死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
仕事始め
「…はぁ、今日から通常営業かぁ」
聖魔連合本部、逢魔ヶ時神社の廊下にオウルの溜息が響く。
本日の日付は一月四日、百鬼武闘大会を含めた新年の祭も終わり今日から仕事始めだ。
「おいオウル溜息をつくな。こっちも憂鬱な気分になる」
「だけどさぁ…、私たちまだ学生だよ? 冬休みだよ? それに今日から仕事始めなのは私たち他数名だけじゃん」
「仕方ないだろ。あれだけ人がいてもあんま意味無いんだから」
今までの会議では幹部全員が参加していた。
しかし、白夜の『作戦に関わる幹部以外参加する意味あるか? 逐一会議に呼びだして業務止めるのも悪いし』という一言で全員参加形式をやめたのだ。
とはいえ、この形式が取られるのは参加する幹部の部署内で完結する内容を決める時のみに限られる。
一応数部門だけで完結する内容であっても幹部共有スレッドで共有する決まりだ。
組織全体に関わる物事の場合は、発案元の数部門で会議を開いたのち幹部共有スレッドで内容を通達、質問や異議があった場合は幹部全員を招集しての再会議となる。
なお、組織全体に関わる場合とは大規模戦闘作戦の場合も指す。
今回の会議で話し合うのはその大規模戦闘作戦だ。それも重要度の高いもの。
そのため本来の休みは黒榊兄妹の冬休み明けまでであったが、一月三日という新年早々から会議が入った。
「ぶーぶー」
「サムズダウンすんな。てか組織作った段階である程度覚悟しとけよ」
「こんな大規模になるなんて予想できるか!」
「それはそう。まあ切り替えていけ、もう会議室前だ」
レイヴンが会議室の扉を開く。
「あ! 二人とも昨日ぶり!」
「え、通波? …あ~そうか、この会議情報部主催だったね」
「お待ちしておりました。レイヴン様、オウル様」
先に会議室へ来ていた情報部の二人に挨拶をする。
今回の会議の開催理由は情報部がまあまあヤバい情報を入手したからだ。
本来はもう少し早く会議を開く予定だったが、新年が近く諸々の準備中だったこともあり
「セレネたちが招集って珍しいな。予め最低限の情報は貰ってるが、そんなにヤバい情報だったのか」
「祝日を返上するほどではありませんが、その通りです。内容は残りのお二人がいらっしゃったらお話します」
「まあそうだよな。てか他二人まだ来てねぇのか」
「えぇ。ですが間もなく会議開始時間になるのでいらっしゃるかと」
「じゃあ少し待つか」
「だね」
レイヴンとオウルは容易されてい椅子に座る。
直後、会議室の扉が再度開く。
「すいません遅れました」
「何だ、お前らもう来てたのか」
入室してきたのは民守祈と鬼頭白夜だ。
今回の会議は聖魔連合トップの四名全員が参加する。
「全然遅れてないよ。だって後五分あるし」
「とはいえ全員揃いましたし、少し早いですが会議を始めてもよろしいでしょうか?」
「ですね」
「だな。早く裂とオロチの戦闘訓練見に行きたいし」
白夜と民守も席に着く。
これで今日の会議の出席者が全員揃った。
「これで全員だね。それじゃあ…、ゴホンッ、それではこれより、会議を始めます。司会は私、八世通波。書記と雑務をセレネが行います。…ごめん口調戻していい? 違和感が凄い」
「あ~うん、確かに違和感凄いからいつも通りでいいぞ。白夜と民守さんも気にしないだろうし。幹部全員揃う会議で敬語できてればいいから」
「私は構いません」
「俺はそういうの気にしてないからいいぞ」
「ありがとう。それじゃあ早速だけど、去年十一月にアレイオス孤児院を強襲したでしょ?」
「…そう言えばあったねそういう事。ひょっとして今回の会議ってそれ関連?」
「そうだよ」
会議室のプロジェクタースクリーンに資料が映し出される。
この資料はアレイオス孤児院のローカルネットワークへセレネが通波協力の元ハッキングし入手したのもだ。
「この資料を入手した時に話したけど、”アレイオス孤児院院長、バルバラ・B・イノセンティ””デッドオーシャン海賊団大頭、ベギニング・A・サファイア””
「おいおいバレなかったんだろうな?」
「一応支部だから無問題。それにアレから再度勉強しなおしたんだから。もう人工AIレベルじゃなきゃ私は負けないよ!」
アレとは、アレイオス孤児院地下の”役立たずの廃棄所”にて起こったバルバラ・B・イノセンティとのサイバー戦である。
当時の通波はハッキングの才能と知識、経験は大量にあれど、サイバー戦の経験は皆無。
そのため最終的にセレネに情報を抜いてもらう結果となり、通波の天狗になっていた鼻はへし折られた。
それ以降通波は勉強し直し、いくつかの悪の組織を経由した上で別の悪の組織へサイバー戦を仕掛けまくり実践経験を積んだ。
その結果、今では思考速度でギリギリ劣る高性能人工AI相手にやや劣勢でサイバー戦を行えるくらいになるまでレベルが上がった。
なお、その過程でいくつかの悪の組織が壊滅したがい今は関係ないので置いておく。
「まあ一回だけ羅炎会の本部にハッキングしたんだけどね」
「結局してんじゃねぇか!」
「いや他数十組織経由して罪擦り付けたから問題ないって! で、本部にハッキングして入手した今回の会議の本題が今から映すやつね。あ、ネットで翻訳した奴だから間違ってるかもしれないけど大筋や重要な箇所は合ってるから安心して」
プロジェクタースクリーンの画像が切り替わる。
映し出された資料には『NY征服計画』と書かれていた。
「…すいません、NYとはどこでしょうか? 文章的にどこかの地名か施設名とはわかりますが」
「たしかアメリカの都市のニューヨークってとこの略称だな。…っ、そういう事かよ」
「どうしたの白夜?」
「こいつら、マジで世界盗る気か」
「ちょっとそのセリフ! 私が言いたかったんだけど! …はぁ。まぁ、白夜の言う通り、それが今回の議題」
「…あ~そういうことか。白夜の言いたいことが分かった」
「え、どういう事?」
「ニューヨークはアメリカ経済の中心地だ。仮にそこを盗るれ、世界経済の少なく見積もって2%は直接関与できる。ここまで言えば分かるだろ」
2%と言うと少なく感じるが、全世界のGDPの2%だ。
その額なんと約2兆ドル、円換算で約363兆円。
これだけの金を一同盟が握るとなると、世界経済は確実に混乱する。
更に、ニューヨークには国連の本部ビルがあるのだ。
経済だけでなく世界情勢も混乱する可能性があ高い。
「あ~、盗られれば世界征服に大きく近づかれる訳ね」
「ですがアメリカの問題ですよね。私たちが介入したら更に面倒になりませんか?」
「祈の言う通りなんだよね。下手に介入して現地の魔法少女との三つ巴になりかねない。だらか四人を呼んで会議を開いたんだよ。介入するにしろしないにしろ、放置する訳にもいかないでしょ」
「だよな。一応聖魔連合は自給自足できるが、主な活動場所の日本がヤバい」
「それだけじゃない。既に俺たちはバルバラ・B・イノセンティと敵対してんだ。確実に狙われるぞ」
「…あ、そうじゃん! 私バルバラに顔見られてんじゃん!」
アレイオス孤児院内部へ潜入した四人はバルバラ・B・イノセンティに監視カメラ越しではあるが顔を見られている。
その上、通波に関してはサイバー戦をしているのだ。
敵対組織の人物が、自身の所属組織の情報を抜ける可能性のある者を見逃すはずがない。
機会があれば高確率で始末しに来る。
「レイヴン! バルバラだけは介入云々以前に確実に始末して!」
「…あの、その理屈なら通波さんは同盟の全組織から狙われませんか?」
「…え?」
「同盟間で情報は共有しているはずですし、羅炎会の本部にもハッキングをしたのですよね? 他組織に罪を擦り付けたとしても、時期的に感づかれませんか?」
「…スゥ~、もしかして私やらかした」
「やらかしたね」
「やらかしたな」
その返答を聞き、通波はその場に崩れ落ちる。
サイバー戦ならともかく、実際に戦ったら通波はバルバラ・B・イノセンティに逆立ちしても勝てやしない。
「どこで…間違えたんだろう…」
「いや今回は誰も悪くねぇだろ。俺だって連合所属前にその三組織の同盟なんてヤバい事前情報仕入れてたら九縄やミヤ当たりに情報収集行かせる。強いて何が悪かったかって言えば通波が直接アレイオス孤児院に潜入したことだろうな」
「…お姉ちゃんよくもやってくれた─、いや私でも似たような精神状態ならしかねないか」
通波がアレイオス孤児院へ行った理由は、姉である召に召喚されたからだ。
しかし、あの時の召は悪夢によりトラウマを刺激されていた。
同じ立場と魔法があれば通波だって同じことをする自信があるため強く文句を言えない。
「確か報告書で呼んだ状況ならしょうがないね、私もそうすると思うし。まあ、これでNY征服計画関係なくその同盟に喧嘩売るのは確定だね」
「あぁ、仲間の敵は組織の敵だ。少なくとも、アレイオス孤児院院長バルバラは
「ですね。連合加入時の協定とは異なりますが、堕天大聖堂も尽力しましょう」
「俺の方も強力しよう。バルバラの女郎はいけ好かないし、何より連合の目的上いつかはぶちのめさないとだしな」
「そうだ。だから安心しろ通波」
「…わかった。まあ今騒いでも仕方ないしね」
通波は気分を切り替え立ち上がる。
聖魔連合はオウルの過去のトラウマから仲間を絶対に見捨てない。
仮に通波が殺害なり誘拐なりされたら、全兵力を率いて相手を潰しに行くだろう。
そもそも通波は前線に出ることが少ないため心配するだけ無駄だ。
「で、介入するにしろしないにしろ結局いつなんだ? そのNY征服計画ってのは」
「アメリカの二月十六日の祝日、プレジデンツ・デーよ。なんでもアメリカ初代大統領の誕生日らしいわ」
「いや何で祝日にやるのよ。魔法少女も集まるんじゃないの?」
「一般人も大勢集まるからだろ。アメリカの魔法少女の魔法はあまり知らないが、一般人を巻き込んだら騒動になる。少数なら父さんや母さんみたくもみ消せるかもしれないがな」
魔法少女の仕事は一般人を守る事。
もし敵との戦闘で一般人を巻き込むことがあるなんてことがバレれえば、世間は一瞬で混乱する。
そのため各国の魔法少女連盟は全力で魔法少女の不祥事を隠蔽しているのだ。
「っ、やっぱどの国の魔法少女もクソだね」
「実際のところは知らないがな。ただの被害妄想かもしれないし。でだ、介入するしないの話に戻るけど、俺は幹部数名で介入するのがいいと思う。バルバラの魔法は不明、ベギニングと
「そうか? 俺は参加させるべきだと思うぜ。何せ一般戦闘員は実戦経験が不足している。これだけの戦闘は早々起こるもんじゃないし、実戦経験を積ませるにはちょうどいい」
「だけど白夜、下手すれば無駄死になっちゃう可能性もあるんじゃないの?」
「アレがあんだろ。灰崎が量産化に最近成功したっていう本部帰還専用のテレポートボタン」
テレポートボタンとは、伊吹山の戦いで幹部に支給された奥歯に張り付けるタイプのボタンのことである。
伊吹山の戦いから数か月経ち、量産化に成功したのだ。
一日に何百と作れるわけではないが、約五百名はいる戦闘員に二個づつ支給できるほどはある。
「今報告書漁ったけど、灰崎達から量産化したって報告が一か月前くらいに来てるね。これ使えば白夜の言う通り問題無さそう。祈は何か意見ある?」
「私としても介入することに賛成ですが、恐らく直接戦闘に参加するのは私と茜さん、葵さんだけだと思います。他の皆様はモチベーション的に参加してきださらないでしょうし」
「堕天大聖堂はマナ・オペレイドを倒すために集まったみたいな組織だからな。ま、それなら参加したい戦闘員全員と幹部数名連れて介入するのが一番丸いか?」
「だね。一応確認だけど、白夜の言った幹部数名プラス参加したい戦闘員で介入するって案に賛成の人は挙手!」
レイヴン、オウル、民守の三名全員が手を上げる。
「じゃあ介入するってことで─あ!」
「どうしたの通波?」
「二月十六日ってアメリカの祝日であって日本は普通に平日の月曜日じゃん? レイヴンたち学校どうするの?」
「…仕方ない。ズル休みするか」
「だね。あ~授業置いていかれる~」
オウルは嘆くが仕方がない。
学校の授業は最悪予習や復習で何とかなるが、介入するにはその一日しかないのだ。
必然的に優先順位は介入する方が高くなる。
「まぁ勉強は頑張ってね。ともかく、これで会議の内容な終了。作戦会議とかはまた今度ってことでいいとして、何か質問ある?」
「あ、じゃあ一ついいか?」
「何レイヴン?」
「その同盟の情報と一緒に”魔法少女は戦闘時、あらゆる法律に抵触しない”って法が国際的に作られる云々の情報があったはずだが、そっちの方はなにかあったか?」
「あ~それね。あの後アレイオス孤児院で入手した情報調べてみたんだけど、どうやらアレ噂レベルのものだったんだよね。一応調べてはいるんだけど情報は無し。現状お手上げだよ」
「そうか。平行してそっちも調べてくれ」
もし”魔法少女は戦闘時、あらゆる法律に抵触しない”なんて国際法が施行されれば、全世界の悪の組織は大打撃だ。
下手すれば三組織の同盟以上に重要な情報に成り得る。
「わかった、調べとくね。それじゃあ会議はこれで終了ってことで。セレネ、議事録取れてる?」
「取れています。しかし完成度を上げるためにあと五分ほどお待ちください」
「問題ないよ。それじゃあ会議はこれで終了。作戦会議とかは…どうする?」
「二月一日とかでいいだろ。それまでは現地視察や訓練に当てる」
「じゃあレイヴンの言う通りそれで行こう。それじゃ、今日はこれで解散!」