死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
三人称視点です。
ニューヨーク・セントラルパーク上空。
その上空に開いたワープゲートから二つの人影が飛び出してくる。
「ギャハハハ! 敵、敵はどこ?!」
「うるさいぞ
出てきたのは聖魔連合のトップを除いた最高戦力である裂とオロチ。
二人の眼下には無数の敵が大地を埋め尽くしており、キャットガールの分身体を含めた聖魔連合の軍、
そして何より目を引くのが、巨大化した葉月の二倍はある巨大ゴーレムだ。
巨大な分動きは鈍重だがその分射程とパワーが凄まじく、腕の一振りで何棟ものビルをなぎ倒す。
葉月が何とか味方に被害が出ぬよう相手しているが、耐えるので精一杯だ。
「そうね、まずはあのゴーレムを倒しましょ! チェーンワイヤー!」
裂は両肘から発射したチェーンの片方を巨大ゴーレムに、もう片方をオロチに巻き付ける。
「ちゃんと構えててね!」
「言われなくとも!」
そして、一気にチェーンを巻き取ることで巨大ゴーレム目掛け加速していく。
「葉月! そのまま抑えててね!」
『!、わかったわ裂ちゃん!』
葉月は巨大ゴーレムの腰に手を回し、その場から動かぬよう押さえつける。
いくらパワーがあろうと、巨大化に合わせ体重もトン単位で増えている葉月を払いのけるのは容易ではない。
「裂! 俺は右腕、お前は左腕だ!」
「了解!
裂が紅顎と白喰を巨大化させ、オロチが拳を構える。
巨大ゴーレムは葉月を殴るなどして抵抗しているが、既に接近する二人の間合いに入った。
「二刀流・
「
そして、裂の刀とオロチの拳が巨大ゴーレムの腕を破壊する。
が、それだけだ。
未だ上半身は健在であり、腕が無くとも暴れれば脅威となる。
更に言えばゴーレムとは土人形のことだ。
破壊された腕は既に再生し始めている。
「裂! チェーンワイヤーコこっちよこせ!」
「!、了解!」
一足先に巨大ゴーレムの膝に着地したオロチ目掛け裂がチェーンワイヤーを放つ。
オロチはそのままハンマー投げの容量で裂を振り回す。
狙うは巨大ゴーレムの心臓部。
先ほどの落下中、オロチはピット器官で心臓部に一肌ほどの熱源を感知した。
事実、その箇所には巨大ゴーレムを生成し操縦している術者がいる。
一部の例外を除き、魔法は術者が死ねば維持できなくなるのだ。
「ぶっ飛べ!」
そして遠心力が十分に蓄積されたところで、心臓部目掛け裂を投げ飛ばす。
巨大ゴーレムは両腕を粉砕されているため防ぐ手段もなく、躱そうにも葉月が押さえつけているためそれも不可能。
「ギャハハハ! 死んじゃいな! 二刀流・
裂の一撃が巨大ゴーレムの胴を切断する。
術者がいたであろう箇所からは血液が流れ、巨大ゴーレムは動作を停止した。
「ナイスだ裂!」
『…ねえオロチ、裂の着地って考えてるの?』
「…やべ、その場のノリでやったから完全に忘れてた」
裂は別に空中を自在に移動できるわけではない。
空中での移動手段はチェンソーのチェーンを地形に突き刺してのワイヤーアクションだ。
今回は斜め上方向にかなりのパワーで投げたためそのままでは着地に時間がかかる。
「まあここら一帯は高層ビルが多い。どっかに引っかけるだろ」
『だね。あの子頑丈だもの』
「そういえば葉月、何でキャットガールがいるんだ? 作戦だとここにはいないはずだろ」
本来の作戦ではキャットガールたち先行調査組は悪の組織との戦闘には参加しない。
この場に分身体とはいえキャットガールがいること自体が異常なのだ。
「それについては誠に申し訳ございません」
「お前は…分身体で合ってるか?」
「はい。本体は今別件でこの場を離れております」
「別件? まあいい。何があった?」
「それが、羅炎会の軍が出現した地点にたまたまガレンゲージがいたのです」
「…は?」
実は聖魔連合、NY征服計画当日まで敵である三つの悪の組織の出現地点を捕捉できていなかった。
当日、三組織の軍は前触れもなく現在の地点に出現したのだ。
電波妨害ならば
後者だった場合はそれこそ、データ上にも残さないくらい厳重に。
このためわざと遅れて戦いに参加することでこの問題を解消した。
が、羅炎会が出現したセントラルパークにたまたまガレンゲージが訪れていたのだ。
両者が接敵する前にガレンゲージの方を百猫夜行で押し流したが、それでも当初の世予定から既にかなりズレている。
つまるところ、キャットガールがこの場に居るのは完全なる事故だ。
「待て、何で報告しなかった。報告する時間あったろ」
「いえ、正確にはガレンゲージはまだ聖魔連合の軍と接敵していません。ですが、私たちの分身体を殺害しながらこちらへ向かって来ています。そのため百猫夜行がここまで広がっているのです」
ガレンゲージはその性格上、敵前逃亡は絶対に行わない。
自身の魔法を使用し、先ほど崩壊した巨大ゴーレムを頼りに突き進んできている。
幸い百猫夜行で足止めは出来ているが、相性が悪くいつまで持つかは不明だ。
「ちっ、確かにそれなら作戦に支障はない。どのみちキャットガールの分身体がいるのはありがたいからな。でだ、話は変わるが肝心の
『それが全然出てこないのよ。羅炎会の軍の構成員的に近くにいるのは分かるけど』
羅炎会の軍の大半を占めているのは生命体ではない。
その数、目測でおよそ百万体。
幸い耐久値はそれほど高くなく魔法を覚えた聖魔連合の一般戦闘員で充分対処は間に合う。
だが、これ程の大群を生成できるとなるとそれこそ紅結束くらいしかいない。
「はい。紅結束の魔法は大地操作。射程距離は無限に近いですが、操作という魔法の都合上射程は実質目視で確認できる範囲です。一応衛星カメラから操作している可能性も考慮しましたが、通波に確認したところその可能性はないとのこと。何より、他組織のトップが出張ってきているのに一人だけ来てないのは面子にも関わります」
「だよな。面子は何より大事だ。葉月、その高さから紅結束を探せないか?」
『そうねぇ。探せなくはないけど…、それならビルドを使って対策を─「葉月避けろ!」─え?─《グサッ》─え?』
紅結束の捜索を始めようとした直後、崩壊せず残っていた巨大ゴーレムの下半身からものすごい速さで伸びてきた土の槍が葉月の心臓を貫く。
傷口からは血が滝の様に溢れ出す。
「葉月さん!」
『こん…なもの!』
葉月が力を振り絞り、自身の心臓を貫いた槍を破壊する。
しかし、破壊したのは柄の部分であり心臓に刺さった穂先はそのままだ。
穂先まで破壊すると出血量が更に増えてしまう。
『オロチ…みんなに…離れるように…』
「!、あぁ。総員、葉月から離れろ! 巻き込まれるぞ!」
だが、心臓を貫かれた以上葉月の命はもう長くない。
一応オウルもニューヨークには来ているが今この場にはおらず、居たとしても戦場ど真ん中でこの規模の怪我の治療は時間的に不可能だ。
そのため、葉月にできることは残り少ない命が尽きるまで全力で暴れ、敵戦力を減らすこと。
始めに巨大ゴーレムの残りの身体を粉砕する。
『次!』
続いて腕を薙ぎ払い大勢の兵馬俑と魔法少女を投げ飛ばす。
巨人が後先考えずに暴れるとそれはもう被害は凄まじい。
『クリエイトウェポン!』
更に土魔法で大槌を生み出し叩きつける。
その衝撃で大量の
だが、この暴走もそう長くは続かない。
『うっ…ごはっ』
葉月が口から血を吐き出す。
心臓を貫かれれば即死の可能性もあるが、それでも数十秒暴れ続けられたのは葉月の意地だ。
『はぁ…はぁ…、これで…最後!』
最後の力を振り絞り大槌を振りかぶる。
狙うは敵軍のど真ん中。
そこを攻撃すれば敵軍の半数にはダメージを与えられる。
「おっと、これ以上は止めてもらおうか」
『!?』
だが、大槌が地面に直撃することは無かった。
地面から生えてきた土の腕が大槌を受け止める。
その隣には紅いスーツに眼鏡を掛けた男が佇む。
この男こそ、
「(!、いったいいつ現れた? いや、そんなこと今はどうでもいい!)
「
オロチが即座に拳を叩き込むが、
「っ、硬い!」
「あまり舐めないでもらおうかオロチ。それと、不意打ちは無駄だぞ」
『グハッ』
「葉月!」
地面から生えてきた岩が背後から不意打ちしようとしていた葉月の腹を貫く。
この攻撃が止めとなり、葉月の体から徐々に生気が失われる。
これ以上の戦闘継続は困難だ。
『オロチ…後は頼んだわよ…』
「…あぁ、ゆっくり休んでろ」
その言葉と同時に葉月の身体機能が停止、テレポートボタンが作動し葉月の遺体を本部へと転送する。
「これは…レイヴンのワープ能力か。本人がいないことを鑑みるに、遠隔で作動できるようにしたのか、はたまた何らかの技術で道具化させたか─」
「よそ見してんじゃねぇ!」
「おっと危ない」
即座にオロチが殴りかかるが、紅結束は地面から生成した土壁で防ぐ。
土壁自体の耐久はオロチの拳一発で破壊できる程度だが、生成速度がとてつもなく早い。
一枚壊している間に次の土壁が完成している。
これではいくら破壊しても紅結束には届かない。
「流石にこの程度の土壁は一撃で破壊するか。流石、あの鬼頭白夜の右腕と言われているだけはある」
「いや、今の俺は右腕じゃない。せいぜい左腕って所だ」
「何?」
「今のお頭の右腕は、あいつだ!」
オロチの視線の先では、裂がビルをスリングショットのフレームに、自身を弾に見立て構えていた。
「よくも葉月をやってくれたわね! チェーンスリングショット!」
そして、ビルに巻き付けていたチェーンを勢いよく巻き取り自身を発射する。
「死ねぇ!
「
回転しながら突っ込んで切る裂を、紅結束は間一髪岩壁で防ぐ。
反撃を食らう前に裂は即座に飛び退き、オロチの横へ着地する。
「っ、後少しだったのに!」
「お前が
「炎人? ひょっとして巨大ゴーレムに乗ってたやつ? そいつなら切ったわよ」
「あいつは羅炎会の幹部だ。お前の名は知らないが、能力、見かけ的に数十年前に日本で起きた連続殺人事件の犯人だろ。まさか、鬼頭白夜の下にいたとは」
「アハハ! まさか、私のことを知っている人が海外にもいたとはね! じゃあ…二刀流居合・冠木門!」
裂が紅顎と白喰を構え、一気に踏み込む。
「居合か! それでは、鉄幹!」
それに対し、紅結束は鉄の棒を構え迎え撃つ。
両者の攻防は凄まじく、下手に介入すれば巻き込まれかねない。
「なかなかやるな。ならば─」
「蛇鞭!」
だが、オロチほどの実力があれば別だ。
一瞬の隙を付き紅結束に殴りかかる。
「!、岩戸!」
しかしさすがは紅結束、この攻撃も岩壁で防ぐ。
「裂! 紅結束は強い、下手に突っ込むな! 元の作戦通りに行くぞ!」
「っ、切りたいけどわかったわよ!」
「…どんな作戦を仕込んでいるのか知らぬが、私の能力、大地操作の前には無力だ!」