死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
『さぁ! 決勝戦も終了し優勝者も決定しましたが~、ここからは! エクストラステージよ!』
バトルエリアへ四本の鉄橋が降り、それぞれから選手が入場する。
これから始まるは百鬼武闘大会エクストラステージ。
聖魔連合トップ四人によるガチ戦闘だ。
『まずは東コーナー! 聖魔連合設立者の一人! 空間を操る降霊術師、レイヴン!』
「あ、その紹介俺らにもするのか」
『次は西コーナー! レイヴンの妹にて史上最悪の生物兵器! 魂の女王、オウル!』
「いや生物兵器って…、まあ自覚あるけど」
『三番目は南コーナー! 伊吹山の総大将! この試合でも鬼の恐怖を見せてくれるのか?!
「やっと俺たちの試合か」
『最後に北コーナー! 長年地下で生き延びていた反乱者の子孫! 堕天大聖堂司教、
「皆さんの為にも、全力を尽くしましょう」
通波の紹介と共に四人が入場する。
『今回、レイヴンには二つ、祈には一つ制約が設けられます! 二人とも把握してるよね?!』
「してるぞ」
「問題ありません」
今回掛けられた制約は二人それぞれ二種類。
二人共通の制約は、ルールにも記載されていたが完全無敵空間への十秒以上の芋り行為の禁止。
レイヴンは異空間倉庫、民守は
そしてレイヴンに課せられたもう一つの制約はバトルエリアの海抜以下への相手の転送の禁止だ。
これは相手を水中へ直接転送することによる即死攻撃を禁止する目的がある。
対して民守に課された制約は共通の制約に似ており、他選手をバリア内に五秒以上閉じ込めてはならないというものだ。
絶対に破壊されないバリアに閉じ込め水中に突き落とせばそれで試合が終了し塩試合になってしまうため、禁止する必要がある。
『それと、もしバトルエリア内で死亡、ないし気絶しても安心してね! 天魔が回収するから!』
『うむ。儂が試合開始の合図の後に回収班として動く』
四人は訓練で一対一で戦ったことはあれど、一対一対一対一は流石に無い。
その上、全員が実力者のため途中で試合を止めて回収なんてことは不可能だ。
しかし、天魔ならば自前の飛行速度と神通力魔法により一瞬にして回収できる。
「おいとっとと始めるぞ」
「早くやろうよ!」
白夜とオウルが試合開始の合図を急かす。
『わかった。全員準備は良いな?』
「あぁ」
「いつでもいいよ」
「早く始めろ」
「それでは、参りましょう」
天魔のアナウンスで全員がそれぞれの得物を構える。
(さて…)
(初めに…)
(狙うのは…)
そして、三人が始めに狙う人物は偶然にも同じであった。
『それではEXステージ…、始め!』
「
「打ち出の鬼槌!」
「
試合開始の合図と同時に三人がオウルへと技を放つ。
そう、三人の狙いはオウルだ。
「嘘でしょ!」
「済まないな。だがな、他二人は知らんがそれだけお前が脅威なんだよ!」
オウルの代名詞技、
この効果が相撲の様な試合形式だととてつもない脅威となる。
何せエリア内全てを埋め尽くされ押し出される可能性があるのだ。
その上、無制限に増える肉塊からも攻撃を飛ばしてくる。
こんな相手、一時同盟を組んででも真っ先に潰す以外の選択肢はない。
「すいません、図らずとも多対一になってしまって。ですが、まずはオウルさんを倒させていただきます!」
「ぶっ飛べや!」
「それだけ私を警戒しているわけね!
オウルは掌から肉の壁を生成し攻撃を防ぐ。
肉壁は普通の壁より弾力と厚みがあり、空気の槌は弾き光は貫通しない。
「2人とも! 一時共闘だ!」
「「!!」」
戦場にレイヴンの声が響く。
図らずとも全員が同じ人物を狙ったのだ。
それなら共同戦線を敷いた方が良い。
「白夜! 俺が開けた穴からオウルを叩け!」
「言われなくても利用してやるよ!」
この攻撃は民守のバリア魔法の様な概念系でしか防げないため、肉壁で防ぐのは困難だ。
一発一発は数センチだが、何百発と命中させれば肉壁に穴をあけるなど造作もない。
「っ、まずは兄さんを止めないと!
「バリアウォール」
肉壁から大量の口のついた触手が生えてくるが、目の前に展開されたバリアに阻まれる。
「民守さん?!」
「…確かにレイヴンさんの言う通りですね。ここは一時、互いを利用しあいましょう。バリアプレス」
バリアの壁が動き出し、肉壁を押し返す。
民守のバリア魔法は一見すると物質を生成しているように見えるが、実は異なる。
バリア魔法で生成しているのはバリアという概念そのものだ。
どんな攻撃でも壊れず、何人たりとも通さぬ無敵の障壁。
民守のバリア魔法は、この概念を現実に持ってくる。
オウルの肉壁では、絶対に突破できない。
「やっぱ民守さんのバリアを突破するには─」
「よぉ、やっと見つけたぞ」
「!?」
そして、ついに白夜が肉壁を超えオウルの元へ到達した。
「曇天・幽!」
「
白夜の
単純なパワーでは白夜の方が上だが、押し潰した所で自在に肉体を変化させられるオウルにダメージは無い。
白夜がダメージを与える方法は二つ。
自身の魔法である抵抗魔法で細胞一つ一つを固定し変化できないようにしてから殴るか、魂を直接攻撃するかだ。
「レイヴン!」
「おうよ!」
だが、最も確実な方法は確定でダメージを与えることができる第三者と協力すること。
オウルの背後にレイヴンがテレポートで現れる。
その手に持っているのはこれまでの戦いで使用していなかった刃渡り
「兄さん?!」
「
振り下ろされた大太刀がオウルを頭から真っ二つに切り裂く。
この斬撃は空間魔法を纏わせており、触れた箇所から切断する。
肉体変化による受け流しは不可能だ。
これによりオウルはバランスを崩し隙が生まれる。
(…やっべやらかした!)
しかし、レイヴンは内心焦っていた。
何せ肉体を縦に真っ二つにしてしまったため、オウルの本体である魂がどちらにあるか分からなくなったのだ。
幸いオウルはキャットガールの様に魂を他の肉体に瞬時に転送する術は無いが、魂の探知は現状オウルの専売特許であるため切断した肉体のどちらに魂があるか分からない。
「レイヴン! お前は右を狙え!」
「!、わかった!」
ならば、両方を同時に攻撃を叩き込むだけだ。
白夜とレイヴンはオウルを挟んで対峙しており、それぞれの右側にいるオウルを攻撃すればいい。
「
「
白夜の曇天・幽が半身を場外へ吹き飛ばし、レイヴンの手が連続で空間をずらすことでもう半身を切り刻む。
「っ、魂を削った感覚が無い。てことは白夜の方か!」
「そうらしいな。だがレイヴン、吹っ飛ばした半身が消えやがった。それに肉壁が消えてない。まだ終わってないぞ」
堀を囲う壁に激突した半身は直後に塵となって消滅した。
死亡反転で塵になるのなら即座にバトルエリア中央にリスポーンするはずだがリスポーンせず、何より肉壁が消滅していない。
つまり、まだオウルは生存しているのだ。
「…どこだ?」
「いや~危なかったよ。まさか共闘してくるとはね」
「?!」
「肉壁の中にいやがったのか」
肉壁からオウルの肉体が生成される。
オウルは白夜が向かって来ている分かった直後、肉壁へと魂を移したのだ。
「じゃあさっき俺が切り裂いた肉体は偽桃か」
「そう、
「あぁ。妖刀・八咫烏、伊吹山組で鍛冶が出来る面々に打ってもらった」
妖刀・八咫烏、今大会に当たって新たに作成してもらったレイヴンの新武器である。
打ったのは無名の刀工だが、白夜が紹介するくらいには腕が立つ。
レイヴンの空間魔法は触れればほぼ勝ちが確定するが、逆に言えば触れなければならないため西祭茜の様なすでに炎を纏っているような触れられない相手には無力だ。
だが、近接武器に空間を切り裂く効果を与えて使用すればその問題は解決する。
ちなみに、普通の刀ではなく大太刀なのはレイヴンの趣味だ。
普通の刀より扱いにくいが、片手でも十分使用できるため問題ない。
「そう。じゃあ…、私の新技も見てってね!」
「させるかよ!」
「おっと」
白夜が曇天・幽で殴りかかるが、オウルは肉体を肉壁へ一体化させる。
直後に肉壁に巨大なクレーターが発生するが、既にその場にオウルはいない。
「クソッ、逃がした! レイヴン! 空間魔法で探知できねぇのか!」
「俺の探知は実体があること前提だ、肉壁の中じゃどこにいるかわからん。攻撃はしてみるが期待すんなよ!」
肉壁へ
「っ、マジでどこ行きやがった?」
「レイヴンもういい」
「は? どうして─」
「見つけたからだ! 鬼脚!」
白夜は空気を固め飛び立つ。
向かう先は、空中で滞空しているオウルだ。
「げっ、もう気付いたの!?」
「影で分かったんだよ! 次から気を付けな、
「ぐっ」
咄嗟に桜血魂を盾に変形させ防ぐが、踏ん張りの効かない空中では白夜にパワーで勝てるわけが無い。
オウルは勢いよく地面に叩く付けられる。
そして、その場所は民守の目の前だ。
「民守! やれ!」
「わかりました! シールドプレス!」
民守は自身の大盾─
「重いっての!
「アンキロハンマー!」
オウルが身体から生やした触手で反撃するが、民守は棍棒状の骨が付いた尾を振り回し防ぐ。
民守がゲノムプラスで得た能力はアンキロサウルスの尾と背中の装甲だ。
これにより、憎悪ノ肖像やバリアで咄嗟に防げない背後からの攻撃も防げるようになった。
そして副次的効果により能力発動中は装甲を支えらえるだけ筋力が増強し、体重が一トンほど増加する。
「いや、あの、ほんと、マジで重いんですけど!」
「ならそのまま圧し潰れ─」
《ゾワリッ》
「!?」
「この気配は?」
「二人とも空中だ!」
突如、バトルエリア全体を異様な気配が包み込む。
気配の発生源は、オウルが滞空していた箇所のすぐ脇だ。
その場所には小さな肉片が浮遊している。
肉片のサイズと釣瓶落渡死の攻撃範囲的に見落としていたのも無理はない。
「よしっ! 間に合った!」
「オウルてめぇアレは何だ!?」
三人の中で一番戦闘経験のある白夜が警戒度を最高レベルまで引き上げる。
それほどまでに空中に浮かぶ謎の物体が発する気配は悍ましく、神々しい。
「兄さんは知ってるけど、新年の神楽舞の時に意識が飛ぶ事件があったの。あの時は何だかわからなかったけど、あの事件の原因が信仰の力…、神力だと知った。そこで! 新技開発のためにしてたネットサーフィンで見つけた数百年前のキャラを元ネタに開発した闇魔法と生命魔法を組み合わせた新魔法に組み込んだのがあれよ!」
空中に浮かぶ肉片が脈動する。
脈動するたびに肉片は膨張し、真紅の肉のハートを形作っていく。
そして、ハートから生えた無数の腕が周りを覆う。
「何ですか…あれ…」
「ぼ~としてていいの?!」
「!、しまった!」
民守が脈動するハートに気を取られている隙にオウルは憎悪ノ肖像から脱出する。
オウルはそのままハートの前まで飛翔し、最後の詠唱を開始した。
「全ての生命はあるべき場所へ、帰るためにはこの星を崇拝し殉教せよ、
詠唱が終わった直後、真紅のハート─紅星がより一層激しく脈動する。
それに合わせ波動が放たれるが、物理的な破壊は生じない。
だが、この波動には他の効果がある。
「いったい何をし…t…」
「ん? おいレイヴン、何してんだ!」
波動を食らったレイヴンが紅星へ向け歩き出す。
その眼は虚ろで、光が灯っていない。
「ちっ、さっさと眼を覚ましやがれ!」
「がっ?!」
正気に戻すために白夜がレイヴンの頬を殴りつける。
それによりレイヴンは数メートル吹っ飛ばされた。
「白夜てめぇ何して…いや思い出した。ありがと」
「レイヴンの空間魔法は有用だからな。敵とはいえ助けといた方がオウル攻略にいい」
「打算ありきかよ。まあ試合だしな。…っ、やべぇ今ので歯折れた」
レイヴンは折れた歯を掃き出し、折れた箇所のみを指定し口寄せを行う。
これで出血は抑えられる。
試合が終わるまでの応急措置だ。
「しかし…さっきのはいった─《ザブンッ》─?、いったい何のお…と…おいおいマジで何が起こってんだ!」
音のした方に目を向けると、観客が次々と堀へと身を投げていた。
その眼は先ほどのレイヴンと似ており、正気ではないのは一目で分かる。
「お二人とも、意識をしっかり持ってください! 恐らく、先ほどの波動は闇魔法の
「っ、民守さんもう気付いたの?」
「レイヴンさんと観客の行動を見れば嫌でもわかります!」
闇魔法・
通常はこれだけだがオウルが色々組み合わせた結果、バグみたいなシナジーを生み出した。
まずは生命魔法と掛け合わせることで、紅星が脈動するたびに放たれる波動に触れるたびに
これだけもまあまあ脅威となるが、最後に投入した神力がかなり悪さをしている。
神力により
更に波動に複数回当たると強制的に狂信者となり、最終的に紅星へ取り込まれエネルギーとなる。
レイヴンはオウルと兄妹であるため元から好感度が高かったということと気を抜いていたということもあり、波動一回で狂信者となってしまったのだ。
これが、魔法・紅星の詳細である。
「じゃあとっとと紅星だっけか? アレを破壊しないとだな!」
「そうだな!」
白夜が鬼脚で直接叩きに向かい、レイヴンが
「させるわけないでしょ!
「っ、鬼棍!」
だが、それぞれが腕を変形させたオウルによって阻まれる。
紅星は一度発動させれば後はオート操作だ。
そのため、紅星とオウルを同時に相手しなければならない。
そして、この間にも紅星は波動を放ち続ける。
「いい加減に…い…ろ…」
「おらぁ!」
「ぐはっ?!」
狂信者状態となった白夜をオウルが叩き落とす。
「白夜さん!?」
「っ、あの波動かなりヤバい。戦闘中でも強制的に意識を紅星に持ってかれる」
先ほどはオウルが殴りかかる直前に狂信者状態となったため即座に解除された。
しかし、次も今回と同じ状況になるとは限らない。
この試合、三人が本格的に共同戦線を敷かなければオウルの一人勝ちとなってしまう。
「てか、民守さんは影響ないのか? さっきから何発も喰らってるけど」
「バリアに光魔法を纏わせました、そのおかげである程度魅了を防げます。それに私はシスターですよ、そう簡単に精神攻撃は食らいません」
「本当か~お前。まあだとしたら民守さんに紅星の対処お願いした方がよさそうだな」
レイヴンと白夜は紅星の魅了をもろに受ける。
そのため紅星の影響をあまり受けない民守が対処する方が合理的だ。
「そうですね。私からもお願いします」
「じゃあレイヴン、俺たちでオウル抑えてできればぶちのめすぞ!」
「了解! テレポート!」
レイヴンはオウルの背後にテレポートし、肩に手を置く。
これで、オウルもテレポートの対象となった。
「!、兄さ─」
「テレポート!」
即座にテレポートを発動する。
「今だ白夜!」
「了解」
そして、テレポート先は白夜の目の前だ。
既に白夜は曇天・幽を振りかぶっている。
突然のことでオウルは回避も防御も間に合わない。
「テレポート!」
「
「がはっ!」
白夜の一撃がオウルの腹に突き刺さる。
レイヴンは直前に回避していたため無事だ。
「民守さん、今のうちだ!」
「わかりました!」
「行かせるわけないでしょ!
「
オウルが腕を変化させようとするが、その前にレイヴンが切断する。
「っ、兄さんめ!」
「オウルの相手はレイヴンだけじゃねぇ!」
「クソッ!」
すかさず白夜が攻撃し、オウルが民守の元へ行く隙を作らない。
だが、二人が紅星の波動に耐えられるのは数発が限界だ。
魅了を解除するためには自傷でも何でもダメージを受けなければならず、そう何回も解除できない。
「民守早くしろ!」
「分かっております!
バリアが民守の身を包み込む。
そして、形成するのはバリアでできた鎧と短刀だ。
全身を包み込むことで普通のバリアを張るより移動しやすくなる。
遠距離攻撃を行うことも考慮したが、無防備になる可能性を考えるとそれはできない。
「っ、自己防衛機能搭載ですか」
紅星が民守めがけ周りの腕を伸ばす。
この腕に掴まれれば狂信者状態関係なく問答無用で取り込まれ紅星のエネルギーとなる即死攻撃だ。
「ですが、利用させてもらいます」
民守は軽く跳躍し腕に飛び乗り、綱渡りの上を走り紅星本体へと向かっていく。
普段の民守にはこれほどの身体能力は無い。
だが、今の民守は
「
襲い来る腕を憎悪ノ肖像で防ぎ、バリアで形成した短刀に光を纏わせ切り裂きながら突き進む。
「もうすぐ本体ですね。ですが…どう破壊しましょう」
紅星を切りつけるが、傷は即座に再生する。
民守が紅星討伐に選ばれた理由は、波動による魅了が効かないからだ。
だが、民守には紅星を破壊できるほど火力の技は無い。
「…いえ、そもそも破壊する必要があるのでしょうか?」
これは全員が敵の試合だ。
共同戦線を敷いている相手ものちに敵となる。
なのに、自分には効かない攻撃を振りまく敵を倒す意味はあるのか。
「…そうですね、このままレイヴンさんと白夜さんを倒してもらいましょう」
民守は紅星から飛び降りる。
「あ、おい! 民守さん何してんだ!」
「すいませんお二人とも。私は共闘から抜けさせてもらいます」
「っ、民守てめぇ!」
白夜の攻撃が民守を襲うが、冷静に憎悪ノ肖像で逸らす。
「鬼である俺に嘘ついたのか?!」
「いいえ、先ほど決めました。裏切りについては謝りますが、これは試合ですので。あ、実際に裏切りなどはしませんのでご安心を」
「…そこは納得してやるよ。だが、それはそれとしてぶちのめさせろ!」
「出来るものならやってみなさい!」
民守と白夜の攻防が過熱していく。
これは一対一対一対一の試合なので戦闘相手が途中で変わることもある。
だが、さっきまで共闘していた者からしたらたまったものではない。
「兄さんこれで一対一だね」
「ふざけんなよマジで!」
レイヴンとオウルの実力は若干レイヴンが上である。
しかし、これは一対一の場合だ。
紅星が起動している以上、実力は当てにならない。
その上、レイヴンの身体には魅了解除の際に負った傷が無数にある。
いつまでもタイマンでオウルを抑えられるわけではない。
「いつまで持つかな!?
「クソッ! テレポート!」
「あれ?」
巨大化した拳が直撃する前にテレポートを発動させ、レイヴンはオウルの視界から外れる。
テレポート先はバトルエリアのはるか上空。
翼を生やしレイヴンは滞空する。
「はぁ…はぁ…、高さ制限無くて助かった。だが、早くあのクソ星どうにかしねぇと」
今レイヴンがいる場所にも紅星の波動は届く。
一刻も早く処理しないと先にダメージでダウンしてしまう。
「…異空間倉庫にぶち込む? いや内側から攻撃されたらどうなるかわからねぇ。見た感じあれ再生する…そうだ火魔法、あれ使えばワンチャンあるぞ!」
八咫烏を構え、魔力を込める。
空間魔法の付与はできたのだ、火魔法が出来ないなんてことはない。
数秒後、八咫烏から炎が上がる。
これで紅星を切断すれば、再生することはない。
「…よし、行くぞ。テレポート!」
レイヴンはテレポートしバトルエリアへと戻る。
場所は紅星の目の前だ。
「兄さん!?」
「よぉオウル、よくも苦しめてくれたな! だが、このクソ星を破壊すれば終わりだ!」
勢いよく八咫烏を振り下ろす。
腕が妨害し足をあり得ない方向へ曲げるが、腕が無事ならそれでいい。
「
「遅い!
レイヴンの一撃が紅星を切断する。
傷口は焼灼されたことで再生は行われない。
紅星が塵となり崩壊する。
「はぁ…はぁ…、口寄せ:鏡!」
レイヴンは即座に
これにより性別が口寄せ元の人物のものになるが、大怪我のまま戦うのに比べれば些細なことだ。
そして、紅星を倒した影響は他にもある。
「!、紅星がやられ─」
「おらぁ!」
「ぐっ」
紅星が破壊されたことで白夜へかかっていた魅了と言う名のデバフが消えたのだ。
民守がいくら
「っ、
「盤石崩し!」
「!、足場が!」
地面が液状化したことで民守が沈み、
これにより、頭が腹の位置ほどまでに下がった。
そしてその位置は丁度白夜が拳を握っている位置だ。
「止めだ! 鬼砕!」
「がはっ!」
白夜の拳が民守の顔面に突き刺さる。
民守の意識は遠のき、殴り飛ばされ堀を囲む壁に激突する。
体重が一トンほど増えた所で、鬼の怪力の前には誤差なのだ。
そして、気絶したことにより
『民守祈の場外を確認!』
コロシアムに民守の脱落を伝えるアナウンスが響く。
これで残りは三人。
「はぁ…はぁ…、まずは一人! 次は─「白夜危ない!」─あ? ぐはっ?!」
しかしその直後、大量の肉塊が白夜を包み込む。
「キャットガール直伝、
「オウルてめぇマジかよ」
肉塊が通った後に白夜の姿は無い。
犯人は無論、オウルだ。
オウルはレイヴンが全回復した直後、即座に標的を民守と白夜に切り替えた。
そして二人の決着がついた直後、残った方を不意打ちで倒したのだ。
「別にいいじゃん。ルール違反じゃないんだし」
「いやまあそうだが…うん、まあいいか」
「それじゃあ、ここから第二ラウンドを始めよう!」
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