死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


第十四章 百鬼武闘大会
初授業


 

 アレイオス孤児院への調査から一週間ほどが経過した十一月中旬。

 聖魔連合としての予定は特に無く、久々にまとまった時間が空く。

 そのため前々から予定されていたことを行うために、レイヴン、オウル、白夜、民守の聖魔連合トップの四名はある場所へと向かっていた。

 

「開校式の時に来賓として来て以来だが、こんな感じになってたんだな」

「確かに白夜は興味ないとこ行かないもんな。とはいえ、俺も数回しか来たことないが」

「まあ用が無いと来ないもんね。民守さんは結構な回数来てるんだっけ?」

「えぇ、この聖魔グリモワール学園へ何名か教鞭をとれる者を派遣する予定ですので、その相談の際に何回か訪れましたね」

 

 聖魔グリモワール学園、聖魔連合海上研究試験場のある人工島と伊吹城城下町のちょうど半分の地点に新設された人工島に一か月ほど前に開校した中世ヨーロッパの城をモチーフとして建築された学園だ。

 なお、入学式は来年四月の予定なので生徒はまだいない。

 レイヴン、白夜、民守の三名を理事長とし、校長と教頭にライズ・オムニシエンスと天魔を据えた教育機関になる。

 実際は名ばかりの理事長だが、組織の体裁を保つためなので問題ない。

 通う予定の者は、主に堕天大聖堂で産まれた地下育ちの者や、幼くして改造され白夜のもとに集まった者、そしてライズの下で魔法を学びたい者たちだ。

 教員たちも白夜と民守の下にいた教鞭をとれる者が行う予定である。

 

「それで、今日はライズから魔法学ぶんだったか?」

「あぁ。年末まで特に予定が無いからな。習っとくなら今がいいだろ」

 

 聖魔グリモワール学園は学び舎であると同時に魔法研究施設の側面も持つ。

 恐らく、今この世界における最先端の魔法研究開発所だろう。

 一応聖魔連合海上研究試験場が工学面での研究開発施設なので棲み分けはできている。

 

「それで、講師はライズさんと聞かされていますが、どの教室で行うのですか?」

「たしか3-201とか言ってたような…ここだね」

「お、全員来たようだな」

 

 四人が訪れたのは十人ほどしか入れない小さな教室。

 ライズは、その教室の黒板の前に立っていた。

 

「ライズ、今日はよろしくな」

「あぁ。それでは席についてくれ」

 

 そう言われ四人は席に着く。

 

「何かこういう雰囲気久々だな」

「え、白夜って学校通ったことあるのか?」

「おい失礼だなレイヴン。まあかなり前だが一応な」

「え、以外」

「失礼な兄妹だな本当に! だけど何も反論できねぇ!」

 

 白夜は自身の過去を黒榊兄妹にあまり話していない。

 なので当然学校へ通ったことがあるなんて初耳だ。

 その上普段は酒呑みなので真面目に学校行ってた印象なんてまるでない。

 非常事態やしっかりしなきゃいけない場面でのカリスマはすさまじいが、普段の言動がアレなのだ。自業自得でしかない。

 

「皆さんその辺で、ライズさんも困ってますよ」

「「「は~い」」」

「ありがとな民守。では、聖魔グリモワール学園記念すべき第一回授業を始めよう」

 

 号令の後、ライズは黒板に文字を書いていく。

 

「さて、ではまずは基礎となる四属性魔法について説明していく。とはいえ流石に知っていると思うので簡単にだがな。四属性魔法とは火、水、土、風魔法の四種の魔法を指す言葉だ。四種の魔法はそれぞれ水は火に強く、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強いといった相性がある。が、属性なぞ対人戦じゃ当てにならん」

「は? 何でだ?」

「単純に、大抵の場合当てさえすればどれも変わらんからだ」

 

 魔法を打ち合い空中でぶつけた場合、同程度の技量なら当然有利属性に軍配が上がる。

 しかし、術者本人はそうはいかない。

 火魔法で燃やす、水魔法で窒息させる、土魔法で圧殺する、風魔法で切り裂くなど、術者に当ててしまえば相性など無に帰す。

 

「なるほどな。たしかにそれなら関係無いな」

「まあ不利な属性相手では苦戦することは否定しない。それに属性が重要になるのは対モンスター戦だし、強い者はどんな魔法を所持していようが強い。しかし、だからと言っておざなりにしてはいけない。例を上がると、火属性魔法使いに火魔法を食らわせたとしても効かないことが多い。何故だか分かるか?」

「…あ~、なるほど、耐性か」

「レイヴン正解だ。相手が使う属性と同じ属性の魔法は基本的に効果が薄い」

 

 ライズが例として上げた火属性魔法使いは、火や熱に耐性を持っていることが多い。

 そんな相手に火をつけた所で、対して効果は無いだろう。

 

「あ~、言われてみれば確かに」

「また、四属性魔法を使用するにあったって我が最も重要だと考える要素は周囲の環境だ」

「環境ですか?」

「各属性に対応した物が周りにある環境で戦う四属性魔法使いは手強い。属性に応じた現象又は物体を生み出す分の魔力を魔法の操作に回せるからだ。一番わかりやすい例は水魔法だな、水はどこにでもある」

 

 四属性魔法の主な効果は、各魔法に対応する物質あるいは現象の生成並びに操作だ。

 当然、生成と操作には魔力を必要とする。

 しかし、近くに自身の魔法と同じ物質あるい現象があれば生成分の魔力を操作に回せるのだ。

 ライズの元居た世界では四属性魔法使い相手に戦闘を行う場合、環境に注意しろと教わるくらい重要な要素である。

 

「なるほど。今度から戦闘中は注意してみるか」

「そうしてくれると、こちらも教えた甲斐があるというものだ。さて、四属性魔法についての説明は一通り終わったので、次は固有魔法についてだ」

「お、やっとか。待ちくたびれたぜ」

「まあそう焦るな白夜。別に逃げたりせん」

 

 固有魔法。それは、四属性魔法のどの分類にも属さない魔法だ。

 一般的に、5人に1人くらいの確立で存在するといわれている。

 

「─と、ここまでが我が調べたこちらの世界での固有魔法の認識だが、合っておるか?」

「まあ合ってるよ。といっても、私も魔法少女連盟の受付で説明されただけで詳しくは知らないけどね」

「よかったわい。だが、我が居た世界で近年固有魔法について面白い研究結果が発表されての」

「いったいどんなのだ?」

「固有魔法が、四属性魔法から派生した派生固有魔法と、完全に分類から外れた独自固有魔法に分かれるという説だ。正直、かなり信憑性のある折だと我は思っている。なんせ実例が多いからな」

「…葵さんと茜さんですか」

 

 東祭葵の魔法は雨雲魔法、西祭茜の魔法は炎翼魔法だ。

 それぞれ、水魔法と火魔法に効果が似ている。

 

「そうだ。その他にも灰崎の焼失魔法、酒井菫の毒魔法、ロックの岩石魔法も派生固有魔法に分類される。一応王オウルの生命魔法も派生固有魔法に分類できるかもしれぬが、派生元の分類が向こうでも曖昧なため断定できぬ」

「ちょっと待って、曖昧って言ったけど候補はあるんだよね?」

「あぁ、実は光魔法と闇魔法という一応固有魔法に分類される魔法があるのだが、固有魔法にしてはダブりが多くてな。まったく同じ魔法は無いといわれる固有魔法なのに、数十年おきに全く同じ魔法を使う魔法使いが現れる。もしかしたら、生命魔法は光魔法から派生した物かも知れぬ」

「…確かに、堕天大聖堂の過去の固有魔法を記録した書物にも光魔法と闇魔法の使い手が複数人記録されてましたね」

 

 光魔法と闇魔法。両方ともゲームなどの創作物では四属性魔法に加えた基礎的な属性に分類されることが多い。

 しかしサンプルの少なさ故、分類がいまだはっきりしていなかった。

 

「ひとまず固有魔法自体の解説は以上だ。他に聞きたいことはあるか?」

「一ついいか」

「何だレイヴン?」

「なぜ固有魔法持ちは四属性魔法を習得しにくいんだ?」

「…我の仮説だがいいか? 如何せん向こうの世界でも統計して見た結果修得しにくいといわれているだけだからな」

「構わない」

「…魔法は魂に刻まれているという話を前にしたな」

「そうだな」

「我の仮説というのは、魂に刻める魔法に上限があり固有魔法の場合、占める量が多く四属性魔法を新たに刻めるスペースが無いのではというものだ」

 

 四属性魔法の術式は解析すると割と簡素であり、四種全部紙に書き起こしても教科書一冊分程度で済む。

 しかし固有魔法は異なり完全に解析しきれない魔法も多く、解析して他者も修得できるよう書物にするとなると図鑑一冊でも足りないほどの量となる。

 実際、スペースシャトルの燃料にするため解析した毒魔法も未だ完全には解析しきれていない。

 

「…確かにそれなら色々納得できるが、サンプル足りなくないか?」

「だから、この後授業として四人に協力してほしいことがある」

「協力してほしいこと?」

「あぁ、固有魔法持ちが他の魔法をどれほど修得できるのか。その実験にな」

「「「!!!」」」

「ライズ、それマジで言ってんのか?」

「鬼である白夜の前で嘘は付かん」

 

 固有魔法所持者による四属性魔法の修得。

 レイヴンも四属性魔法を使うことはできるが、それは口寄せ魔法の効果によるものだ。修得はしていない。

 

「おいおい、もしそれが実現出来たらかなり戦力強化できるぞ!」

 

 聖魔連合の上位勢は大半固有魔法持ちだ。

 そのため固有魔法の強みである初見殺しが聞かない相手には優勢を取りずらい。

 しかし四属性魔法を習得できればサイドアームとして活用でき、戦略の幅も更に広がる。

 

「しかし、あまり期待はするなよ。向こうの世界でも固有魔法を持ちながら四属性魔法を習得した者は数パーセントしかおらんのだから」

「だけどゼロじゃないんでしょ。なら修得しようとした方が得じゃん」

「ま、そうだな。実験や研究においても、やらぬよりやった方が良い」

 

 そうしてライズは机の下からある物を取り出す。

 

「ライズさん、それは?」

「これは我が作った属性判別水晶だ。これに触れれば、触れた者の使う魔法の属性が分かる」

「おい、それ固有魔法持ちに使っても意味ないんじゃないか?」

「話は最後まで聞け。いいか、確かに白夜の言う通り固有魔法持ちに使っても意味は無い、通常ならな。しかし、この水晶は精度を高めることで固有魔法持ちが触れたとしても僅かに使用する適正のある四属性魔法を調べることが可能となった」

「!、マジか」

「さあ、いったい誰から触れるか決めてくれ」

 

 

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