死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


ニューヨーク

 

 ニューヨーク。

 アメリカ東部にある都市であり、国際連合本部や世界貿易センター地区などが存在する世界的に重要な都市だ。

 

「…よし誰もいないな」

 

 そんな都市に存在する公園、セントラルパークの一角にワープゲートが開く。

 中から出てきたのはレイヴンだ。

 木陰に隠れていたためワープゲートを通過する瞬間を目撃した者はいない。

 

「出てきていいぞ」

 

 レイヴンが後ろへ声を掛ける。

 そうして、ワープゲートから四つの人影が姿を現す。

 

「ここがニューヨー─いや寒っ!」

「そこまで? あ、オウルには毛皮無かったね」

「あの九縄さん、流石に任務で呼び捨てはどうかと」

「いいっていいって。流石に敵前だと面子とかがあるけど今はそうじゃないからさ」

「オウル様がいいならいいですけど…」

 

 まずワープゲートを通って来たのはオウルとキャットガール、九縄(くな)の三人だ。

 なお、キャットガールは本体ではなく分身が来ている。

 ただキャットガールは魔法により全ての分身と本体の記憶をリアルタイムで共有しているため、この場にいるキャットガールも本体と言えなくもない。

 

「いやだけど…本当に寒い!」

「まあ、一月ですし」

 

 オウルが自身の体を震わす。

 今日は一月十一日、冬休みが明けてから始めての土曜日だ。

 一月のニューヨークの平均気温は約マイナス1℃。東京の平均気温よりかなり低い。

 キャットガールと九縄は冬毛があるためそこまで影響は無いが、黒榊兄妹はかなりの厚着だ。

 そして、この寒さは最後の一人の活動にもろに影響する。

 

「さて…。ミヤ、いい加減出てこい」

「嫌だよ行きたくない!」

「ずべこべ言うなっての!」

 

 レイヴンはワープゲートからテレポートを使用しミヤを引きずり出す。

 ミヤの恰好は黒榊兄妹以上の厚着だ。

 達磨とまでは行ってないが、少し太って見えるくらいには着込んでいる。

 

「さ、寒い…」

 

 だが、これだけ着込んでもミヤの寒けは収まらない。

 ミヤはダークエルフだ。

 エルフは創作物において、死ぬと樹木化するなど植物に絡めた設定で登場することが多い。

 そのためミヤとセイを産み出した組織は、二人の作成時に植物を使用した。

 植物は一般的に寒さに弱く、その特性を引き継いでいるミヤも同様に寒さに弱いのだ。

 また、前者以外にもゲノムプラスで得た能力も悪さしている。

 

「はぁ…オウル、魔法掛けてやれ」

「だね。流石にこのままじゃ任務に支障をきたしそうだし。寒冷耐性(コールドカット)

「あ、ありがとうございます…」

 

 オウルがミヤに魔法を掛け寒さを防ぐ。

 

「かなり魔力を込めたからNY征服計画当日までは持つはずだよ」

「いやほんと、マジでありがとうオウル様。あのままじゃまともに戦えなかっただろうし」

「ほんとほんと。あちきたち調査組の中で一番重要なのはミヤなんだから」

 

 キャットガール、九縄、ミヤがニューヨークへ訪れた理由は、NY征服計画時に戦場へなった際に使えそうな箇所、並びに現地の魔法少女の戦力などの調査だ。

 調査だけならセレネと通波(とおな)だけでよいが、それだと現地でしか得られない情報不足する。

 そのため、元々スパイや忍者の様な役割を担っていた三人が現地調査に派遣されたのだ。

 

「いやその重要度は私が荷物持ちだからでしょ」

 

 この調査はNY征服計画当日まで行われ、終わるまで三人は月面の本部へ戻らない。

 そのためミヤの影の中には二か月分の食料と、生活費や調査に必要な物資の購入費など諸々に使用するための約26,000ドルが入っているのだ。

 ミヤが来なければ現地調査班が生活できなくなる。

 

「ですがミヤさんの潜入スキルも相当では?」

「それは魔法ありき、スパイみたいな調査スキルはキャットガールと九縄の方が上じゃん」

「いやいや、ミヤの潜伏スキルだって調査に使えるでしょ」

「それはそうだけどさぁ…」

 

 ミヤの潜伏スキルが最も輝くのは森林の中だ。

 森林は()が多いため、影魔法を最も有効に扱える。

 それに対し、ニューヨークなどの大都市はミヤが最も苦手とする地形だ。

 何せ夜でもビルの灯に照らされ()が少ない。

 その為、都市ではミヤの潜伏スキルを万全に発揮できないのだ。

 

「はいはい、言い争いはその辺にしてくれ」

「は〜い」

「わかった」

「本当か? まあいいか。それじゃあ最終確認だ。キャットガール、九縄、ミヤの三人は今日からNY征服計画当日までの約一か月半、ニューヨークで生活しながら調査してもらう」

「内容は戦場になった際に使えそうな施設や通路、地形の調査。それと厄介な魔法を持つ魔法少女のリストアップね」

 

 メンデルキャップや青柳美空(あおやなぎみそら)の様な、主な攻撃方法が物理や四属性魔法等のシンプルなものしかない魔法少女なら純粋な実力勝負に持ち込める。

 だが、搦め手を使う魔法少女の場合はそう単純ではない。

 バッファーやデバッファーは実力差を覆し、初見殺しや搦め手主体の魔法は大物食い(ジャイアントキリング)を引き起こす。

 積一二三(せきひふみ)の蓄積魔法や栞・(メルヘン)・ケントニスのグリム童話魔法などがいい例だ。

 前者は攻略法が分からなければ突破できず、後者は一種の魔法とは思えないほどの多数の手札で攻めてくる。

 

「最終確認は以上だ。本当は回復要因でセイも連れて来たかったが流石にそこまで人員割けなかった」

「いや人員割けても私が反対するよ。こんな危険な任務、セイを出させる訳には行かないし」

 

 セイの強みはその回復魔法、一定条件下とはいえ死者蘇生すら可能というイカれ性能だ。

 しかし、実力は幹部ながら一般戦闘員に毛が生えた程度。 

 戦場にいたら実力と魔法の有用性を加味して真っ先に狙われる。

 

「まあミヤは反対するよな、セイの姉だし。それと、危険になったらテレポートボタン使って戻れよ。これで確認は以上だ。質問はあるか?」

「では一点、仮に魔法少女に私たちの存在が露見しそうになった場合どのように対処すればよろしいでしょうか?」

「それで言ったらあちきからも質問。対面した時点で負けが確定するような魔法少女はどうする? NY征服計画当日にいたら厄介ってレベルじゃないでしょ。それに現地の悪の組織はどうすんの?」

「…ヤバいなこの作戦。思ったより穴だらけだ。で、そうだな…、悪の組織は放置、魔法少女はなるべく無力化しろ。最悪殺しても構わんが、もし殺すなら緊急時でもない限りはトップ三名の誰かの許可取れ」

「え、魔法少女は見つけ次第殺していいでしょ」

「お前なぁ…、この作戦は長期間なんだぞ。バレるような真似は極力させたくない」

 

 確かに調査班の三人は幹部だ。

 戦闘力も最低限保障されており、小規模の悪の組織程度なら単騎で制圧できる。

 だが、その方法はボスのみを狙った暗殺。

 真っ向から潰すには力不足だ。

 当然実力上位の魔法少女に正面から勝てるわけが無い。

 更に、調査班の三名の存在から聖魔連合まで辿られる可能性もある。

 

「あ~確かに。バレたら色々面倒だもんね」

「そういうことだ。それじゃ、頼んだぞ」

「「「了解!!!」」」

 

 そうしてキャットガールが姿を消し、九縄が他人へ化け、ミヤが影に沈む。

 

「さて、これで今日の仕事は終わりだ。戻るぞ」

「あ。その前にさ、あそこ行かない?」

「あそこ? どこのことだ?」

「だからあそこ」

 

 オウルがレイヴンの背後を指差す。

 その先では、黒煙が天高く立ち上っていた。

 

「…は? 爆発音とか一切音しなかったぞ?」

「キャットガールたちが質問し始めたあたりから上がってたんだよね。音がしなかったってことはそこまでの被害しゃないのかも。多分三人も向かってるだろうし、野次馬に行こうよ!」

「まあ…うん、そうだな。アメリカの魔法少女も来るだろうし、行くか。あ、それとこっからは環呼びだ、それと変身(トランスフォーム)は解除する。さっきも言った通りバレたら面倒だ」

「名前呼びはいいけど、変身は解いていいの? 緊急時の撤退大丈夫?」

「魔法のパフォーマンスは落ちるが問題ない。それに最悪テレポートボタンがあるからな、それで撤退する。それじゃ、行くぞ」

「ゴーゴー!」

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「この辺でいいだろ」

 

 二人は黒煙の上がった地点近くの路地裏にテレポートする。

 

「ここは…グランド・セントラル駅?」

「スマホで調べた感じその近辺っぽいな。大通りの様子は…こりゃ酷い」

 

 大通りは逃げ惑う人々でごった返し、騒音が響く。

 黒煙の発生源はグランド・セントラル駅だ。

 幾度となく改築されてきた歴史ある駅舎はもはや見る影もない。

 

「建物は全壊…までは行ってねぇな、半壊少し過ぎって感じか」

「だね。それと多分、あいつらが主犯だよね」

 

 黒煙の向こう側から人影が姿を表す。

 その影は巨大であり、異型だ。

 高さは十階建てのビルほどあり、その巨大を丸太の様な六本の腕と二本の足で支える。

 更に巨大の上にも人影があるが、そちらは成人男性くらいの身長だ。

 しかし、両肩からは銃口のようなものが生えており明らかに一般人ではない。

 そして、巨大の上には銃口を生やした男の他に多数の袋が背負われており、そこから(かね)が溢れ出す。

 

「おいおいあの六本腕、葉月よりでかくないか?」

「あ、やっぱそうだよね。流石アメリカってとこかな、スケールが違う。だけどその巨体使ってやる事が推定銀行強盗って…」

「程度が知れる」

 

 そうこうしている内に六本腕が移動を再開する。

 巨体故に速度は遅いが、一歩が大きい。

 見る見るうちにグランド・セントラル駅から離れていく。

 

「ていうか見た感じ逃走中だよね。多分駅の破壊もその余波だろうし」

「だよな。だとしたらあいつらの追跡者は…アメリカの魔法少女か!」

 

 直後、六本腕の目の前に雷が落ちる。

 空は快晴、落雷が落ちるような気象じゃない。

 

「ちっ、追いついて来やがった!」

『どうする兄貴?』

「っ、迎え撃つぞ!」

 

 上に乗る男の指示で六本腕が向き直る。

 

「…やっと止まってくれたわね」

 

 そして、雷を落とした張本人(魔法少女)が姿を現す。

 身長は小柄であり、ウールの様なくすんだ白い長髪と肩から掛けたネイビー色のコートが落雷によって生じた風によって棚引く。

 片手に持つは身の丈ほどはある長槍。

 黒と紫のコントラストをしたそれは、強者が持つにふさわしい品と格を漂わせる。

 

「せっかくの休日だったのに、めんどくさい」

「じゃあ大人しくくたばれや!」

 

 男が肩の銃口からミサイルを放つ。

 しかし、白髪の魔法少女は突風を起こすことでミサイルどうしをぶつけることで対処する。

 

「…環、あの魔法少女の名前分かるか?」

「今通波に検索してもらってる。…データ来た。魔法少女名はエルファウルだって。魔法は天候系じゃないかって考察されてる。それとアメリカの掲示板での魔法少女最強議論でよく名前が上がるっぽい」

「だろうな。あいつ、七曜の円卓と同等レベルで強いぞ」

 

 

 

 




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