死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
『さて、それじゃあBブロック最終試合兼第一試合最終試合を始めるわよ! それじゃ、入場しちゃって!』
通波のアナウンスを合図に吊り橋が降り、最終試合の選手が入場する。
『東コーナー! 連合内スピードトップ層であり、無限の生を持つ化け猫少女! 聖魔連合諜報部所属、キャットガール!』
「…勝てるかわかりませんが、頑張ります」
『それと、彼氏にいいとこ見せないとね!』
「通波はまだ懲りてないんですか!?」
先ほど通波はキャットガールとブラッドの恋路を煽りボコボコにされたばかりだ。
それなのに再度煽るとは、もはや精神がオリハルコンか何かなのだろう。
『続いて西コーナー! 見るもの全てを切り刻む笑う口裂け女! 聖魔連合の殺戮兵器、
「何ですかその紹介…。まあ事実ですが」
裂は刃物を持つと性格が豹変する。
より詳しく言うと、殺人衝動とでも言うべきもの。
殺人衝動は生まれつきのものではなく外的要因が関わっていると考えられている。
裂がこのような性格になった要因は直属の上司である白夜も知らない。
『今回キャットガールには制約が課されてるわ。キャットガール、把握してるわよね?』
「えぇ、私の場外判定についてですよね」
キャットガールは首元に青色のスカーフを巻く。
材料となっているプラナリアの生態により、キャットガールは分裂することができる。
分裂したキャットガールは遺伝子的には本体と全く同じクローンだ。
これだと場外判定のルール判定がかなり面倒になる。
そのため首元に分身体には無い目印を付けることでこの問題を解決した。
スカーフは灰崎が開発した特殊な物であり、首を切断されようが特殊な機械を使用しない限り絶対に外れない。
「このスカーフを付けている私の本体が場外へ出ない限り場外負けにはならず、本体を切り替える
『把握してるね』
「あの…それより─早く始めようよ! この子たちに早く血をあげたいからさ!」
「!、裂さんはもうやる気ですか」
突如、裂の口調が変わる。
裂の魔法は刃物魔法、効果は身体からの刃物生成、体内での刃物の格納だ。
腰をよく見ると裂の愛刀の柄が頭を出し、腕をクロスさせ握っている。
右腰から出ている鋏の静刃の形をした刀が”
『裂の様子もアレなので、早速始めるぞ』
裂の様子を見て、天魔が準備を促す。
「わかりました」
「とっとと始めて!」
『それでは…始め!』
天魔のアナウンスが流れ試合が開始される。
最初に動いたのは、キャットガールだ。
技を発動させるために自身の右腕を切り捨てる。
「先手必勝、百猫─」
しかし、キャットガールは先に動いただけだ。
「二刀流居合・
「夜行…!?」
分裂が始まるより早く、足裏から刃物を生成し一気に距離を詰めた裂の居合によってキャットガールの首が切断された。
裂は切断したキャットガールの脳に白喰を突き刺す。
「ごんんあこごして…いづづたいだにを…」
「あ、脳が傷つくと言語能力がバグるのね。まあいいわ、聞こえてはいるようだしねっ!」
白喰を振り抜き、キャットガールの頭部とバトルエリアに投げ捨てる。
その間にキャットガールは頭部から全身を再生させた。
無論、
「改めて聞きますが、なぜ私を場外へ出そうとしなかったんですか? 私の再生能力は知ってますよね。私は場外負け以外では─」
「負けないって言いたんでしょ。あんたの再生力なら死亡判定は狙えない、気絶させるには白夜様やオロチ並の精密な技術が必要になるけど私はできない。それに場外向かっても何か対策してたでしょ。だけど、それじゃあつまらない」
裂はキャットガールに紅顎の刃先を向ける。
「こんなに切りごたえのある
「…私を肉塊呼ばわりですか。まあ裂さんはそれが出来かねない実力がありますからね。ですが、私に構ってていいのですか?」
「何を…っ、そういうこと!」
気配を感じた裂は刀を背後目掛け振り抜く。
切りつけたのは分裂したキャットガールだ。
切断されたキャットガールは内臓や血液をぶちまける。
そこから更にキャットガールが分裂していく。
「百猫夜行は、もう発動しているのですよ!」
その言葉と共に周りに散らばった血肉から百を超えるキャットガールが生成され、裂へと向かっていく。
「あははは! いい! 最高! 切り放題じゃない!」
「その目…ゲノムプラスで得た能力ですか」
裂の頭部には二対が三つ、計六個の瞳が正面と左右斜め後ろに現れた。
その瞳は四方八方から迫るキャットガールを捉える。
裂がゲノムプラスによって得た能力はハエトリグモの眼だ。
ハエトリグモはとても視力に優れており、とても小さいながら小型犬並の視力を持つ。
その眼を、裂は常人サイズで獲得した。
ハエトリグモサイズの眼でもかなり視力が良かったのだ。
元となった生物より拡大された裂の頭部の六つの眼は視力2.0を超えており、動体視力にも優れている。
つまり、囲まれたところでその全てに対応できるのだ。
「あははは!」
裂は両手の刀を振るいキャットガールを切りまくる。
一振りで複数のキャットガールを切り続けるが、行進は止まらない。
それどころか、切られるたびにネズミ算式に増えていく。
これが百猫夜行の恐ろしいところだ。
百猫夜行を止めるのならば、増えた分身体を含め外傷を与えずに制圧するか細胞を分裂させないようにしなければならない。
「もっと! もっと!! もっと!!!」
しかし、裂はそんなことなど気にせずに切り刻む。
その上、これだけのキャットガールに一斉に襲われているのにもかかわらず未だにダメージを受けていない。
今裂に付着している血液は全て返り血だ。
「っ、やはり裂さんは強いですね。…集まれ、私たち!」
キャットガールは自身の周りに分身体を集める。
その数は五百を超え、中央付近の分身体は外からの圧力により潰れていく。
しかし、それがキャットガールの目的だ。
押しつぶされバラバラになったキャットガールの細胞一つ一つから、新たなキャットガールの分身体が生まれる。
この際に発生する再生の速度とパワーは凄まじく、障害があれば押しのけてでも再生していく。
そしてキャットガールは発生し蓄積したエネルギーを裂へと向け、一気に開放する。
「百猫夜行・
「!、
蓄積したエネルギーにより発射された大量の肉塊が裂を襲う。
裂も皮膚を刀で覆い防御したが、体積の差が大きく纏った刀ごと覆いつくす。
「一気に再生して圧し潰せ!」
衝突時の衝撃による破裂、そして刀束鎧による切り傷から更にキャットガールが増殖していく。
いくら刀が金属でできているとはいえ、耐えられる圧力には限界がある。
その上これだけ密集していれば刀を振るうスペースなど存在しない。
「この…グハッ…」
圧力により肋骨が折れ、手足が曲がってはいけない方向へ曲がる。
これでもう刀を振るうことができない。
「あの時裂さんは防ぐんじゃなくて避ければよかったんですよ。私たち、そのまま場外へと進め!」
キャットガールの号令で裂を包んだ巨大な肉塊は場外へ向け進行を開始する。
スピードこそいつものキャットガールより遅いが、下手にこのまま圧殺しようとして反撃されるより確実に勝利できる方法だ。
「ごめんなさいね裂さん。あなたとの真っ向勝負は百猫夜行を使っても五分なので、場外判定で確実に勝たせてもら─《ブゥゥゥン!!》─この音は…裂さんの方から!?」
何かの唸り音がバトルエリアに響いた直後、裂を包んでいた肉塊が内側から膨れ上がる。
「
そして、肉塊の中から裂が飛び出してきた。
重低音の唸り音は裂の体から鳴り響き空気を揺らす。
「え、何で動けてるんですか!? それにその姿は?!」
「あ~、そう言えば連合に白夜様が加入してからこれ使うの初めてだったわね」
裂の両肩からは刀が幾重にも折り重なり形成された新たな一対の腕が生えている。
何より目を引くのは、形成された腕から生えている巨大なチェーンソーだ。
「都市伝説・四刀流・飛騨毒龍退治の怪:形態:電鋸! これで、あなたを切り刻んであげる!」
そうして裂は大量のキャットガールをチェーンソーで切り裂きながら本体へと向かっていく。
折れた手足はチェーンソーのチェーンで補強し無理やり動かしている。
しかし痛み自体はあるのか、走ってはいるが最初ほどの速度は無い。
「それならもう一発です。百猫夜行・哀塊死群!」
キャットガールが再度肉塊を放つ。
今度の裂は回避行動も防御姿勢も取らない。
「無駄なのよ!」
裂は向かってくる肉塊へチェーンソーを向ける。
すると、激突した側から肉塊が切り裂かれていく。
チェーンソーの刃は回転している、そのため押し当てさえすれば切れるのだ。
「あなたの再生能力はすごいけど、さっき脳を攻撃したらバグってたわよね。それなら、脳天にチェーンソーを突き刺して切り刻んだらどうなるんだろうね!」
「!、そんなことさせるわけないでしょ! 百猫夜行・
『ギャハハハハハ!』
「!?」
突如、バトルエリアにキャットガールでも裂でもない第三者の笑い声が響き渡る。
見ると、バトルエリアに散らばったキャットガールの肉片が一塊に集まっていく。
そして一塊になった肉片は結合しながら再生していき、手足がと顔が無数に生えた化け物が生み出された。
『ギャハハハ!』
『ギャハハハ!』
そして、生み出された化け物は一体だけではない。
一体生み出すのにキャットガール数百人分の肉塊を使用したとしても、十数体は生み出せる。
『ギャハハハハハハ!』
「あ~もう! 何でこんな切りごたえありそうなの今出したの! もう結構ギリギリなのに!」
実は裂、先ほど折れた肋骨が右肺に刺さってしまっているのだ。
そのためもう長時間は戦えない。
笑屍混再獣全てを相手していたら、先に裂の体力が尽きてしまう。
「それならちゃんと相手してあげてください。
「ちゃんと話聞いてた? 相手してる暇はないの! チェーンワイヤー!」
裂は身体からチェーンを発射し、バトルエリアを囲う堀の壁に突き刺す。
そして、チェーンを巻き取ることで高速でキャットガール本体へと接近する。
「そんな移動方法できたんですか!」
「普段はあんまやんないけどね! 電動・渦裂き!」
「っ、猫爪!」
回転し液体をばら撒きながら突撃してきた裂とキャットガールがぶつかり合う。
が、キャットガールは元々スピードタイプでありあまりパワーは無い。
そのため裂に簡単に両腕を切り落とされる。
「やっぱ脆いわね! 今度こそ脳に突き刺し─」
「させるわけないじゃないですか!」
「なにを─きゃ?!」
キャットガールは切断面を裂へと向け、再生した血液を発射し目つぶしを行う。
いくら頭部に新たな眼ができたとはいえ、狙った眼は元々あった一対の眼だ。
目つぶしされれば一瞬だが怯む。
「おらぁ!」
「がっ」
しかし、スピードタイプのキャットガールにとっては一瞬さえあればいい。
生まれた隙にキャットガールは腹に高速の蹴りを叩き込む。
「笑屍混再獣!」
『ギャハハハ!』
そして、蹴り飛ばされた裂を笑屍混再獣が数体がかりで押さえつける。
笑屍混再獣のパワーは凄まじいく、比べるだけなら白夜と同程度だ。
「こんの…」
「無駄ですよ。刃物生成されて抵抗されたら敵いませんから笑屍混再獣の皮膚は骨で固めています。とはいえ時間かければ復活しそうですので、止めにしましょう」
キャットガールは爪を伸ばし構える。
狙うは裂の頭部だ。
「裂さんはさっさと決着を付ければよかったんですよ! 猫爪!」
長く伸びた爪が裂の頭部に突き刺さる。
爪は肉を抉るように深く潜っていき、裂の頭部を貫通─
「…? な、何で…」
しなかった。
キャットガールの爪は頭皮から二センチほど突き刺さった位置で止まっている。
「いったん抜いて…抜けない!」
「…それは私が固定しているからね!」
「裂さん!」
そう、裂は頭蓋骨から極小の刃物を生成し受け止め、爪を巻き込んで刃物を生成することで固定したのだ。
体内で刃物を生成となると自傷ダメージを受けそうだが、裂は体内に刃物を格納できるためその心配もない。
「ところでキャットガール、私の魔法は刃物魔法よね」
「それがどうしたって言うんですか! とっとと離さないともう片方の手で首を切断─」
「その副次的効果で、刃物の付属品も作れるのよ。刀の柄とかチェーンソーのモーターとかね。そこで問題、さっき私がまき散らした液体は何でしょ~うか?」
「!、まさか!」
キャットガールは即座に周囲の匂いを確認する。
すると、バトルエリアにツンと鼻を刺すような揮発臭が充満していた。
「正解は…ガソリンでした!」
「笑屍混再獣、今すぐ裂を止め─」
「遅い!」
裂はチェーンソーの刃を回転させながらバトルエリアへ突き刺す。
直後、チェーンソーのガイドバーどチェーンの摩擦によって発生した火花と巻き散らかされたガソリンによって、バトルエリアは一瞬で火の海へと変わった。
「ギャー! 熱い熱い熱い熱い!」
「あははは! うまく行ったぁ!」
発火点である裂と接触していたキャットガールも当然のことながら火達磨になる。
当然点火させた裂も火達磨になるが些細な問題だ。
そして、この状況はキャットガールにとってかなりマズい。
「たしかキャットガールって炭化した細胞からは再生できないんだっけ?!」
笑屍混再獣の拘束が緩んだ隙に裂は頭部に突き刺さっていたキャットガールの右腕を切断する。
当然直ぐに再生が始まるが、皮膚が既に炭化しており思ったように再生されない。
普段はこういう事態に陥ったとしても
『ギャハハハハ!』
「もう無駄なのよ!」
そして再生できなにのは何も本体だけではない。
百猫夜行によって生み出された分身体、笑屍混再獣が次々と崩れ去る。
「何で裂さんは耐えれてるんですか! あなたも燃えてますよね!」
「それを言うならキャットガールもでしょ!」
キャットガールの耐久力は再生ありきだ。
今耐えれているのは、炭化した皮膚の下に再生能力を集中させているからに過ぎない。
裂の方が耐えれている理由は、魔法の副次的効果だ。
生成する刃物の強度を鍛えるために、鍛冶によって鍛えられた刃物を体内に格納している。
その影響で裂の身体の成分は皮膚の触感を残しながら金属の成分に近くなっているのだ。
このため裂は、金属の発火点に到達するまで燃えることはない。
今燃えているのは裂にかかったガソリンだ。
なお、燃えないだけで熱いのだが、それでも正気を保っていられる裂の精神性もだいぶ可笑しい。
「さて、とっとと決着付けましょ!」
裂は発射したチェーンをキャットガールの左右の地面に突き刺す。
「四刀流・─」
「っ、アーカイブリプレイ・─」
「
「竜鎌!」
両者の技がぶつかり合う。
しかし、片や片腕の欠損、片や全身大炎上、どちらが押し切るのかは想像に容易い。
「だからさぁ、この状態で勝てるわけないじゃん」
「あ…が…」
技の押し合いに勝ったのは裂だ。
裂のチェーンソーには切断されたキャットガールの生首が突き刺さり貫通している。
チェーンソーの刃は絶えず回転し続けており脳が再生した側から破壊さるため行動できず、炎上している刃物で首を切断されたため切り口が炭化し身体の再生も不可能だ。
それでもなお生存しているのは流石の生命力だと言えるだろう。
「天魔、試合どうすればいい」
『─今しがたすり合わせが完了した。キャットガールが大会ルールの戦闘不可の重症に該当すると判断。よって勝者、裂!』
「あははは! ─ふぅ…疲れましたね」
刃物を全身に生成し炎を消したのち、自身の全武装を解除した裂はいつもの落ち着いた性格に戻る。
それと同時にキャットガールの脳に刺さっていたチェーンソーも外れ、脳も再生していく。
「─はぁ…負けましたか」
「私の勝ちですね。ですが…、やった私が聞くのも何ですが大丈夫ですか?」
裂はキャットガールの生首を拾い上げる。
脳の方はチェーンソーが回転し続けたおかげで細胞が炭化しきっておらず直ぐに再生した。
が、首の方は未だ再生できていない。
「一応大丈夫ですよ。ですが動けないので医務室まで運んでくれませんか?」
「まあ私がやったことですし運びますよ。それに担架も入ってこれないでしょうし」
未だにバトルエリア全体は巻き散らかされたガソリンによって炎上している。
こんな場所に非戦闘員が入ってくるのは無謀もいいところだ。
「それじゃあお願いします」
「わかりました」
そして裂はキャットガールの生首を持ち、バトルエリアを後にした。