死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。 作:鬼獣八紅
レイヴン視点です。
「はぁ!?
『私だって信じられないよ! だけど事実、リリートックに初見殺し食らった直後にエルファウルによって腹を貫かれ凍らされたの! それにテレポートボタンも機能してない!』
オウルと一緒にハリケーンの外側から戦いを見守っていたら信じられない連絡が
内容は民守さんがやられたというもの。
初見殺し食らったとは言え組織内最強クラスのタンクであるあの民守さんだぞ、負けるなんて誰が思うんだよ。
「…ねぇ、民守さん負けたの?」
「!、落ち着けオウル! 通波、リリートックの初見殺しってことは不明だったリリートックの魔法はわかったのか?」
一旦オウルを落ち着かせる。
さっきのテレポートボタンが機能してないって会話はオウルにも聞かれてた。
仲間が死亡したかもしれないって報告はオウルにとって地雷だ。
今回は死亡時に魂を保持して本部へ転送するテレポートボタンがあるから大丈夫だったが、不発報告が出た以上下手すればこのまま突っ込みかねない。
『魔法少女との交戦の余波でたまたま電源の入ったインカムから判明したよ。本来は不良品案件だけど今回ばかりは助かった。で、リリートックの魔法はマジック魔法だよ』
「マジック魔法? 魔法魔法ってか?」
『このマジックは魔法じゃなくて手品の方、日本語訳すると手品魔法だね。術者本人の発言からの考察になるけど、多分タネなしマジックをする魔法じゃないかな。衛星から撮った映像確認したけど』
「タネなしマジックって…、かなりの極悪性能じゃないか」
ぱっと思いつくだけでも瞬間移動魔法によるテレポート、人体切断マジックによる切断攻撃、コインなんかでよくある物体転送くらいはあるぞ。
こんだけ多彩なら見ただけじゃわかんなくて当然。
だが、マジック魔法だという前提知識を持って見ればこれまでのどれもが納得する効果だ。
「で、何で民守さんは本部に転送されないんだ? ちゃんとテレポートボタンつけてたよな?」
『灰崎さんに確認したけど、民守さんはまだ死んでなくてコールドスリープ扱いっぽい。だからテレポートボタンの死亡反応転移が発動してない』
「…最悪の可能性は?」
『凍ってる間にテレポートボタンを取り外されて回収不可になった後に死亡…かな?』
直後、俺の隣に突風が吹く。
見るとオウルの姿が無い。
「あん野郎! 一人で突撃しやがった! すまん通波、一旦通信切るぞ!」
『え? わ、わかっ─』
返事を聞かずに通信を切る。
クソッ、オウルの野郎後先考えずに突撃しやがった。
聖魔連合を結成してから精神が不安定になったのはキャットガールが攫われた時に一回だけだから油断してた。
ああなったオウルはなかなか止められない。その上今回は魔法付きだ。下手に止めようとしたらこちらがやられかねない。
それに、恐らくだがこのハリケーンの内側にいるエルファウルとリリートックにオウルの姿を見られた。
始めっから連合に所属している菫はともかく、名目上悪の組織である聖魔連合に魔法少女連盟所属の魔法少女が協力してるとバレれば今後動きにくくなる。だからオウルを後方支援に配置したのに、あいつ絶対このこと怒りで忘れてる。
だが、この二つの問題は行ってで解決できる。
「エルファウルとリリートックを誘拐、ないし殺害する!」
様は外部に聖魔連合とオウルの関係が洩れなければいいんだ。
そのために、目撃者は消す。
無意味な人殺しはしない主義だが、今回ばかりは仕方ない。
「テレポート!」
転移しハリケーンの内側へ入る。
「
「?!、ウィンドシフト!」
内部に入って真っ先に目に入ったのはオウルとエルファウルの攻防だ。
もしかしたら目撃される前に回収できるかもという淡い期待があったが、無駄だったな。
「相手は…魔法少女!? なぜ同じ魔法少女であるエルファウルに攻撃を?!」
「うるさいうるさい! 私の仲間を殺す奴は死んじゃえ!」
「仲間…、と言うことはさっきのシスターの仲間ね。それなら死になさい!」
ありゃ互いに殺意に飲まれてやがる。
ならエルファウルの相手はオウルに任せよう。あの様子なら確実に殺しに行くだろう。
となると俺の相手はリリートックだが、どこにも姿が見えない。
オウルの姿を見られた以上逃がす訳にはいかない。
「
空間を解析しリリートックを探す。
民守さんがやられてからオウルが突撃するまであまり時間間隔は無かった。
オウルに標的にされていなかったリリートックはまだ遠くには行っていないはず。
「場所は…後ろ!」
「っ、気付いたか!」
咄嗟にテレポートを発動し場所を移す。
直後、俺の元居た場所に弾丸が通過する。
「おいおい、俺と同じ戦闘スタイルかよ!」
飛行とテレポートを織り交ぜながらの弾丸って、俺と戦闘スタイル駄々被りじゃねぇか!
「
反撃とばかりに弾丸を放つ。
どんな手札を隠し持ってるか分からない以上、下手に近づくわけにはいかない。
「甘いよ! チェンジ・トゥ・シルク・スチール!」
だが、リリートックは手に持っていた布を鉄に変え弾丸を防ぐ。
やっぱこの程度は簡単に防ぐよ…まて、何故テレポートっつう簡単な逃走手段があるのにわざわざワンテンポ必要な防御という手段を取った?
…ちょっと探るか。
「なぁ、シンプルな疑問なんだが何でテレポートで回避しなかった? わざわざ布を鋼鉄化して防ぐより回避した方が速いだろ、視界も塞がないし」
「なに、私はエンターテイナーでね。テレポートだけでは味気ないだろ?」
「ほぉ、そりゃまた首相は心がけなこって」
やっぱはぐらかすよな。
てかそのはぐらかし方、テレポートを多用する俺に対する当てつけか?
いい性格してやがる。
「なら、俺も戦い方を変えてやるよ。来い、八咫烏」
異空間倉庫から大太刀・八咫烏を取り出す。
こっからは近接戦だ。
「テレポート!」
だが、テレポートを使わないとは言っていない。
リリートックの背後へ回り込み振りかぶる。
「死ね」
「チェンジ・トゥ・シルク・サーブル!」
だが、リリートックは布をステッキへ変え、更に棒からフェンシングの剣に変え攻撃を防ぐ。
「やはりテレポートを使ってきたね。相手の背後を取るのは高速移動系能力者の常套手段だから読みやすいよ」
「へぇ、なら接近戦はどうかなっ?!」
防がれたとは言え単純なパワーなら俺の方が上だ、力を掛けてサーブルを押し返す。
そしてこの流れのまま八咫烏を振るう。
「っ、やっぱ近接戦もそこそこ出来る質か」
「私の魔法は攻撃力が無いからね。近接戦できないと早々に死んでしまうよ」
「接近戦の
だけどなかなかリリートックの守りを崩せない。
パワーはあまりない分、技術でカバーしてやがる。
一応これでも
「…ん?」
「おや、何か疑問が?」
「いや、何でおお前テレポートで退避しないんだ?」
「!」
俺とリリートックの剣術の腕は同格、体力的には若干俺が有利って程度だ。
ぶっちゃけリリートック側はここで打ち合う意味はあんま無いんだよな。
俺の方は遠距離は防がれるし、接近戦も八咫烏の方が長いから射程的有利があるから続ける意味があるが、リリートック側のメリットがマジで思いつかない。
何ならハリケーンの外側へ逃げてもいいわけだし。
「…まさか、お前のテレポートは条件付きか?」
「…あぁそうだ」
「ずいぶんあっさり認めるんだな、さっきは誤魔化したのに」
「これ以上は誤魔化しきれないと判断したからだ。だが、流石にどういう条件化は言わないよ」
「だよな」
素直に条件を言う奴はただのバカだ。
テレポートの条件は戦闘しながら探ればいい。
「それで言ったら、そちらこそお仲間を呼ばないのかい? 一人ではきついだろ?」
「馬鹿言え。範囲攻撃持ちが二人も暴れまわってる戦場へ呼べるか!」
ただでさえハリケーンの影響で突風が吹き荒れてるのに、オウルとエルファウルの二人が見境なく暴れまわってる。
その上二人は範囲攻撃持ち、大勢呼んだら巻き込まれるのが落ちだ。
「それに、既に仲間は近くに来てんだよ!」
「は? …そういう事か!」
「クラウドメイス!」
リリートックの背後から
トルネード発生時から内側にあったモンストルオ・サルバドル号に乗っていたメンバーはわざわざワープゲート使って招集する必要は無い。
「がっ!」
「よし、クリーンヒット!」
葵のメイスがリリートックの後頭部を直撃する。
これで相手の守りが緩んだ。
今なら確実に当たる。
「
「まだ…だ!」
「は? 口から─ぐっ?!」
「レイヴン!」
こいつ、口からナイフ吐き出して俺の肩に刺しやがった。
そのせいで八咫烏の軌跡がズレる。
「この…クソがっ!」
脳天を狙った八咫烏は逸らされ、リリートックの右腕を切断するにとどまる。
「っ…! 結構刀の腕は立つみたいだね。刃物で腕を切断するのは難しいのに」
「葵! こいつの言葉に耳を貸すな、攻め続けろ!」
「了解!」
腕を切断されたってのにあの余裕、絶対次の手を準備してる。
相手が何かする前に殺す。
「無視かい」
「なっ?!」
「早い!」
だが、既にリリートックは左手に何か持ってる。
「一時撤退させてもらうよ!」
「っ、視界を塞ぎやがった」
さっき持ってたの煙幕玉か。
クソッ、リリートック見失っちまったじゃねぇか。
「葵、雨で煙幕を晴らせ!」
「もうやってる!」
降り出した雨粒が煙を吸いつけ煙幕を晴らしていく。
だが、リリートックの姿はどこにもない。
やっぱあの煙幕に紛れて逃げやがったか。
「しょうがない、再度
「その必要は無いよ」
「!?、上から声…テレポート!」
「え、な、何?!」
葵を掴みその場からテレポートで非難する。
直後、俺たちの居た場所の上空からギロチンの刃が落下してきた。
「ちっ、回避したか」
「…予想はしてたが、やっぱダメージ無効技持ってたか。いや無効じゃなくて回復、ないし修復の類か」
「そりゃね、マジックに
「その割には相手に外傷を負わせるのに躊躇無いな」
今のリリートックには後頭部の傷も、右腕を切断された痕跡も無い。
こりゃ長期戦覚悟しないといけないな。
「葵、
「あの二人は民守様を回収してモンストルオ・サルバドル号へ運び込んだ。今頃民守様を覆いつくしてる氷を溶かしてるはず」
「じゃあ二人は呼べないな」
なら、俺と葵でリリートックを倒すしかない。
実力的には全く問題無いが、如何せんリリートックの魔法の発動条件が不明なのが痛い。
めんどくさい事この上ないぞ。
「相談は終わったか?」
「あぁ。だが、そんな悠長にしててよかったのか? 言っちゃ悪いが、実力的にはお前の方がだいぶ下だぞ」
「それは自覚している。だから、時間を稼いだ」
「狙いは時間稼ぎ? 一体何のため─《べちゃ》─べちゃ?」
何かが飛来し頬にくっつく。
少し指で拭ってみると生暖かく赤い。
「レイヴン、これ血肉じゃ…」
「じゃあこれ…まさか!」
オウルが戦闘していた方へ目を向ける。
そこに広がっていたのは縦横無尽に伸びる無数の竜巻と、その中心で四肢をもがれたオウル、そして風の翼を携えたエルファウルだ。
オウルは死んでないだろうが、あれだけのダメージを食らってるとこは見たことが無い。
「さぁ、あの怒り狂ったエルファウルの猛攻を前に、私たちの殺害という目的を達成できるかね?」