは出血している。

 

『以前? …あぁ、阪神国際空港跡地でブラッドと戦ったサイボーグか。そのサイボーグとは違うよ。なんたって、今回のサイボーグは生きてるんだから』

 

 通波のいう通り、今回キャットガールを食らったサイボーグは生きているのだ。遺体を無理やり機械で動かしていた阪神国際空港跡地のサイボーグとはわけが違う。

 

「だとすると、バルバラ・B・イノセンティは相当な技術者ですね。生命体を機械に落とし込むなんて芸当、できる者なんてそういません」

『もしくはアレイオス孤児院に優秀な技術者がいるかだね。だけど前にハッキングしたときはそんな人いなかったしな…、こりゃ調べ直しかな』

 

 通波は受付に置かれていたコンピュータにドローン群の一つから伸ばしたコードを接続する。

 

「通波なにしてるの? ハッキング?」

『そ。外部からはローカルネットワークだからハッキングできなかったけど、備え付けのパソコンからならハッキングできるはず』

 

 通波はコンピュータからローカルネットワークを探っていく。

 

「どお、通波?」

『あと少し…、見つけた! 機密フォルダ、これをコピーして─《ボンッ》─は?』

 

 コピーを開始した直後、コンピュータに接続していたドローンが爆発音を鳴らし黒い煙を吐き出す。

 

『─誰ですか? 役立たずの廃棄所(Discarica inutile)に侵入したのは?』

「「!?」」

 

 突然流れた音声に反応し、キャットガールと召は己の武器をコンピュータに向ける。

 見ると、コンピュータには赤い目が表示されていた。

 

「あなたは、誰ですか?」

『ほう…、その声は聞き覚えがあります。確か…、聖魔連合所属のキャットガールでしたか。10/31のパーティにいましたね』

「私の声を聴いたことがあるということは、あなたがバルバラ・B・イノセンティですね」

『えぇ。それより、階段を使わずにメインフロアへ侵入したということは、実験体1166、フェルオンを突破したのですね。正直驚きました』

「フェルオン? さっきのロボットの名前?」

「役立たずの廃棄所・ダストエリアの番人をさせているペットです。知能と言語能力は実験の際に低下してしまいましたが、簡単な命令しか出さないのであれば使い勝手が良いですよ』

『じゃあやっぱり…』

『そのドローンの先に誰がいるのか存じませんが、おそらく予想してる通りですよ』

 

 今のバルバラ・B・イノセンティの発言により、予想が確信へと変わる。

 あの化け物─フェルオンは元人だ。それも怪人生成機などの機械を一切使用しないで実験により生み出されたタイプ。

 

『…この外道が』

『いくらでも言いなさい。何もできない穀潰し人形を使える兵器にしたのです。まあ、ドローンの向こうから文句しか言えない腰抜けはおいておくとして、そこの二人、ここへ侵入しておいて、逃げられると思わないように』

 

 バルバラ・B・イノセンティはそう言い残し、コンピュータの画面が暗転する。

 

「…ねえ、今の状況って…」

「いくらすぐに撤退できるとは言っても、かなりまずいですよ。幸い私は体質上ばれなかったっぽいですが、お二人は捕まったら何されるかわかったもんじゃありません」

 

 バルバラ・B・イノセンティは二人と言っていた。

 しかしこの場にいるのは通波を除いた三人。

 そうなると考えられるのは、霊体である召がカメラに写っておらず人数を誤認した可能性だ。

 これなら、バルバラ・B・イノセンティが二人と言ったのも頷ける。

 

『それとあの化け物、フェルオンだったっけ。あいつもどうにかしないと。それに他の実験体もかなりの数いるはず』

 

 先ほど襲ってきた化け物であるフェルオンの実験体番号は1166。

 つまり、フェルオンより実験体番号が前である1165体の実験体がいる可能性があるのだ。

 

「だけどどうする? 目的は情報収集だったし一旦引き上げるのも手だと思うよ」

「それについては私たちでは判断しかねますね。確か言い出しっぺは通波さんでしたよね、どうしま─《ガシャン》─!? いったい何が?!」

「通路です! 通路が塞がれました!」

 

 突如、上へと続く螺旋階段を含む三つの通路が鉄格子により塞がれる。

 残っている通路はフェルオンがいたダストエリアに続く通路を含めた二つだけだ。

 

「ねえどうするのこれ?!」

「落ち着いてくださいアル! 騒いでもどうにもなりませんよ!」

『いやキャットガールも落ち着いて。だけど、少しやばいかも…』

「ですね、大きさ的に新たな実験体です」

 

 未だ調査をしておらず塞がれていない通路、その奥から実験体が現れる。

 見た目はオオカミの人形だが、大きさは3~4メートルほど。

 そして何より目を引くのは胴体に対して異様に長い四肢だ。アンバランスという言葉がこれほど似合う姿は早々ないだろう。

 

『お前らが、侵入者か!』

「しゃべったぁ!!」

「っく、召喚(サモン)・スモック!」

『ナイスお姉ちゃん、一旦引くよ!』

 

 召が召喚した煙でにより一瞬だが実験体が怯む。

 その隙にアルは地面へ潜り、残り二人とドローン群はダストエリアへと続く通路へと進んでいく。

 

『…待て』

 

 しかし、それで止まる実験体ではない。

 二人とドローン群を追いかけ、逃げた通路へと進んでいく。

 その目は、完全にハンターの目をしていた。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「ふむ、ダストエリアへ戻りますか」

 

 アレイオス孤児院本部のどこか、そこでバルバラ・B・イノセンティは監視カメラからキャットガールたちの様子を観察していた。

 無論、今いる場所も違法建築により作られているので場所を割り出されてはいない。

 

「さて、あのネズミたちをしっかり捕獲しなさい。実験体1187、ルーポナータ」

 

 

 

 

 

 

 

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