死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
『ざ、ざで…づぎのじあいいぐわよ…』
『…それはよいが、その怪我はどうしたのだ?』
『…元花にやられました』
先ほどのBブロック第二試合のブラッドの紹介放送。
その内容でキャットガールこと苗又元花とブラッドこと赤川操との関係を揶揄った結果、試合に出ていなかったキャットガールにボッコボコにされたのだ。
一応通波も逃走を図ったが、聖魔連合において一位二位を争う俊足を持つキャットガールから逃げられるわけが無い。
恋路は犬も食わぬのだ。
『そうか…無理はするなよ』
『問題無い問題無い、セイにある程度治療してもらったからね。それじゃ、、選手紹介行ってみよう!』
そうして、Bブロック第三回試合の選手が入場してくる。
『東コーナー! 黄泉の国から舞い戻った召喚士! 完全私情だけどお姉ちゃん応援してるよ! ファントム、八世召!』
「はぁ。通波ったら、解説に私情を挟んだらダメでしょ」
『それはごめん』
一応通波の役割は司会進行だ。
そのため紹介は公平でなければならない。
まあ、百鬼武闘大会は完全に身内のみの祭りだ。
多少のおふざけがあった方が面白い。
「そうそう、まあやるだろうなとは思ってたけどね」
『だからごめんって』
八世召の紹介中に入場していたもう一人の選手が文句を垂れる。
しかし、放置された身からすれば文句の一つも言いたくなるのは仕方がない。
「わかったなら、あちきの紹介をしておくれ」
『了解! それじゃあ西コーナー! ある時は幼女、ある時は老婆、見せる姿は変幻自在! 九尾の狐、
「ふふん、どんな試合になるのかのぉ」
そうして九縄は年老いた姿へと変化する。
今回の試合は両者ともに真正面から戦闘を行うタイプではない。
アレイオス孤児院の際に召がフロントマンを行っていたのは、バックラインがアルと通波で足りていたからだ。
召本来の役割は後方から召喚魔法による支援である。
サポーター同士の戦闘となるこの試合、今までの試合とは異なる戦いになるだろう。
『それと、今回八世召には一点制約を設けてるわ。お姉ちゃん把握してるよね?』
「しているわ。ある一定の威力以上の物を召喚してはならない、だったわよね」
今回八世召に課せられている制約は召喚物の制限だ。
召の召喚魔法は魔力を対価に存在するあらゆる
早い話、存在さえすれば人類最悪の兵器である核爆弾だろうと召喚できてしまう。
そのため今回の大会において召はナイフや刀、銃などの一般人でも購入できる物の制限は無いが、ミサイルなどの威力の高すぎる軍用武器に制限が掛けられた。
具体的には巡行ミサイル以上の破壊力・殺傷力を持つ兵器を召喚してはならず、それより少し下の対艦ミサイルクラスの兵器は一試合五発までだ。
『さて。紹介も終わったことだし、天魔、合図よろしく』
『わかった。それでは試合を始めるぞ。両者、構え』
天魔の放送が流れ、両者己の武器を構える。
『それでは…始め!』
「
先に仕掛けたのは八世召だ。
足先だけ実体化させ地面を蹴り一気に距離を詰める。
ファントムである召に空気抵抗は関係ない。
「そっちから仕掛けるのね。いいわ、迎え撃ってあげる!」
老婆からいつもの姿へ戻った九縄は両手に自身の武器である二扇一対の鉄扇─
「ならばこちらもだ!
八世召は九縄目掛け
それに合わせ、九縄も鉄扇を広げガードの構えを取る。
「…にぃ」
しかし、そこは九縄クオリティ。
真っ向から攻撃を受け止めるはずがない。
互いの武器どうしがぶつかり合う瞬間、鉄扇に角度を付ける。
「よっと」
「っ」
これにより駄骨は鉄扇の上を滑り、召はバランスを崩す。
その隙に九縄は召の真下へ滑り込む。
「これでも食らえ!」
「ぐっ?!」
「よし、しっかり攻撃が当たるね」
直後に九縄は召の真下に潜り込み、両手を地面につけ召を両足で蹴り上げる。
今回の百鬼武闘大会開催に当たり、出場する幹部全員魂を触れられるようになってもらった。
そうでなければ召に誰も攻撃することができず大会が成立しなくなってしまう。
「この!」
「よっと。こんな攻撃当たるわけないわ」
召の武器である駄骨は薙刀だ。
そのため懐に潜り込まれると詰むわけではないが脆くなり、刀身部分が相手に当たらなくなる。
「さて、今度はこちらから。影分身」
距離を取った九縄の影から大量の分身が溢れ出す。
分身事態に攻撃性能は無いが、攪乱には持ってこいの技だ。
「そんな技、私には効かないわ。
それに対し召が放ったのは駄骨による百裂突き。
影分身の一体一体は軽い投石程度の攻撃で消える。
わざわざ大技を使う意味は無い。
「─そこ!」
突如、召が逆突を放つ。
観客席からは召が何もない場所に攻撃を放ったように見える。
しかし、駄骨は何も無い空間で止まった。
「…っ、よくわかったのぉ」
何も無かった空間が揺らぎ、九縄が姿を表す。
実は九縄、影分身を発動させた直後本体を透明にする技である投影幻影を発動させていたのだ。
「煽られてるようでイラつくからその老人口調止めてくれる? それと、私に姿を隠す系の技は通用しないわよ」
召は駄骨を振るい九縄と追い払う。
アンデッドは死者から復活した種族という関係上、他者の魂を感知できる。
そのため、召には五感に対し働きかける類の幻術は効かない。
「だとしても、召はアンデッドになってから日が浅い方じゃろ。その証拠にまずは五感で反応してから動いてるし」
「っ」
召がアンデッドになったのは約三年前。
生者の感覚だとかなりの時間だが、アンデッドからしたら刹那でしかない。
そのため召は未だに五感による感知と魂による感知に僅かなタイムラグがある。
「そこを利用しない手は無いわ。
九縄は幻影で煙幕を張り姿を隠す。
召は魂で感知できるとはいえ、五感を全く使っていない訳ではない。
多少の目くらましにはなる。
「…確かに九縄の言う通りよ。だけどね、それなら無差別に攻撃するだけよ!
召は空中へと浮かび上がり、煙幕目掛け対艦ミサイルを投下した。
これで召がこの試合で使えるのは残り四発。
九縄の生み出した煙幕は幻影であるため、対艦ミサイルの爆風を受けても霧散することなく停滞している。
「…反応無し。だけどまだ中にいる」
煙幕の無い箇所に九縄の姿は無い。
投影幻影で姿を消した感じも無いため、未だ煙幕の中にいる。
「流石にもう一発使うわけにもいきませんし、別の方法で行きましょう
展開された魔法陣から紫色のガスが噴き出し、バトルエリアを覆いつくす。
ファントムである召は呼吸を必要としない。
そのため、この毒ガスを食らうのは九縄だけだ。
「これで出てきてくれれば─」
「”お姉…ちゃん、苦…しい…”」
「…は?」
突如、召の耳にあり得ない声が入る。
その声とは、放送席にいるはずの八世召の妹、八世通波が毒ガスで苦しむ声だ。
突然のことに召は思考が停止する。
戦場において、思考を止めるのは致命的だ。
「え、何…で? 通波は放送席に─」
「それはあちきの声だよ!」
「?!」
今度は九縄の声が上空から響く。
召が見上げると、灰崎京也が開発したジェットランナーを履いた九縄が召へと足を振り下ろす直前であった。
「いつの間にジェットランナーを!?」
「始めから履いてたよ。幻影で履いてないように偽装していたけどねっ!」
「がはっ!」
九縄の振り下ろした足が召の背中に直撃する。
ジェットランナーのブースターによって加速された踵落としは実体の無いファントムにもしっかりとダメージを通す。
「この…」
「おっと動かないでね」
召が逃走する前に九縄が上から押さえつける。
九縄のモチーフになったのは九尾の狐。狐系の妖怪で最も有名な妖怪だ。
そして九尾の狐は動物系の妖怪である。
当然、通常の人よりパワーは上だ。
人一人押さえつける程度造作でもない。
「なぜ…」
「ん?」
「なぜ、煙幕の中に九縄の反応があった? それと声はどうした?」
「あぁ、それ? それは私の九本ある尻尾の一本をデコイにしたの。前にオウル様が肉体を切り離してるとこ見てね。もしかしたらと思ってやってみたら、案の定引っ掛かってくれたよ」
よく見ると、九縄の九本あった尻尾が八本になっている。
爪や髪の毛などの生え変わるものは別だが、腕などの肉塊は千切れてから少しの間は魂の破片が残るのだ。
召が勘違いしたのはそれが原因である。
いくら後から再生してもらえるとはいえ、躊躇なく引きちぎるのは容易ではない。
召はまさか再生能力持ちでない生者が自切するとは考えていなかった。
「声については、これだよ」
九縄は自身の口元をつつく。
すると幻影による偽装が解かれ、顔の下半分を覆うメカメカしいマスクが現れた。
「灰崎に作ってもらった変声器、イリュージョンコード。あらゆる声を再現できる。元々は投影幻影での変装用だったんだけど、ちゃんと隙を晒してくれたね」
召は過去に自身がいない間に妹である通波を攫われたことがある。
そのため通波の悲鳴や苦しむ声を聞くと無条件で一瞬硬直してしまうのだ。
なお、この召の特性を九縄は知らない。
完全に事故だ。
「ご丁寧に装備の紹介ありがとね。
上空に魔法陣が現れ、対艦ミサイルが投下される。
召喚者である召はファントムだ。魔力や魂を纏わせていない限り物理攻撃でダメージを受けない。
このミサイルでダメージを受けるのは九縄だけだ。
「対策してないわけないじゃん。イリュージョンビデオ」
召の上の九縄の姿が消える。
すると、対艦ミサイルはバトルエリア場外へ向け進行方向を変えた。
「は?」
「召の召喚した対艦ミサイル、あれの追尾機能を弄ったの。ま、あちきの幻影が機械に効くようになったのは最近だからね。知らなくても無理ないよ」
場外へ向かっていった対艦ミサイルが着水し爆発する。
距離は相当離れており、九縄本体は無傷だ。
「さて、ぶっちゃけあちきも攻めあぐねてるの。会話してる間に色々考えたけど、結局倒す手段は無さそうだからね。尻尾の痛みも取れたし、このまま運ばせてもらうよ!」
九縄はジェットランナーのブースターを点火させ、一気に召を連れ場外へと向かっていく。
人を気絶させる方法は脳震盪を起すことや首を絞めるなどいろいろあるが、そのどれもが肉体ありきだ。
ファントムである召を気絶させる方法は精神攻撃や意識を失わせるのに特化した魔法や道具を使う他無い。
一応他にも召を戦闘不能にさせる方法はあるが、ここでは割愛。
「っ、このまま出される訳には!」
召は駄骨をバトルエリアに突き立てる。
しかし、流石に機械の出力にはかなわない。
「ちょっと抵抗しないでよ!」
「いいえするわ。それに九縄、あなたを倒す策は既に張っている!」
「っ、確かに召ならやりかれないね。なら、その策ってやつを発動させる前に場外へ出す!」
更にジェットランナーの速度が上がる。
召も駄骨を更に深く突き刺すが、多少速度が落ちただけで進行自体は止まらない。
「投影幻影、あ、あ〜、"お姉ちゃん、もう諦めたら? 策なんてどうせ無駄だよ?"」
「!、通波の姿と声で、喋るな!」
九縄が幻影を見せ、精神を揺さぶる。
この攻撃を召は無視するとこができない。
距離が近すぎるため、駄骨ではなく拳を握り殴りかかる。
そう、拳でだ。
「ぐはっ! いったいね〜本当に。だけど、手、離したね!」
「!、しまっ─」
「一気に行くよ!」
障害の無くなったジェットランナーのブースターが火を吹く。
もう、邪魔するものは無い。
「残念だったね! もうすぐ場外よ!」
場外がもう目と鼻の先まで迫る。
そこから反撃する時間は、召には存在しない。
「これでお終い─」
「いいえ、もうあなたは策の術中にいます!」
「今さらな─《グサッ》─に…を…」
召が場外へ投げ出されようとした瞬間、地中から飛び出してきた槍が九縄の胸を貫く。
その槍は、骨でできていた。
「全員、出てきなさい!」
召の合図とともに周りの地面が盛り上がり、手下人が姿を表す。
「まさか…その技は…」
姿を現したのは五体のスケルトンだ。
「コールアンデッド、ライズさんが使用するアンデッドを召喚する技よ! 同じアンデッドである私が使えない道理はないわ!」
召の種族はファントムである。
実際の類目に当てはめると、アンデッド目・ゴースト科・ファントム属といったところだ。
そのため召はこの大会のために、同じアンデッドであるライズの技を習得してきた。
このことは召とライズしか知らない。
奇襲にはもってこいだ。
「っ、まだ負けてない!」
九縄は胸に突き刺さった槍を引き抜き距離を取る。
辛うじて心臓への直撃は免れたが、空いた穴からは血が滝のように流れ出す。
「さて、形勢逆転ですね」
「はぁ…はぁ…まだ、手はある! ビーストモード!」
九縄は最後の力を振り絞り、身体を巨大な九尾の狐へと変化させる。
こうなれは、多少の攻撃では怯まない。
「やっぱりゲノムプラスを摂取していたか! 行け、スケルトン!」
召の号令により、スケルトンが九縄へと攻撃を仕掛ける。
『無駄じゃあ!』
しかし、アンデッド作成初心者である召が召喚したスケルトンだ。
九縄の尻尾による薙ぎ払いで簡単に破壊されてしまう。
「っ、強度が今後の課題か。ならば、
『させぬわ!』
「ちょ、何するんですか!?」
召が次の行動へと移る前に、九縄が胴体へと噛み付く。
そしてそのまま、バトルエリア場外へ向けて走り出した。
『この状態では逃げられまい! このまま場外行きじゃ!』
「そうね。だけどね九縄、これは悪手なんじゃないかしら?」
『なぬ?』
「だって、確実に攻撃を命中させられるからよ!」
召は掌を九縄へ向け、構える。
『!、お前─』
「
《ドゴオォォンッ!!!》
魔法陣から発射された対艦ミサイルが九縄に直撃し爆発を起こす。
しかも、召は念には念をと対艦ミサイルを二発発射していた。
その分爆風も凄まじく、召喚した本人である召も吹き飛ぶ。
「っ、痛たた…どうなった?!」
バトルエリアを囲む堀の壁に叩きつけられた召が呟く。
一応この場所に激突するだけならまだ敗北判定にはならない。
しかし、十秒以内にバトルエリア上空へ戻らないと敗北になるため急いで戻る。
「やっぱ煙が凄いわね」
対艦ミサイルの煙によりバトルエリアの視界は最悪だ。
召は魂で場所を判別できるとはいえ、先ほどの切断した尻尾によるデコイのことを考えると迂闊に動けない。
「…そこですね。コールアンデッド」
しばらく見渡すと、召は煙の向こうに魂の反応を見つける。
そこ目掛け、召喚したアンデッドを調査へ向かわせた。
「さて、本当に九縄かどう─」
「ストップストップ! もう決着付いてるから!」
煙の向こうから九縄の声が響く。
しばらくすると煙が晴れ、九縄の姿が現れる。
しかし、その身体には体に開けられた穴は無い。
それに尻尾も九本に戻っている。
これが意味すること、すなわち─
『回復魔法陣の発動を確認。よって勝者、八世召!』
『お姉ちゃんの勝利だ!』
八世召の勝利である。
「いや~ほんと、最後はしてやられたよ」
「私もですよ。許可されているとはいえ、まさかサポートアイテムをあれだけ持ち込んでいるとは」
「本当はもっと持ち込んでたんだけどね。使う暇無かったよ」
九縄は懐からサポートアイテムを取り出す。
サポートアイテムは拳銃、スプレー缶に入っている何か、手錠など様々だ。
しかし、そのどれもが物理攻撃無効の召に効かない物である。
「なるほど、確かにこれでは使っても意味がありませんね」
「でしょ。それと、流石に通波の声を真似るのはやりすぎた。ごめんなさい」
「…別にいいですが。九縄、あなたって性格悪いですけど、変なところで真面目ですね」
「ほっほっほ。ちょっと営業妨害だからやめてね本当に」
「覚えてたらね」