死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「と、とりあえず先ほどパソコンがあった場所へ戻りますか?」
「そ、そうね」
元々アレイオス孤児院へ侵入した理由は、謎の地下エリアを調査するためだ。
なのに、バルバラ・B・イノセンティに見つかり、なぜかフェルオン、ルーポナータと連戦するはめになってしまった。
本来これらの戦闘は想定されていない。
そのため一度情報を得るためにパソコンのあったメインフロアへと向かう。
なのだが─。
「…やっぱり壊れてますね」
「だね~」
ルーポナータと初めて接敵したエリアに設置されていたパソコンのみピンポイントで破壊されていた。
恐らくバルバラ・B・イノセンティがルーポナータに指示し破壊させたのだろう。
「通波どうします、これ?」
「う~んダメだね、完全に壊されてる。データの復元は無理そう」
通波がツバメⅡから伸ばしたコードをハードディスクに刺して確認するが、結果は予想通り。
このままでは調査が無駄足に終わってしまう。
「それではどうしますか?」
「そうだね…このまま帰るのもな~」
「ねえ通波、これ使えないの?」
アルが持ってきたのはLANケーブルの挿し口から伸びるケーブル─の切れ端だ。
切断面は荒いが、反対側は未だ床に埋め込まれ続いている。
「これは…ナイスだよアル!」
「えへへ、そう?」
「そうだよ! これでハッキングできる!」
通波は即座にLANケーブルの切れ端を修復し、ツバメⅡへと差し込む。
「どうです通波、できそうですか?」
「ふっふっふ、いけるよ。それじゃあしばらく集中するから話しかけないでね」
「わかりました。あ、転送装置渡しときますね」
「ありがと」
先ほど召が召喚した転送装置を受け取り、通波は解析を開始する。
ツバメⅡからキーボードとモニターを取り出し、凄まじい速度でセキュリティを突破していく。
「なんというか…すごいですね。指が分身して見えますよ」
「だね。…さすがに暇じゃない?」
「まあ情報収集は通波さんに丸投げしてますしね」
調査組として組まれている面々で情報処理の分野に精通しているのは八世姉妹だ。
そのうち召は多少勉強しただけで素人に毛が生えた程度であり、実質的に通波しかハッキングによる情報収集を行えない。
「それでは私たちは周囲を警戒しますか?」
「ですね、他にやる事も─《ドンッ》─通波さんどうしました?!」
「いや、ちょっとね…」
いきなり通波が近くにあった机を殴ったことで視線が集まる。
「あのクソアマが、反撃してきた…」
ツバメⅡのモニターは赤字で大量のERRORの文字を映し出す。
幸いまだ通波の操作は受け付けており、完全にはツバメⅡを乗っ取られてはいない。
しかし、このままでは操作が乗っ取られるのも時間の問題だ。
「何かヤバそうだけど、大丈夫なの?」
「まだ大丈夫、コッチもギアを上げるだけだからね!」
通波の指の動きが更に加速する。
その甲斐あってか、画面のERRORの文字が次から次へと消えていく。
「よし、これで─《ビーッ、ビーッ》─あ~もう! また!」
またしてもERRORの文字が表示される。
しかも前回とは異なり、ツバメⅡを破壊する目的で何十何百というコンピューターウイルスとシステム破壊プログラムが送り込まれてきた。
「対処できそうですか通波?」
「ちょっとマズいね。このままじゃ本部がやられる」
アレイオス孤児院自体はローカルネットワークだが、そのネットワークにアクセスしているツバメⅡは聖魔連合本部のネットワークシステムに接続されている。
そのためツバメⅡ経由でコンピューターウイルスが聖魔連合本部に侵入した場合、とてつもない被害が出てしまう。
しかし、通波は慌てない。
この程度のサイバー攻撃は魔法少女連盟時代に何度も対処してきた。
「ちょ!? 本当に大丈夫なんですか?!」
「これでもコンピューターの天才って言われてきたんだよ」
通波はツバメⅡからヘッドホンを取り出し、外部からの音を完全に遮断する。
「ふう…。八世通波の実力、舐めないでほしいね!」
送り込まれたコンピューターウイルスやシステム破壊プログラムを凄まじい速度で解析していく。
もはや指の動きは常人では捉えられない速度にまで到達している。
更に、電磁波魔法を使用し直接打ち込んでいるため、実際に打ち込まれているコードの数は想像の数倍以上だ。
「はぁ…、ああなった通波はしばらくの間一切反応しません。通波の作業が終わるまで警戒を続けましょう」
「そうですね。アル、根から伝わる振動で敵の進行とかわかりますか?」
「ちょっと待ってね…!、何か来てる!」
アルがそう叫んだ直後、螺旋階段の通路を除いた二つの通路の鉄格子が開く。
そして、通路の一つから大量の大人ほどのサイズのアニマトロ二クスに動く人形やぬいぐるみの軍団がキャットガールたちに向かって進行してくる。
「ん~、あの程度なら私の百猫夜行でいけますね。フェルオンより一体一体は弱そうですし、数の暴力で何とかなりそうです」
「いや待って、もう片方からデカいのが来る!」
「照らしてみます。
召が照明器具を取り出しもう一つの通路を照らす。
「見えますか…、は?」
明るくなって見えたのは、こちらに向かってくる一体のティラノサウルスのアニマトロ二クスだ。
しかし通常のアニマトロ二クスとは異なり、皮膚に当たるパーツが付いておらず機構部分がむき出しになっている。
そして極めつけは、両肩に当たる箇所に取り付けられた機関銃だ。
「…キャットガール、アレ対処できます?」
「無理ですよあんなの! 質量が違いすぎます!」
ティラノサウルス型アニマトロ二クスはルーポナータより大きい。
キャットガールがいくら分裂して突撃したとしても踏みつぶされるのが落ちだ。
『グオォォォォ!!』
「!、アル!」
「
機関銃から放たれた弾丸をアルが根で防ぐ。
そして勢いそのままにティラノサウルス型アニマトロ二クスの方の通路を根で塞ぎ押し返した。
「これでコッチは大丈夫、だけど…」
「分かってます、もう一方の通路は任せてください。百猫夜行!」
分裂したキャットガールが魑魅魍魎の軍団へと衝突する。
やはり個々の強さはキャットガールの方が優勢だ。
しかし、やはり数の力は偉大であり全体で見れば拮抗していた。
「
だが、キャットガールには召が付いている。
召は魑魅魍魎の軍団の頭上からナイフを投下していく。
アニマトロ二クスには弾かれあまり効いていないが、着せ替え人形やぬいぐるみはボディが布製のためよく刺さる。
「っ、数が、数が多い!」
二人がいくら破壊しようと通路の奥から無数に湧き出して終わりが見えてこない。
「ちょっと! こっちもマズいんだけど誰か手伝えない!?」
「無理ですよ!」
更に、アルの方もマズいことになっている。
ティラノサウルス型アニマトロ二クスがアルの根を大きな顎で噛み砕きながら進行してきたのだ。
未だ姿は見えてこないが、メインフロアへ到達するのも時間の問題である。
「通波! まだ作業終わらないのですか!? いい加減持ちませんよ!」
「─よし終わった!」
今にも防衛ラインが決壊するかと思われた矢先、通波の声がメインフロアに響く。
その声は、撤退の合図でもある。
「総員撤退!」
「「「了解!!!」」」
通波はLANケーブルからコードを抜き転送装置のボタンを押す。
そして他メンバーも次々とボタンを押し、調査組全員の撤退が完了した。
「…無事撤退できましたね」
調査組は無事情報部部室へと帰還してきた。
そのことに安心したのか、全員がその場に座り込む。
「ふ~、ギリギリだったね」
「ですね」
実際アルの言う通り、あと数十秒遅れていたらティラノサウルス型アニマトロ二クスに根を破壊尽くされていた。
「…よし、レイヴン達にもコッチが撤退したって伝えたよ。だからもう少しで─」
「よ、戻ったぞ」
「戻って来たね」
通波の後ろにワープゲートが生成され、レイヴンたち地上組が帰還する。
「ふ~疲れた~」
「あぁ、そうだな。俺は早く酒呑みてぇよ。肴は…後で考えるか」
「白夜さんは少し酒を控えた方がよろしいのでは? まあ疲れたのは同意しますが」
「…レイヴン、地上で何があったの? レイヴンたちの実力ならそんなに疲れないでしょ?」
「縛りプレイしてたんだよ。ゲノムプラスの効果調査のための」
地上組の目的は調査組とは異なり、白夜と民守のゲノムプラスの効果の調査だ。
そのため魔法を使って早々に蹴散らしては意味が無いと、ゲノムプラスの効果をメインで使用するという縛りプレイで戦っていた。
当然、普段とは異なる戦闘スタイルだったため疲れや被弾が増える。
一応勝てはしたが、ダウンさせるのが精々だった。
「あ~それは確かに疲れるわ。それで、データはとれたの?」
「それは灰崎さんに確認してくれ。灰崎さん、ドローンの回収を俺に任せて研究所の方行っちまったし」
「そうするよ」
「で、そっちはどうだったよ?」
「あ、そのことなんだけど─」
「失礼します、通波さんはいらっしゃいますか?」
突然、情報部部室の扉が開きセレネが入室してくる。
その手には大量の資料を持っていた。
「セレネ、頼んでたのできた?」
「はい。これがこちらです」
「通波、それは?」
「アレイオス孤児院の資料、ちょっとトラブルがあってね、セレネにもハッキング頼んだんだ」
通波の言うトラブルとは、大量に送り込まれたコンピューターウイルスとシステム破壊プログラムのことだ。
コンピューターウイルスとシステム破壊プログラムは絶えずバルバラ・B・イノセンティが送り付けていたのだが、それらを送り付ける速度を通波の処理する速度が上回ったため、LANケーブルを物理的に切断し撤退してきた。
そして、隙を見て通波はセレネに連絡しアレイオス孤児院の情報を抜き取るよう指示。
ツバメⅡが接続されている間は外部からの侵入が可能となるため、この指示が実行できた。
その結果見事、通波がバルバラ・B・イノセンティを引き付けている間にセレネが情報を抜き取ることに成功したのだ。
「え、通波そんなことしてたんですか?」
「うん、流石に並列処理の限界だったからね。さてさて、肝心の情報は…は?」
「おいおいどうした通波? そんなにヤバかったのか?」
「バルバラとベギニング、
資料に書かれていたのは、”アレイオス孤児院院長、バルバラ・B・イノセンティ””デッドオーシャン海賊団大頭、ベギニング・A・サファイア””
仮にこの同盟が実現した場合、魔法少女が出現した時から今日までに存在していたどの悪の組織よりも巨大組織になることが予想される。
「おいおいそいつら、ハロウィンの時のパーティーで俺やレイヴンに絡んできた奴らじゃないか」
「そうだな。通波、他なにが書かれてる?」
「えっと、他重要そうなのだと…、同盟については関係ないけど、一点ヤバそうなのがある」
「どんなのだ?」
「国際的に、”魔法少女は戦闘時、あらゆる法律に抵触しない”って法律が作られる予定が─《ドンッ》─え、オウルどうしたの?!」
突如、オウルが部屋の壁を殴った。
相当な力で殴ったのか、拳から血液が流れる。
「いや、ごめん。ちょっとあらぶっちゃった」
「…あ~、こっちこそごめん。オウルの境遇考えたらそうだよね」
レイヴンやオウルの両親は魔法少女の魔法に巻き込まれて死んだ。
その魔法少女は一切法的責任は一切問われていない。
その時でさえ魔法少女の法的責任は曖昧だったのに、資料にある法律が制定されたら魔法少女による殺しが正当化されてしまう。
オウルの怒りは、被害者遺族として正当なものだ。
「…オウル、逆に考えろ。その法律が制定されれば、俺たちは魔法少女を一切気にせずにぶっ殺せると」
「?、いつも気にせずに殺して…あ~そういう事ね。守る法もなくなると」
もし”魔法少女は戦闘時、あらゆる法律に抵触しない”という法律が制定された場合、魔法少女に対し”暴行罪”や”侵入罪”を犯したとしても全て無罪放免となるだろう。
しかし”魔法少女は戦闘時、あらゆる法律に抵触しない”という文章を文面通り受け取った場合、魔法少女に対し戦闘中に行った犯罪も全て無罪放免となる。
なにせ、魔法処女を守る法も機能しなくなるからだ。
「まあかなり無理やり解釈した場合だけどな、実際は異なるかもしれないし。ま、いま考えても仕方ないだろ。通波、セレネ、抜き取った情報整理しといてくれ、後で目を通す」
「了解」
「承知しました」
「とりあえず今やるべきことは全部かな。それじゃ、解散! 各自ゆっくり休むように」