死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 三人称視点です。


テスタメント・ラプソディ ─ M1873

 

「っ、オロチ大丈夫?」

「あ? わりぃ鼓膜破ってて聞こえねぇ」

「あ~わかった。パクチャー」

 

 (さく)がナイフを浮かせ空中に並べることで文字を書く。

 こうすることで聴覚を失っているオロチともコミュニケーションが取れる。

 

「大丈夫かって? 一応問題ない。だが聴覚が無くなってる分本調子ではないがな」

「なら問題ないわね。でどうする? ビルド呼び戻す?」

「ビルドは無理だ、固めた所で意味がない」

 

 アリアスイートの食材魔法は紅結束(ホン・ジャイシュー)の大地操作とは異なり物質の置き換えを行う。

 ビルドの接合魔法で固定しても、即座に別の食材に変えられるのが落ちだ。

 

「…どうするか…」

「おいおい、考えさせる時間を与えるとでも? 【フォール】!」

「なっ、間に合わ─」

 

 ガレンゲージの言葉を諸に受けた裂が地面へ落ちていく。

 地面が硬ければぶっ倒れるだけで済んだが、今の地面は柔らかいホールケーキだ。

 あっという間に地中深くへと裂の姿が消える。

 

「まずは一人!」

「裂! 今助け─」

「させるとでも? ゼリービーンズマシンガン」

 

 オロチが救助に向かおうとするが、アリアスイートがゼリービーンズを放ち行く手を阻む。

 ゼリービーンズ自体に大した強度は無いが、文字通りマシンガンの速度でぶつけられればひとたまりもない。

 

「っ、一旦避難だ!」

 

 すかさずオロチはケーキを掘り中へと潜る。

 

「っ、隠れましたか」

「だが音的にまだ近くにいる。場所は…、下だ!」

 

 ガレンゲージとアリアスイートがその場から飛び退く。

 直後、二人が居た場所から大蛇化したオロチが大口を開け飛び出す。

 もし二人がそのままの場所にいたら丸呑みにされていただろう。

 

『クソッ、まだだ!』

 

 オロチはそのまま巨体を横に倒し転がりながら二人を圧し潰しにかかる。

 その姿はまさにロードローラーだ。

 

「アリアスイートあいつを止めろ! 私の魔法じゃ地形を動かしても横幅が広すぎて無理だ!」

「ビスケットウォール!」

 

 アリアスイートが生成したビスケットが転がってきたオロチを受け止める。

 だが、その巨体に見合った質量を持ったオロチはこの程度では止まらない。

 ビスケットの壁を粉砕し突き進む。

 

「っ、ならば下です!」

 

 今度はケーキに溝を作り転がってきたオロチを落とす。

 

「畳みかけるぞ! 【フローティング】、からの【スローイング】!」

「ビスケットジャベリン!」

『ちっ、大蛇鞭(だいじゃへん)!』

 

 双方の技がぶつかり合う。

 衝撃で辺りのホイップクリームが舞い上がり双方の視界を塞ぐ。

 

「っ、視界が─」

『そこだ!』

 

 だが、オロチに視界の悪さは関係ない。

 ピット管で居場所を感知しアリアスイートへ尾を振るう。

 

「ぎゃっ!?」

「アリアスイート!」

『よそ見してる場合か?!』

「っ、【ジャンプ】!」

 

 立て続けにオロチは蛇行しながら突撃するが、ガレンゲージは高く飛び上がることで回避する。

 だが、これこそがオロチの狙いだ。

 口頭で単語を発さなければいけない関係上、どう頑張っても詠唱での発動は不可。

 そのため魔法を使った直後の空中では、ガレンゲージに回避手段はない。

 

『今だ裂!』

「…三刀流・─」

「なっ?!」

 

 オロチがガレンゲージへ顔を向けた直後、その巨大な口の中から裂が矢の様に飛び出す。

 先ほど地中へと潜った際に落ちた裂を回収していたのだ。

 

 

  「─角顔槍(かくがんそう)!」

 

 

 勢いよく飛び出してきた裂に防御が間に合わず、紅顎(べにがく)白喰(はくじき)、そして額から生えた刀がガレンゲージの肺と腹、左腕に突き刺さる。

 

「がっ! ─この…【バック】!」

「ちっ、だけど魔法の要は潰したわよ!」

 

 ガレンゲージは裂を弾き飛ばすが、刀が突き刺さっていた箇所からは止めどなく血液が溢れ出す。

 特に肺に空いた穴が致命的だ。 

 片方の肺に穴が空いてしまっては、もう大声で魔法を発動できない。

 

「はぁ…はぁ…、グハッ」

「ガレンゲージさん! こちらを─」

『させねぇよ!』

 

 アリアスイートが再度ソーダを渡そうとするが、オロチが息を思いっきり吸う。

 

「っ、風…!? ソーダが!」

 

 辺りには暴風が吹き荒れ、ソーダがオロチの口へと吸い込まれる。

 ソーダの効果は外傷の回復、要はRPGのポーションだ。

 そして問題なのは、このソーダは誰が飲んでも効果があるという事。

 

『…よし、耳が治った!』

「っ、マズいですね」

 

 量の問題で外傷の全てが治った訳ではないが、戦いに重要な聴覚が回復する。

 他の傷は最悪どうでもいい。

 聴覚さえ治れば、本来のスペックを発揮することが可能だ。

 

「耳治してよかったの?」

『問題ない。あいつにはもう気力なんて残ってねぇよ』

 

 オロチが目を向けた先では、ガレンゲージが力なく横たわっている。

 意識はまだあるが、呼吸は浅い。

 アリアスイートが二人を常に警戒しているため止めはさせないが、この戦いにはもう参加できないだろう。

 

『てなわけで、とっとと残り一人ぶっ潰すぞ!』

「ギャハハハ! 了解!」

「ガレンゲージさんは身の安全を第一に考えてください! 大陸餅!」

 

 アリアスイートがホールケーキとなった大地を餅へと変える。

 ホールケーキの時同様足場が悪く、それに加え粘着により歩みを阻む。

 

「っ、また妨害を!」

『俺の上に乗れ裂!』

「!、了解!」

 

 裂はオロチの頭の上に飛び乗る。

 大蛇化しているオロチのパワーにかかれば、餅の粘着など問題ない。

 

『このまま突っ込むぞ! 構えろ!』

刀延間(とうえんま)!」

 

 裂が紅顎と白喰を巨大化させる。

 普段刀延間を発動すると裂の持ち味である速度が腐るが、今回はオロチが足場だ。

 移動を気にしなくてもよい状態での鈍足高火力化は強い。

 

「食らえ! 空裂(そらさ)き!」

「ビスケッ─いえ、コーラエンジン・ブースター!」

 

 ビスケットウォールを発動させようとしたが、斬撃が飛来する直前に横へとコーラで吹き飛ぶ。

 そして、標的を失った斬撃は勢いが落ちることなくセントラルパーク外のビルへ激突する。

 斬撃が激突したビルはケーキの様に綺麗に切り裂かれズレ落ちていく。

 

「…これは受けられそうにありませんね」

 

 アリアスイートの頬に冷や汗が流れる。

 既にビスケットシールドで防げる威力ではない。

 

「まだまだ! 三十六歌(さんじゅうろっか)・空裂き!」

「!、キャンディウィング!」

 

 裂は再び刀を振るう。

 一振りするたびに斬撃が放たれ、辺りのビルをなぎ倒す。

 既にセントラルパークと近辺のビル街は更地一歩手前だ。

 

『おい裂! 流石にやりすぎだ! 味方も巻き込んじまってんぞ!』

「別にもうキャットガールの分身体しかいないんだから問題無いでしょ! それにこれくらいしないとアリアスイートに当たらないわ!」

 

 現在アリアスイートは飴の翼を生やし、コーラを推進力にして飛行している。

 その速度は凄まじく、斬撃の飛来速度より速い。

 斬撃は一太刀も当たらず、代わりに周りが荒れていく。

 

「それに、ナイフ足場にして近づこうにもアリアスイートの速度と急な方向転換で振り切られる! だからこれが今の最善手!」

『だろうな! よし、一気に近づくぞ! 裂はそのまま斬撃を放ち続けろ! 相手は魔法少女だ、街をこれ以上荒させないために絶対どっかで反撃に出る!』

「了解!」

 

 オロチは餅の大地を突き進む。

 

「その大蛇が言うように、反撃するしかありませんね! ゼリービーンズマシンガン!」

鱗屑鎧(りんせつがい)!』

 

 アリアスイートも反撃するが、オロチの堅牢な鱗に弾かれる。

 裂の方も斬撃で全て切り落としているため支障はない。

 

「っ、効いていませんね。なら!」

 

 アリアスイートは一気に高度を上げる。

 目的地はオロチと裂の上空だ。

 それに伴い裂の斬撃の発射角度も上がる。

 

「逃がさないわよ!」

「それはこちらのセリフです!」

 

 斬撃が絶え間なく飛来するがアリアスイートは冷静に躱していく。

 そして、アリアスイートもただ黙って攻撃されるわけではない。

 アリアスイートが構えたのは巨大なコーラ瓶。

 その瓶を高速で振動させることでエネルギーをチャージする。

 

『っ、切りがねぇ。裂、俺が投げ飛ばすから空中で仕留めろ。さっきは速度や方向転換で無理つってたが、滞空してる今ならいけるだろ』

「…ギャハッ、了解。やってやろうじゃないの! パクチャー、サマンハダ!」

 

 裂は刀延間を解き、ナイフをアリアスイート目掛け飛ばす。

 当然回避されるが攻撃目的ではないためこれでいい。

 これで、アリアスイートへ届く空中の足場ができた。

 

『行くぞ!』

「二刀流居合・悪侍鬼(あくじき)!」

 

 オロチが頭を振り上げ、それと同時に裂が踏み込むことで二段ロケットの容量で距離と速度を稼ぐ。

 飛距離は十分、アリアスイートへ刀が届く。

 

「なっ!」

「っ、外した!」

 

 しかし、始めてこのような攻撃方法を行ったため狙いがズレる。

 刀は片翼を切り裂いただけでアリアスイート本体へは一ミリも掠っていない。

 だが、次への布石は配置済みだ。

 

「もう一回!」

 

 事前に設置していたナイフを足場にし即座に方向を変える。

 アリアスイートはこの方向転換に気付いていない。

 

「え、もう一回?」

「獲った!」

 

 裂の刀がアリアスイートへ迫る。

 

 

  《ズバンッ、ズバンッ》

 

 

「…え?」

『裂!』

 

 だが、その刃がアリアスイートに届くことはない。

 刀が肉薄する直後、裂の両手首が切断される。

 切断したのは、二つの弾丸だ。

 

「っ、着地が!」

『受け止める!』

 

 バランスを崩し落下してくる裂をオロチが背で受け止める。

 

「…何とか、間に合ったな」

『ガレンゲージ! てめぇか!』

「そうだ」

 

 ガレンゲージが右手に握っているのはコルト・シングル・アクション・アーミー、通称ピースメーカー。

 通常のピースメーカーとは異なる黄金の銃身から硝煙が立ち昇る。

 今のガレンゲージは動けないが、銃ならば動かずとも攻撃可能だ。

 

「私の変身アイテム兼愛銃、黄金郷(おうごんきょう)。なかなかの代物だろ?」

『…お前の変身アイテムって拡声器じゃなかったのかよ』

「いつ、私が自身の変身アイテムを拡声器と言った?」

 

 確かにガレンゲージは拡声器を使用している。

 が、それはあくまでサポートアイテム。変身アイテムとは別物だ。

 

「まぁ…本当の奥の手だから知っている者の方が少ないから知らなくても無理はない」

『ちっ。裂、腕の様子は?』

「ごめん…、もう、刀振るえない…」

 

 先ほど切断された手は弾丸によりミンチにされた。

 原型が残ってさえいればチェーンで接合できたが、そもそも残っていなければどうすることもできない。

 

『(裂は一応まだ攻撃手段持っているがあまり期待できない。なら…)少し休んでろ。俺が、同時に仕留める!』

 

 オロチは近くにまだ残っていた水を汲み上げ頭部に纏う。

 発動させようとしているのは八岐流燗(やまたりゅうかん)水流八頭(すいりゅうやとう)

 この技を出したら確実に魔力切れを起こすが、ここで切札を切らないでいつ切るという話だ。

 発動させられれば、確実に魔法少女二人を葬れる。

 

「…させるか。【アクセレレーション】【シュア・ヒット】」

 

 だが、発動できればの話だ。

 ガレンゲージの魔法により加速され、必中効果を付与された弾丸が放たれる。

 

『がっ?!』

「オロチ?!」

 

 放たれた二つの弾丸はオロチの両目に直撃する。

 その衝撃で鱗屑鎧と纏っていた水が解かれた。

 これで、二人を守る障壁は無い。

 

「アリアスイート! やれ!」

「ありがとうございますガレンゲージさん! ─チャージ満タン・コーラキャノン!」

 

 限界まで振動を与えチャージされたコーラが二人目掛け放たれる。

 その威力と範囲は凄まじく、無抵抗だったとはいえ裂の身体を一瞬で粉砕し、大蛇化しているオロチの首を切断した。

 

「はぁ…はぁ…何とかなりましたね」

「そうだな。だが、周りの被害が大きすぎる。それにこの巨体も退かさな…何?」

 

 オロチが死亡したことでテレポートボタンが作動し、身体が本部へ転送される。

 だが、このことを知らない魔法少女側からしたら不思議な現象だ。

 何せいきなり目の前から怪人の遺体が消えたのだから。

 

「…まあいい。それより他の場所への援護を─グハッ」

「ガレンゲージさん?!」

「大丈夫だ。問題ない」

 

 口では強がっているが、実際は裂に付けられた怪我が響いており立っているだけで辛い状況だ。

 それでも問題無いというのは弱みを見せたくないというプライドから来ている。

 

「それでも回復は必用です。サイダーを飲み─「させねぇよ」─な、う、腕が!」

 

 回復用のサイダーを渡そうとした直後、アリアスイートの手首から先が空間を切り取られたように消し飛ぶ。

 こんな芸当が出来るのは、今のニューヨークには一人しかいない。

 

「よくもオロチと裂をやってくれたな」

「…お前があいつらの親玉か」

「あぁ。あ、一応自己紹介な、俺の名前はレイヴン。さっき援護行くって話してたが、あいにく、行かせるわけにはいかないんだよ」

 

 

 

 

 

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