死にたくないので自分達だけの第三勢力作りました。   作:鬼獣八紅

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とあるボスの目覚め

 

 

「はぁ、今日はついてないな…」

 

 学校も終わり買い物をして帰宅する。

 ハサミで指切るわ、足が絡まって転ぶわ、蜘蛛の巣に直撃するわ…今日は厄日かっての。

 

「聞いたか、向こうで怪人と魔法少女が戦ってるって」

「マジかよ、見れるなんてラッキーじゃん」

「見に行こうぜ」

「…また怪人でも出たのか?」

 

 この世界には魔法少女と怪人が存在しており、日夜戦闘を繰り広げている。

 そのため魔法少女と怪人の戦闘は市民にとって気軽に楽しめるエンタメだ。

 なので、近くで怪人と魔法少女の戦闘があったら見に行く人は結構いる。

 

「何であんなの楽しめるんだか」

 

 魔法少女の流れ弾で両親を失った身としては、その楽しむって感覚が理解できない。

 あの時は近くで見てなったから完全に流れ弾だった。

 

「危ない!」

「…え?」

 

 

 

 ドゴン

 

 

 

「ざ…けんな!」

 

 その場を離れどこかへ行こうとしたら魔法少女の戦闘で飛ばされてきた怪人がぶつかった。

 今日は本当に厄日だ。

 

(周り…ちゃんと見てろや…)

 

 そうして俺は意識を失った。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「マジでふざけんなよ」

 

 あの後、気がついたら全てが終わった後だった。

 自分は放置されていたところを、騒ぎを聞き付けた救急隊員に保護されたらしい。

 軽症だったが、なぜか高熱でうなされていたらしい。

 因みに、怪人と思っていたのはどこかの組織のボスだったことを救急隊員の人に教えてもらった。

 空間系統の能力を持っていたらしく、なかなか倒せなかったが、今日やっと倒せたらしい。

 だけどそんなことはどうでもいい、怪人がぶつかった衝撃で買った食材全部パーだ。

 ただでさえ両親がいないから金の管理が面倒だってのによ。

 

(体よこせ…)

 

 それに、病院から出てしばらくしてから謎の声が聞こえる。

 鬱陶しいんだよこの声。

 

「ただいま…」

「あ、兄さんお帰りー。魔法少女の戦闘に巻き込まれたみたいだけど大丈夫だった?」

 

 出迎えてくれたのは妹の黒榊環(くろやなぎたまき)

 今生きている唯一の肉親で高校一年生だ。

 

「まあ…大丈夫ではあったな。怪我したけど」

「本当に気を付けてね。また家族が居なくなるのは嫌だよ」

「ハイハイ気を付けるよ。あとさっきから何か見られてる気がするんだが誰かいるのか?」

 

 普段はこんなこと感じることはない。

 環が誰かを家に招くことなんてないんだがな。

 

「気、気のせいじゃないかな…」

 

 なぜか環が挙動不審なのが気になるが…。

 まあ、関係ないか。最悪防犯グッツ使って二人がかりで滅多打ちにすればいいし。不法侵入で正当防衛になるだろ。

 

「まぁ、気のせいと言うことにしておくよ」

「う、うん…」

「…それじゃあ疲れたから少し部屋で寝てくる」

 

 

 

  ◇◇◇

 

 

 

「ここは…」

 

 気がついたら何もない空間にたたずんでいた。

 部屋に戻ってからすぐに寝たはずだが…。

 

「よくきたな」

「何だっ!」

 

 後ろから声をかけられたのでとっさに振り向く。

 見るとスーツを着ており、顔が靄にかかって見えない男性が立っていた。

 

「お前は…誰だ?」

「俺かい? 俺のことはバウンダリーと呼んでくれ黒榊優真(くろさかきゆうま)

「!、なぜ俺の名前を?!」

「君の記憶を見させてもらったからだよ」

 

 勝手に人の記憶を見るんじゃい! プライバシーとか知らんのかこいつは?

 そもそもこいつ誰だよ?

 

「しかし、ちょうどいい依代が見つかって良かったよ」

「!、どう言うことだ?」

「君、指とか足とか怪我してただろ?そこから俺の血液が君の体内に入ったのさ」

 

 こいつあの時ぶつかった奴か!

 というか…。

 

「そんなちっさな怪我に血液が入るわけないだろ!」

「けど実際に俺はここにいる。それはつまり、君が俺の血液を得てしまったのだろう。なぜ君の体内にいるかは不明だがな」

 

 それはマジでそう。

 こいつが俺の体内に存在できる理由が分からない。

 原因はまだ血液が入ったからで納得できるが。

…俺が血液型AB型でよかったな、もし他の血液型だったら大問題だったぞ。

 

「そんなことより、依代ってどういうことだ?」

「俺の肉体は魔法少女によって消滅したが、運良く君の肉体に入り込めた。そして君の肉体を奪い取り俺は復活を果たす!」

「は?!」

 

 それはつまり、俺に死ねと言っているのと同じだ。

 絶対にそんなことされてたまるか!

 

「渡すわけねぇだろ!これは俺の肉体だぞ!」

「まあまあ、少しまて。記憶を覗いたところ、両親が死ぬきっかけになった魔法少女を恨んでいるようだね」

「!」

「肉体をくれたら、その魔法少女に復讐してあげよう」

 

 確かに魅力的な提案だ。

 あの事件で、魔法少女側の必殺技に巻き込まれて両親は死亡したのに魔法少女側からの謝罪は一切なく、それどころかこちらの言葉を聞こうともしなかったしな。

 たしかに今でも魔法少女を恨んでいる。

 

「どうだい?いい取引だろう?」

「…確かにな」

「じゃあ…」

「ただな…」

 

 俺はバウンダリーへと近づいていく。

 そして、思いっきりバウンダリーの頭を掴んだ。

 

「な、何をする!」

「確かに復讐は魅力的だ。ただし復讐するのは俺だ、お前じゃない。それに俺は無差別に魔法少女を虐殺する気は無いしな」

 

 バウンダリーは悪の組織のボスだ。確実に正義を持った魔法少女も殺すだろう。

 そんなことされたら今の秩序がぶっ壊れる。

 恨んでこそいるが、今の秩序を保っていられるのは魔法少女のおかげでもあるしな。

 

「そして…俺は自分を…家族をまた失わないために、お前の空間能力を奪う!」

「な、なに!」

「だいたい、少量の血液しか入ってなく、なおかつ魔法少女に肉体が消滅させられたばっかりだろ? その状況で、この肉体の持ち主である俺に勝てると思ってたのか?」

 

 そんなこと、できるわけないだろ。

 俺はボスの頭を握りつぶした。

 

 

  ◇◇◇

 

 

「…ん?」

 

 どうやら無事に起きれたみたいだ。

 やっぱさっき精神空間かなんかだったぽいな。

だけど、バウンダリーの頭を握りつぶした感覚がまだ残っている。

 …とりあえず空間能力を試してみるか。

 

「テレポート」

 

 自分のベッドから部屋の中央にテレポートしようとしたところ、無事に成功した。

 多分他にも色々できるだろうがそんなことは後でもできる。

 

「とりあえず環にこのこと伝えるか」

 

 俺は自分の部屋を出る。

 

「なあ、環…」

 

 

 

 

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