死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


百鬼武闘大会 ─ ジャール・プティツァ

 

『さて! 残すもあとエキシビション含め四試合のみ! それじゃ、Aブロック準決勝、始めて行こう!』

 

 通波のアナウンスに歓声が沸く。

 これまでの試合で観客のボルテージは頂点に近い。

 

『早速、選手に入場してもらおう! 東コーナー、西祭茜! 西コーナー、オロチ!』

「…確か、オロチは昨年の優勝者でしたよね。少しは油断してくれたりしますか?」

「油断する気はねぇよ。お前だって準決勝(ここ)まで来てんだ、実力は認めてんだぜ」

「ですよね。油断してくれれば楽だったのですが」

 

 茜は愛剣(レッドマジック)を構える。

 それに合わせオロチも拳を構え、戦闘態勢に入った。

 

『両者、準備は良いな? それでは準決勝第一試合…、始め!』

「鱗屑弾!」

 

 先に動いたのはオロチだ。

 試合開始の合図と同時に鱗を茜目掛け発射する。

 

「火鳥の巣!」

 

 しかし、茜とて無反応ではない。

 炎翼で身体を包み込み、飛んできた鱗を燃やし防ぐ。

 

「やっぱ防ぐか。ま、当たり前か」

「…次はこちらです。ヒートウィング!」

 

 茜は炎翼を広げる。

 そのサイズは通常時より大きく、普段の約二倍のサイズだ。

 …しかし、それだけで特に何か起こるわけではない。

 

「?、何だ何にもしないのかよ! 鱗屑鎧(りんせつがい)・重!」

 

 オロチは腕に何十にも鱗を纏い突撃する。

 鱗を重ねれば炎で皮膚にダメージが行くことは無い。

 たとへ鱗が燃えてしまっても、剥がして下から新たな鱗を生成するだけだ。

 

「お前絶対何か企んでるだろ。だからとっとと終わらせてもうぜ! 八岐流燗(やまたりゅうかん)猟蛇川(りょうだせん)(すい)!」

 

 ヒートウィングがどのような技かは不明だが、ろくでもない効果なのは予想がつく。

 そのためオロチは止めにも使用する大技を試合が開始して直ぐのこのタイミングで切った。

 燃費の悪い水魔法も出し惜しみをせず拳に水を纏わせる。

 

「っ、火鳥の巣!」

 

 これに対し茜は再度炎翼で身体を包み込むことで防ぐ。

 だが、今回は鱗を防いだ時とは威力も属性も違う。

 炎翼に水を纏った拳が直撃し、バトルエリアに蒸気が充満する。

 そして拳は水と鱗が防護壁となり炎翼を貫通、茜の胴へ肉薄した。

 

「食らえ!」

「レッドマジック!」

 

 オロチの拳が茜に直撃する。

 しかし、茜は間一髪の所で拳と胴の間にレッドマジックを滑りこませた。

 これにより拳の胴体貫通は免れたが、代償にレッドマジックが粉砕され後方へと殴り飛ばされる。

 

「がはっ!」

「ちっ、仕留めそこなったか」

 

 しかし、ダメージが無かったわけではない。

 茜の口から血が流れだす。

 それを見逃すオロチでは無い。

 すかさず追撃しようと一歩踏み込む。

 

「ならばもう一発─?!」

 

 だが、オロチの踏み込んだ足から突如として力が抜ける。

 無論それはオロチが意図した行動ではない。

 

「はぁ…はぁ…、思ったより効いてくるの早かったですね」

「やっぱ茜の仕業か! 何をしやがった!」

「私の周りだけ温度を上げたのよ。だいたい八十度くらいに」

「!、そういう事か! 周りだけあっためるって、熟練度ヤバすぎるだろ!」

 

 茜が発動させたヒートウィングの効果は自身の周りの温度を上昇させるというもの。

 オロチは変温動物であるとかどうとか以前に、大抵の生物は熱に弱い。

 それこそ高温環境で自在に活動できるのは、茜などの火系列魔法使用者だけだ。

 

「まあ今回は楽な方でしたよ、あまり温度をあげなくてよいので」

 

 しかも今回は相手がオロチということもあり、茜自身が火傷するほどの高温を出す必要は無い。

 それにこの技の厄介な点は温度が上がる範囲は茜の周りのみであり、その範囲は発動地点から移動せず滞留箚せられるところだ。

 オロチはピット器官により温度をサーモグラフィの様に探知できるが、茜が火魔法系列の炎翼魔法なのもあって熱探知をしていなかった。

 そのため気付かずに超高温サウナ状態のエリアに突入してしまったのだ。

 これにより蛇の活動温度を余裕で超過し、身体機能に異常が発生した。

 

「それに私の炎翼魔法は火魔法の劣化ですからね。強くなるために鍛えたんですよ」

 

 炎翼魔法でできることは大抵火魔法でも再現できる。

 様は炎翼魔法独自の強みというのは、翼を用いた飛行くらいしかないのだ。

 その飛行も、炎をジェットエンジンの様に噴射すればできてしまう。

 そのため茜は強くなるために、炎翼魔法の出力、熟練度をともに最高峰まで鍛えたのだ。

 出力と熟練度がどれほどのものかは、これまでの試合が証明している。 

 

「ですが、あなたは強い。今のうちに決めさせてもらいます!」

 

 茜は会話中に修復したレッドマジックを取り出し飛び立つ。

 動けないオロチにこの攻撃は確実に当たる。

 

「はっ、こんなくだらない状況で決着付けさせるわけねえだろ! 大蛇化!』

 

 だが、大蛇化は意識さえあれば発動可能だ。

 これによりオロチの身体は高温範囲から脱出。

 一部は未だ被っているが、身体の大半が出ているため身体機能が回復する。

 

「っ、だけど、攻撃自体は通るはず!」

『やってみろや! 大蛇鞭!』

「ガルーダストライク!」

 

 大蛇の尾と炎剣がぶつかり合う。

 この押し合いの勝者は、オロチだ。

 茜は後方へと弾き飛ばされ地面に激突する。

 

「ぐはっ!」

『ちっ、やっぱ火力は一級品だな』

 

 しかし、オロチの方も無傷ではない。

 レッドマジックとぶつかり合った箇所にはしっかりと火傷痕が残っている。

 

「そりゃ…そうですよ。火は生物共通の弱点ですからね」

『まあそうだな。だが、術者がボロボロじゃあ発動もできんだろ』

 

 現在の茜の身体はかなりボロボロだ。

 この状態で普通に反撃すれば即座に潰されるだろう。

 

「いいえ…、まだ、手はあります」

 

 だが、それは諦める理由にはならない。

 茜は限界に近づく身体に鞭を打ち立ち上がる。

 同時に炎翼が再点火され、その炎は茜の身体を包み込む。

 

「この技は反動が重いため使用後の隙に倒されてしまいそうですが…、このままなら負けるので関係ありません」

『そんなにすごい奥の手なら使ってみろ! 真っ向から叩き潰してやらぁ!』

「っ、後悔しないでくださいね。…熾天月鳥(してんげっちょう)!」

 

 直後、茜を覆っていた炎が変化していく。

 背中の炎翼は腕に移り、尾骨からは炎でできた尾羽が生える。

 足はケツァルコアトルの物へと変わり、頭から足にかけて炎を纏う。

 そして頭部の炎は不死鳥(フェニックス)を思わせる形状へと変化し、その瞳はオロチを貫かんと睨みつける。

 

『それが奥の手か! 確かに火の鳥化(それ)なら、炎翼魔法の効果範囲って言えなくも無いなっ!』

 

 オロチは地面を思いっきり叩きつけ、瓦礫を生み出す。

 

『だが、近づかなければどうということは無い!』

 

 生成された瓦礫を尾で打ち、茜へと飛ばした。

 確かに今の茜は炎に包まれており近づいただけで大火傷するのが目に目ているが、オロチに言う通り遠距離攻撃をすれば炎の影響は受けない。

 

「…煉獄鳥」

 

 しかし、瓦礫が茜へ到達することは無かった。

 茜を包み込んでいた炎の形は拡大し、その姿は元の二倍ほどにまで大きくなる。

 これにより茜は常時”火鳥の巣”を発動させているのと同じだけの炎を纏った。

 オロチが飛ばした瓦礫ではこの炎の鎧を突破できない。

 

『っ、面倒だな』

「…行きます!」

 

 茜は()を羽ばたかせ飛び立つ。

 

蒼翼炎(そうよくえん)!」

 

 炎の温度を更に上昇させ、翼の炎が蒼くなる。

 通常時ならこれ程の高温に耐えられず茜の腕は使い物にならなくなるが、気合で動かす。

 どのみち熾天月鳥を発動した時点で時間制限付きの戦いへと移行したのだ。

 そのため反動技をいくら使用しても問題ない。

 

『いいぜ、迎え撃ってやる! 大蛇鞭・水!』

双炎刃(そうえんば)!」

 

 水を纏った尾と炎の翼がぶつかり合う。

 パワーではオロチが上だが、手数では茜の方が上だ。

 

「っ、パワーが!」

『おいおいこの程度か!?』

「!、いいえ!」

 

 茜が更に翼を振るうが、オロチはその全てを防ぎきる。

 しかし、取り繕っているがオロチの方も余裕があるわけではない。

 オロチの水魔法はコスパがとにかく悪く、長期間の使用は困難だ。

 そのため炎とぶつかり合う箇所をピンポイントで覆うことでコストを抑えているが、こんな繊細な作業ではいつミスるかわからない上、これでもかなり魔力消費が激しい。

 水魔法が使えなくなれば茜の炎で焼き尽くされてしまう。

 

「近接戦は無理ね。なら─」

『あ?』

 

 これ以上の近接戦は不毛と判断した茜は距離を取り上空を旋回する。

 

「バーンフェザーバレット!」

 

 そして、翼から大量の火炎弾を撃ちだした。

 旋回速度もかなりあり、その姿は戦闘機を思わせる。

 

『ちょ、マジかよ!』

 

 オロチは再度瓦礫を飛ばす。

 しかし、火炎弾の数は多くいくつかは瓦礫の弾幕をすり抜けてオロチへ着弾した。

 

()っつ!!』

「よし、ちゃんと効きますねっ!」

『ちっ、大蛇化解除!」

 

 大蛇化は確かにパワー上昇などのメリットがあるが、的が大きくなるなどのデメリットがある。

 特に相手がひたすら遠距離攻撃をしてくる相手にはこのデメリットが顕著だ。

 そのためオロチは大蛇化を解き、体積を小さくしたうえで回避に専念する。

 

「(クソッ、このまま相手の時間切れまで待つか?)…いや、その前に俺がやられるな。それに、それで勝っても納得しねぇ!」

 

 前回のオロチの試合にて、アギトは楽な方法ではなく真っ向から戦うことを選んだ。

 それが今回オロチに回ってきただけのこと。

 

「やってやるぜ!」

「何かブツブツ呟いてますが、大蛇化を解除したならこちらが有利ですよ!」

「ならやってみろや! 鱗屑鎧・重!」

「双炎刃!」

 

 再度二人の拳と翼がぶつかり合う。

 オロチの方は鱗を重ねているため重度の火傷とまではいかないが、茜が纏っている炎が大きく物理的に拳が本体に届かない。

 対して茜の方はというと、このままやり合えばオロチが熱でダウンするため有利な状況だ。

 だが、これは両者の技術が同等だった場合の話。

 武器を使わない戦いの場合はオロチの方が圧倒的に技量は上だ。

 そのため徐々に茜の方が押されだす。

 

「っ、暑い!」

「そっちも限界が近そうね!」

「”も”ってことはそちらもか!」

 

 だが、オロチの方も体温が限界に近い。

 茜の方も身体が焼かれ始めている。

 互いにもう長期戦は不可能だ。

 

「えぇ、だから…、このまま押し切らせてもらうわ! 炎鳥砲(えんちょうほう)!」

「なっ?!」

 

 直後、茜の胸元から火炎放射が放たれる。

 オロチが鱗を纏っているのは腕だけだ。胴は覆っていない。

 そのため、一瞬でオロチは炎に包まれた。

 

「ぎゃあぁぁ! この野郎!」

「野郎じゃない!」

「クソがァ! 大蛇化!』

 

 オロチは再度大蛇化することで体積を増やし、炎の影響を最小限に止める。

 もう少し大蛇化が遅かったら、そのまま焼かれ敗北していただろう。

 

「っ、もう少しだったの─うっ」

『おいおい、今の一撃で限界が来たか?!』

「うる…さい! 双炎刃!」

『図星かぁ?! 大蛇鞭・水!』

 

 再度二人の翼と尾がぶつかり合うが、茜には先ほどの様なキレが無い。

 というのも、先ほど試合を終わらせる放った炎鳥砲により胸元が焼けてしまったからだ。

 放った際に発生した熱は心臓にまで達し、身体機能を大幅に低下させた。

 

『さっきより鈍いなぁ! おらぁ!』

「がはっ!」

 

 ついにオロチの尾が茜を捉える。

 直撃した茜のサイズは一回りほど小さくなるが、何とか体勢を立て直す。

 

「うっ、オエッ」

 

 先ほどの攻撃と炎鳥砲の熱により、口から血と消化物が吐き出される。

 

『はぁ…はぁ…、ヤバいなこっちもキツイ』

 

 しかし、オロチの方も無事ではない。

 熱による身体機能の低下、そして炎による火傷によるダメージにより大蛇化の維持も難しくなる。

 

「(もう熾天月鳥は長く持たない…)」

『(もう大蛇化は長く持たねぇ…)』

 

 

『「なら…、次で決める』」

 

 

 そのため、二人の考えは一致した。

 

「熾天月鳥、最高出力!」

 

 茜は最後の力を振り絞り、炎の火力を更に上げる。

 これにより全身の包む炎は蒼炎となり皮膚は焼けただれるが、茜は気にしない。

 何故ならば、次の技で試合を終わらせるつもりだからだ。

 

『そっちも同じか。こちらも、次で終わらせる!』

 

 対するオロチも大技の準備を開始する。

 周りの堀から水が溢れ出し、オロチに頭部に纏わりつく。

 そして、それらの水は頭部となり、合計八つの頭部が茜を睨む。

 この技を使ったら数日は水魔法が使用不可となるほどの魔力を消費するが、医療班にはセイがいる。

 セイは魔力も回復させられるため次の試合への影響はない。

 しかし、溜めが長いためこのように両者共に大技をチャージするような時でないと使用は困難だ。

 というより、茜の温度が更に上昇したためこの技を使用しなければ攻撃は到達しない。

 

 

「これで最後よ! 天獄火炎鳥(てんごくかえんちょう)!」

『お前がな! 八岐流燗・水龍八頭(すいりゅうやとう)!』

 

 

 茜は巨大な火の鳥となり、オロチに突撃する。

 対してオロチは巨大な水でできた七つの蛇頭で迎え撃つ。

 

「こんなので…、私は止まらない!」

 

 巨大な火の鳥は蛇頭を打ち破りながら突き進む。

 衝突する度びに炎は縮小するが、勢いは一切落ちない。

 何故ならば、茜の眼にはオロチしか映っていないからだ。

 既に脳にも熱が周り、自身の弱体化という細かいことは頭から抜け落ち勝つという意思しか残っていない。

 

「燃え尽き…、なさい!」

『ならその前に殺してやるよ!』

 

 七つの水の蛇頭を粉砕した巨大な火の鳥と本体の蛇頭がぶつかり合う。

 当然蛇頭は水を纏っており、火の鳥と接触した際に発生した水蒸気爆発によりバトルエリアを消し飛ばした。

 

『はぁ…はぁ…、だいぶ…無茶しやがって…」

 

 水蒸気の中から姿を現したのは、通常形態へと戻ったオロチだ。

 全身に重度の火傷を負っているが、辛うじて意識は残り立っている。

 そして、徐々に水蒸気が晴れバトルエリアの全貌が姿を現す。

 

「あ…が…」

「たく…どれだけ高温だったんだよ」

 

 現れた茜の姿は、もはや人と認識できるものではなかった。

 全身が黒く焼けただれ、人形(ひとがた)の炭と形容した方が近い。

 

「次は…負けな…」

「あぁ…楽しみだ」

 

 オロチは茜の頭部を粉砕する。

 すると茜の遺体は消滅し、バトルエリアの中央から無傷の茜が現れた。

 茜は気絶しているが、命に別状はない。

 

『西祭茜に対しての回復魔方陣の発動を確認を確認! よって勝者、オロチ!』

「はぁ…はぁ…、よしっ」

 

 勝者を伝えるアナウンスが流れたのを聞いたと同時にオロチは倒れこむ。

 

「今回の戦いは…、お頭と戦った時と…去年の決勝戦と同じくらい楽しめた…。お頭には…感謝しねぇとな…、聖魔連合への加入を決めてくれて」

 

 

 

 

 

 

 

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