死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
「よし、じゃあコロシアム建築開始するぞ!」
「「おぉー!!」」
「では、頑張っていきましょう」
エキシビションマッチの開催が決定した一週間後、連合トップたちによるコロシアム建築が開始された。
開始に一週間かかった理由は黒榊兄妹の学校とビルドの設計により時間が無かったからである。
設計自体は二日ほどで終わったそうだが、黒榊兄妹が学校へ行ってる間に装飾などの細かな箇所を凝ってしまったそうな。
「ねぇねぇレイヴン、アルはいつも通りマングローブで補強すればいい?」
コロシアム建築はトップの他にアルも作成のため招集している。
というのも、アルは毎回人工島を新たに作成するたびにマングローブで土地を補強していた。
「だな。とはいっても今回は造る物が物だし場所が場所だからいつも通りにはできんがな」
今回コロシアムを建築する人工島は伊吹城のあるエリアから百メートルほど離れた場所に作成する。
イメージとしては出島に近い形だ。
そして、住宅地に近い場所にいつもの方法─ワープゲートから大量の岩石と土を投下し押し固める方法を取ると、岩石らに押し出された海水が高波となり住宅地に被害が出てしまう。
そのため、今回は岩石らを投下する前に一手間加えることでこの問題に対処する。
「じゃあ早速始めるぞ。民守頼むぞ」
「わかりました。バリアウォール」
まず民守が中をくり抜いた円錐台の形をした上面がサッカー場の四倍はある巨大バリアを出現させ、人工島を創るスペースを覆う。
これでバリアの中と外の海水が隔離できた。
「次は俺の仕事か。ワープゲート」
そして、バリアン内の海水をワープゲートで抜いていく。
転送先は目の前に広がる海の目視できないほど遥か彼方だ。
目視できないほどの距離ならば、着水時に発生する波の影響もない。
そうでなくとも、なるべく海面近くに転送するよう細心の注意を払っている。
二時間後…
「レイヴンまだ~?」
「もう少しだ。…よし、終了!」
「じゃ、次は埋立だな」
「あぁ。アル、出番だぞ」
「任せて!」
「それじゃあ行くぞ。ワープゲート」
「シードシャワー!」
続いてバリア内に大量の巨大岩石と土、マングローブの種子を投下していく。
この作業を行うことで、コロシアムを建築する人工島を作成する。
しかしこの作業だけでは中に空気が混じってしまう。
後からマングローブで補強するので普段はこれでいいのだが、造るのがコロシアムなのでこのままでは耐久に不安が残る。
なので、ここから一つ作業を加えることで解消していく。
「オウル、中見た感じどうだ?」
「だいぶ溜まってきてる。そろそろ白夜の作業に入っていいと思う」
「お、そうか。それじゃあ、行くか!」
その作業を行うべく白夜はバリア内へと飛び降りた。
当然このままでは地面に激突してしまうので、空中を蹴り速度を落として着地する。
「さて、それじゃあ…磐石崩し!」
白夜は海底に積もった土に触れる。
すると、地面の粒子同士の摩擦力が限りなく零に近くなり岩石の隙間に入り込んでいく。
こうすることで更に地盤が磐石となった。
「白夜、まだまだ土投下していくから埋まるなよ」
「そんなポカしねぇよ!」
「そうか。ま、そうだよな。じゃ、どんどん投下するぞ!」
「了解!」
四時間後…
「…ねぇ兄さん、まだ終わらないの?」
「私もバリアの維持がきつくなってきたのですが…」
「アルも疲れた~」
「いや俺もきついんだって」
「だよね~。白夜〜! 後どれくらいかかりそう!?」
「今だいたい三分の一くらいだ!」
「マジで?!」
「いやどれだけ広いと思ってんだ!」
円錐台型に展開されたバリアは、上面だけでサッカー場約4面分だ。
当然、底面はさらに広い。
そのためほぼ半日作業を行ってもまだまだ掛かる。
更に、民守に関してはバリア維持のため持ち場を離れられずそれに合わせ全員昼休憩すらしていない。
一応オウルに回復してもらってはいるが、精神的にキツイ物はキツイのだ。
「とにかく、民守のバリアを解除できない以上、このままぶっ通しで作業するぞ!」
白夜の号令の元、人工島作成作業を続ける。
さらに六時間後…
「やっと…終わった…」
「で…すね…」
「疲れた…」
「取り敢えず酒呑みてぇ」
「お疲れ~」
人工島の埋立に要した時間、延べ十二時間。
普段の人工島は数日に分けて行う上、海面に岩石を投下したのち上から土を盛るだけだが、今回はいつもより強度が居るため行程が多かった。
その上、途中の休憩が許されなかったために疲労も多い。
「じゃ、明日からコロシアム本体の建築に入るか」
「おま…白夜元気すぎだろ」
「過去に一週間くらい不眠不休で戦ったことあるからこれくらい余裕だ」
「いや過去に何があったんだよ」
「機会があったら話すよ。で、アル、今日最後の仕事できそうか?」
「むり~」
「じゃあ私がやるよ」
アルの最後の仕事というのは土の中に埋めたマングローブの種子を発芽させ、円錐台型に盛られた土を固めること。
種子の発芽には様々な条件が必要だが、魔法を使えばそれらをある程度無視できる。
逆に言えば、地中深くに埋まった種子は魔法を使わないと発芽しない。
そのためアルの魔法で発芽させようとしていたのだが、アルが種子の生成で疲れ切ってしまったためオウルが変わりを務める提案をした。
「そうか。じゃあ頼む」
「了解。
オウルは魔法を発動させ、マングローブを成長させる。
「よし、民守さんもうバリア解いていいよ」
「わかりました。バリアウォール解除」
ある程度成長させたところで民守のバリアが解かれ、海水が地面に染み込んでいく。
しかし白夜により隙間なく土を盛られ、更に予めマングローブを成長させていたことで土の崩落は無い。
「ここから更に成長させる!」
オウルは再度魔法を発動する。
魔法にかかったマングローブは、バリアが取り除かれたことで根が海中へ飛び出す。
更に海面に近かったマングローブからは主幹が伸びていき、円錐台の上面を囲うように青々とした葉が生い茂った。
「これでやっと土台ができたな」
「だね。だけど時間が時間だから残りは白夜の言った通り明日だね」
朝の九時から作業を始め現在時刻は二十一時。
きりがいいこのもあって、この日は解散となった。
◇◇◇
翌日、時刻は九時。
「さて、今日から本格的にコロシアム建築だが…」
「ビルドが書いた設計図、かなり本格的だな」
「だね。それにどの魔法でも公平になるようになってる」
書かれた設計図は古代ローマのコロッセオをモチーフにされており、外周が人工島の沿岸すれすれになるほど大きい。
本家古代ローマのコロッセオとの違いは、中央のバトルエリアが水場で囲われていることだろう。
このような設計になっている理由は、百鬼武闘大会で多く使われているルールが区切られた範囲から相手を押し出す又は戦闘不能にするという相撲のようなものだからだ。
周りを水で囲めば場外の判定が分かりやすくなる。
しかしこのままでは水魔法使いが有利になってしまうため、ガスによって燃え続ける火柱、火柱により発生する上昇気流、バトルエリアの足場として土を使用するなどの対策がされていた。
「材質の指定は水回りとバトルエリア、電気配線以外は無さそうですね」
「水回りと電気配線はロックやビルド、灰崎が率いる技術者集団が予め別途作ってくれてるから、後は外装を作るだけだ。だがな、何で作るよ?」
「…木材で造るのが安牌じゃない?」
「ま、そうだよな」
モデルにした古代ローマのコロッセオは石製だが、あいにく建築チームに石を出せる者は参加していない。
白夜は多少できるが、建築するコロシアムのサイズ的に出力不足だ。
その点、木材を好きな形に即座に変形できる者がこの場には二人いる。
「だけど問題は、ここまで大きいと細かいディテールができるか不安なんだよね。アルはできそう?」
「う~ん…、できなくはないけど、かなり時間かかるよ」
いくら木材を好きな形に変形できるとはいえ、それは細かな物体に限る話だ。
木材が大きければ大きいほど、細かな形状は雑になってしまう。
「それなら、私がバリアでケースを作りましょうか?」
「あ~。確かにそれなら簡単だけど、できるの?」
「問題ありません。
「…確かに」
型枠栽培と呼ばれる栽培方法がある。
スイカなどの果実にブロック状のプラスチックケースなどを嵌め、好きな形にするという栽培方法だ。
今回はプラスチックケースをバリアで、果実を樹木に置き換え、コロシアムを建築していく。
細かなディテールの問題も、先ほど民守本人が申した通り問題ない。
「それなら頼むぞ民守さん。それと、これが設計図だ」
「…これほどのサイズですと、一発では無理ですね。数回に分けて行いましょう」
「わかった」
民守の一度に出せるバリアの量には限界がある。
とはいえ戦闘では早々限界が来ることはないが、今回建築するコロシアムは大きすぎた。
「それでは行いましょう」
「あ~民守待ってくれ。コロシアムより先に橋作ろうぜ。先に移動手段確保しちまおう」
「…確かにそうですね」
現在五人が建築予定地に来る方法は船だ。
それだと何かと不便なため、先に陸路を確保しておく。
「では改めて、バリアケース」
民守が魔法を発動する。
生み出されたバリアは樹木の型枠となるよう橋の形を形成していく。
しかし、バリアは対岸に届かず五十メートルほどの位置で止まった。
「?、何で半分くらいで止まった?」
「それが…、思ったより水深があり、橋の主柱にかなりバリアを使用してしまいました」
「それなら仕方ないよ。それじゃ、ここからは私たちの番。アル、やるよ!」
「了解!」
「「
オウルとアルが二人同時に同じ魔法を発動する。
直後、魔法の掛かったマングローブがバイアのケース内を埋め尽くしていき橋の形に形成されていく。
「バリア解除します」
マングローブがいきわたったことを確認し、バリアが解除される。
後に残ったのは、マングローブでできた見事な橋だけだ。
「ナイスだ三人とも。この方法で残りもやっちまおう」
「このペースだと…、十二月前半に終わればいいくらいか。ま、百鬼武闘大会には間に合いそうだな」
「じゃあどんどん造って行こう!」
◇◇◇
そして時は流れ、十二月中旬─
◇◇◇
「「…やっと終わった~!!」」
「無事に間に合いましたね」
「三人ともお疲れ~」
「しっかし、やっぱデカいな」
目の前には一ヶ月ほど前には無かったコロシアムがそびえ立っていた。
水場以外は木材百パーセントだが、魔法で強化されており強度はコンクリートにも匹敵する。
その上、使われている木材はマングローブであり塩にも強い。
定期的に手入れすれば数百年は持つだろう。
水回りや電気配線も取り付けられており、水洗トイレ、待合室のクーラーも完備している。
「ひとまず、これで完成でいいんだよね?」
「いや、最後の仕上げがある」
「仕上げ?」
「はい、私が行います」
白夜の後ろから現れたのは聖魔連合保健部部長、エルフのセイだ。
「セイ! 何でここに?」
「バトルエリアにとある魔法を施すためです。ともかく、一度バトルエリアへ向かいましょう」
「だな」
そんなこんなで全員でバトルエリアへと向かう。
バトルエリアは周りを水辺で囲われているため、向かうには折り畳み式の橋を展開する。
「なあセイ、結局のところ何するんだ?」
「そうですね…。簡単に言うなら試合での不幸な事故を避ける魔法陣を描きます」
セイは自身の指先を少し噛み切り、サッカーコート二面分はある円形のバトルエリアの端に血液を垂らしていき、円の内側には魔法陣を描く。
「─これで良し。すいませんオウル様、レイヴン様、今描いた血液の魔法陣を消えないようにしたのち、上から土で覆ってくれませんか?」
「?、それくらいなら…」
「問題ないよ」
黒榊兄妹は直ぐにセイの指示通りの作業を施す。
この作業があったためかバトルエリアには現在土が入っておらず、土台の岩肌がむき出しになっている。
そのため染み込むことは無いだろうが、念のためだ。
これで処置を施したことで、魔法陣が消えることはなくなった。
「これで作業は終わったが、結局これは何だ?」
「今描いた魔法陣は、魔法陣内で戦闘した際、死亡する瞬間に全回復するというものです」
「それは…強すぎるのでは?」
「はい、なので魔法陣を描かないと発動しないのです。ですがこれだけしないと、百鬼武闘大会では毎年死者が出てしまいますので」
百鬼武闘大会は戦闘狂の発散も兼ねているので、それはもう試合が死合いと言っていいレベルで白熱する。
そのため、開催の度セイがこの作業を施しているのだ。
まあ、今回描いた魔法陣は今後絶対に消えることは無いだろうが。
「そうだったのか。じゃあ後で地下に魔法陣描くようの部屋でも作っとくか。処置施したとはいえ不安だし」
「だね。だけど、いったんコロシアムは完成したでいいんだよね?」
「あぁ。全員よく頑張ったな!」
これで、百鬼武闘大会の会場は完成した。
後は新年を迎えるだけである。
コロシアムのイメージは、ワンピースドレスローザ編のコリーダコロシアムです。