死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
『さあ、次はAブロック一回戦ラスト試合! 早速選手に登場してもらいましょう!』
そうして、Aブロック第四試合の選手が入場してくる。
なお、バトルエリアに残留していた毒はセイによって叩き起こされた菫によって回収された。
『東コーナー! 聖魔連合一の科学者兼技術者! 今回はどんな発明品を見せてくれるのか?! 灰崎京也!』
「さて、初めて実戦投入するこれ、どこまで通用するか」
『対する西コーナー! 天から降り注ぐは七色の竜の息吹! ランサー
「いよっしゃぁ! ついに俺の出番だ!」
灰崎とアギトがバトルエリアへと上がる。
アギトの装備は通波の紹介にもあった通り槍の一種であるトライデント。武器名は三叉槍
かつてアギトを改造した悪の組織が作成していた武器であり、武器の格でいえば白夜の曇天・幽と同程度だ。
対して灰崎が持ち込んだのはアタッシュケースのような金属製の鞄が一つ。
目立つような持ち込み物はそれだけであり、他は腕輪型立体ホログラム変装装置【幻】のようなあまり目立たない物ばかりだ。
「灰崎、そのアタッシュケースが開発したっていう物か?」
「あぁ。とはいえ、展開するのは始まってからだがな」
「ならとっとと始めようぜ。言い方的に、男のロマン詰め合わせみたいな奴なんだろ」
「そんなに見たいなら始まったら直ぐに見せてやろう。天魔! そういうわけだから試合開始してくれ!」
『了解した。それではAブロック最終試合…始め!』
「アクアブレス!」
試合開始の合図と同時にアギトが水を吐く。
アギトのブレス魔法は口からに限り、あらゆる属性攻撃が可能というものだ。
あらゆる属性とは基本の四属性の他にも、闇、光、氷、電気のブレスも可能である。
「ジェットランナー」
しかし灰崎は慌てない。
両足に履いた噴射口がついた金属製のブーツ─ジェットランナーを使い落ち着いて空中へと退避する。
「幻、起動」
そして腕輪型立体ホログラム変装装置【幻】を発動し姿を消す。
「これが九縄から聞いた姿を消すっていう道具か。だけど、無差別攻撃なら関係ない! ウィンドブレス!」
対抗するようにアギトがバトルエリア全体に風をたたきつける。
いくら透明になろうが質量が消えているわけではない。
《─ドンッ!》
現に空中にいた灰崎がバランスを崩し、アギト後方へ墜落し砂埃を上げた。
「そこか!サンダーランス!」
その砂埃目掛け、アギトは口から放った電気をまとわせた三叉槍H.A.D.M.を投擲する。
ブレス攻撃は属性攻撃のため、一部を除き質量が存在しない。
灰崎のことだから当然属性攻撃では早々壊れるような物は作らないだろうと判断したアギトは、三叉槍H.A.D.M.による大きい質量を持つ遠距離攻撃を選択した。
「どうだ!?」
何かに命中した三叉槍H.A.D.M.から溜まっていた電気が放電される。
機械は原則高圧の電気に弱い。
そのため今の電撃により腕輪型立体ホログラム変装装置【幻】の機能が停止したのか、砂埃の奥に人影が姿を現す。
「…たく、やっぱ電気系で攻撃してきたか。対策しといてよかったぜまったく」
しかし、砂埃の奥から出てきた灰崎には傷一つない。
その代わり、全身に入場時には装備していなかった武具が増えていた。
「それが作ったっていう物か、けっこうかっこいいな!」
「ありがとな。アタッシュケースサイズに収納するのけっこう大変だったからな、嬉しいよ」
灰崎の両足には重工なパーツが取り付けられ、両腕と連動して動く巨大な機械の腕に取り付けられたガトリング砲を構える。
背中には移動補助のジェットパックを背負い、エンジンから低い排気音がコロシアムに響く。
そして、特に目を引くのは灰崎の顔を覆っているゴーグルだ。
外部からは灰崎の目を視認できず、ターゲットの位置を捕捉できる。
「ゴリアテ型パワードスーツ
「っ! マズい!」
灰崎はアギト目掛けガトリング砲の引き金を引く。
A.L.T.E.R.から無数の弾丸が放たれるが、アギトは飛行し上空へと回避する。
「っ、だめだな。冷却機能が足りなかったか」
「今だ!」
威勢よく連射していた灰崎だが、A.L.T.E.R.のガトリング砲がオーバーヒートしたことにより攻撃の手が止まった。
その隙にアギトは三叉槍H.A.D.M.を回収し、再度上昇し様子をうかがう。
「さて…どうしたものか…」
見たところA.L.T.E.R.に近接武器は搭載されていないが、巨大な機械の腕は見た目通りのパワーを有している。
捕まったらただでは済まない。
そのうえ、見えていないだけで近接武器を隠し持ってる可能性を考慮すると迂闊な接近は愚策だ。
「…やはり
「!、冷却完了! ファイア!」
アギトの口から吐き出された闇のエネルギーとガトリング砲の弾丸がぶつかり合う。
しかし、闇のエネルギーが弾丸を飲み込んでいく。
闇とは破壊だ。ただの弾丸で太刀打ちできるはずがない。
「ジェットパック、脚部ブースター起動!」
灰崎は機体に取り付けられた移動補助パーツを使い重厚な機体を動かす。
その巨体とは裏腹にかなりの速度が出ており、アギトのダークブレスを余裕をもって回避する。
「っ、これが闇の力か」
ダークブレスが着弾した場所は初めから何もなかったかの様に抉れていた。
いくらA.L.T.E.R.に各種属性に対する耐性を施しているとはいえ、直撃すればただでは済まない。
「だけどそんな力、連発はできないだろ」
「ちっ、やはり気付くの早いな!」
アギトはダークブレスの発動を止める。
ダークブレスは破壊力、攻撃範囲、攻撃速度、どれをとっても高水準だ。
そんな技をはじめから使わなかったのは、非常に疲れるからである。
そうじゃなかったら、初手ダークブレスぶっぱで大体の勝負の決着は付く。
(しかしどうするか…、四属性への耐性はA.L.T.E.R.に搭載できたが他の属性はまだ耐久チェックができていない。ダークブレスが切れたとはいえ他は使えるだろうし、このままじゃ千日手だ)
灰崎、アギトともにメインの攻撃手段は遠距離だ。
しかし、それでは両者ともに決定打に欠ける。
何せ、両者ともに機動力があるため互いの攻撃を容易に避けてしまうのだ。
「…こちらから攻めるか」
灰崎はA.L.T.E.R.の移動補助パーツの出力を上げ空中へと飛び立つ。
黒榊兄妹や天魔、西祭茜のような翼を持つ者ほどの機動力はないが、速度の方は同程度。
一気にアギトへ距離を詰めていく。
「近づいてくるか。それなら迎え撃つまでよ!」
アギトが近づいてくる灰崎に三叉槍H.A.D.M.の穂先を向ける。
真向から三叉槍H.A.D.M.とゴリアテ型パワードスーツA.L.T.E.R.がぶつかり合った場合、壊れるのはA.L.T.E.R.の方だ。
「A.L.T.E.R.、防御システム起動」
しかし、灰崎とて無策ではない。
A.L.T.E.R.を取り囲むうように電磁バリアを展開する。
電磁バリアはその名の通り電磁気でできたバリアであり実体が存在しない。
「これで数発は防げる。そして、エネルギーブレード起動」
灰崎はA.L.T.E.R.に取り付けられたボタンを押す。
すると機械の腕が変形し、光り輝く巨剣が現れる。
「これで切り裂く!」
「ならばこちらは串刺しだ!」
エネルギーブレードと三叉槍H.A.D.M.が鍔迫り合う。
パワーはA.L.T.E.R.が上であり、徐々にアギトが押されていく。
「くっ、コールドブレス!」
このままではマズいと判断したアギトは超至近距離からブレスを放つ。
しかし、ブレスは事前に展開されていた電磁バリアによって阻まれる。
「無駄だ、このまま場外へと押し出す」
「…ふふ、無駄ではない!」
「なに? …っ、そういうことか!」
電磁バリアに覆われているのは操縦者である灰崎だけだ。
機械の腕は電磁バリアで保護されていない。
そのため、コールドブレスの冷気を受けた機械の腕が徐々に凍り付いていく。
「ファイアブレス!」
アギトは凍った機械の腕目掛け炎を放つ。
金属に対し急激な温度変化をさせると熱衝撃という現象が発生する。
この現象により脆くなったエネルギーブレードは三叉槍H.A.D.M.によって破壊された。
「ちっ、だが!」
灰崎は即座にガトリング砲に持ち替え構える。
「この距離なら躱せない!」
「ぐっ!」
発射された弾丸はアギトを捉える。
胴体は流石ドラゴンと言うべきか、あまりダメージは見られない。
しかし翼はそうはいかず、無数の穴が開く。
未だ飛行能力こそ健在だが、もう自由な移動は不可能だ。
「ジェットパック、脚部ブースター全開!」
そのままA.L.T.E.R.でアギトへと突撃し、電磁バリアを押し当て場外へと突き進む。
「っ、穴の開いた翼ではパワーが!」
「お前もう自由に飛行できないからな。これが一番勝率がある」
事実、今のアギトは空中での移動能力だけでなくパワーも落ちている。
このままでは負けるのは必然だ。
しかし、アギトの眼は未だ諦めていない。
勝負はまだ終わっていないのだ。
「さっきこの距離なら躱せないと言ったな。その言葉、そのまま返させてもらうぞ!」
アギトは大口を開けエネルギーを貯める。
この至近距離だ。意図的に外さない限り確実に命中する。
「出来るものならやってみろ、この防御を突破できるならな!」
「そう言っていられるのも今のうちだ! ライトブレス!」
放たれたブレスはまるでレーザーの様に灰崎へと突き進む。
しかし、どんなに至近距離で放とうと電磁バリアにより阻まれる。
「!、光だと!」
だが、灰崎の方も先ほどまで見せていた余裕の表情が消えた。
なにせ光魔法は闇魔法同様サンプルが少なく、電磁バリアで防げるかどうかの耐久テストを実施していない。
今は何とか防げているが、いつまで持つか分からないのだ。
「まあ闇使えるなら光も使えるか。クソッ、これ以上出力出せねぇのに!」
アギトを場外まで押し出すのにかかる時間はあと約三十秒ほど。
本来はもっと早く場外へ出せるはずであったが、翼に穴が空いてもなおアギトが抵抗し続けたのが原因で思ったより時間がかかっている。
いつまで電磁バリアが持つか分からないため即座に場外へ押し出したいが、今出している出力が最大だ。
意思なき機械は、設定された
《…ジジッ…ジ…》
「っ、もう限界か!」
そして、ついに電磁バリア発生装置から煙が上がり始める。
それと同時に電磁バリアにも罅が入り始めた。
「ウオォォォォ!!」
それを見たアギトが更にライトブレスの威力を上げる。
既に電磁バリアの破壊は秒読みだ。
「…これ以上ま無理か。緊急離脱システム起動!」
灰崎は自身の脇に設置した赤いボタンを押す。
すると、A.L.T.E.R.の主要パーツから灰崎が発射される。
《バキンッ》
直後、ライトブレスがA.L.T.E.R.を貫いた。
後数秒遅れていたら灰崎に直撃していただろう。
そして、操縦者を失ったA.L.T.E.R.は空中で静止した。
「はぁ…はぁ…これで終わりだ!」
「だな。だからこれは置き土産だ。A.L.T.E.R.、自爆しろ!」
地面に着地した灰崎がその手に持っていたボタンを押す。
「…は?」
アギトが反応した直後、A.L.T.E.R.は爆音を黒煙を上げながら爆発した。
その衝撃は凄まじく、アギトを場外へと吹き飛ばすには十分だ。
「これで場外に出てくれればいいんだが…」
現在バトルエリアはA.L.T.E.R.が爆発の際に吹き上げた黒煙により視界が遮られている。
そのため、アギトがどうなったか確認が行えない。
「…よくも、やってくれたな…」
「ちっ、残りやがったか」
「ギリギリだがな」
黒煙の中からアギトの声が響く。
そして黒煙が晴れた中から姿を現したのは、バトルエリアの淵に三叉槍H.A.D.M.を突き立て耐えたアギトの姿だった。
アギトの脇より下はバトルエリアから落ちかけており、本当にギリギリだったのだろう。
「さて、どうする? 続けるか?」
バトルエリアへよじ登ったアギトが問いかける。
「…いや、俺にもう真っ向から戦える攻撃手段は無い。降参だ」
『灰崎京也の降参を確認。よって勝者、アギト!』
コロシアムに天魔のアナウンスが響く。
これで、Aブロック第一試合が全て終了した。
「たく、最後の自爆は驚いた。どんな威力してんだよ」
「まあ最終手段だからな。火薬も目いっぱい積んでたし」
「火薬だと…、普通にドン引きだぞお前」
※タイトル『情報漏洩』にて、白雪の魔法鏡のリキャストタイムを一月から一年に変更しました