妹ノ下雪乃さんとのラブコメは間違っていない。 作:kuronekoteru
閑静な住宅街に小鳥のさえずる鳴き声が響き渡った。春の暖かな陽射しは窓から差し込み、レースの隙間を通過して床を反射し、やがて俺の瞼へと伝搬されていく。取り込む空気も春のお陰か、幼い頃に嗅いでいたような好ましい匂いを強く感じた。
「ふふっ、……あら、そろそろ時間ね」
ぎしりとベッドが軋み、僅かに揺れる感覚で俺の身体は覚醒へと導かれる。俺は微睡みたい気持ちをぐっと抑え、瞼をゆっくりと開いていった。そして、いつもと同じ第一声を発する。
「おはよう、雪乃……」
「…………お、おはよう、兄さん」
ベッドに座っていた美しい黒髪を纏う背中に声を掛けると、どうしてか驚いたような表情で雪乃が振り返る。また俺何かやっちゃいましたか? まあ恐らく、珍しく彼女が声を掛ける前に目覚めたからなのだろう。目をぱちくりとさせているのがとても愛らしい。
「……わ、私は朝ごはんの準備を手伝ってくるから、兄さんは早く着替えてリビングに来て」
「おう、今日もありがとうな」
いつもより足早で出ていってしまった雪乃を見送り、大急ぎで寝間着から制服へとフォームチェンジ。日朝でもない金曜日の朝から可愛さと癒しを大量摂取した俺は、脳内で変身BGMを流して気分良く支度をしていく。
リビングで待ってくれている二人に、今日も今日とて良い一日が訪れることを願いながら。
今朝も電車内は新年度恒例の満員で無事筋トレが捗ったのだが、バスでは運良く二人並んで座れる席を発見することが出来た。車窓から覗かせる街並みを背景に、造り物のように美しい横顔を眺める朝はいとおかし。ああ、何て良い朝なのだろうか。
そんな至福の時間は一瞬で流れていき、俺たちを乗せたバスは目的地の一つ前に到着した。次に停車する場所を告げるアナウンスに混じり、車内では他の生徒の話し声が多く聞こえ始める。
そろそろ目立たないよう意識を切り替える為にスイッチを入れていると、お隣さんから制服の裾を静かに摘まれる。可愛らしいその行為に先程の意識はいとも簡単にぶっ飛んでしまい、俺は周囲の視線を気にすることなく雪乃に耳を寄せていた。
「もう私たちのことは噂になっているのだから、堂々と並んで登校しても良いんじゃないかしら」
「……いや、まだ何とかなるかもしれないから様子を見た方が良いだろ」
昨日に浮かんだ奉仕部加入の件をそこはかとなく良い感じに利用するという、誰が誰にどう伝えるかは一切考えていない欠陥を除けばギリギリ及第点の案が俺には残っていた。
だがしかし、雪乃は俺の言い分に不満があるのか、不服を訴えるようにムッとした表情で口を開く。そして、引く意思など一切ないと言わんばかりに言葉を投げ掛けてきた。
「逆に離れて歩く方が目立つまであるわよ」
「いやいや、流石にそれは無いだろ」
「……そう、ただでさえ話題の私が一人で歩いていたらどうなるかしらね」
「そりゃお前なぁ……」
俺は雪乃の問い掛けに想像力を働かせていく。
気になっていた校内随一の美少女が噂になってしまった翌日、眠れない夜を過ごしていた男子高校生は普段より早めに登校すると、校門へと続く道を一人で歩く彼女を偶然に見掛ける。噂になっていた相手とやらは隣には居ない。やはり、あの噂はデマだったのだと確信した。
鬱々としていた気分が春の陽気のように軽やかになっていく。桜舞い散る中、芸術作品のように美しい歩き姿の彼女の元へと俺は走り出す。徹夜明けのテンションも相まって少年は彼女に声を──。
「雪乃さんよ、手でも繋いで行くか?」
「そこまでは恥ずかしいからしなくて大丈夫よ……」
二人並んで校舎に入り、残念ながら教室の違う雪乃と暫しの別れを惜しみながら辿り着いたF組の入り口。ドアを開けても誰にも見向きもされず、静かに自席で読書をして過ごす時間が俺は気に入っていた。
午前の授業が終われば雪乃と部室でお昼を食べる約束をしているし、俺の高校生活の充実度が鰻登り状態。平塚先生に苦言を呈されてしまった作文も是非に書き直させてもらいたい。今ならもっと愛を詰め込める気がするので。
そんなことを考えながら俺はいつも通りに静かに扉を横へ動かし、突き刺さる視線を無視して黙って自席へと向かう。あの、その、向かいたいのでこっちに来るのやめてください。
「ヒキオじゃん、おはよ」
「……おはようございます、三浦さん?」
「は?タメなんだから敬語も、さん付けも要らないし」
腕組み金髪ギャルに真正面から威圧され、俺は余裕で戦慄していた。昨日は一瞬乙女に見えたけど今はほんと怖い。あとヒキオって何って突っ込みたいけど怖くて出来やしない。というかですね、何か用があるのでしょうか……?
びくついた視線を彼女に向けていると、三浦は組んでいた腕を楽にして、その片方で自身の首に触れ始める。そして、居心地悪そうにそっぽを向いた。
「……その、雪乃は今日も昼休みにヒキオのことを迎えに来る感じなん?」
「いや来ないけど」
雪乃も最初は迎えに来るとか言っていたのだが、目立つし噂に歯止めが効かなくなりそうなので全力でお断りをしていた。頭ごなしに駄目だと言うのではなく、「待ち合わせだと嬉しい」と伝えて渋々了承を勝ち取る。長年のお兄ちゃんとしての経験が生きましたね。
昨日は雪乃の気まぐれだったことにして、発言権の強そうな三浦に部活の件も合わせて適当に情報を流せば万事解決かもしれないと思い始めていたのだが──。
「なんでだし。あーしは来ていいって言ったのに……」
雪乃が訪れないことを伝えると、目の前の彼女はあからさまに落ち込んだ表情を見せる。自分のことを『あーし』と呼ぶことに多少面を食らってしまったが、それ以上に何とかしてあげなくてはと責任感が湧いていた。
「別に昨日のことを気にしてる訳じゃなく、単に待ち合わせ場所を決めたからってだけで……」
何だか誤解させるような言葉も言い辛くなり、気が付けば隠しておきたかった真実を口から漏らしていた。
「……あっそ、なら別にいいや」
俺の言い分を聞いている間、前に垂らしている縦ロールを指で遊ばせていた彼女は、またしてもそっぽに顔を向ける。だがしかし、今度は居心地が良くない訳ではなく、ただひたすらに安心した顔を背けていた。素直じゃない感じが懐かしくて微笑ましくなる。
始業時間も近付き、教室には続々と登校してきた生徒と朝練を終えた運動部が入り乱れ始める。その中にはあの葉山も混じっており、三浦の意識はそちらへと向けられた。
逆に居心地が非常に悪くなった俺は軽い会釈をして即退散の構え。判断が早いと脳内で天狗に褒められること間違いなしの動きで彼女の横をすり抜けていく。
「…………あんがと」
クラスの喧騒に掻き消されてしまいそうな声が耳に届いた。直後に快活に響かせる足音が聞こえると、俺は振り返りもせずに自席へと歩みを進める。将来的に彼女なら雪乃と仲良くしてくれるかもなんて期待を胸に抱きながら。
* * *
放課後、昼休みに続いて奉仕部の活動拠点である特別棟の空き教室へと足を運ぶ。扉を開けば、やはり先に来ている雪乃が出迎えてくれた。
陽当たりの良い窓際に並べた二人分の机に隣り合って座ると、俺たちはどちらともなく鞄から文庫本を取り出す。電子書籍が便利な時代ではあるが、実物のページを捲る感覚が俺は好きだった。あと、好きなラノベなんかはファンとして物を持っておきたいというのも理由の一つだろう。
依頼人が来るまではやることが無いことは分かり切っていたので、俺たち二人はページを捲る音を半刻近く鳴らし続けていた。やがて浅い吐息と本を閉じる音が聞こえると、俺はその発信源へと顔を向ける。
「兄さん、奉仕部の活動は週に1日にしない?」
「……良いけど、なんでだ?」
平静を装って理由を問いたものの、内心では二人で過ごすのが嫌になってしまったかを酷く心配していた。俗に言う遅れてきた反抗期かもしれないと。
小町も俺の干渉を煙たがる時期があり、俺はその間は結構なダメージを受けながら日々生きていた。癒しと間を取り持ってくれる雪乃が居なければ立ち直れなかったかもしれない。雪乃が反抗期になったら、なんて想像したことはなかった。想像出来なかったのではなく、絶対にしたくなかった。
だが、彼女からの返答はとてもあっさりしたものだった。
「帰りが遅くなると小町が一人で寂しがるんじゃないかしら」
「……ふぅ、そうだな。じゃあ週0にしよう」
「部活動の体を成さなくなるわね…………」
美しい姉妹愛に知能が著しく低下してしまったが、依頼も来ていないのに無理に残る必要性は無いのではないだろうか。そもそも、この奉仕部という存在は周知されているのかも甚だ疑問ではある。
その確認も含めて、今後のことを平塚先生に相談に行こうと雪乃に話をしていると、廊下から誰かの足音が聞こえ始める。その足音は奉仕部の部屋の前でピタリと鳴り止み、間もなくして扉が叩かれた。
「どうぞ」
「し、失礼しまーす……。えっ、ヒッキーとゆきのん?!」
「二年F組の由比ヶ浜結衣さん、ね」
暴言と甘言を一声で言い切るお団子頭の少女。名を由比ヶ浜結衣と言うらしい。
全く関係は無いのだが、男と女とでは視え方が異なるらしい。女性は色の違いを見分けることに優れ、男性は動く物体を目で追うことが得意だと言われている。動きに強いが故に、一瞬だけ揺れ動く柔らかそうな物体に視線が引っ張られることもあるかもしれないが、俺は強い意志で目線を保っていた。
あとヒッキーは兎も角、ゆきのんというのは非常に可愛くて良いと思います。
一方で本人は難色を示しており、俺と由比ヶ浜を交互に見ては俯き、やるせない表情をしている。そんな顔も可愛いぞ、ゆきのん。
俺が慈愛の瞳で見つめていることに気付くと、雪乃は軽く咳払いをして由比ヶ浜に向き直った。
「彼程度で引き篭もりと称されるのであれば、残念ながら私もヒッキーになるわね」
「そんなつもりで言ってないよ!? 比企谷だから、ヒッキーじゃん!」
「そう、それなら私もヒッキーになりそうね」
「あれ、もしかして惚気られてる……?」
初めは若干棘のあった語気も二言三言交わしただけで平時へと戻り、何だか楽しそうに会話をしている。雪乃が小町以外の女の子と仲良くしている姿をあまり見たことがなかったので、物珍しさと微笑ましさで観葉植物になりたい気分になっていた。実際ここまで喋っていないので、置物にはなれちゃっているのだが。
「それで、由比ヶ浜は何をしに来たんだ?」
「ここに来れば相談に乗ってくれるって平塚先生に聞いてたんだけど……」
「なるほど、それなら座って頂戴」
彼女が奉仕部の初めての依頼人だと分かると、雪乃は教室に積んである椅子を一つ持ち出して机の前へと置いた。そして、座した由比ヶ浜と改めて相対する。ちょっと面接官みたいで気分が良いと思ってしまったことは口には出さない。
「私、人の顔色ばかり気にして自分の意見が言えないことが多くて。でも、ゆきのんはちゃんと優美子に言いたいことを伝えていたように見えたから……」
先程までの元気の良さはどこへやら、彼女は落ち着いた様子に暗い声色で話し始める。確かに三浦の威圧するような態度の前で素直に思ったことを伝えるのは常人には難しいだろう。
隣に座る雪乃にどう返そうかと耳打ちをすると、「私に合わせて」とのオーダー。
「由比ヶ浜さん、人の顔色を伺えるなんて、それはすごいことよ。社会に出れば必須のスキルなのだから、別に落ち込む必要はないわ」
「そうだぞ、昔は雪乃もあまり得意じゃなかったしな。因みに俺は今でも全然できないから社会が怖い」
「えっ、ゆきのんが?」
自虐ネタはある程度仲良くないと拾ってもらえないことを痛感したが、雪乃の思惑通りの兆しが見える。これは失敗してメンタル下がり気味の小町によく使う手法だ。
「……そうね、私は人の顔色を覗って話すのが苦手だったのよ。私が受け取った表情と内心がリンクしていない人が多くてね、他人が怖くなってしまったこともあったわ」
雪乃も由比ヶ浜の声色が明るくなったことに安心したのか、自身の過去の話をを粛々と語り始める。由比ヶ浜もその言葉に真剣に耳を傾けていた。
「……どうやって治したの?」
「考えていることが全部顔に出ちゃう人たちと接していたら、自然と怖くなくなったわ」
「そして、思ったことはちゃんと言おうと思ったの。迷惑だったとしても、伝えなくちゃダメだって教えてくれた人が居たから」
雪乃はそこまで口にすると、小さく俺の方に目配せをして微笑み掛ける。その笑みを前にして、俺は何だか気恥ずかしくなって頬を指先で掻いていた。……そんな昔の話覚えてないっての。
「素敵な人だね、私も会ってみたいな」
「あら、私から紹介をしてあげるつもりはないわよ」
「あははっ、ゆきのんいじわるだ」
由比ヶ浜が明るい笑顔の花を咲かせると、それに呼応した雪乃と二人で笑い合う。嫌味も屈託もありはしない笑みを浮かべるその顔は、元来彼女が持っていたであろう鮮やかな桃色で綺麗に染まっていた。
ひとしきり笑った後、由比ヶ浜は息を大きく吐いて伸びをする。
「分かった、私頑張ってみるね」
「ええ、三浦さんならあなたが自分の意見を言っても、きっと嫌な顔なんかしないわよ。むしろ喜んでくれるんじゃないかしら」
「うん、ありがとう。……それとね、もう一つだけ良いかな?」
由比ヶ浜は納得したように頷くと、改めて雪乃の目を真っ直ぐに見つめた。きっと彼女は、自分の思った願いを、今日ここに来た本当の理由を言葉にして伝えようとしてくれている。
「私とね、友達になって欲しい」
「…………ええ、喜んで」
雪乃も彼女の真剣な瞳を見つめ返すと、柔和な笑みで首を縦に振った。
人と人とが友達になる瞬間を初めて見たかもしれない。彼女たちならば、思ったことを素直に言い合えるような深い仲になるのだろう。望んだとしても簡単には手に入らない眩しい間柄というのは、まったくもって羨ましい限りだ。
不意に桜の花びらが風に乗って室内へと入り込む。それはまるで、二人の出会いに祝福をしているかのようで。間違いなく異性が居ては出しにくい話題もあるだろうし、その一枚をそっと指で挟んで俺は席を立とうとした。
だが、立ち上がる際に音を出してしまったせいか、由比ヶ浜の目線がこちらへと移り変わる。その顔には変わらず笑顔が咲いたままで、俺の胸が少しだけチクリと傷んだ。
「ヒッキーもだからね!」
「まじかよ……」
俺はこの後、暫く一人で頭を悩ませることになるのだが、理由は彼女と友達になるかどうかなどではなかった。ただ、自身の由比ヶ浜に対する罪悪感と向き合い、友達ならば素直に謝罪すべきかをずっと苦悩する──。
無意識とはいえ、伸びをする彼女の大きな膨らみをガン見していたことを。
* * *
電車の大きな揺れとは異なる、細やかな揺れが太腿あたりに微かに伝わる。恐らく制服のポケットに入れられたスマートフォンが何かを知らせているのだろう。
夕焼けに染まる車内の中で画面が映し出されると、そこには由比ヶ浜からのメッセージが届いたことを知らせる通知。
当たり前だが俺にではなく、雪乃に来ているので内容までは見てはいない。こういう盗み見は嫌われる原因になるかもしれないと分かりつつも、特に隠そうとする素振りも無い雪乃には時折行ってしまう。小町は普通に隠すし、見たら怒るから気を付けようね。
「今度クッキーを一緒に作りたいそうよ。これも奉仕部の活動ってことで良いのかしらね」
材料費を部費で宛てがうつもりだろうか。流石に比企谷家の食費部門のお財布を握っているだけあって、こういう所はしっかりしている。けどね、きっと奉仕部に部費は割り当てられてないと思いますよ。
不慣れな手つきでフリック入力を試みている姿をぼんやりと眺めていた。思えば、雪乃には学外でも遊ぶような友人は今まで居なかった気がする。願わくば、由比ヶ浜が彼女の初めてのそういった間柄になって欲しいものだ。
その後も微笑ましい気持ちで見続けていると、雪乃は思い掛けないタイミングでこちらへと視線を向ける。その手に持つ画面には、由比ヶ浜がアイコンに設定している彼女の写真が拡大表示されていた。
「兄さん、一応確認しておきたいのだけれど」
「……なんだ?」
静かに怒っているようで、単に落ち込んでいるような、それとも訝しんでいるかにも取れる複雑怪奇な表情。違いがわからない人にはただ可愛く映るだけだろうが、明らかに平時とは異なる様子の雪乃も同率世界一位で可愛い。
「兄さんはその、やっぱり由比ヶ浜さんみたいな人の方がタイプ?」
予想だにしなかった問い掛けに、俺は返事に窮してしまった。由比ヶ浜とは色々と正反対だから、どちらが男受けするのかと言われると難しいかもしれない。それに負けず嫌いの一環なのだろうが、雪乃もそういうのを気にする年頃になったのかと感慨深くもなる。
兄心としては成長を喜ぶべきだと分かりつつも、それより寂寥感を強く覚えてしまう。そんな色んな感情をない交ぜにしたような想いで、正真正銘の本心をを口にした。
「…………俺の好みは昔から雪乃と小町だよ」
「ふふっ、兄さんは相変わらずね」
その反応を最後にお互い口を閉ざすと、時間だけが過ぎていった。
電車がガタンと強く揺れると、俺の肩には柔らかな温もりが寄り掛かる。その長い睫毛を有する双眸は閉じられていて、静かに規則的な呼吸をしていた。折角端の席に座ってもらったのに逆側へと傾いてしまったことが可笑しくて口角が上がってしまう。
今週も毎朝早起きをしてお弁当の準備をしてくれているのに、夜も小町の受験勉強の監督や自身の学習を励んでいるのだから疲弊していて当然だろう。もう間もなく最寄り駅だが、少しの間だけでも休ませてあげたい。
叶うならば、いつまでもこうして隣にいて欲しい、なんて俺には贅沢過ぎる願いだ。電車が必ず次の駅へと辿り着いてしまうように、きっといつかは────。
気付けば、寂しさを紛らわすように手のひらを彼女の頭へと触れさせていた。それはもう長い間求められていない行為。
昔よりも美しく伸びた髪と大人らしい雰囲気を纏う姿には少々不相応だろうけれど、大切にしたい気持ちは相も変わらず残っていたから。
起こさないように優しく頭を撫でると、眠る雪乃があの頃のように笑ってくれた気がした。
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