死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


命綱

 

「さて、会議も終わったし俺は戦闘訓練に参加しようかな」

「私も参加してよろしいでしょうか? 障壁の聖騎士(バリア・パラディン)を使用した近接戦の訓練を行いたいので」

「なら裂に指導を頼むのはどうだ? あいつは刀メインだが短刀も扱える。訓練には持ってこいだぞ」

「そうですね、裂さんにお願いしてみます」

 

 民守の弱点はバリアをが意味をなさない攻撃をされた際の脆弱性だ。

 事実、百鬼武闘大会で障壁の聖騎士(バリア・パラディン)を発動させてからは一度もダメージを受けていない。

 しかし、民守の生成するバリアは空間に固定されているわけではなく強い力を掛ければ動かせる。

 そのため百鬼武闘大会では白夜の拳を踏ん張り切れず、民守は場外へ殴り飛ばされたのだ。

 

「じゃ、そういう訳だから先に行くわ、お疲れさん」

「お疲れ様でした」

「あ、そのままドア開けといて! 私とセレネもすぐに出るから」

「わかった」

 

 そうして四人は会議室から退出する。 

 部屋に残っているのは黒榊兄妹だけだ。

 

「オウルはこの後どうすんだ?」

「あ、なら一緒に灰崎さんとこ来てくれる?」

「いいけど何でだ?」

「さっきテレポートボタンについて話してたでしょ。アレの改良についてちょっと話したくてね」

「改良について? 今から改良して量産間に合うのか?」

「う~んどうだろ、灰崎さんに聞かないことにはわからないし」

「そうか。まあテレポートボタンボタン関連なら俺も行った方がいいな。それじゃあ、テレポート」

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「よっと、到着だ」

「ありがと。さて、灰崎さんは居るかな?」

 

 二人が来たのは聖魔連合海上研究試験場。

 本来の始業日はもっと後だが、灰崎の趣味は研究開発だ。

 休日も基本的に聖魔連合海上研究試験場に籠っている。

 

「在室表示板見る限りは居るっぽいな」

「じゃあ多分あそこね」

 

 あそことは聖魔連合海上研究試験場内に作られた灰崎専用の実験室だ。

 この部屋ではコストや材料面、必要性の観点から断念されたが灰崎の興味に留まった物が日夜製作されている。

 製作費も灰崎個人に支払われている莫大な給料から出ており、誰もこの実験室で開発している物へ文句を言わない。

 研究者にとっては夢のような場所だ。

 

「灰崎さんいる~?」

「その声はオウルか。扉空いてるから入っていいぞ」

「お邪魔しま~す」

「灰崎さん入るぞ」

 

 実験室の中では灰崎が何かを弄っており、様々な機械の音が響く。

 

「レイヴンもいたのか。で、どっちの用だ?」

「私だよ」

「オウルか。まあここに来るの事態が珍しいからな。で、要件は?」

「伊吹山での戦いでも使用したテレポートボタン、アレの改良をしたいんだよね。アレって現状任意発動でしょ、押せない状況ではどうするの?」

 

 現在のテレポートボタンは使用者の奥歯に張り付け、噛んでボタンを押すことで発動する仕組みだ。

 しかし、任意でしか発動できないため、頭を飛ばされたりテレポートボタンそのものを外されたりするとボタンを付けている意味が無くなる。

 事実伊吹山の戦いにて、キャットガールは気絶させられテレポートボタンを使用できず誘拐されてしまった。

 

「あ~それか。その問題点に関しては改良しようとはしたんだよな」

「しようとはしたんだ」

「あぁ。セイの回復魔法って蘇生も出来るだろ。だから死亡した瞬間に僅かに回復した状態でテレポートするようにしようとはしたんだが、うまく行かなくてな」

 

 素人のオウルが思いつく改良案など、本職である灰崎が思いつかない訳が無く既に試されている。

 だが、未だ実用化されていないということはそれだけ技術的に困難ということだ。

 

「というか、何で今になってその話を?」

「実はさっき情報部と白夜、民守さんを交えた会議があってな。後で連絡来ると思うがアレイオス孤児院、デッドオーシャン海賊団、羅炎会の三組織からなる同盟が二月十六日のアメリカの祝日、プレジデンツ・デーにニューヨークを征服するって計画を情報部が入手したんだ。で、起こるであろう戦いに介入するにあたって戦闘員を出撃させるから安全性向上の為に改良を依頼しに来た」

「おいおいマジかよ。テレポートボタンを幹部以外に使わせんのは不安すぎるぞ」

 

 戦闘員は並の魔法少女よりは強いが、トップ層とはかなりの差がある。

 更に今回の戦いはベギニング・A・サファイと紅結束(ホン・ジャイシュー)の広範囲殲滅型の魔法を持つ二人が参加するのだ。

 幹部はともかく、戦闘員がテレポートボタンを押す隙があるか疑問が残る。

 

「だから改良を依頼しに来たんだよ。さっき上手く行かなかったっていてたけど、具体的にはどう上手く行かなかったの?」

蘇生(リザレクション)がうまく発動しなくてな。装備者が死亡した直後にテレポートが発動する仕組みまではできたんだが」

 

 灰崎の構想では、装備者が死亡した瞬間にテレポートと蘇生(リザレクション)が発動し本部へ帰還させるというものだった。

 しかし、実験では蘇生(リザレクション)が発動しなかったり、蘇生(リザレクション)がテレポートよりかなり遅く発動したためにマウスが死亡するなどの失敗が続き一度も成功していないのだ。

 

「だから現状研究は凍結されている。個人で研究は続けているが、大前提蘇生(リザレクション)を確実に発動させれるようにならないと話にならない」

「そっか…、ん? ねぇ灰崎さん、失敗した原因って何か分かる?」

「ライズ曰く、蘇生(リザレクション)の術式が難解すぎてテレポートボタンに書き込み切れにらしい。わかりやすい例で言うと、既にプログラムが入っているマイコンに更にプログラムを書き込もうとしているような感じだ」

「うんゴメンわからない」

 

 前提知識の無い素人にマイコンやらプログラムの容量など言われても分からない。

 分かるのは何となく無謀なんだなと感じるくらいだ。

 

「あ~確かにこの例えは悪かったな。すまん」

「まあ何となく難しいってことはわかったから。それともう一点、蘇生(リザレクション)の仕組みを教えて。もしかしたら私の魔法で解決できるかもしれない」

「…そういえばオウルの魔法も一応両方回復系か。完全に頭から抜けてた。で、蘇生(リザレクション)の仕組みだったな。セイ曰く、死者の魂があの世へ行く前に肉体を回復させ、そこに魂を入れることで蘇生させているらしい」

「…灰崎さん、もしかしたら問題解決できるかもしれない」

「なに?」

「いや正確には構想してたものではないけど、セイが蘇生(リザレクション)を発動させるまで魂をこの世にとどまらせることはできる」

「!、オウルちょっと血液よこせ!」

「え、わ、わかった」

 

 オウルは自身の血液を差し出された試験管に注ぐ。

 そして、灰崎は即座に試験管を機械に入れコンピューターでの検査を開始した。

 画面にはデータの羅列が高速で流れていく。

 

「兄さん、灰崎さんは何やってるの?」

「知らん、何かしらの検査だろ。ま、検査終わるまで待とうぜ」

 

 そうして待つこと数分、灰崎の弄っていた機械が停止する。

 

「─ふぅ。オウル、お前の改良案、何とかなりそうだぞ」

「本当?!」

「あぁ。今調べた感じ、オウルの生命魔法はセイの回復魔法よりテレポートボタンの素材に込められる魔法の量が多いらしい」

「どういうこと?」

「要は何故か素材というマイコンに書き込む量が、回復魔法より生命魔法の方が少なく済むから書き込み切れそうって話だろ」

「レイヴンの説明で概ねあってる。前提として道具に込めれる魔法の量は、道具の材質やサイズに比例し、込める魔法がどれだけ現実離れしているかに反比例する」

「つまり四属性魔法より回復魔法が、回復魔法より私や兄さんの魔法の方が道具に込めずらいってこと?」

「その認識で合ってる」

 

 四属性魔法は道具や科学の力を使えばある程度再現可能だ。

 だが、一部の固有魔法はそうは行かない。

 回復はまだ再生医療と使用すればいけるが、空間や魂は純粋な現在の科学をもってしても観測すらできず、魔法を掛け合わせることでやっと観測、干渉できる。

 様はどれだけ純粋な科学のみで再現できるかだ。

 

「待って、それなら何で私の魔法が書き込めそうなの? 回復魔法でも難しかったのに」

「そこなんだよな。考察になるが、オウルとレイヴンが血縁関係だからだろうな」

「…あ~そうか、テレポートボタンの材料か」

 

 テレポートボタンは鴉の魂(レイヴン・ソウル)から放たれた弾丸を素材に使用している。 

 つまり、レイヴンの肉体そのものだ。

 

「そうだ。それに口寄せ魔法と生命魔法は両方とも魂に干渉する魔法、血縁関係以前に同系統だ。だからかどうかは知らないが組み込む魔法の難易度が変わったんだろう。ま、魔法に相性があるって分かっただけ収穫か」

「で、結局はできそう? 二月十六日までに」

「どうだろうな。初めて作った時よりは簡単そうだが…。約一ヶ月か…」

「無理しなくていいよ、もし完成しなかったら白夜に戦闘員のみんなを連れてくの抗議するから」

「おいおい何言ってんだ。できないとは言ってないぞ」

「クライアントの要望を叶えるのが技術者だ。当日までに完成させてやる。直ぐに始めるから、それまで他の準備してろ」

「わかった」

「頼むぞ灰崎さん」

 

 そうして二人は実験室を後にする。

 

「ひとまず、何とかなりそうだな」

「うん。だけど、もし完成しなかったなさっき言ったみたいに白夜に抗議するつもり」

「仮に戦闘員の面々が行くって言ったらどうすんだ?」

「そうなったら行かせるよ。だけど、聖魔連合を脱退宣言と除籍以外で退団させるつもりは無い。ゴーストにしてでも連れ帰る」

「…はぁ、魂を呼び戻すの俺なんだぞ」

 

 オウルは現世にある魂には干渉できるが、黄泉へ行ってしまった魂は干渉できない。

 ゴーストとして復活させるにはレイヴンの口寄せ魔法を使用し、魂を黄泉から呼び戻す必要がある。

 

「え、ダメなの?」

「ダメとは言ってない」

「じゃあもしもの時はよろしくね。ま、死なないことが一番だけど」

「だな」

 

 死んでも復活させられるとはいえ、口寄せ魔法を用いた復活では生まれ持った肉体を失う。

 その上、オウルは身内の死に対するトラウマ持ちだ。

 最近は”死”そのものには慣れてきたため、先の百鬼武闘大会の様な目の前での蘇生が確約されているような状況なら問題無い。

 だが、命の保証の無い戦場だとトラウマによる暴走を起こす可能性があるのだ。

 そのため先ほど灰崎に依頼した蘇生機能付きテレポートボタンの開発は割と急務だったりする。

 

「ところで、この後…というか次の会議までどうする?」

「そうだな、取り敢えず戦闘訓練は確定として…、余裕見て戦場視察と行くか」

 

 

 

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