死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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 民守祈視点です。


テスタメント・ラプソディ ─ 信頼

 

「それじゃあ、あなたが再起不能にした子のためにも、ここで死んで」

「それはできない相談ですねっ」

 

 全身が痛い、恐らく先ほどの重力攻撃で骨に罅が入りましたね。

 とはいえ、このまま撤退する訳にもいきません。

 バルバラに用があるのは目の前にいるセインティという魔法少女ではなく、もう一人の魔法少女であるトライアス。

 トライアスだけなら一時同盟といけたかもしれませんが、セインティの目的はバルバラではなく私。

 …戦うほかありません。

 

「ふ~ん。しゃ、戦うしかないね」

「…それがあなたの武器ですか」

 

 セインティが何もない空間から騎槍を取り出す。

 恐らく、それが彼女の変身アイテム。

 

「そ。聖槍(せいそう)エデン、あなたを貫く槍の名だよっ! エデン・フォール!」

「!、速い!」

 

 聖槍エデンを構え突っ込んできたセインティを憎悪ノ肖像で受け止める。

 恐らく自身に掛かる重力の向きを変えての突撃、かなりの鍛錬を積んだのでしょう。

 ただでさえ私のバリアは重力の影響を受けるため相性が悪い上に熟練者となると苦戦は必至です。

 

「へぇ、この速度に反応するのね」

「一応これでも鍛えてますので。それより、トライアスの加勢へ行かなくて良いのですか? 私たちとあなたたちの目的は一部同じでしょう? バルバラ・B・イノセンティの撃破と言う目的が。それなら一度協力した方がよいでしょう?」

 

 トライアスがバルバラを倒してくれるのならそれで良いのですが、ぱっと見の実力ではトライアスがバルバラにかてるとは思えません。

 隠し玉があるなら別ですが、下手にバルバラの使用魔法を増やされる方が困ります。

 

「それなら心配いらないよ」

「何故です?」

「私はトライアスを信頼している。仲間からの信頼、これで十分でしょ?」

「…なるほど」

 

 しかし、セインティは無責任な答えを返す。

 

「それには激しく同意しますねっ!」

 

 憎悪ノ肖像で聖槍エデンを弾く。

 確かにセインティの答えは無責任です。

 ですが、だからこそ信用できる。

 

「仲間からの信頼、応援。それらは時に、己(魔法)の限界をも超えて行く」

「…それ、悪の組織(あなた)が言うんだ」

「悪(私たち)が仲間を信頼してはいけない理由は?」

「アハッ、確かに無いねっ!」

「っ、障壁の聖騎士(バリア・パラディン)!」

 

 再度セインティが突っ込んできますが、わざわざ受け止める意味はありません。

 纏っている障壁の聖騎士(バリア・パラディン)を動かし体の向きを変え攻撃を躱す。

 

「あれ? さっきは受け止めたのに」

「先ほどの重力攻撃で骨に罅が入ったんです。受け止めることはできますが、無理のしどころは今じゃありません」

「…さっきから思ってたけど、奇襲した割には冷静だね」

「感情的になってあなたが倒せるなら感情的になりますよ?」

「ん~、それは無理な相談ね、グラビティ・パトリー!」

「っ、再度重力を強めましたか」

 

 ですが今回は障壁の聖騎士(バリア・パラディン)をはじめから纏っていたため潰されることはありません。

 しかし、重力の影響を無視できるわけではありません。

 

「これで動きずらいでしょ!」

「くっ」

 

 バリアを動かすには魔力を使用します。

 当然、バリアに外力が掛かれば移動させるのに必要な魔力は増える。

 その上、移動は障壁の聖騎士(バリア・パラディン)で問題無いですが、私自身の身体はこの高重力で悲鳴が上がっています。

 やはり、私とセインティの相性はかなり悪い。

 これならバルバラを相手にする方が楽です。

 

「エデン・フォール!」

 

 セインティは私の状況などお構いなしに突っ込んでくる。

 下手に動き回れば更に骨にダメージが行く。

 なら…。

 

「バリアポール!」

「なっ!? バリアを伸ばしての高速移動?!」

 

 一刻も早くこの高重力下から離脱する。

 わざわざ相手の得意なフィールドで戦う理由はありません。

 

「逃がさない!」

 

 セインティがこちらに腕を伸ばす。

 恐らくまだ見せていない技で私を捉えるつもりでしょう。

 ですが、その隙を待っていました。

 

「召(しょう)さん!」

「了解!」

「なっ?!」

 

 地面から生えた薙刀がセインティの腕に突き刺さる。

 

「ようやく隙を見せたね!」

「くっ…何で無事なの?!」

「私はファントムですからね、重力含めた自然影響には完全な耐性があるのですよっ!」

「がっ」

 

 召さんがセインティに蹴り込む。

 私がセインティと戦闘を開始した直後、召さんには地面の下に待機してもらっていました。

 ファントムは体質上、魔力の籠っていないあらゆる物質をすり抜けることができます。

 そのため通常では不可能な奇襲も可能なのです。

 

「ありがとうございます召さん! 再度地中で待機を!」

「了解! ただし、次からは隙を見つけ次第自己判断で攻撃します!」

「構いません!」

 

 そうして召さんは再度地中へと消える。

 召さんが居るだけで相手は嫌でも意識外からの攻撃を警戒せざる負えません。

 

「っと、見えてきましたね」

 

 目の前ではトライアスとバルバラが殴り合っている。

 私の目的は一対一が二つ起こっていた戦場を、一対二対二にすること。

 そしてあわよくばバルバラのみの撃破。

 正義側の魔法少女は必用なら戦いますが、撃破する必要はありません。

 

「聖なる(ホーリー・)救世主の(メシア・)剣(ソード)!」

 

 二人の間に光の剣で切りかかる。

 ひとまず、これで二人の意識は私に向きましたね。

 

「なっ!? 誰だ?!」

「っ、魔法少女と殺し合っていればいいのものを… 」

「私たちの目的は始めかバルバラ、あなたの撃破だけです!」

 

 トライアスの隣に着地する。

 

「トライアス、一応お聞きしますが私たちと協力する気はありますか?」

「お前は…民守祈(たみもりいのり)か。私としてはどうでもいいが、セインティの敵なんだろ? なら、私にとっても敵だ」

「…その割には直ぐに攻撃してこないのですね」

「わざわざ攻撃して、バルバラに何かされる方が面倒だ」

「それには同感です」

 

 私とトライアスが戦うメリットはあまりない。

 このまま共闘できれば楽なのですが…。

 

「それに、お前の相手は私じゃない」

「グラビティ・メイデン!」

「っ、また体が重くっ!」

 

 当然そう上手くは行きませんよね。

 隣にいるトライアスが何ともないのを見るに、私に掛かる重力だけ強くしたのでしょう。

 恐らく次に来るのは聖槍エデンによる突撃、ですが障壁の聖騎士(バリア・パラディン)ならば耐えられる。

 問題とすれば先ほどのグラビティ・パトリーより重力が強い事ですが、まだ耐えられる範疇です。

 

「セインティ、民守の相手を頼む」

「了解! ドラゴ・メテオ!」

「メテオ…、まさか!」

 

 急いで顔を上げる。

 天候はローワー湾で戦闘を行っているエルファウルの影響でかなり悪い。

 しかし、それでも空に一つ光る不自然な光源は見える。

 

「巨大隕石!?」

 

 戦闘訓練時、ライズさんから過去に所有者の多かった有名どころの固有魔法を教わりました。

 その中にあったのが重力系統の固有魔法。

 ライズさんの世界では、過去に命を燃やし尽くすほどの魔力を利用して巨大隕石を落とし大国を滅ぼした重力系固有魔法使いが居たそうです。

 そのため隕石攻撃は出来るだろうと予想はしていましたが、まさか街中で放ってくるとは。

 

「召さん! あの隕石防げますか?!」

「流石に無理です! 運動エネルギーを殺しきれません!」

「何焦ってるのか知らないけど、周りの心配ならしなくていいよ。あなたの立っている直径一メートルの範囲にしか被害が出ないように出来るし」

「っ、召さん!」

「召喚(サモン)・民守祈!」

 

 召さんの召喚魔法で重力の檻から離脱する。

 直後、私が元居た場所に隕石が落下しました。

 

「…ありがとうございます召さん。あれは防げても喰らいたくはありません」

「私もです。あの隕石に魔力が含まれえていれば私でも消し飛びますよ」

 

 隕石の墜落地点には底が見えないクレーターが生成されています。

 もし直撃していれば、今頃私は穴の底でしょう。

 

「移動した? 民守祈の魔法はバリアだし…、そっちのファントムの魔法ね」

「…召さん、あなたは後方で銃を使用し援護を。あなたの魔法しか先ほどの重力の檻を突破できません」

「わかりました」

 

 あの重力の檻でもバリアは耐えられますが、バリアを動かす出力が足りません。

 そのため召さんを潰されれば私は完全に詰みます。

 何としてでも召さんは守らねばなりません。

 

「天魔(てんま)さん、今私が居る一帯に逃げ遅れた市民はいますか?」

『こちら天魔、今現在民守さんが居る一帯に生体反応は五つしかない』

「五つ? 召さんの分は?」

『召はファントムだから組織で使っている生体反応探知装置には反応しないぞ』

「…あぁ、そうでしたね」

 

 召さんは普通に会話こそできていますが扱い上は死者です。

 組織では熱探知で生体反応を探す機器を使用しているため、肉体の無い召さんには反応しません。

 今は魂で探知する機器を開発中とのこと。

 

『ちなみに、何故こんなことを聞いた?』

「いえ、最終兵器を使用しようかと」

 

 今の盤面は魔法少女が戦いたい相手と戦い、私たちは目的を達成できない。

 それならば、一度リセットを掛け総取りしにかかります。

 

『!、わかった。味方を巻きこむんじゃないぞ』

「それは彼女次第です」

「何話してるか知らないけど、させると思う?!」

「いいえ。ですが─」

 

 セインティの攻撃を躱す。

 

「既に最終兵器はこの場に来ています」

「…え?」

「菫さん! お願いします!」

 

 

  「了解! ベノムオーシャン!」

 

 

 直後、ジャマイカの街が毒に汚染されてゆく。

 街路樹は枯れ、ビルの骨組みは溶け倒壊する。

 私が言っていた最終兵器とは、カタログスペックなら聖魔連合で一番殺傷能力のある酒井菫(さかいすみれ)さん。

 菫さんは私たちと一緒にジャマイカの街に来ましたが、出番まで野路裏で待機してもらっていました。

 彼女の魔法は強力すぎるため一般人が近くにいては使用できませんが、避難が完了しているのなら関係ありません。

 

「なっ?!」

「トライアス掴まって! グラビティ・ゼロ!」

「面倒な事を、浮遊発動」

「まあ、回避しますよね」

 

 各々が空中へ避難する。

 私はバリアで効きませんが、他の方はそうではありませんので。現に召さんも空中へ移動しています。

 ですが、これで戦場はリセットされました。

 

「民守さん、言われた通り戦場のリセット完了しました」

「ありがとうございます。召さん聞こえますか?! 召さんはセインティの相手をお願いします!」

「了解しました!」

 

 召さんにはセインティの重力魔法が効きません。

 聖槍エデンによる突撃はダメージを受けそうですが、それでも召さんが適任です。

 

「召喚(サモン)・鉄骨!」

「がっ?!」

「セインティ!」

 

 魔法陣から飛び出してきた鉄骨が空中を浮遊していたセインティの腹に直撃する。

 トライアスは咄嗟に手を離したのかその場で滞空を続けています。

 

「民守さん、セインティを引き離しました! そちらはお願いします!」

「そちらこそ! 菫さん、あなたと私の役割はバルバラの相手です。トライアスは最悪放置で構いません。それと、なるべく街への被害を抑えることはできますか?」

「もう既にかなり被害出てると思いますが、わかりました。それなら、オウル様と一緒に開発した新技を試しましょう!」

 

 菫さんは自身の身体から染み出した毒を纏う。

 仕組み自体は私の障壁の聖騎士(バリア・パラディン)と同じですが、見た目はかなり異なります。

 私のはまんま騎士ですが、菫さんのは敵(ヴィラン)の様な…。

 

「ポイズンアーマー・パラサイトヴェノム!」

「それが新技ですか?」

「そうです。民守さんの障壁の聖騎士(バリア・パラディン)やミヤさんの暗影躯壊(シャドウクカイ)を参考にしました」

「それは嬉しいですね。では、私も新武器を出しましょう」

 

 何もない空間から剣型の人工の魂の武具(アーティフィシャルソウルウェポン)を取り出す。

 バリアで剣を生成した方が強度は高いですが、バリアだって無制限に生成できる訳ではない。これから更に戦いの激化が予想されるのに、武器でバリアを消費する訳にはいきません。

 一応、作っておいてもらって正解でした。

 

「人工の魂の武具(アーティフィシャルソウルウェポン)、魔剣、”終焉(しゅうえん)ノ残響(ざんきょう)”。私の天然の魂の武具(ナチュラルソウルウェポン)、憎悪(ぞうお)ノ肖像(しょうぞう)と対になるこの魔剣で、バルバラを倒します」

「…この惨状はあなたの仲間の毒使いの仕業ですか。いいでしょう、民守祈、あなたの魔法諸とも支配して差し上げます!」

「おい、私のことも忘れるなバルバラァ!」

「…あぁ、あなたもいましたね。この失敗作」

「…このクソババアが!」

 

 何か揉めていますね。

 それに失敗作? 報告にあった地下の実験施設関連でしょうか?

 

「…まあ、後でこのことは報告しますか。研究職の皆様が何かしら調べるでしょう。では、行きましょう!」

「わかりました民守さん!」 

 

 

 

 

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