妹ノ下雪乃さんとのラブコメは間違っていない。   作:kuronekoteru

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妹ノ下雪乃さんが描く未来予想図。

 

 金色輝かしいGWも平和に過ぎ去ってしまい、中間試験も二週間前となる平日の朝、俺は教室で黙々と一枚の紙と向き合っていた。その上部には、『職場見学希望調査票』と大々的に記載されている。

 どうしたものかと頭を悩ませていると、教室後方からは朝練終わりの連中がぞろぞろと入室し始めた。疲労感のある野太い声が多い中、俺の耳元には明るく優しい声。

 

「おはよう、比企谷くん」

 

 そこには、練習後にも関わらず満足そうに微笑む戸塚の姿があった。相も変わらずジャージ姿なのだが、授業中もこれで許されるのだから我が校の規則はゆるゆるである。ゆるゆりでもあって欲しい。

 

「……三浦の指導は大丈夫か?」

「うん、作ってくれたメニューは結構厳しいけど、他の部員も練習にハリが出て喜んでるよ」

 

 結局、戸塚の練習、もといテニス部の練習を見ることになったのは三浦であった。元々彼女が言い出したことではあるのだが、戸塚からのお願いに大した抵抗も見せずに了承をしていた。

 戸塚も「面倒見も良いんだよね」と笑っているし、きっと三浦は女の子や可愛い者にはおかん気質なのだろう。たまに騒がしい彼女らのグループを横目に見てしまうが、一員の眼鏡女子にティッシュを渡している姿も俺の記憶には新しい。

 

「本当なら、奉仕部が力になれたら良かったんだが……」

「雪ノ下さんのは、……あまり参考にならなそうだったからね、あはは……」

 

 まぁ、最後にあんな奇抜な動きを見せられては、苦笑いをしてしまうのも致し方ないだろう。

 少し気まずそうに目線を下げた彼の視線の先には、俺が頭を悩ましていた一枚の紙。それを見て、戸塚は「あっ」と小さな嘆声を上げた。

 

「そういえば、職場見学もうすぐだね。誰と行くかはもう決めちゃった?」

「いんや、クラスに同性の知り合い戸塚しかいないし」

「ほんと? じゃあ一緒に行こうね!」

 

 戸塚の提案に考える素振りも見せずに頷くと、穢れを知らないのかと疑いそうになる無垢な笑顔が向けられた。何かと煩わしい他人の視線が増えている教室だったが、戸塚のような人がいるのであれば少しは気が晴れよう。

 

 

 その日の放課後、奉仕部の基本週一の部活動がのらりくらりと始まっていた。特に依頼がなければ週に一度で問題はないと平塚先生への確認は取れたので、俺は全力で迷える子羊が来ないことを祈るだけである。

 何時の間にかに増えている空気清浄機の動作する音は、女二人でも由比ヶ浜のお陰で十分姦しい声に掻き消されていく。ここでも女性陣の話題は職場見学の話へと移り変わっていた。今の二年生にとって最新のホットニュースなのは間違いないのだろう。

 

「……えっ、ヒッキーちゃんと企業調べてるの?」

「おい、どういう意味だよ」

「だって、働きたくないとか言うタイプかと思ってたから……」

 

 雪乃から俺の情報を伝えられ、刺されても別に痛くもない由比ヶ浜の矛先が俺へと向けられた。

 それにしても失礼な奴だ、俺は働きたくないに決まっているだろう。だがしかし、二人の愛する妹を養うためには仕方がないのだ。狙うは高給で残業が少ない、リモートワークだろう。イモートワークなら最高。何だそれ。

 

「高給で自由時間の多い、そんな夢のような業界はないもんかねぇ……」

「今だと、ユーチューバーとかぶいちゅーばーとか?」

「あんな見えないコンプラで雁字搦めになっている存在を続けられる気がしねーわ」

 

 もし俺がチャンネル開設をしたとしても、トーク内容の9割は雪乃と小町がカワイイヤッター! になるに決まっている。稼げねぇよ、俺の親父以外誰が見に来るんだよ。コメント欄に親父の『わかる』だけが並ぶぞ。

 

「……大丈夫よ、働き口に一応当てはあるから。今回は気軽に興味のあるところへ行きましょう?」

 

 静かに話を聞いていた雪乃が優しく微笑む。決して雪ノ下家の事業何ぞではなく、きっとイモートワーク可能な仕事を斡旋してくれるのだろう。うわー、将来が楽しみだなー。

 

 俺が見たくもない将来のビジョンに憂いていると、由比ヶ浜の手にあるスマートフォンが間を置かずに三度の振動をした。彼女くらい友人が多くいると、連絡も引っ切り無しに来るのであろう。

 由比ヶ浜は慣れた動きで指紋認証を使いロックを解除すると、画面をまじまじと見つめる。そして、段々と不快感を示すように顔を歪めていった。

 

「……由比ヶ浜さん、どうかしたの?」

「うーん、クラスラインに捨て垢っぽいので嫌な書き込みがされてて……」

 

 心配そうに彼女に声を掛けた雪乃は、情報確認のために俺の方へと視線を投げる。だが、俺は何の情報も持っていないので首を横に振ることしか出来ない。

 

「ヒッキーはあたしが招待してるのに、クラスのグループに入ってないもんね」

「全く興味ないしなぁ……」

 

 俺たちの会話を聞いて、雪乃は少しだけ安心した顔を見せる。由比ヶ浜の声色に深刻そうな影を感じなかったからなのだろうか。それにしては、俺の顔を見過ぎな気もする。うん、今日も可愛い。

 

「んんっ、……で、どんな書き込みだったの?」

「うーん、なんかあたしのグループの男子の悪い噂みたいなのが──」

 

 ブーッブーッ、と由比ヶ浜が話している最中にまた振動の音が響き渡る。また何か悪い書き込みでもあったのだろうかと心配していると、その表情は驚きから苦笑いへと変貌していった。

‎ そして、ボソッと「じゃあ、全部嘘なんだろうな~」なんて軽い口調で独り言を呟いてすらいる。

 

「どうした、また何か来たのか?」

「えっ、うーん……気にしないでお幸せにね!」

「おい、どんな日本語だよ……」

「良いから良いから、そんなことより中間試験も近くて憂鬱だね~」

 

 えらく雑な話題転換に、隣に座っている雪乃と共に苦笑してしまう。俺としては、クラスの知らない奴の噂話に特に興味はないので、由比ヶ浜が気にしていないなら構いはしない。

 しかし、残念ながら由比ヶ浜の選んだ転換先は彼女にとっては大きな失敗であっただろう。何故なら此処には、勉強を教えることに慣れている学年一位の秀才が居るのだから。

 

 * * *

 

 千葉県市川市八幡(やわた)が生んだ至高のファミレス、サイゼリヤに俺たち三人は足を運んでいた。勉強なら別に学校や図書館などの無料で使える施設で十分なのだが、勉強会ならファミレスかカフェが良いと駄々をこねるアホな子に押し切られた結果である。

 まぁ、折角来たのであれば、ミラノ風ドリアは食べたい所存。全店舗完備のドリンクバーを始めとした低価格で美味しいラインナップは若年層、特に学生の味方だ。間違い探しもたまに鬼難易度で盛り上がること間違いなし。ああ、サイゼリヤって最高じゃん……。

 

 そんな素晴らしいサイゼの4人掛けのボックス席で、体面に座る二人の講習会の様子をぼーっと眺めている。分からない場所が分からない、そんなお手上げ状態の由比ヶ浜に手取り足取り教える雪乃。

 かれこれ一時間が経過しているが、ひたすらシャーペンが紙の上を走る音が鳴り続けている。大した休憩時間を設けずのスパルタ雪乃学習塾、しかもマンツーマンで教えてもらえる。……そろそろ俺も分からない振りをするべきだろうか。

 

 悩みに悩んで唸り声まで上げていると、雪乃はこちらに視線を向けて首を傾げる。久しぶりに合った綺麗な瞳に微笑みで返すが、どうも彼女の反応が鈍い。何なら俺の目を見ていないまであった。

 

「ねぇ、……あれは一体誰かしら?」

 

 雪乃の視線の先、俺の後ろを振り返って見てみると、そこには愛しの小町が楽しそうに笑っていた。レジの前に居る小町の横には見たこともない男子中学生。

 その二人の背中が退店と共に遠ざかっていく。サイゼ様に迷惑を掛けるのは憚られるので、発狂しそうになる気持ちを無理矢理に押し込めて冷静に言葉を返した。

 

「知らん……知らん…………」

「二人ともどうしたの、怖い顔して?」

 

 ちょっとお洒落なインテリア雑貨の店名みたく言葉を返すと、由比ヶ浜は明らかに変わった雰囲気に困惑している。彼女に状況を説明しようにも、俺と雪乃の関係が詳らかになってしまうので、差し当たっては適当に誤魔化すしかなかった。

 

 

 一切勉強に身が入らなくなった俺は、心配する由比ヶ浜に見送られながら早々に帰宅することになった。先に帰っていた小町は勉強のためか部屋に篭っていたので、聴き取り調査も夕飯の時間まで延期となる。その間も、延々と悶々とした時間を部屋で一人過ごしていた。

 

 食事の準備が整ったことを知らせてくれる雪乃に連れられ、ぽとぽと階段を登ってリビングへと入ると、デミグラスソースと味噌汁の良い匂いが鼻腔を擽る。だが、食欲は何時ものようには湧いてはこなかった。

 

 食卓に三人で席に着いて、いただきますを唱和させる。目の前にはデミグラスソースが掛けられたハンバーグとパプリカ入りの色鮮やかなサラダ、豆腐の味噌汁と炊き立てのご飯。どれもこれも美味しそうだが、それよりも今は小町に真相を訊かねばらない。

 

「…………小町、サイゼで一緒に居た男子は一体誰なんだ?」

「ん、……あー二人とも居たんだ? あれはただの友達、今は相談を受けてるんだ~」

 

 最悪の事態を一先ず回避した俺は、胸中に溜まっていた息を大きく吐き出した。視界に入る雪乃の箸が動き出すのと同時に、安心感を抱いた菩薩のような心持ちで小町に軽い追加質問。

 

「なるほどな。取り敢えず、相談内容とそいつの名前と住所と連絡先を教えてくれ」

「……え~、じゃあどれか一つだけならいいよ♪」

「住所を教えろ」

「残念、小町は知りません!」

 

 襲撃を未然に防がれ、手が出せなくなった俺はハンバーグに手を付けることにした。その厚みのある肉塊を箸で押さえると、中からじゅわりと肉汁が溢れ出してくる。

 いつの間にやら湧いていた、強烈な空腹感を刺激する見た目と匂い。俺は気が付けば、食欲旺盛な男子高校生のようにおかずとご飯のシャトルランを繰り返していた。ああ、今日も雪乃のご飯は最高に美味しい……。

 

 

「なんかね、お姉さんの帰りが遅くなってるんだってー」

「アルバイトかしらね。一応、学校に許可を取れば大丈夫だとは思うけれど……」

「それがさ、帰ってくるの朝五時とからしいよ……」

 

 俺が問いただすまでもなく、相談内容は雪乃が上手いこと聞き出してくれていた。由比ヶ浜もそうだが、女子は悩みに関する内容を引き出すのに手慣れている気がする。俺であれば絶対に質問形式で訊いちゃうのだが、雪乃は雑談かのように自然な反応。

 

「お姉さんは、ゆきねぇたちと同じで総務高校の二年生らしいよ。川崎沙希(かわさきさき)さんって知ってる?」

 

 小町は雪乃だけでなく、俺の方にも顔と目線を交互に向ける。黙々と食事を楽しんでいたのもあるが、少しばかり疎外感のあった二人の会話に入るチャンスに飛びつくように回答した。

 

「いや、知らんな」

「知っているわよ、兄さんと同じクラスの背の高い人よね」

「何でお兄ちゃんが知らないのさ……」

 

 小町は分かり易い呆れ顔を浮かべるも、自身の隣に座る雪乃の顔を見て「まぁいいか」と表情を戻す。雪乃が知っていれば話は進むもんね。ごめんね、クラスメイトも知らない不甲斐ない兄で……。

 

「その沙希さんはね、高校一年生までは真面目だったんだって」

「……何か思い当たる節はなかったのか?」

「特にないってさ。弟の大志(たいし)くんも四月から塾に通い始めて会う時間も少なくなったらしいし……。あと、下の兄妹が多いから、お世話とか手伝いで話す時間が取れないってさ」

 

 取り敢えず大志って名前はしかと覚えたが、確かに小町からの断片的な情報からでは思い当たりそうな点は特には見つからない。

 だが、雪乃は違ったらしい。顎に置いていた手を降ろして、下げていた目線も俺と小町に合わせていく。そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「……進路に学費、それに自分の将来と色々考える時期よね」

「うちの両親なら俺の分は出してくれなくても、雪乃の分は出してくれるから気にせず選べよ」

「私の分は、私の両親が出してくれるわよ……」

 

 余計な言葉を挟んだ所為で、小町に可愛い顔で睨まれてしまう。だが、雪乃は気にすることなく言葉を紡ぎ続けてくれた。

 

「でも、出してあげたくても出せない家庭だってあるでしょうね……」

「……なるほど、そういうことか」

 

 まだ憶測でしかないが、確かに可能性としては有り得るだろう。朝方まで働いてでも今の時期に稼ぎたい理由、そして高校二年生の受験を意識し始めるタイミング。弟の入塾と兄妹の多い家庭環境も合わせれば、自身の学費を稼ごうとしていてもおかしくはない。

 

「明日、川崎と話してみるわ。小町は俺たちに任せて受験勉強に集中していいぞ」

「……うん。よろしくね、ゆきねぇ!」

「ええ、任せて」

 

 美しい姉妹愛がそこにはあった。俺はちょっとだけ枕を濡らした。

 

 * * *

 

 次の日の昼休み、俺は大幅に遅れて登校してきた川崎に何とか声を掛け、無事に奉仕部の部室へと連れていった。長い髪をポニーテールで纏めている長身の彼女は、終始不機嫌そうに拒もうとしていたが、弟の名前を出すとギラリとした視線を向けた後に嫌々と付いてきてくれた。

 

 そして今、俺と雪乃の目の前で鋭い牙を隠そうともせずに、自身とその家庭に干渉されることへの苛立ちをぶつけようとしている。だが、色々と準備を整えてきた俺らには臆することなど何もない。

 

「川崎さん、あなた最近帰りが遅くて弟さんが心配しているらしいわね」

「はぁ? あんたらカップルには関係ないでしょ」

「カップル……」

 

 何で怯んでるんだよ、いや怯ませるなよ!

 

 いきなり出鼻を挫かれてしまったが、俺は幾ら睨み付けられても別に怖く……いや、普通に怖いです。と言うより、うちのクラス怖い女子多くないですかね。それとも、世の中の女子って皆怖いの?

 

 だがしかし、ここで押し負けては小町に合わせる顔が無くなってしまうだろう。それは死活問題であり、到底許されはしない。

 俺は踏ん切りを付けると、ぼんやりと立ち尽くしている雪乃の盾になるように前に出て、淡々と用意してきた言葉を繰り出していった。

 

「川崎、お前は学費を稼ごうとしているんじゃないか? それも、家族に迷惑を掛けないように自分の力だけで」

「……だったら、何なのさ?」

「成績優秀で授業態度も真面目なら、特待生扱いで授業費免除の学習塾がある。それに、これも成績優秀が条件だが、大抵の大学には返還不要の奨学金もある。時給で考えたら、バイトするよりも効率的だぞ」

 

 俺は川崎の目に正しく映るよう、スカラシップ制度について調べていたスマホの画面を逆さまにして差し出す。

 彼女は訝しみながらも、それを受け取って目線を動かし始めた。猜疑心で強ばった表情は、時間と共に次第に解きほぐされていく。

 

「……弟さん、本当にあなたのことを心配していると思うわ。あなたが下の子を気にするように、下の子だってあなたを気にしている筈よ」

「あんたに何がわかるのさ……」

 

 言葉こそ未だに棘が残っているが、その声色にはもう刺々しさは残っていない。川崎がやり場を無くした視線を床へと落とすと、雪乃は穏やかな表情で首を静かに横に振った。

 

「分からないわよ。……だから、私たちの言葉には耳を傾けなくても構わないけれど、弟さんの話はちゃんと聞いてあげて」

 

 優しく諭すかのように、雪乃は自身の願いを俯く彼女に吐露していた。自分が幼い頃に姉や両親に気持ちを伝えることが出来なかったからこそ、伝えようとしてくれている川崎の弟に肩を入れているのかもしれない。

 下の子からの正直な言の葉を受け取り、川崎は顔を上げると優し気な笑みを見せた。きっと、この表情こそが、本来の真面目に頑張っている姉の顔なのだろう。

 

「……ん、分かったよ。あんた、家族想いの良い奴だったんだね」

「どうかしら、世間的には親不孝者な気もするけれど……」

「ふーん、そうは見えないけど。……あのさ、あたしも勉強頑張ってみることになると思う。だから、分からないことがあったら訊きに行ってもいい?」

 

 その視線はただ真っ直ぐに、並び立っている俺と雪乃へと向けられる。互いの意思など確認するまでもなく、俺たち二人は真摯な想いに頷いて応えていた。

 

 

 その後、攻撃的であった物言いや態度を深々と謝罪して、川崎は何処かへと微笑を携えて去っていった。

 残された俺と雪乃は、暖かな風を取り込むように窓を開いていく。揺れ動くカーテンの間で佇みながら、彼女は晴れ渡る空を見上げた。

 

「進路のこと、将来のこと……皆も遠からずに考え始める時期なのよね」

「……だな、雪乃は何になりたいとかあるのか?」

 

 聞いてはこなかった彼女の将来設計、それが知りたくなって俺は問い掛ける。すると、雪乃はこくりと恥ずかしそうに首肯した。

 

「……訊いてもいいか?」

 

 きっと、彼女なら何にでもなれるであろう。どんな願いであろうとも、間違いなく俺を始めとした彼女を大切に想う者達が背中を押してくれるのだから。

 雪乃は人差し指を薄桃色の唇にそっと当て、可愛らしい笑みで小さく囁いた────。

 

「まだ秘密よ、兄さんの手助けが必要不可欠だけれどね」

 

 そう口にし終えると、昼時に吹く風がレースカーテンをふわりと吹き上げていく。雪乃は腰まで流れる美しい黒髪を手で押さえていると、程なくして彼女の姿は白に包まれてしまった。

 万が一にも肌を傷付けないよう、俺は透過する白の生地を丁寧に掴んでいく。まるでベールを持ち上げるかのように彼女を救い出すと、そこには頬をすっかり朱色に染めた雪乃の姿。

 

 不意打ちの不幸に見舞われて赤面する彼女を前に、何も分からない俺は困ったように笑い続ける。もう一度吹き始めた暖かな風が、やがて二人を包み込んでくれるまでは。

 

 再び舞い上がる真っ白なレース。次は閉じ込めてしまわぬように、そっと柔らかな手を取って彼女を連れ出していく。今はもう、分かりもしない将来に悩む必要などありはしない。

 

 雪乃の描く未来予想図に自分が居たことを、他の何よりも嬉しく思えるのだから。

 




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