死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


役立たずの廃棄所 ─ ルーポナータ

 

『こんなの…』

『っ、これじゃあんま効いてないよね!』

 

 放たれた弾丸はルーポナータの皮膚によって阻まれ内蔵まで到達しない。

 今回の侵入作戦に当たって大部分のドローンに搭載されているのは9×19mmパラベラム弾─FPSでSMGなどに使用される小口径弾とも呼ばれる代物だ。

 一般人相手にはこの弾丸でも十分通用するが、ルーポナータほどの巨体相手には豆鉄砲みたいなものだ。

 現在のドローンの装備は対人用の小口径弾と瓦礫破壊用の小型ミサイル数発。

 この装備でルーポナータを倒すのはほぼ不可能だ。

 SMGでヒグマ以上の化け物に勝てと言っているようなものである。

 

『(どうする、どうすればいい?)』

 

 しかし、この状況でも通波は思考を止めない。

 現在の状況はキャットガールと召が意識不明、アルが二人の救護に回っている。

 地上の戦闘の影響でレイヴンに撤退を頼めない以上、ドローン群の全滅が調査班の壊滅に繋がってしまう。

 

『…ウザい』

『!、ドローンが!』

 

 いくら効かない攻撃とはいえコバエのように集られるとうっとおしい。

 そのためルーポナータがドローンを撃墜しようとする。

 撃墜するために振るわれた前足は、その一振りでドローン群の1/4を破壊した。

 

『っ…、このままじゃ前線が持たない。撤退…いや、時間が…』

 

 一応レイヴンに頼らずに撤退する方法はある。

 それは、地下へ降りるときに利用した大穴を上るというものだ。

 しかし、この状況では現実的ではない。

 アルであれば意識不明者二名を運べるがルーポナータに追いつかれ、ドローン群だとルーポナータから逃げ切れるが二人を運べないのだ。

 

『本体はそれか』

『しまっ─』

根壁(ルートウォール)!」

 

 ルーポナータがメインドローンを撃墜しようと振るった前足をアルが根でガードする。

 

「通波は下がって! アルが相手する!」

『え、ちょっと?!』

 

 さすがに分が悪すぎると判断したアルがドローン群を下げルーポナータと対峙した。

 

「アルは基本的に戦闘職! キャットキャットガールと召は任せたよ!」

『!、分かった!』

 

 アルの聖魔連合での役職は農業部部長兼戦闘員だ。

 対して通波は情報部部長、戦闘はできるがメインではない。

 そのうえドローンの数は有限だ。ドローンが尽きた瞬間、通波は武器を失いメインの通信手段がなくなる。

 

『お前が次の相手か?』

「そうだよ。さっさと倒して、キャットガールと召を起こさないとね! 世界樹(ユグドラシル)!」

 

 アルが自身の魔法である植物魔法を発動させ身体を根で覆っていく。

 そして、中から現れたのはルーポナータほどにまで巨大化したアルだ。

 

『巨大化か…』

『いっくよ~!』

 

 巨大化した身体から放たれた拳がルーポナータの顔面にヒットする。

 

『この…』

『キャットガールたちのところへは…行かせない!』

 

 そのままルーポナータを掴み抑え込む。

 両者のパワーは拮抗しており、取っ組み合っての殴り合いに移行した。

 

『アル…、こっちも早くしないと』

  

 メインドローンのカメラが横になっている二人を捉える。

 

『二人とも外傷は無し、だけど過呼吸に冷や汗…、ひょっとして精神操作系?』

 

 キャットガールは組み込まれているプラナリアの遺伝子による再生力、召は霊体という体質の影響により物理的ダメージはほぼ受けない。

 一応キャットガールは脳震盪でダウンさせることはできるが、そもそも気絶させられた理由は眼の光を見たからである。

 そのため考えられる可能性は、ルーポナータの眼の光を直視したことによる精神攻撃だ。

 

『精神攻撃系で考えられるのは洗脳、幻影、感情操作…、考えられるのは幻影、というより悪夢かな? 何にせよ確かめないと。メモリースキャンは…お姉ちゃんは霊体だからキャットガールが先ね』

 

 ドローンからアンテナを伸ばしキャットガールの脳をスキャンする。

 そして、通波がいる通信室の画面にキャットガールが見ている夢を映像で映し出す。

 

『…っ、あのクソオオカミ、よくもこんな惨い悪夢を…』

 

 映像の中のキャットガールは檻に入れられ鎖で貼り付けにされていた。

 その周りでは聖魔連合メンバーが罵倒し続けている。

 ”この無能が””何であんたなんて拾ったんだろう?””鬱陶しい近づくな”等の、現実の本人なら言うはずの無いセリフだが、画面越しに見ているだけの通波も気分を悪くするほど惨い。

 さらに言えば、キャットガールは自身の魔法であるデータバンク魔法の副作用により全てのことを記憶できる。

 仮に悪夢の中で起こった出来事も記憶できていたとすれば今後の活動にも支障をきたしかねない。

 

『くっ、早く起きて!』

 

 キャットガールの両耳にスピーカーを当て爆音を流す。

 しかし、耳から出血しただけで起きるそぶりも無い。

 

『これでも起きないの!? 他の方法は…あ、いや…うん、キャットガール、ごめん!』

 

 ドローンのミサイルをキャットガールの頭部に狙いを定める。

 

『導火線は抜いたから爆発はしないはず、ファイア!』

 

 発射されたミサイルは狙い通りキャットガールの頭部を圧し潰す。

 キャットガールのデータバンク魔法による記憶は脳ではなく魂に記録される。そのため理論上は頭を吹き飛ばしても問題ない。

 そして、精神操作系の魔法が作用するのはよほど特殊な魔法でない限り脳だ。

 脳を吹き飛ばせば起きる可能性が高い。

 

『お願い…起きて!』

 

 押しつぶされたキャットガールの頭部が再生していく。

 

「─が、はぁ、はぁ、はぁ、あ、あれ、ここは…」

『よかった、目が覚めた』

「…そうか、私、あのオオカミの光を見て…、あ、ああ、ああああああああ!!」

『ちょ?! っ、やっぱ記憶か!!』

 

 意識を取り戻したキャットガールが突如として発狂しだす。

 やはりと言うべきか、先ほどの悪夢の記憶が残っていた。

 

『お、落ち着…は確か逆効果だったはず。…ごめんキャットガール!』

「痛っ!?」

 

 通波はマシンガンでキャットガールの四肢を撃ち抜く。

 撃ち抜かれた痛みによりキャットガールが一瞬止まった。

 その隙に両肩をドローンのアームで掴む。

 

『キャットガール、コッチは現実! 夢じゃない!』

「はぁ…はぁ…、ゆ、通波さん? す、すいません…」

 

 通波の呼びかけによってキャットガールの意識が安定する。

 これで一人目の応急措置は完了した。

 

『次はお姉ちゃ─『召喚(サモン)・八世通波』─ん、…は?」

 

 突如として通波の視界が変わる。

 先ほどまでいた通信室から打って変わり辺り一面廃棄物の山となっている場所に転位した。

 つまり、地下エリアである。

 

「え、なん─」

「通波通波通波通波通波通波通波通波通波通波通波通波通波通波─」

「ちょ、お姉ちゃん!?」

 

 ルーポナータの精神攻撃から目覚めていた召が通波に抱きつく。

 召の目は虚ろになっており、体全体から黒いオーラが溢れ出す。

 

「通波、もうどこにも行かないよね? 勝手にいなくなったりしないよね?」

「…あ~、ひょっとして私がいなくなる悪夢を見た?」

「…うん」

「っ、あのクソオオカミ、よくもお姉ちゃんのトラウマを!」

 

 召は通波がいなくなることがトラウマとなっている。

 そのトラウマを、ルーポナータは悪夢という形で無理やり掘り起こしたのだ。

 それこそ、通波本人を召喚してしまうくらいにはメンタルにダメージを受けてしまった。

 

「しょ、召さん落ち着いてください」

「そうだよお姉ちゃん。ほら、私はここにいるよ」

 

 通波が召の頭を撫でる。

 頭を撫でることは人を落ち着かせるのに有効だ。

 実際に召の呼吸が少しずつ落ち着いてきている。 

 

「お、落ち着きましたかね?」

「…えぇ、通波、すいませんいきなり召喚して」

「いいって、それより起きて良かったよ」

『ねえちょっと! いい雰囲気なとこ悪いけどコッチ手伝ってよ!』

 

 通波が要救助者の二人を起こしている間にルーポナータと戦っていたアルが声を上げた。

 アルの方の戦いも激化しており、世界樹(ユグドラシル)で生成した右腕が千切れている。

 

「アル、今どんな状況?!」

『え、通波?! 何で…いやそんなのは後、ある程度ルーポナータの体力削ったよ!』

 

 ルーポナータのボディの至る所に凹みがあり、左前脚が関節でない箇所が折れ曲がっていた。

 

「ナイスアル! そのままクソオオカミ倒せない?!」

『無理! 倒しきる前にアルの体力が尽きる!』

 

 実際アルの体力は既に尽きかけている。

 世界樹(ユグドラシル)の巨大化を保つためのエネルギー、ルーポナータからのダメージ、目から放たれる赤い光の注意などにより、肉体的にも精神的にも疲弊していた。

 

「召さん…」

「えぇ…」

 

 キャットガールと召が自身の得物を構え前へと踏み出す。

 

「ん? 二人ともどうし…ひっ?! 二人とも目が怖いよ!」

 

 二人の目は光を失っており、何としてでも殺すという意思が読み取れる。

 

「アル、あのオオカミを蔦で拘束し離れてください!」

『え? わ、わかった! ウッドウィップ!』

『な、離せ』

 

 アルの根本から伸びた樹木がルーポナータに絡みつく。

 ルーポナータの拘束を確認したのち、アルは世界樹(ユグドラシル)を解除し地中へと撤退した。

 

「召さん、先手は私に譲ってください」

「わかったわ。ただし止めはもらうわね」

「わかりました。…すぅ、アーカイブリプレイ」

 

 キャットガールは爪を三本伸ばし、爪を刀に見立て居合の構えを取る。

 データバンク魔法、その効果はこの魔法所有者が受信した外部情報を全て魂に記録するというものだ。

 普段キャットガールはこの魔法を百猫夜行で分裂した分身体と情報共有するために使用しているが、データバンク魔法の真骨頂はそこではない。 

 この魔法の真に恐ろしい点は、あらゆる外部情報を完全に記憶できる点に加え、その記憶に一切の上限が無いところだ。

 これにより、一度見た体術など身体機能だけで再現可能な技に限り完全なトレースが可能となる。

 つまり、究極の見取り稽古だ。

 

「─行きます」

 

 キャットガールは縮地を使いルーポナータに向けかなりの速度で接近していく。

 

「古代流居合─竜鎌!」

『が?!』

 

 そして、ルーポナータの脇を通り過ぎる瞬間に両後ろ足と腹を切り裂いた。

 しかし、両後ろ足は切断したが腹は横一文字に傷がついただけにとどまっている。

 

「─っ、体が…」

 

 直後、キャットガールの身体の至る所から血液が噴き出す。

 古代流居合─竜鎌は東京グッドドリームホテルにて、メンデルキャップがウルスマキアに対し放った技である。

 メンデルキャップは七曜の円卓の中でも武闘派、そんな彼女の技を模倣したためにキャットガールの体が耐えられず悲鳴を上げたのだ。

 

『この!』

 

 しかし、こちらが満身創痍でも敵は待ってくれない。

 拘束を振りほどき、残った前足を器用に使いキャットガールへと向かっていく。

 

「召さん!」

「任されました」

 

 だが、ルーポナータが攻撃を再開する前に召が背後から強襲する。

 

『!、なん─』

「おとなしく眠りなさい、八雲冥世斬(やくもめいよざん)!」

 

 召の横一線がルーポナータの腹を捉え、完全に胴を切断した。

 致命傷を食らったルーポナータはそのまま地面へ倒れこむ。

 

「お、お姉ちゃん今のは?」

「はぁ…はぁ…、今の私が召喚魔法無しで放てる最高火力の技です。ですが、使った後の疲労が─」

「召さん後ろ!」

「…え?」

 

 見ると、切断したはずのルーポナータが右前足のみを使用し立ち上がっていた。

 振り上げた左前脚は召に狙いを定めている。

 ルーポナータへ攻撃した際に実体化した影響と疲労により、召は霊体化による回避を行えない。

 

「お姉ちゃんから離れろ! レーザーポインター!」

『ぐっ!』

 

 通波のツバメⅡから放たれた光がルーポナータの眼球に直撃する。

 しかし、ルーポナータの攻撃は止まらない。

 

「お姉ちゃん!」

『一人でも道連れ─』

食人植物(カニバルリーフ)!」

 

 もうだめかと思われた直後、腕を巨大な口に変化させたアルが地面から飛び出しルーポナータを丸呑みにする。

 

『な、なにが─』

 

 当然ルーポナータも抵抗しようとするが、視覚情報が失われていたため何が起こったのか把握することができずそのままアルの腹の中へと消えていく。

 

「あ、アルさん?」

「うぇ…鉄の味がする」

「ま、まあ実験体らしいですし、切った感じ骨格に鉄使われてましたからね」

「…なに、この空気?」

 

 こうして、地下での戦いはアルの捕食というまさかの結末で幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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