死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


百鬼武闘大会 ─ 真紅の霧

 

『さあ、続いてBブロック準決勝を始めるわよ!』

 

 オロチによって破壊されたバトルエリアも修復され、今試合の選手が入場する。

 

『東コーナー、ブラッド! 西コーナー、(さく)!』

「まさか、ブラッドが準決勝まで来るとは」

「俺も努力してんだよ」

 

 ブラッドは魔法などの異能を得たのが聖魔連合内で一番遅い。

 様は経験値が一番無いのだ。

 そんなブラッドが準決勝まで進出できたのは、努力もそうだが血縁関係の関係も大きい。

 というのも、ブラッドこと赤川操の血縁者(従姉)には魔法少女である桃山桜がいる。

 少女が魔法少女に成る際に生じる魔力が血縁者である赤川操に影響を与え、吸血鬼として復活したブラッドの肉体、魔力を大幅に強化したのだ。

 無論これは怪人生成機を使用した影響によるものであり、異世界の吸血鬼が産まれる際はこんなバグみたいな挙動は無い。

 何故なら、異世界では多くの人々が魔法を使用できるため血縁云々の話をしても意味が無いのだ。

 なお、改造と血縁者の関係はサンプルが少ないため聖魔連合の誰も気付いていない。その上、聖魔連合のスタンス的に一般人を攫うことはしないのでこの先外部から情報を仕入れない限り気付くことも無いだろう。

 

「そう…、まあ、負ける気は無い」

「おいおい舐めてんのか? 舐めてくれるならそれはそれでありがたいけど」

 

 現在、裂は先の二戦の様に紅顎と白喰の柄どころか刃物すら掴んでいない。

 そのため刃物を持った時に起こる狂気形態ではなく、いつもの気だるげな様子だ。

 

「別に舐めてるわけじゃないけど…」

「ま、裂のことだから作戦何だろ。気を付けなくっちゃな」

 

 ブラッドは速攻攻撃に移れるよう体内で魔力を回す。

 対する裂は武器を構えず、自然体だ。

 しかし、その眼はブラッドの一挙手一投足を見逃さず映している。

 

『両者準備はよいな。それでは準決勝第二試合…、始め!』

「ブラッドプレッサー!」

 

 そして試合開始の合図の直後、ブラッドは圧縮した血液によるレーザーを放つ。

 

「っ、回避…」

 

 裂は横に移動することで回避する。

 ブラッドプレッサーは液体の攻撃だ、そのため刃物などの隙間ができる武器では防げない。

 

「逃がすか!」

 

 しかし、ブラッドは発射口の角度を変更することで追尾する。

 刃物を持った狂気状態ならば確実に反撃に移っていたが、今は落ち着いて隙を伺う。

 

「─っ、血液切れか」

「今」

 

 ブラッドプレッサーは圧縮した血液を放つ技のため当然圧縮切れが起こる。

 そして攻撃が切れた隙を付き裂がナイフを生成し放つ。

 裂が狂気状態に移行するトリガーはあくまで刃物を握った時なので、皮膚から直接発射したナイフはトリガーに抵触しない。

 

「!、危ねっ!」

 

 発射されたナイフはブラッドの頬を掠める。

 頬からは血が一筋流れるが致命傷ではない。

 

「外れた」

「危ないな本当! もう一発お見舞いして─!?」

 

 再度血液を圧縮しようとした直後、謎の立ち眩みがブラッドを襲う。

 原因は言わずもがな、先ほど掠ったナイフだ。

 

「さっきのナイフ、ひょっとして銀製か!」

「正解。まあ前試合も使ったし、召から聞いたのかな?」

 

 銀は多くの創作物において吸血鬼の弱点とされている。 

 ブラッドはこれらの弱点を正確に受け継いでいた。

 

「まあな。というか、銀なら召と戦った時みたいにいつもの刀の材質変えるだけでよかっただろ」

「…ブラッドの魔法が血液操作じゃなければそうしてたわよ。紅顎と白喰を奪われたくないし」

 

 血液操作とは、言い換えれば液体操作だ。

 液体は刃物で切断できない。

 さらに言えば、液体であるが故に自身の得物を絡めとられる可能性すらあるのだ。

 裂の得物である紅顎と白喰は複製こそ可能だがオリジナルは一振りずつしかない上、奪われると普段通りのパフォーマンスができなくなる。

 そのため、いくらでも量産可能であり弱点となる銀のナイフを使用しブラッドを攻撃したのだ。

 

「…そういう訳だから、ナイフを使っているだけ」

「訳は分かったが、使わずに負けても言い訳するなよ」

「しませんよ…。ですが…、紅顎と白喰(いつもの)を使わずとも私は強いですよ。パクジャー」

 

 技名を唱えた直後、裂の周りに生成した大量のナイフが浮き上がる。

 そのナイフの全ての刃先がブラッドの方へと向く。

 

「おいおい刃物の空中操作も出来るのかよ!」

「土魔法の応用、出来るようになったのは最近…、それも小さいのだけで難しい操作はできない。…殺戮マリオネット」

「っ、ブラッドシールド!」

 

 飛来する大量のナイフをブラッドは血の盾で防ぐ。

 その際、再利用されないよう血で絡めとるのも忘れない。

 しかし、このままではブラッドは敗北する。

 血の盾で防げる量には限界があり、絡めとったナイフの上から更にナイフをぶつけられると勢いを殺しきれずに貫通してしまう。

 幸いまだそのような事象は起こっていないが、いつ裂がブラッドシールドを突破できると気付くか分かったもんじゃない。

 しかし、裂はブラッドに技を切り替える隙を与えぬようにナイフを連投してくる。

 

「このままじゃマズい、あれを使うか? いやアレまだ完成してないんだよな…」

「…悩んでるいるなら使えばいいのに。パクチャー、サマンハダ」

 

 再度裂がナイフを放つ。

 しかし、放たれたナイフはブラッドシールドに掠る事すらなく脇を通過していく。

 

「はっ、どこ狙ってんだ?」

「いいえ…、これでいい」

「なに─《グサッ》─は?」

 

 突如、ブラッドの胸元に衝撃が走る。

 見ると、胸元が銀のナイフで貫かれていた。

 あと少しナイフが右にズレていたら、ブラッドの心臓に直撃し試合が終わっていただろう。

 

「外れた…、やっぱ見えてないと精度が悪い」

「クソッ、そういうことか!」

 

 ブラッドはナイフを抜き、血液で傷口を塞ぐ。

 裂の技"パクチャー"は、生成した刃物を浮かせ操る技だ。

 先ほどブラッドシールドの脇を通過したナイフは裂が操作し方向を変えたことで、ブラッドに命中した。

 

「次は当てる」

「ッ、ブラッドスフィア!」

 

 再度飛来するナイフを防ぐため、ブラッドは自身を血の球体で包み込む。

 直後、全方位からナイフによる攻撃が行われるが血液によって防がれブラッドには到達しない。

 

「このままやられるか! ブラッドニードル!」

 

 血の球体の表面に棘を生成し、全方位目掛け発射する。

 しかし視覚が塞がっているため狙いが定まらず、裂は余裕をもって回避していく。

 

「ちっ、当たった感覚がねぇ! 物体越しじゃ相手を捕捉できない!」

「…あの血の球体、厄介ね」

 

 裂が現在使用している銀のナイフでは血の障壁を突破できない。

 

「…こうしよう」

 

 ならば、突破できるよう工夫するだけだ。

 裂は空中に浮遊するナイフを回転させる。

 

「オムニナイフ」

 

 そして、放たれたナイフはブラッドスフィアの血液を弾き飛ばす。

 回転しているため血液によって簡単に絡めとられることもない。

 一本一本の弾く量が少なくとも、何十、何百と命中させれば表面を薄くしていく。

 

「これで…止め」

 

 ブラッドスフィアの一番薄くなっている表面目掛け、より高速回転させたナイフが放たれる。

 ナイフはブラッドスフィアの表面に命中しても一切減速せず、貫通した。

 

「貫通した…、けど、試合はまだ終わらな─《プシュー》─!?」

 

 突如、ブラッドスフィアの切り口から気体が噴き出す。

 噴き出した気体は紅く、瞬く間にバトルエリアを覆いつくしていく。

 そして当然、裂の視界は奪われ数メートル先すら視認できない。

 

「これは…、さっきブラッドが呟いていた技?」

「そうだ。ブラッディミスト、俺の新技だ」

「!?」

 

 背後からブラッドの声が聞こえた裂は即座に声目掛けナイフを投げる。

 しかし、既にブラッドは移動しており攻撃は命中しない。

 ブラッディミスト、その名の通り霧状の血を生成する技だ。

 

 

  《ぽた…ぽた…》

 

 

「そこ」

 

 何かが滴り落ちる音が聞こえナイフを投擲するがそこには何もない。

 これこそがブラッディミストが未完成の理由だ。

 血液の霧状化が思いのほか難しく、直ぐに液体へと戻ってしまう。

 そのため長時間ブラッディミストを維持するためには、頃合いを見て補充し続けなければならないのだ。

 

「いない、この霧じゃあ見えない…、だけどブラッドも─」

「ブラッドプレッサー!」

「なにっ?!」

 

 ブラッディミストの中から放たれた血のレーザーが裂の右腕を撃ち抜き切断した。

 

「クソッ! 外れた!」

「くっ…、何で…私の場所が分かったの?」

 

 裂は切断された腕をホチキスの針の形状にした刃物で接合する。

 応急処置で行かないが、この試合が終わるまでは持つ。

 

「ゲノムプラスで得た能力だ! 詳細は言わないけどな!」

 

 ブラッドがゲノムプラスによって得たのはビッグブラウンバットの喉頭(こうとう)だ。

 直接的な戦闘力は向上してはいないが、超音波によるエコーロケーションが可能となった。

 これにより、ブラッディミスト内でも正確に裂を攻撃できる。

 

「ブラッドボム!」

「っ…、がはっ!」

 

 攻撃を防ごうとするが、ブラッドの攻撃は血液(液体)だ。

 刃物だけではどうしても隙間ができてしまうため防ぎきれない。

 

「まだまだ! ブラッドボム!」

 

 血で作られた爆弾が次々と爆発していく。

 これにより飛び散った血液が裂の身体に突き刺さる。

 ブラッドプレッサーほどの威力は無いが、範囲ではブラッドボムの方が上だ。

 

「ぐっ…、ナイフファンネル」

 

 裂の周りを惑星の様にナイフが高速で回転する。

 完全に血液を防ぎきれるわけではないが、何もないよりはマシだ。

 

「これからどうしよう…」

 

 裂からブラッドの姿は視認できない。

 逆にブラッドからは裂の位置が丸わかりだ。

 このままでは裂が一方的に攻撃され試合が終了してしまう。

 

「相手の位置はわからない、だけど相手からは捕捉されている。なら─」

 

 裂は腰から飛び出した柄を握る。

 

「全体攻撃しかないわよね!」

 

 そして、腰から紅顎と白喰を引き抜いた。

 これにより、裂は裂は狂気状態へと移行する。

 

「クソッ、結局紅顎と白喰(それ)使うのかよ!」

「そこか! 空裂き!」

「アブねっ!」

 

 ブラッドの声が聞こえた方向目掛け斬撃を飛ばす。

 だが、間一髪躱され攻撃は命中しない。

 しかし、裂は攻撃の手を緩めず斬撃を飛ばしまくる。

 

「っ、無茶苦茶しやがる!」

「アハハ! ちまちまナイフで狙うよりこっちの方が早いわ!」

「そうかよ! ブラッドオーシャン!」

「ん? これは…、拘束か!」

 

 地面に大量の血液が流れだす。

 血液は裂の足元にまで及び、硬化することで拘束した。

 

「これで、もう動けねぇな!」

「そこか!」

 

 再度裂が斬撃を放つが、その場にはもうブラッドはいない。

 既にブラッドは裂の真後ろへと移動済みだ。

 

(やっぱ裂は耳いいな。僅かな会話だけで正確に位置を捕捉してくる。だけど─)

 

 ブラッドは血液を圧縮し技の準備に入る。

 

(俺の技は無音で放てんだよ! ブラッドプレッサー!)

 

 圧縮された血液をレーザーの様に放つ。

 血のレーザーの狙いは裂の脳天だ。

 脳を撃ち抜けばどんな生命体だろうと例外なく死ぬ。

 

(これでお終いだ)

「…甘い!」

「…は?」

 

 しかし、ブラッドプレッサーは白喰の鎬地(しのぎじ)によって防がれた。

 その上刀の刀身が元の数倍のサイズにまで巨大化している。

 

刀延間(とうえんま)、刀を巨大化させる技よ! これで、あんたに直接攻撃を叩き込める!」

 

 裂は巨大化させた紅顎と白喰をブラッド目掛け振り下ろす。

 

「っ、当たるかよ!」

 

 刀身が大きくなった分俊敏な動きはできない。

 そのためブラッドは余裕を持って回避できる。

 

(クソッ、もう一回立て直して─)

「逃がさないわよ!」

「!、嘘だろおい!」

 

 だが、そのまま逃す裂ではない。

 巨大化した刀身の鎬地から新たな刃物を生成しブラッドを追尾する。

 

「俺の位置分かってんのかこの動き!」

「えぇ。なんせ、霧が薄くなってきてるからね!」

「やっべやらかした!」

 

 裂の言う通り、ブラッディミストの濃さは最初と比べてかなり薄い。

 これはブラッドオーシャンを発動させたのが原因だ。

 ブラッドオーシャンがバトルエリアに広がる際、ブラッディミストの血液を大量に絡めとった。

 それによりブラッディミストの消失速度を加速させたのだ。

 更に裂にはハエトリグモの眼もある。

 まだ消え切ってはいないが、ある程度薄くなれば問題ない。

 

「アハハハ! 今度はこっちが追う番よ!」

「クソッ、ブラッドボム!」

 

 ブラッドもタダで攻撃を食らう気は無く、血液で刀身を破壊する。

 しかし、紅顎と白喰から伸びる刀身の勢いは止まらない。

 それどころか生える刀身の紅顎と白喰(大本)も動くため回避がかなり難しくなっている。

 現状はまだ攻撃を食らっていないが、いつまでもこの状況を続けるわけにはいかない。

 

「いい加減食らいなさい!」

「食らうかよ! ブラッドプレッサー!」

 

 放たれた血のレーザーは裂本人目掛け一直線に突き進む。

 裂は足元を血液で固定されているため回避できない。

 

「食らう訳ないでしょ!」

 

 しかし、裂は先ほどとは違い刀延間を発動させている。

 刀身から何枚もの刃物を生成することでブラッドプレッサーの進路を塞ぐ。

 液体であるため完璧には防げずとも、威力の減衰には使える。

 

「ぶち抜け!」

 

 しかし、ブラッドプレッサーは刀身の盾を真っ向から打ち破っていく。

 ブラッドはこれで試合を決める気でありったけの血液を圧縮した。

 そう簡単には止まらない。

 だが、止まらないだけだ。

 

「─はは、残念だったわね!」

 

 裂の額にブラッドプレッサーが命中する。

 しかしその威力は、ちょっと強い水鉄砲くらいにまで落ちてしまっていた。

 

「─いや、まだだ!」

「何を…! これは…まさか!」

 

 裂の目の前に血の雫が一滴浮遊している。

 ブラッドは防がれることを懸念し保険を掛けていた。

 その内容は、ブラッドボムの核をブラッドプレッサーで届けるというもの。

 目論見通り、核は裂の目の前に到達した。

 

「破裂しろ! ブラッドボム!」

「がっ!」

 

 目の前で破裂した血の爆弾は、裂の頭部に重大なダメージを与える。

 顔全体に穴が空き、両目に至っては完全に使い物にならないほどのダメージだ。

 辛うじて原型こそ残しているが、もう戦える状態ではない。

 

「まだ…だ…」

 

 裂はうつ伏せの状態になるように倒れこむ。

 これによりブラッド目掛け伸びていた刀身も成長を止めた。

 

「はぁ…はぁ…、これで、俺の─《グサッ》─…は?」

 

 だが、突如ブラッドの心臓に何かが突き刺さる。

 突き刺さったのは、銀のナイフだ。

 

「まだって…言ったでしょ!」

「て…めぇ!」

 

 急所を弱点武器で攻撃されたブラッドは体の自由が効かなくなり墜落する。

 

「ナイフのこと…、忘れてましたね」

 

 そう、狂気状態になったからと言ってナイフを操作できなくなったわけではない。

 紅顎と白喰で追いかけている間に、サマンハダで操ったナイフをブラッドの背後に回り込ませていたのだ。

 その上、裂が得たハエトリグモの眼は頭部を囲うように存在している。

 前の眼が潰されたからと言っても、後ろの眼は使用可能のままだ。

 うつ伏せになるよう倒れたことで視界も問題ない。

 

「これで…、私の勝ち!」

「がはっ」

 

 動けなくなったブラッドの頭部に浮遊する銀のナイフを突き刺す。

 これが止めとなり、ブラッドの生命活動は完全に停止した。

 直後に回復魔方陣が発動し、バトルエリアの中央に気絶したブラッドが現れる。

 

『ブラッドに対しての回復魔方陣の発動を確認を確認! よって勝者、裂!』

「はぁ…はぁ…、ぎ、ギリギリだった…」

 

 実はブラッドボムが爆発する直前、裂は頭皮の下にありったけの刃物を生成していた。

 これにより、脳への重大なダメージを抑えることに成功したのだ。

 もししていなければ、今頃脳がお釈迦になり裂は敗北していただろう。

 

「ともかく…、これでリベンジの舞台には…これ…た…」

 

 それだけ言い残し、裂の意識は落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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