死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
白夜視点です。
『全体連絡! オロチ、裂、ビルド、スカイが
「そうか。あいつら勝ったか」
天魔の声が無線に響く。
紅結束の魔法に特効なビルドが居たとは言えかなり早く片付いたな。
だけど空中班に所属していたはずのスカイが撃破メンバーに居たと考えると、かなり手こずったみたいだ。
この戦いが終わったら鍛えてやるか、あの二人強さには貪欲だし。
『続いて、オロチと裂が魔法少女ガレンゲージとの戦闘を開始! なお、他チームには影響がないので作戦を続行!』
「おいおいあいつら連戦か」
オロチと裂は確かに強い。だから今回の戦いで敵組織のトップの一人に当てたんだしな。
だとしても連戦はきついだろ、俺だってきつい。
まあ、勝てるかどうかは別として作戦終了までは持つだろ。
『更に緊急連絡!』
「おいおいまだ何かあんのかよ」
ん、この声は通波か?
流石にこれ以上連絡することはないだろ。
まさかどっかやられたか?
『ヨーロッパ方面から謎の高速飛行物体が接近中! あと十分ほどでニューヨークに到着する!』
「はあぁ?!」
何でヨーロッパ方面から何か来てんだよ!
まさか俺たちみたいに他組織がこの戦いに乱入しようとしてんのか?
何にせよ早くサファイア率いるデッドオーシャン海賊団を倒さないと面倒だ。
だけど…いい加減現実見るか。
「こっからどうするか…」
今俺がいる場所は破壊したデッドオーシャン海賊団の一隻のマストの上。
目下の海では海の藻屑となった船の残骸と大量の渦潮が浮かんでいる。
「サファイアの野郎、マジで面倒な事しやがって」
船団の船をかなりの数破壊した辺りからサファイアもなりふり構わなくなったのか渦潮連発しやがった。
あいつは俺たちと違って攻撃に味方を巻き込むことに躊躇が無い。
そのおかげで海流は乱れまくり、海中に入ろうものならまともに泳げずジエンドになるのが目に見えてる。
幸いモンストルオ・サルバドル号は無事だが、滅茶苦茶になった海流のせいでまともに動けやしない。
「コールドブレス!」
「空流!」
「レインランス!」
その上サファイアの野郎、水中に籠りやがった。
一応空中戦が出来るアギト、河原、葵にも手伝ってもらってるが、場所が分からねぇ上船の瓦礫も目くらましになり攻撃が当たらずただ時間だけが過ぎていく。
「クソッ、
聖魔連合の俺含めた幹部連中の魔法は確かに強力だが、俗に言うマップ兵器級の魔法持ちは少ない。
幹部連中の実力は素の技術や手数の多さ、応用力に瞬間火力が主な要因だからな。
今みたいに敵が隠れると対処法が少なく厄介だ。
「…いっそ魔法少女ぶつけるか?」
この戦いは元々、デッドオーシャン海賊団、羅炎会、アレイオス孤児院の同盟と、ニューヨークの魔法少女達の戦いになるはずだった。
だが、
おかげでサファイア相手に集中できるが、ここで重要なのは魔法少女サイドのトップ層は未だ健在だという事。
そのうちの一人、エルファウルはローワー湾沖合から見えるビル街でミヤと
つまるところ、こちらの指示一つでいつでも天候を操作する女をこの戦場へ呼び込める状態ってことだ。
エルファウルの天候操作魔法なら海中にいるサファイアも引きずり出せる。
「…よし、それで行こう。こちら白夜。アギト、河原、葵に告ぐ、これからエルファウルをサファイアにぶつける。三人はモンストルオ・サルバドル号へ戻り転覆しないように保持しろ」
『了解!』
『わかったっす!』
『え、それいいんですか白夜さん!』
「問題ない。どうせこの後戦う可能性があるんだ、遅かれ早かれだろ」
他三つの悪の組織を潰すのは大前提として、アメリカの主要魔法少女を潰す機会なんていつ訪れるか分からない。
ならこの機会に再起不能にしとくべきだ。
その上、主な活動拠点が日本とはいえこの戦いに参戦した以上目を付けられるのは確実。
七曜の円卓レベルの魔法少女に今後ちょっかい出されるのは避けたい。
「こちら白夜、ミヤ聞こえるか?」
それに、今からミヤにアレを切らせる。
『何白夜様! 今忙しいから手短にお願い!』
「九縄と一緒にエルファウルを俺の方へ誘導しら。そしてミヤ、お前はアレを切れ」
『!、え、いいの!? 身内で収まってた百鬼武闘大会はともかくこの場で?!』
「あぁ。俺が許可する」
アレを発動させたミヤの実力は負けはしないが俺でも手こずる。
目安としてはオロチや裂と同等くらいか。
発動条件や使用前の僅かな溜め時間で速攻をかけられる関係上二人の方が強いし、その溜めが原因で百鬼武闘大会では茜に負けてたけどな。
…いや、茜相手は発動できても相性負けしそうだ。
だけど今回は時間稼ぎが得意な九縄とタックを組んでいる上、エルファウルが生成している黒雲により巨大な影が発生している。
発動するにはうってつけの状況。
今まではミヤ本人が情報収集要員だから目立つアレは使用機会が無く、尚且つ最終防衛ラインだったから使わせなかったが、聖魔連合へ加入したから戦力の心配はする必要が無い。
「だから、思いっきりやっちまえ」
『…わかった。ちょうど今路地裏にいるから発動できるよ。私の力、ニューヨークに刻み込んであげる!
インカムから詠唱が聞こえた直後、黒雲の下から巨大な影が溢れ出す。
そして影はビル街を飲み込み、巨大な角の生えたヤモリを形作っていく。
あの影の怪物が聖魔連合加入前の伊吹山の最終兵器、
聖魔連合で数少ないマップ兵器だ。
巨大化した葉月を超える巨体を維持するため大量の影を必要とするが、その分性能は折り紙付き。
倒すには弱点である強い光を大量に浴びせるか、ミヤ本人を狙うしかない。
まあそのミヤ本人は月光王餓の中にいるからなかなか狙えないけどな。
『おらぁぁ!』
お、今振り上げた腕がエルファウルに当たったか?
でもってこっちへ吹っ飛ばしたと。
確かに誘導しろとはい負ったが、ここまで力技できたか。
「じゃ、行くか。
こちら側へ吹っ飛んで切るエルファウルへ接近する。
あいつは殴られた衝撃で体勢を立て直せていない。
狙うなら今だ。
「くっ、あんな隠し玉があるなんて」
「驚いてくれたか?」
「!、誰?!」
「鬼頭白夜、さっきまでお前を足止めしていた二人の上司だ。じゃあなエルファウル、
だけど直撃はしなかったな。
直前に腹と曇天・幽の間に空気の層を作って威力を軽減された。
だが海中に落とした、ここまでやってしまえば─
「ガハハハ! まさか魔法少女が落ちてくるなんてな!」
「ベギニング・A・サファイア、あなたも来ていたのね」
「当然だ! 今日こそ決着付けるぞエルファウル!」
勝手に殺りあってくれるってもんだ。
「よっと。ナイスだミヤ」
「それほどでも。だけど、まさか発動させろって指示が来るとはね」
こちらへ移動してきた月光王餓の上に着地する。
ビルをも超える巨体となると足場としても有効だ。
空中移動技があるとはいえ、やっぱ足場はあった方がいい。
「いやこれだけ戦場が広いなら月光王餓発動させた方がいいだろ。それと九縄はどうした?」
「九縄ならまだ生きてる敵に拷問しに行ったよ。デッドオーシャン海賊団の本拠地の情報調べるって」
「本拠地? それくらいハッキング使えば調べられるだろ」
「あ~、正確には隠し財産の場所を調べてる。勝手なイメージだけど、海賊なら地図にも載ってない島や海底に隠し財産の一つや二つあるでしょ」
「…確かに」
流石にアニメや漫画みたいな金銀財宝は無いだろうが、貴重な物はありそうだな。
「資金はいくらあっても困らないしね。じゃ、私は潜ってるから何かあればお願い」
「おうよ」
そうしてミヤは月光王餓の中へ潜る。
俺の方もエルファウルとサファイアの対処に当たるか。
とはいえどうするか…。
今のところ二人で削り合ってくれているが、何かの拍子に標的が俺に向いた場合がキツイ。
「…下手に考えた所で仕方ないな。最悪水中へ逃げればいい」
曇天・幽の先に空気を纏わせる。
戦略で悩むことはあれど、攻めあぐねて悩むなんて俺らしくない。
どんな敵だって、最後は力で粉砕してきたんだ。
「もっとだ、もっと大きく!」
俺の魔法はエルファウルやサファイアの様に広範囲を一度に攻撃できるようなものじゃない。
だから、俺は火力で勝負する。
「よし、行くぞ!」
今回纏わせた空気の量は、槌の口径だけで俺の身長の十倍はある。
これだけ大きければ、多少狙いがズレても問題ない。
「ミヤ、接近しろ!」
『了解!』
まず落とすのはエルファウルだ。
さっきから風が吹きまくってってまともに空中移動なんてできやしない。
だが、月光王餓に乗って行けば風の影響による移動制限がなくなる。
その上足場も出来るからいいことずくめだ。
『あ~もう、さっきから水の攻撃が鬱陶しい!』
「風もだ。二人とも、攻撃しながら俺たちの様子見もしてたわけか」
飛んできた風の刃を曇天・幽に纏わせた空気で弾く。
巨体故海中へ引きずり込まれることは無いが、下手に攻撃を食らいまくっ影が削られるのも困る。
「仕方ない。ここから狙うか」
曇天・幽を空気の柄で伸ばす。
エルファウルはこちらの存在を感知しているが、特に気にする様子はない。
それが余裕から来るものなのかは知らないが、好都合だ。
「食らえ、打ち出の大鬼槌!」
「ウィンドシフト」
「っ、逸らしやがった」
「さっきは良くもやってくれたわね。ウィンドロード」
「!、アブね!」
一気に距離を詰められたが、槍を曇天・幽で防ぐ。
だが、近づいたな。
「こっからは俺の間合いだ!」
「どうかしらね」
打ち出の大鬼槌を解除した曇天・幽とエルファウルの槍が鍔迫り合う。
やっぱこの槍変身アイテムか、ただの槍にしては固すぎる。
だが、やはりパワーは俺の方が上だ。
「このまま押し切る!」
「やれるものなら─「シーランス!」─!?」
「海水の槍!?
「おいおい二人して何やってんだ。俺も混ぜろよ!」
「このタイミングで乱入してくるかサファイア!」
鍔迫り合うのをやめ、飛来した海水の槍を躱す。
海面にはサファイアの姿があり、既に次弾の準備済みだ。
「もう一発!」
「空鬼凝固!」
「ウィンドシフト!」
クソッ、このままじゃジリ貧だ。
やっぱエルファウルにサファイアの相手させた方がよさそうだな。
「何か企んでいるようだけど、させると思う?」
「いやさせてもらうぞ、
「!、一瞬でこの距離を!」
「捕まえた!」
一気に距離を詰め、エルファウルの腕を掴む。
これでもう逃げられない。
確実に海中へ叩き落とせる。
「おらぁ!」
勢いよく投げ飛ばしたエルファウルは海面に巨大な水柱を上げる。
「さて、三つ巴と行こうか!」
そして、俺も水中へとダイブした。
水中では既にサファイアとエルファウルがやり合っている。
どうやら、エルファウルは海に落とされる寸前に空気で膜を作ったみたいだな。そのおかげで溺れてない。
「水中じゃご自慢の天候操作も十分に機能しないみたいだな!」
「く…、急いで上がらない─」
「させねぇよ!」
エルファウルの空気の膜を殴り更に水深の深い場所へと押し込む。
「な、白夜てめぇ! エルファウルは俺の得物だ!」
「知るかそんなもん。それと、お前も敵だ!」
「アブねっ」
俺にとってはどちらが残っても面倒な事には変わりない。
だが、今この状況はまたとない好機。
「ミヤ、俺の攻撃で水しぶきが出た場所だ! サファイアを押さえつけろ!」
『そこね!』
「なっ?!」
ミヤが月光王餓の足で海中にいたサファイアを押さえつける。
この中で唯一水中呼吸が可能というアドバンテージ。
これを生かして、海中で決着をつける!
「あれは…エルファウル?」
ローワー湾沿岸に立つビルの一室、そこで一人の魔法少女がサファイアの戦いを観察していた。
「エルファウルを殴り飛ばしたあの黒い怪物は鬼頭白夜を手助けしている辺り聖魔連合の関係者か。それにしても、聖魔連合の実力がこれほどとは」
この魔法少女は以前からエルファウルと交流があり実力を理解している。
そのため、エルファウルが押されている今の状況に目を疑った。
「…私が介入しても大した戦力にはならないがサポートは出来る。それにこのままではエルファウルが敗北しそうだ」
魔法少女が構える双眼鏡のレンズの先では、ちょうど白夜がエルファウルを海中へ叩き落したところだ。
「そろそろセインティ達も到着する頃だし、介入するにはちょうどいい」
そうして、魔法少女は一室から姿を消した。