死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「猫爪!」
キャットガールが爪で扉のみを破壊し、ダストエリアへと飛び込む。
『ちょっと扉破壊してよかったの?!』
「あの巨体ですよ。どうせ扉なんて破壊されますし開けてる暇なんてありません」
「そうですよ通波。それより、まずは目の前の問題をどうにかするほうが先です」
再度訪れたダストエリア、そこでは未だキャットガールの分身体と実験体1166・フェルオンの格闘が続いている。
そして、背後からはダストエリアへ侵入しようと実験体1187・ルーポナータが扉のついた壁を破壊しようとしている音が響く。
「とりあえず、実験体は倒していいんですよね? 勝てるかは別として」
『ちょっと聞いてみる。もしもしレイヴン、今いい?』
『その声は通波か。今戦闘中だから手短に頼む』
通波が判断を仰ぐためにレイヴンに連絡を取る。
もともとバレることは想定済みだったが、さすがにゲームのステージボスのような相手との戦闘は想定していない。
『アレイオス孤児院地下にてバルバラ・B・イノセンティと通信越しとはいえ遭遇した。さらに推定3メートルはある化け物と接敵、現在そいつに追われてる。さらに今いるエリアには他の化け物もいる状況、ちょっとレイヴンに判断を頼みたい』
『はぁ?! こっちもこっちで面倒ごとになってんのにそっちもかよ!』
調査組は知る由もないが、現在アレイオス孤児院入口の戦闘は混沌を極めていた。
というのも、魔法少女にマップ兵器並みの魔法を使える者がいたため、あたり一面爆撃を受けたような惨状になってしまっているのだ。
「レイヴンさん、そっちもマズいのですか?」
『いやまだ何とかなる。それより判断だな。調査組は化け物を撃破し地下最奥まで目指せ、そして、それまでの指揮権を八世通波に一任する。もしものことがあったら八世召の召喚魔法で転送装置を召喚し帰還しろ』
『え? は? ちょっと?!』
通波が反論しようとするが、通信機がら爆発音が聞こえてくるのと同時に通信が切れる。
「えっと通波、大丈夫ですか?」
『…あ~もう! やってやろうじゃない!』
通波は上からの無茶ぶりを魔法少女連盟所属時代に何度だってこなしてきたのだ。気合を入れればこれくらいどうってことない。
まあ、そもそも調査したいと言い出したのは通波なので自業自得かもしれないが。
『アル聞こえてる?! 聞こえてたらオオカミの化け物が破壊しようとしている壁を補強して!』
「わかった!」
アルの声が聞こえたのと同時に大量の蔦が壁に張り付き補強する。
これで少しの時間は大丈夫だろう。
『オオカミの化け物が壁を破壊する前にフェルオンを片付けるよ!』
「「了解!!」」
キャットガールと召はフェルオンへ回り込むように接近する。
現在、フェルオンはキャットガールの分身体を食い散らかしており攻撃するなら絶好のチャンスだ。
「猫爪!」
「妖魂一閃!」
フェルオンの背後から爪と薙刀が迫る。
『ギgァァァ!?』
「っ、硬い!」
両者の得物はフェルオンの肉を切り裂くが、骨格に阻まれ切断には至らない。
それどころか、切りつけた箇所の筋肉を固めることで得物を抜けないようにしている。
『二人を放せ!』
通波がドローンからマシンガンを放つ。
当然フェルオンは回避するが、筋肉が緩んだことでキャットガールと召が拘束から解放された。
「ありがとうございます通波さん」
『お礼は後、それより二人とも構えて。…お姉ちゃん?』
「…すいません。少しボーとしてました。それより、来ますよ!」
『ギギィァァ!!』
フェルオンが遠吠えを上げた直後、顔が十字に割れ花が咲いたようになる。
さらに身体の至る所に獣口が現れ涎を垂らす。
『き、気持ち悪い!』
「んなこと言ってる場合ですか?!」
『ギgァァー!』
雄たけびを上げ向かってくるフェルオンを回避し即座に反撃を行う。
しかし、体中に現れた獣口が攻撃を受け止めるためあまり攻撃が通らない。そればかりか、近づいたらカウンターが飛んでくる状況だ。
そのため実質的にキャットガールの行動が制限されてしまっている。
ただでさえ身体能力の高い敵が相手なのに、キャットガールによる数の暴力が封じられるのはかなりキツイ状況だ。
「本っ当に硬いですねこいつ!」
行動が制限されたキャットガールに代わり召が積極的に前へ出てフェルオンを切りつける。
召の得物である駄骨は薙刀だ。キャットガールの爪より間合いを取って攻撃できる。
それでも、駄骨を掴まれる可能性がある以上慎重にならざる負えない。
しかし、着実にフェルオンの身体に傷が増えていく。
『…ん?』
俯瞰視点で攻撃していた通波が違和感を感じ攻撃を緩める。
「通波どうしたんですか攻撃を緩めて?!」
『いや、何でお姉ちゃんの攻撃だけ通ってんの?』
キャットガールの攻撃は全て反応され獣口で受け止められた。
しかし、召の駄骨による攻撃は皮膚に触れてからフェルオンは反応している。
「…確かにそうですね。キャットガール、少しフェルオンを引き付けておいてください」
「わかりました。百猫夜行!」
再度分裂したキャットガールがフェルオンへと突撃していく。
当然無数に増えた獣口に食いちぎられるが、フェルオンの足止めには成功している。
「さて、本当に私には反応しないのでしょうか?」
召はフェルオンの前に立つ。
しかし、フェルオンは召に見向きもせずにキャットガールを食らい続けていいる。
「…もしも~し、見えてますか~?」
フェルオンの前で手を振るが一切の反応を示さない。
『やっぱり、お姉ちゃんには反応しないっぽいね』
「近づいてわかったのですが、フェルオンの目は肉眼ではありませんでした。恐らくそれが理由かと」
召は肉体を持たぬファントムだ。そのためカメラの類には映らない。
映ることもあるが、それは実態に干渉するために力を込めている時だけだ。
そのため、カメラが目の役割をしているフェルオンは攻撃される瞬間の触覚で感知するしかない。
『それなら…、お姉ちゃんは薙刀を構えて待機してて!』
「…なるほど。わかりました」
『キャットガールは一旦引いて! アルは蔦で拘束!』
「了解!」
キャットガールが一斉に撤退する。
直後、地面から生えてきた蔦がフェルオンに絡みつく。
『ギギィィ!』
当然フェルオンも抜け出そうとするが、暴れるほど蔦は解けぬよう絡まる。
『お姉ちゃん、今だよ!』
「わかりました」
今のフェルオンは動けない。
そのため、力を込めた後隙が大きな技でも確実に命中させられる。
「…行きます!」
召は空中で踏み込み勢いよくフェルオンへ向かっていく。
かなりの速度で接近しているが、やはり見えてないのか気づく様子はない。
『ギィィィ!』
「今解放してあげます。
霊体化させた駄骨でフェルオンを横切りざまに薙ぎ払う。
しかし、駄骨はフェルオンをすり抜け血の一滴も流れていない。
「ちょ、召さん?! 何をやって─」
『待ってキャットガール。アル、拘束を解除して』
蔦による拘束が解かれたのと同時にフェルオンはその場に倒れる。
「…上手くいきましたね」
『お姉ちゃん何をしたの?』
「フェルオンの魂を解放しました。多分オウル様もできると思いますよ」
魂魄牢解、その技名通り
とはいえ上記の効果は瀕死の者のみに適用されるものであり、通常は魂を直接攻撃する効果になる。
今回はキャットガールによる絶え間ない連戦による疲れ、八世姉妹によるダメージの蓄積、そして何より実験による肉体の不安定化によりフェルオンは瀕死になっていた。
『…うん、説明聞いてもよくわかんないや』
「まあ通波は感覚派ですもんね、今は理解しなくとも問題ないです。それより今は、別の問題に取り掛かりましょう」
アルの蔦で覆われた壁に目を向けると、今にもルーポナータにより破壊されそうになっている。
壁の亀裂は広がっており、いつ破壊されてもおかしくない。
『アル、あとどれくらい持ちそう?』
「多分あと数秒だと思う。さっきフェルオンを拘束するのに結構パワー割いちゃったから」
地面から生えてきたアルが答える。
「だとするとぎりぎりでしたね。あのオオカミの化け物、フェルオンより強そうですし」
「ですが、先ほどのように召さんが視認できないのらなすぐに終わりそうですね。仮にそうでなくともフェルオン戦よりは私も役に立てそうですし」
『だね。さて、どうせ破壊されるのなら、こちらから壁を破壊しちゃおう』
通波はドローン群の中から二機を前へと出す。
前へ出した機体は特別性であり、四発のミサイルが搭載されている。
『アル、あの蔦ごと破壊してもいいんだよね?』
「問題ないよ。むしろやっちゃって!」
『了解。狙いを定めて…発射!』
ドローンから発射された八発のミサイルが壁へと向かっていく。
そして、ミサイルの命中した壁は音を立てて崩れ去った。
『…よくもやってくれたな』
『っ、やっぱあんまり効いてないか』
しかし、土煙の向こうから出てきたルーポナータはさほどダメージを受けていない。
せいぜい体毛が多少汚れた程度だ。
それどころか、攻撃されたことで苛立ってしまっている。
『…侵入者は、殺すだけだ』
『こっちだってただでやられるつもりはないよ。お姉ちゃんとキャットガールはあの無駄にアンバランスな足を狙って! アルは蔦によるサポート! 私はドローンで遠距離攻撃を行う!』
「「「了解!!!」」」
通波の指示によりキャットガールは正面、召は脇へと向かう。
当然ルーポナータも黙って見ているわけがなく攻撃してくるが、それらはアルと通波が妨害していく。
『…ちっ』
「ナイスです二人とも。行きますよ…猫爪!」
「妖魂一閃!」
キャットガールと召の攻撃ルーポナータに命中する。
今回はフェルオン戦の反省を生かし、足を切断するのではなく皮膚を切り裂く。
『ぐっ…』
「よし、効いてる!」
「やはり出血しますか。何はともあれキャットガールさん、もう一度行きますよ!」
二人は再度攻撃を仕掛けるためルーポナータに接近する。
『…舐めるな』
直後、ルーポナータの瞳が赤く光り出す。
その光をキャットガールと召は直視してしまった。
「…あれ…」
「意識が…」
『?!、二人とも!? ねえ、大丈夫?!』
二人の意識が落ちていく。
戦場で意識を失うのは死と同義だが、二人は早々あの世へ行かないであろうことは不幸中の幸いだろう。
「ねえ、ねえってば! だめだ、完全に寝ちゃってる」
『…アル、二人を後方へ避難させて』
「わ、分かった」
アルは戸惑いながらもキャットガールと召を蔦で後方へと移動させる。
『…このクソオオカミが!』
そして、通波は怒りのままにマシンガンの引き金を引いた。