死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


出撃

 

 

 二月十六日、NY征服計画当日。

 運動広場には今回の戦闘に参加する伊吹山組一般戦闘員五百名、堕天大聖堂一般戦闘員五十名の計五百五十名、幹部数名が終結していた。

 

「さて、全員集まったな。今回の作戦の全体指揮を取る鬼頭白夜だ。これより、”アレイオス孤児院院長、バルバラ・B・イノセンティ””デッドオーシャン海賊団大頭、ベギニング・A・サファイア””羅炎会(らえんかい)組長、紅結束(ホン・ジャイシュー)”の三名からなる同盟が行う、”NY征服計画”へ介入するための作戦を発表する」

 

 拡声器を使用し運動広場全体に響き渡った白夜の声に集まった全員が引き締まる。

 

「始めに、俺が全体指揮って言ったが名目上だ。実際には配布したインカムから天魔と通波が戦場全体を俯瞰して指示を出す手筈になっている。だが、緊急事態や咄嗟の判断が必要な場合は現場の幹部の指示に従え。命令優先度は天魔と通波が上だがな」

 

 白夜の作戦指揮が名目上の理由は、白夜本人が戦場へ出るからだ。

 確かに戦場で合っても指示は出せるが、今回の戦場は広く並行して複数の戦闘が発生する。

 それならば、始めから参謀の役割が出来る天魔と無線や諜報のプロである通波に任せた方が良い。

 一応レイヴンも候補に挙がったが、戦場で士気を高めるのは白夜の方が得意なので譲った。

 

「それでまず俺らトップだが、俺がベギニング・A・サファイアを相手どる。レイヴンは全体の戦場誘導兼戦力の穴ができた時の補充兼奇襲。民守がバルバラ・B・イノセンティの相手、オウルが姿隠して戦場を駆け回りその都度回復してもらうのと、紅星で足切りしてもらう手筈だ」

 

 白夜はゲノムプラスの効果で得たホホジロザメの能力で水中でも有利に戦える。

 レイヴンは今回に限っては相手トップとの戦闘で拘束させるわけにはいかない。

 異国の地であり、尚且つ予測戦場範囲が広すぎるのだ。一か所の戦闘が終わったら、その場に居る戦闘員を無意味に放置することになる。

 レイヴンがいれば即座に別の戦場へと送れるが、当の本人が戦闘中ではそれも難しい。

 民守に関しては消去法だ。

 何せ、バルバラ・B・イノセンティの魔法が今日まで不明のまま。

 そのため、どんな魔法であろうと確実に瞬殺はされない民守が選ばれた。

 そして、一番配置に困ったのがオウルだ。

 オウルは聖魔連合でありながらスパイとして全日本魔法少女連盟に所属している。

 このことが海外の魔法少女連盟とはいえバレたらかなり面倒くさい。

 だが強力な魔法故使わないという選択肢は無いためこのような処置となった。

 

「そして敵の同盟最後の一人の紅結束だが、オロチ、裂、ビルドの三名を主軸としてもらう」

 

 今まで話した采配では紅結束がフリーとなる。

 そのため紅結束に当てるのはトップ四名を除いた最高戦力であるオロチと裂、そして紅結束の魔法と相性のいいビルドを主軸とした。

 

「なお、今話したのはあくまで主軸として戦闘を行う者だ。指示の無かった幹部並び戦闘員はそれぞれの有利に戦える地形、相手、役割、主軸として戦う者との相性を元に配属されている。これは事前に個人メールで配信してるから覚えてない連中は確認しろ」

 

 白夜が確認を促すが、スマホを出す者はいない。

 

「…ちゃんと全員事前に確認してきたみたいだな。あ、それと現地の魔法少女と悪の組織だがあまり気にしなくていい。先に現地入りしたキャットガール、九縄、ミヤがある程度削ってくれている」

 

 ニューヨークに存在する悪の組織はどうやらベギニング・A・サファイア率いるデッドオーシャン海賊団が最大規模だったらしく、大半が中小企業レベルの物だった。

 そのため調査組の三人だけで充分に対処でき、今現在ニューヨークに残っている悪の組織は片手で数えられる程度しか残っていない。

 その上、そのどれもが大規模魔法の余波で吹き飛ぶ程度の弱小組織だ。

 逆に魔法少女の方はかなり手こずり、主力であるエルファウルとガレンゲージの無力化は実力差がありすぎるためできていない。

 その代わり、元居た魔法少女の約半数を病院送りにした。

 日本と比べ搦め手の魔法を持つ者が少なく、下手に殺害数を増やして警戒されるよりは適度にボコして再起不能へした方がいいという判断だ。

 だが、これはこれで作戦に使える。

 戦力が足りなくなったら、オウルが回復させ戦場へ送り込めばいい。

 そして肝心のエルファウルとガレンゲージだが、調査組の三人がうまい事戦場での足止め、敵対組織への誘導を行う手筈となっている。

 三人の魔法は攪乱向きだ。糧はせずとも戦闘時間や場所を調整することはできる。

 

「最後に一番重要なことだが、先ほど配布した翻訳機とインカム、テレポートボタン、アレ絶対無くさずに装備しろよ。落としたら命の保証はないからな」

 

 翻訳機とインカムは作戦の伝達には不可欠だ。

 装着していなければ作戦に支障をきたす。

 そしてテレポートボタンだが、これは文字通りの命綱となる。 

 以前オウルが灰崎に依頼していた生体反応付テレポートボタン、それが昨日全員分完成したのだ。

 装備者が死亡したらセンサーが反応し、装備者の魂をテレポートボタンに封印。それと同時に遺体ごと本部へ転送し、回復魔法を掛けることで復活する仕組みだ。

 マウスでの実験と検査で安全性は保障されている。不良品はゼロだ。

 

「これで作戦説明は以上だ。それじゃあオウル、バフを頼む」

「了解白夜。それじゃあ全員動かないでね! 自動回復(オートヒール)身体守護(ボディガード)痛覚軽減(ペインカット)体力消費軽減(スタミナカット)、そして全属性耐性(フルカット)!」

 

 オウルが全員に魔法を掛ける。

 この人数に一度にかけても効果が薄れることはない。

 

「あ、白夜ちょっとメガホン貸してくれない?」

「いいぞ」

「ありがとう。みんな! これでかなり有利に戦えるようになったよ! 効果はだいたい二時間! ただし攻撃を食らいすぎると効果が薄れていくからあまり当てにしないように!」

 

 オウルのバフ系魔法の原理は対象に魔力を込めてて発動し、込める量によって効果時間が変わる。

 そのため、相手の攻撃を軽減する系のバフは攻撃を食らうたびに魔力の消費が加速していくのだ。

 

「これで良し。白夜ありがと、メガホン返すね」

「あぁ。それじゃあお前ら! 相手は既に戦闘を開始している! この戦いで勝てば俺たちの目的を邪魔する者が一気に減る! それほどこの戦いは重要だ! 勝ちに行くぞ!」

 

 

  『『『うおおおおお!!!!』』』

 

 

 白夜の雄叫びに合わせ鬨の声が響く。

 やはり白夜は士気を高めるのがうまい。

 

「それじゃあレイヴン、出撃を頼む」

「あぁ、それじゃあ拡声器借りるぞ。これからお前らをニューヨークの戦場へ送る! なお、海上班はモンストルオ・サルバドル号甲板へ、空中班はスペースシャトル型空中戦艦ヴィマナ号へと送る! それぞれの船の船長の指示はしっかり聞くように!」

 

 今回は総力戦のため、聖魔連合が所有している機体を全出撃させる。

 モンストルオ・サルバドル号の船長に河原、副船長にアギトが着任。空中戦艦ヴィマナの艦長に灰崎が、副館長にセレネが着任した。

 四人はそれぞれの船の構造や特徴は熟知しており、完璧に操縦することが可能だ。

 

「それじゃあカウントダウンを開始する! ─3・2・1・ゴー!!」

 

 直後、全員の足元に巨大なワープゲートが開かれる。

 これより、NY征服計画妨害作戦が開始された。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 聖魔連合が出撃する少し前、イギリス、リバプール港。

 かつて奴隷貿易の中心地として栄えたこの港には現在、四名の魔法少女が集まっていた。

 

「おいセインティ、ニューヨークにバルバラが現れたとは本当か?」

「そうだよトライアス。今ネットニュースで現地の様子が生放送されてるけど、これバルバラだよね?」

 

 セインティと呼ばれたピンクから紫にグラデーションしている長髪の魔法少女が手に持つスマホは、黒煙が立ち上り住民が大混乱を起こしているニューヨークの街並みが映し出す。

 その映像には住民を襲う人形やぬいぐるみ、アニマトロ二クスに指示を出す長髪白髪の目元が隠れた女性が映っていた。

 しかし下半身は通常の人のそれではなく、六本の機械の足に置き換わっておりアラクネを思わせる姿をしている。

 バルバラ・B・イノセンティは他者に対して身体改造を行える、今回は自身を改造したのだろう。

 

「合っている。ようやくだ、ようやく現場に姿を現したな!」

「落ち着いてくださいトライアス」

「落ち着いていられるか! 何年待ったと思っている!」

 

 ベージュ色の長髪を後ろにまとめ白いコックコートを着込んだ魔法少女─アリアスイートを、大槌を手にした黒髪の魔法少女─トライアスが怒鳴りつける。

 バルバラ・B・イノセンティは表向きは世界最大の孤児院の院長だ。

 そのこともあり、バルバラ・B・イノセンティが起こす事件は大抵が使いつぶしの部下でありバルバラ本人へつながる情報は全て削除されている。

 そのため表の顔はいつまでも綺麗なままだ。

 だが、今回はバルバラB・イノセンティ本人が現場へ来ている。

 いつもの様な誤魔化しは効かない、かつてないほどのチャンスだ。

 

「トライアス、焦る気持ちも分かるがアリアの言う通りだ。今のニューヨークに来ているのはバルバラだけでは無い」

 

 金髪にフックステッキを腕にかけた魔法少女─リリートックがスマホで調べた動画を見せる。

 その動画にはベギニング・A・サファイアと紅結束が無数の部下を率いて暴れる様子が記録されていた。

 

「今は現地の魔法少女が抑え込んでいるが、長くは持たないだろう。この状況で無闇に突っ込んでも負けるのが落ちだ」

「じゃあどうしろと!」

「頭を冷やせばいい。闘志を絶やさず、さりとて冷静さを保てば勝てない戦いではない」

 

 フックステッキが人一人覆い隠せるサイズの布へと変化する。

 

「では、私は一足先にニューヨークへと向かう。流石に私含め四人を一気に大西洋を横断はさせられない。複数回繰り返せば可能だが、大西洋は島が少ないからね。下手しなくても海にドボンさ」

「ですね。セインティさんとトライアスさんは私が所有するヨットで向かいます。セインティさんの魔法を使えば三十分程度で着くでしょう。本当はこの方法は良くないのですが、仕方ありません」

「確かに、セインティの最高出力はそう簡単に使っていい物ではない。だが、今回は緊急だからね。それに周りは何もないから問題ない。では、私は行くとしよう」

 

 リリートックは布で自身の姿を覆い隠す。

 普通は覆い隠した物の形が布越しに浮き上がるが、布はリリートックを無視し地面に落下した。

 布の下を確認してもリリートックの姿はない。

 

「リリーは行ったみたいだね。じゃ、私たちも行こう」

「そうですね」

 

 残った三人はアリアスイートが所有するヨットに乗り込む。

 このヨットは特別性であり、ロケットほどの速度が出ても自壊することはない。

 

「セインティ、頼む」

 

 だが、このヨットに搭載されているエンジンは一般的な物だ。

 このエンジンではニューヨークへ着くのに数日はかかる。

 そのため、セインティの魔法を使いニューヨークへ向かう。

 

「りょ~かい! しっかり掴まっててね!」

 

 セインティが魔法を発動すると、ヨットが浮き上がり出航する。

 より正確に言えば、ニューヨークの方向へとヨットが落ちていく。

 

「このまま一気に行くよ!」

「あぁ。待っていろバルバラ。あの時の恨み、必ず晴らさせてもらうぞ」

 

 トライアスは自身の腕を撫でる。

 その腕には、色の異なる皮膚や布がパッチワークの様に縫い合わさっていた。

 

 

 





 自身の魔法故に裏方へ回った方が強い主人公達…
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