死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


百鬼武闘大会 ─ 再臨

 

『さあさあさあさあ! ついに百鬼武闘大会決勝戦が~、始まります!』

 

 通波のアナウンスと共に観客席から歓声が上がる。

 今年の大会は過去に類を見ないほど鮮烈で、過激で、白熱した。

 そのため観客のボルテージはMAXだ。

 なお、この後には聖魔連合トップ四名によるエキシビションマッチもある。

 

『それでは、選手に入場してもらいましょう! 東コーナー、オロチ! 西コーナー、(さく)!』

「よぉ、さっきの気絶してたが大丈夫か?」

「…問題ない」

「そうか。去年の決勝以来だな、戦うのは」

「えぇ…、それじゃあ…思いっきり殺し合いましょう!」

「そうだな!」

 

 両者ともに殺意を滲ませ牽制し合う。 

 実のところ、去年の百鬼武闘大会の決勝も全く同じマッチングであった。

 その時はオロチが裂の腹に風穴を開け勝利した。

 というか過去にあった全ての大会において、裂はオロチに勝てていない。

 しかし、今回は魔法という新たな技術が広がってから始めての大会だ。

 どちらに勝利の女神が微笑んでも不思議ではない。

 

「「天魔! 早く試合開始の合図を!」」

 

 二人して天魔のアナウンスを急かす。

 今だって両者ともに戦闘欲を理性で抑えつけている状態だ。

 これが試合でなければ、直ぐにでも殺り合っている。

 

『わかった。それでは決勝戦…、始め!』

「鱗屑鎧、八岐流燗(やまたりゅうかん)瞬影蛇砲(しゅんえいじゃほう)!」

「二刀流居合・冠木門!」

 

 天魔の試合開始の合図と同時に両者技を放つ。

 直後、バトルエリアの中央からとてつもない威力の衝撃波が発生した。

 

「はっ、去年より強くなってんな!」

「当たり前よ!」

 

 裂は刀で受け止めていた拳を弾き距離を取る。

 去年は威力を殺しきれず紅顎を弾き飛ばされた。

 しかし、今年は技量が上がったため破壊されずに済んだ。

 

「都市伝説・四刀流・飛騨毒龍退治の怪:形態:電鋸!」

 

 裂は肩から刀で形成された一対の腕を生やし、先端のチェーンソーを唸らせる。

 オロチの最大の武器は手数の多さと防御力だ。

 だが、オロチの防御力はゲームのVITの様なものではなく皮膚を鱗で覆うことによって得られる硬さによるもの。

 今年の百鬼武闘大会でオロチが戦った相手の様な属性攻撃を持っているならともかく、基本的に斬撃しか攻撃手段を持たない裂は鱗の隙間や覆われていない箇所を狙うしかない。

 だが、その隙間や無防備な箇所を狙った攻撃は鱗で覆われた腕によって防がれる。

 しかし、チェーンソーは刀と違い多段ヒット武器だ。

 一振りで切断できないのなら、連続で攻撃を叩き込むことで鱗の上から切断する。

 

「これでぶった切ってあげる!」

「やってみろや!」

 

 再度拳と刀がぶつかり合う。

 パワーは互角。

 だが、裂にはもう二対(チェーンソー)の腕がある。

 

「食らえ!」

「無駄なんだよ!」

 

 しかし、オロチは一瞬拳を刀から離しチェーンソーの側面を叩き弾く。

 その間刀はフリーになるが、オロチへ肉薄しない。

 蛇の尾が刀を絡めとり押さえつけていた。

 

「それは!」

羅見亜(ラミア)、ゲノムプラスで得た能力だっ!」

 

 ゲノムプラスは改造された者を本来の姿に、獣の特徴を持たぬ者に獣の特徴を、逆に特徴を持つ者は獣本来の姿を与える。

 だが、身体的特徴や魔法により獣の姿に成れる者がゲノムプラスを摂取したらどうなるか。

 答えは、変身先の生物への部分変身が可能となる。

 ちなみにキャットガールも部分変身は可能だが、再生能力とスピードをメインに戦術を組んでいたため使う機会が無かった。

 

「それじゃ、これは貰うぞ!」

「なっ?!」

 

 オロチは刀ごと手首を捻ることで武器を落とさせる。

 いくら裂が人外レベルのパワーを有していても、身体構造は一般人と変わらない。

 

「返せ!」

「返すかよ!」

 

 尾で巻き取った紅顎と白喰を漁っての方向へ投擲する。

 幸いバトルエリア周囲の堀へ落下することは無かったが、裂からかなり距離がある場所に突き刺さった。

 二振りどうしもかなり離れており、一度での回収は困難だ。

 

「くっ、急いで回収を─」

「させるわけねぇだろ!」

「がはっ」

 

 その上、オロチとて回収を黙ってみているわけではない。

 右足を尾で絡めとり、拳を腹に叩き込む。

 当然後方へ吹き飛ぶことはない。

 

蛇鞭(じゃへん)・連!」

「ぐっ…この!」

 

 裂は手の甲から代わりの刀を生成し、計四本の刃物で連撃を防ぐ。

 だが、刀や剣は無類の殺傷力を誇る代わりに懐に入られると脆い。

 

「攻撃が…、当たらない!」

「おいおい! さっきより動き鈍くなってんぞ!」

 

 裂の体に打撲根が増えていく一方、オロチは攻撃を最小限の動きで捌く。

 更に、紅顎と白喰を手放してしまったことにより狂気形態も解除され、愛刀ではないため近接戦のパフォーマンスがかなり落ちている。

 取りに行こうにもオロチの尾により拘束されているため移動も困難だ。

 

「…まずは尾をどうにかしないと」

「できんのか? 今のお前によぉ!」

「できるかどうかじゃない、やる。刀足(とうそく)

 

 裂は尾が巻き付いている右足の脛から刃物を生成する。

 だが、尾は鱗に守られていたため出血はない。

 しかし、生成した刃物により尾が押し出されスペースができたことにより裂は脱出に成功する。

 

「これでひとまず何とか…」

「脱出されたか。だがこの距離は鱗屑弾の射程圏内だ!」

「っ…刀束鎧」

 

 とっさに刀の鎧を生成し鱗を防ぐ。

 だが、飛んでくる量はとてつもなく、いつまでも防ぎきれる訳ではない。

 

「…腕も使うしかない」

 

 裂は肩から生やした一対の腕を地面に突き刺し、切り離すことで盾にする。

 しかし、これは一時凌ぎだ。 

 いつまでこの盾が持つか分からない。

 その上、裂の目先の目標は紅顎と白喰を回収すること。

 そのためには鱗の弾幕を突破する他ない。

 

「…あれを使って一気に回収する」

 

 腕の刀の盾から少し離れ、手の甲から生成した刀を平行に構える。

 冠木門が出会い頭の一撃必殺を狙う居合だとしたら、これから放つは戦闘中に連打できる居合だ。

 

「とっとと盾から出て来いや!」

 

 鱗屑弾により腕の刀の盾が破壊される。

 同時に、裂はオロチへ向け踏み込む。

 途中鱗が皮膚に突き刺さるが、裂は気にせず技を放つ。

 

「あ?」

「二刀流居合・悪侍鬼(あくじき)

 

 そして、オロチの脇を目にもとまらぬ速さで通過した。

 直後、動きやすくするために鱗で覆われていなかったオロチの腹に二線の傷が走る。

 

「あっぶねマジで焦った」

 

 だが、傷からは血が一滴流れただけで殆どダメージが無い。

 二刀流居合・悪侍鬼は連打することを想定して作られているため威力が低く、咄嗟に力んだオロチの筋肉だけで充分に防げたのだ。

 

「…これでいい」

「それはどういう─! そういう事か!」

 

 裂は勢いを落とさずに紅顎へと向かっていく。

 オロチを攻撃したのはただのブラフだ。

 

「─取った」

 

 そのまま紅顎を掴み、居合の勢いを殺し体勢を整える。

 

 

  ”■ちゃんの居合はすごいね”

 

 

 直後、裂の頭の中に声が響く。

 声は体内から出した時は響かず、一度手放して再度柄を握った時にのみ起こる現象だ。 

 この声自体に特に害はない。

 しかし、裂は別だ。

 

(…いつも頭に響くこの声)

 

 何せこの声は─

 

(この声を聴くと…、声主を切り刻みたくなる!)

 

 狂気状態のブースターだからだ。

 裂は意図的にこの声を聴こうとはしないが、聴いた後は狂気状態が更に苛烈になる。

 

「っ、回収しやがった。お前が生成した刃物とそれらじゃ切れ味が段違いだから絡めとったってのに」

「アハハ! なら、始めから離さなければよかったのにねぇ!」

 

 この声自体は誰でも聞くことができるが、裂本人があまり他人に紅顎と白喰(愛刀)を触らせないため知っているのは新技開発に協力した研究班の灰崎とライズだけだ。

 ライズ曰く、紅顎と白喰は妖刀に変化しているとのこと。

 妖刀は魂の武具(ソウルウェポン)とはまた違う、どちらかと言えば人工の魂の武具(アーティフィシャルソウルウェポン)に近い。

 妖刀化(このこと)を知っているのも裂と研究班の計三名だけだ。

 

「刀持ちながら戦えるほど、てめぇは弱くないんだよ! 大蛇化!』

 

 大蛇化したオロチが猛スピードで裂へと迫る。

 

「アハッ。なら、その身に私の強さを刻んであげる!」

 

 列車が突撃してくるような状況だが、裂は慌てない。

 冷静に紅顎を腰に当て、構える。

 

蛇龍頭進(じゃりゅうとうしん)!』

「一刀流居合・都市伝説・電来傀儡(でんらいくぐつ)!」

 

 両者ともに技を放つ。

 しかし、それらがぶつかり合うことはない。 

 裂の狙いはもう一振りの愛刀、白喰。

 一振りだけではオロチの鱗を突破することなど万に一つあり得ない。

 

(今は一刻も早く、白喰を回収しないと!)

『っ、天丼はいいんだよ! 大蛇鞭!』

 

 無論、裂が白喰へ向かうことはオロチも予想しており即座に技を切り替える。

 裂の目の前に巨大な尾が迫るが、回避はしない。

 

「このまま通り抜ける!」

 

 紅顎を尾に当て軌道をずらし、その下を通り抜ける。

 元々、一刀流居合・都市伝説・電来傀儡(でんらいくぐつ)は相手の攻撃を逸らせたのち背後から切りかかる技だ。

 今回はその応用である。

 そして、白喰に裂の手が迫る。

 

「これで回─」

『させっかよ!』

「!、ガードして─」

 

 しかし、回収するより早くオロチの尾が裂と白喰を弾き飛ばした。

 逸らされた尾を即座に方向転換させ、回収前に攻撃を叩き込んだのだ。

 

「っ…クソッ!」

 

 即座に紅顎を地面に突き立て体勢を立て直す。

 

『たくっ、油断も隙もありゃしねぇ。もう回収できると思うなよ!』

「!、白喰は─うそ…」

 

 オロチに弾き飛ばされた白喰はバトルエリアを囲う堀の壁に突き刺さっている。

 堀に着水せず、オロチの攻撃を捌きながら白喰を回収するのは至難の業だ。

 

「っ、チェーンワイヤー!」

 

 しかし、裂は回収を諦めない。

 掌からチェーンソーのチェーンを放ち白喰の回収を図る。

 

「させっかよ!」

 

 だが、オロチが回収を許さない。

 大蛇化を解除し、鱗で覆われた腕でチェーンを掴む。

 

「なっ?!」

「お頭、使わせてもらうぜ! 伊吹山一本背負い!」

 

 そして、そのままチェーンを使って裂を投げ飛ばし地面に叩きつけた。

 

「がはっ」

 

 裂の肺の中の空気が抜ける。

 だが、深呼吸をしている暇はない。

 既にオロチが目の前に迫っている。

 

「っ、一刀流・付喪!」

 

 紅顎をオロチの脳天目掛け振り下ろす。

 

「待ってたぜ。この時をよぉ!」

「!?」

 

 だが、この状況においては悪手だ。

 オロチには対刃物用のあの技がある。

 

「もう技を止められねぇよな! 刃破崩!」

 

 放たれた裏拳が紅顎の平に直撃し、中央から真っ二つに破壊した。

 

「は…え…?」

「おらぁ!」

「ぐはっ!」

 

 放心状態となった裂の腹に容赦なくオロチの拳が叩き込まれる。

 

「はぁ…はぁ…、くっ…。パクチャー、殺戮マリオネット!」

 

 生成されたナイフが迫るが、オロチは全てを弾き突き進む。

 小さいナイフ程度でオロチを止めることはできない。

 

「止めだ! 八岐流燗・猟蛇川!」

 

 そして、オロチの一撃を叩きこまれた裂は吹き飛ばされ、堀を囲う壁に激突した。

 不幸中の幸いは、壁に体がめり込み着水していないこと。

 そのためまだ敗北判定ではない。

 だが、十秒以上バトルエリア外にいても敗北判定だ。

 

「まだ…まだ…、負けてない!」

 

 裂はチェーンを全身に巻き付け、内臓が破裂し骨折で動かない体を無理やり動かす。

 それと同時に全方面へチェーンを放ち、先端を壁と地面に埋め込む。

 

「やっぱ諦めてなかったか!』

 

 無論、オロチだってただ見ているだけではない。

 大蛇化しチェーンを次々と切断していく。

 だが、本数が多く全てのチェーンの切断は不可能だ。

 

「…行くよ」

 

 裂は放ったチェーンのうちの一本、地面に突き刺したチェーンを格納することで高速で移動する。

 始めの狙いは、折れた紅顎の先だ。

 

「まずはこれを回収…」

 

 折れた紅顎の先に掌を当て体内に格納し、全てのチェーンを一度切り離す。

 そして再度チェーンを放ち、堀を囲う壁へと移動する。

 

『っ、速いしチェーンが邪魔だ。いったん回収させるか』

「そう? なら、回収させてもらうわ」

 

 裂は白喰目掛けチェーンを飛ばす。

 そのチェーンを格納し、白喰に手を掛けた。

 

 

  ”はいこれ! ■ちゃんの誕─”

 

 

『八岐流燗・水流八頭!』

「!?」

 

 直後、裂に水でできた大蛇の頭が直撃する。

 

「オロチ!」

『あれだけ時間もらえればチャージしきれるわ!』

「ちっ、一刀流・付喪!」

 

 続いてきた蛇頭は壁を蹴ることで接近し、白喰で流れをずらすことで防ぐ。

 そして、勢いそのままに時間制限があるためバトルエリアへと帰還した。

 

「はぁ…はぁ…、アハハ。修復して、回収完了!」

 

 裂は折れた紅顎に先端を合わせ修復する。

 これで、完全に紅顎と白喰が裂の手元に戻った。

 

『そうだな。だが、次があると思うなよ!』

 

 オロチは堀から水を吸い上げ、先ほど消費した頭部を再生させる。

 次に裂を襲うのは計八ツの頭による猛攻だ。

 

「アハハハ! オロチも、次があると思ってんの!?」

 

 裂の紅顎と白喰を握る手が強まる。

 両者ともに宣言したが、そんなことしなくとも次が最後の攻防だと感じていた。

 次でオロチが裂を完全に打ち破るか、それとも裂が一発逆転を起こすかだ。

 

「私の新たな力、それを使って次であんたを倒す! 夢刀幻想(むとうげんそう)!」

 

 その宣言と共に紅顎と白喰の刀身をなぞる。

 直後、なぞられた紅顎は真紅に、白喰は白銀に光り輝く。

 

『!、裂お前! その金属は!』

「アハハ! そう、ミスリルと緋緋色金よ!」

 

 裂の刃物魔法は、術者本人が一度見た物質ならば刃物の材料にできる。

 これは、ファインダー何かに登場する架空の物質であろうと実在していれば例外ではない。

 過去にレイヴンたちが探索しミスリルを発見したダンジョン、そのダンジョンの二度目探索で出土した緋緋色金、これらを紅顎と白喰に組み込んだのだ。

 本来この世界には存在しえなかった物質のため永続ではなく、尚且つ体力を大幅に消費するが、この試合が終わるまでは十分に持つ。

 

「オロチ、これまでの私の雪辱を刻んであげる!」

 

 裂は地面を踏み込み、オロチへと向かっていく。

 

『やってみろや! 八岐流燗・激流八頭!』

 

 先ほどより強力になった蛇頭が裂へと迫る。

 

「二刀流居合・─」

 

 しかし、裂は慌てない。

 今、手元には強化した自身の愛刀があるのだ。

 その事実だけで、負ける気がしない。

 

「─悪侍鬼・連!」

 

 連続で居合を放ち、四つの蛇頭を切り落とす。

 本来、この水でできた蛇頭は液体ということもあり切断できるものではない。

 しかし、紅顎と白喰の強化と裂の極限の集中力により、今までできなかった液体の切断を可能とした。

 

『なっ?!』

「アハハハ! まだ、まだ! 二刀流・光剣太鼓(こうけんだいこ)!」

 

 裂の猛攻は止まらない。

 立て続けに水でできた蛇頭を三本とも切り裂く。

 これで、残りはオロチ本体のみ。

 

『裂やるじゃねぇか! だが、もう限界じゃないか!』

 

 裂の身体は既に限界を通り越しており、無理やりチェーンで動かしているだけだ。

 

「アハハ! そんなの、知ったこっちゃないわ!」

 

 だが、裂は止まらない。

 ついにオロチの首に刀が届きそうなのだ。

 たとえ命が尽きようと戦い抜く覚悟を滲ませている。

 

『なら、こちらも武人としてその覚悟に答えてやるよ!』

「これで止めよ! 二刀流・都市伝説・龍口裂閃(りゅうこうれっせん)!」

 

 二人の技がぶつかり合い、衝撃波がアークスタジアムを包み込む。

 

『─っ』

「私の…勝ち!」

 

 そして、裂がオロチの頭部を口から上下に切断した。

 

「がっ…ごほ…」

 

 勢いを付けすぎて裂はそのまま地面に激突し、堀のすれすれで停止する。

 それと同時に大蛇化したオロチの肉体は崩れ去り、バトルエリア中央に無傷のオロチが現れた。

 

『オロチに対して回復魔法陣の発動を確認。よって、今年の百鬼武闘大会優勝者は、裂!』

「はぁ…はぁ…、やっと勝て─」

「おっとあぶねぇ」

 

 力を使い果たし堀に墜落しそうになった裂を間一髪オロチが支える。

 

「たくっ、勝ったんだからもっとシャキッと─気絶してるな」

 

 裂がこの試合で負った怪我は肋骨の粉砕骨折、四肢の完全骨折、肺には折れた肋骨が刺さり、止めに内臓の破裂だ。

 試合中はアドレナリンが麻薬のごとく脳をハイにしていたため継続できたが、試合が終われば当然効果が切れる。

 それに追加し体力、精神力共に限界だ。

 気絶するのも無理はない。

 

「裂の愛刀は…格納してるっぽいな。堀にもおちてねぇし」

 

 オロチは気絶した裂を担ぎ、医務室へと向かう。

 

「…これで、お前が伊吹山のNo.2だ。俺の後釜なんだ、期待させてもらうぜ」

「…Zzzz」

「…こいつ、マジ寝してやがる」

 

 溜息をつくが、オロチの表情は明るい。

 長年自分に突っかかってきた相手が、ついに自身を超えたのだ。

 

「今度は俺がチャレンジャーだ。次は俺が勝たせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

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