死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
『さて、色々トラブルあったけど次の試合行くわよ!』
あの後、何とか葵をアルから引きはがしバトルエリアから退場させ、次の選手が入場する。
今回の選手たちは両者ともに飛行できるため、橋を使わず空からの入場だ。
『東コーナー! 死から蘇った吸血鬼! それと後で正月何してたか教えてね! 紅の貴公子、ブラッド!』
「ふ~、
『やめてください死んでしまいます』
ブラッドの呟きに対し、通波は即座に謝罪の放送を入れる。
通波は一応戦闘できるがそれはリュック型通信機ツバメⅡありきであり、戦闘で使用したとしても接近戦には弱い。
つまるところ、遠距離も近距離もある程度カバーできるブラッドとはとてつもなく相性が悪いのだ。
そもそも、今回に関しては揶揄った通波が悪い。
『さて、続いて西コーナー! 現代の河童は空を泳ぐ! スイマー
「うし、やるっすよ」
対して西コーナーは河原。
普段はよくアギトとつるんでおり、海で漁に出ている。
戦闘スタイルは空中又は水中での接近戦、そして周りの流体を操作しての遠距離攻撃だ。
『さ、これで選手紹介が終わったし、天魔、試合開始の合図お願いね』
『それは良いが…通波、何処へ行こうとしている?』
『あはは…、ちょっとお手洗い─ヤバ、ちょっと急ぐね!』
通波は急いで実況席を後にする。
直後、実況席の扉が勢いよく開く。
『天魔さん! 通波さんどこ行きました!?』
息を切らしながら入室してきたキャットガールの声が、切られていなかった放送に乗りアークコロシアムに流れる。
かなり切羽詰まっており、放送に気付いていない。
『通波か? それなら先ほど用を足しに行ったが─』
『有難うございます!』
行先を聞き出したキャットガールが勢いよく退室する。
「…何だったんすか? あれ?」
「…さぁ?」
『…ごほん。それでは気を取り直して、第二試合…始め!』
「いやこのノリで始めるのかよ!」
先ほどの騒動をガン無視して試合が開始された。
なお、この事態にバトルエリアの二人は付いていけてない。
「何というか…ブラッドの彼女すごいっすね」
「いやまだ元花は彼女じゃ─」
「ダイビングスタート」
先ほどの放送内容でブラッドの気を逸らした隙に河原が急接近する。
「─は?」
ブラッドは辛うじて目で追えているが、回避は間に合わない。
「振空拳!」
振動させた空気の拳ブラッドの腹に食い込む。
辛うじて貫通まではいかなかったが、踏ん張り切れず後方へと吹き飛ぶ。
「がはっ!」
「っ、一撃で沈めるつもりだったんだんすけどね」
「辛うじて防御間に合ったんだよ!」
ブラッドの腹をよく見ると血が固めて覆われている。
回避は間に合わなかったが、血液魔法による防御は間に合ったのだ。
ちなみに防御が間に合ってなかった場合、
「だけど吐血はしている。確実にダメージは入ってるっすよね!」
「そうだよ!」
二人は勢いをつけ一気に距離を詰める。
「ブラッディブレイド!」
「振空拳!」
血が固まった剣と振動した空気がぶつかり合う。
二人の対戦相性は良くも悪くも無い。
互いに近距離、遠距離攻撃共に完備しているため打ち合いになっても互いに対処できる。
魔法の相性も血液と風であり、火と水の様な相性差は存在しない。
つまりこの勝負、地力での勝負となる。
「これを捌くか!」
「おいおい口調がか”ス”が抜けたぞ! 余裕ないんじゃないか?!」
移動速度だけで言えば河原の方が上だが、部位単位の速度─腕の振りなどはブラッドの方が上だ。
河原の肌に少しずつ切り傷が増えていく。
「それはそっちもだろ!」
しかしブラッドの方も無事ではない。
現在ブラッドは初手に受けた攻撃によって内蔵にダメージを負っている。
そこからこれ以上出血しないよう、傷を塞ぐために血液操作のリソースの一部を内蔵へ回しているのだ。
そのため攻防に全リソースを割けておらず、河原の攻撃を完全には防ぎきれていない。
「っ、ああそうだよ! だからとっととくたばれ!」
「それはお断りだ! クイックターン!」
このままでは泥沼になると判断した河原が距離を取る。
「逃がすか!」
ブラッドも河原を追い飛び立つ。
これにより、戦場は地上から空中へと移行する。
「ブラッドトラキングプレッサー!」
先手を取ったのはブラッドだ。
指から放たれた血の光線が河原へと迫る。
以前までは追尾機能は無かったが、放った血液を操作することで高速追尾光線へと進化した。
「っ、
無論、河原も無抵抗ではない。
高速で空中を泳ぎながら振動する空気の塊を放ち血液を打ち落としていく。
「…やっぱこのまま撃ち合っても膠着状態になるだけか。ならどっかで攻めないとな」
現状は攻めに回っているブラッドがやや有利と言った所。
しかしブラッドの血液操作精度はあまりよくなく、尚且つ河原が素早いため攻撃が全然当たっていない。
このままでは無駄に血液を消費するだけだ。
魔力を血液に変換できるとはいえ無限ではない。
「ブラッディネイル!」
ブラッドは血液を爪に纏い、河原へと接近していく。
速度は河原の方が早いため追いつけないが、そこは爪に纏わせた血液を伸ばすことでカバーだ。
「食らいやがれエ!」
「みすみす喰らうわけないだろ!」
河原は更に速度を上げることで距離を取る。
接近戦に切り替えたことで攻撃がより苛烈になり、戦況は更にブラッド側に傾いていく。
「オラオラ! 逃げんじゃねぇ!」
「俺は逃げてるんじゃない! お前を仕留めるために追い込んでいるのだ!」
「?、なにを言って─《ドォォン!》─がっ?!」
「掛かった!」
突如、ブラッドの周りの空気が破裂した。
身構えていたならともかく、完全に奇襲だったためダメージは計り知れない。
「お、前! 何しやがった!」
「なに、ただ振空塊を設置していただけだ」
「!、そうかさっきのか!」
先ほど河原はブラッドトラキングプレッサーの撃墜に振空塊を放っていた。
その放った振空塊は確かにブラッドトラキングプレッサーを撃墜したが、一部は消えずに空中に停滞していたのだ。
先ほどブラッドがぶつかったのも空中に停滞していた振空塊である。
更に河原は逃げている途中も振空塊を生成していた。
当然、振空塊は空気の塊のため視認できない。
ブラッドは不可視の地雷が大量に浮かぶ空域に誘い込まれたのだ。
「後はひたすら攻撃するだけだ、空流!」
「回─《ドォォン!》─っ、コッチもかよ!」
河原の放った空流は回避できたが、代わり回避先にあった
長時間放置されていたため振動がある程度取れてはいるがダメージはバカにならない。
「もう降参したらどうだ?」
「誰がするかよ。それに、こっちだって策はある」
ブラッドは身体の傷を塞ぐためにリソースを割いていた血液魔法を全て解除し攻撃に回す。
これにより吐血や出血が再発した。
そのため、ここからは短期決戦へ移行する。
「ブラッドボム」
まずは血の塊を生成し空中へと放つ。
その数、およそ百。
「…おいブラッド、まさかこれらを一斉に爆破する気じゃないよな?」
バトルエリア上空には振空塊による地雷が無数に設置されている。
河原の魔法は空中遊泳、空気を水に見立て空中を泳ぐことができる。河原の魔法にとって、空気=水なのだ。
そして、河童は創作物において水を操ることが多い。当然、河原も水を水魔法使いほどではないが操れる。
これらのことを利用し、河原は振空塊を生成し設置した。
設置した振空塊は河原の意思で起動させることはできるが、何かが接触しても起動する。
今この場において一番重要なのは、振動自体は河原にも効くということだ。
「そのまさかたよ! 起爆しろ!」
《パチンッ》
ブラッドが指を鳴らしたのと同時に、空中に漂っていた血の塊が一斉に破裂する。
飛び散る血しぶきは空を紅く染めていく。
そして血しぶきは技名に"ボム"と付くだけあってそれ相応の威力がある。
無数の血の爆弾が破裂したことによって生じた衝撃は、設置されていた全ての振空塊を起動させた。
これにより、振空塊が溜め込んでいた振動が空気を揺らす。
「グッ!」
振空塊を設置した河原も振動によるダメージを受ける。
辛うじて回避行動をとれたため直撃こそしなかったが、受けたダメージは少なくない。
「これで地雷処理完了だ!」
「お前…普通こんなことしないだろ!」
ブラッドボムによって起動した振空塊は河原を巻き込んだ。
当然、起動させた張本人であるブラッドもただでは済まない。
今の衝撃でブラッドも大ダメージを受けている。
「あぁ。だけどな、俺はモチーフ的に頑丈なんだよ! ブラッディネイル」
ブラッドのモチーフは吸血鬼だ。
吸血鬼は弱点の攻撃以外は効かない訳じゃないが効きにくい。
具体的には弱点以外の攻撃が0.8倍と言ったところだ。
そのため、一切耐性の無い河原より早く立て直すことが可能である。
「っ、迎え撃つ!
「止めだ! ブラッディクレイドル!」
空気の渦とブラッドがぶつかり合う。
「うぉぉぉぉぉ!」
「はぁぁぁぁぁ!」
この競り合い、勝ったのは─
「グハッ」
「はぁ…はぁ…、届いた!」
ブラッドだ。
ブラッドは風に肌を切り裂かれながらも前進を止めず、体力の尽きるギリギリでブラッディネイルが河原の胴を切り裂いた。
様は耐久力によるごり押しである。
胴を切り裂かれた河原は浮力を失いバトルエリアへと落下していく。
「河原、これで決着か?」
ブラッドは河原の首に手を掛け問う。
両者ともに満身創痍だが、今この状況でどちらが有利は一目瞭然だ。
「はぁ…はぁ…、そうだな。参った」
『河原の降参を確認。よって勝者、ブラッド!!』
「…ふぅ~疲れた~!」
河原の首から手を離したブラッドはそのまま後ろえ倒れこむ。
「おいおい、大丈夫っすか?」
「だ~めだ力入んない、とにかく疲れた。てか河原の方がヤバいだろ」
「最後の一撃は痛かったっすが意識があるだけマシっすよ。まあこっちも自力では歩け無さそうっすが」
「じゃあ二人仲良く担架待つか」
「そうっすね」
◇◇
「そういや何で戦闘中口調変わったんだ?」
「あ、それは単に気合いれただけっす」