ありふれた職業で世界最強 新生譚   作:虚無の魔術師

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数年ぶりに更新しました!ホントにお待たせしました!申し訳ないです!


神に至る刃

「────暴れてんな!あの人も!」

 

 

フローアヴェール城の廊下を突き進む刃達は外から響いてくる轟音に反応する。予定通り、クライスが王女を含む戦力の大半を抑えているのだろう。

 

だからこそ、自分達が城に侵入しなければいけない。囚われたソーナや女王を助け出せば、この国の問題は一旦解決できる。

 

 

「ッ!主様!兵士が!」

 

「────邪魔だッ!!」

 

 

廊下の奥から現れる水月軍の兵士に、刃は創造した二刀の魔剣で斬りかかる。斬撃自体は液状化した兵士達には届かない。だが、敢えて予見していた刃は創造した魔剣の魔法を、雷を発生させる。

 

 

「ぎゃ───ッ!?」

 

「うッ─────!」

 

 

液状化したとしても、全身に伝わる電撃は防げない。数人の兵士は電気を直接浴びた結果、意識を失い倒れ込む。意識を失った兵士の横を通り過ぎていく一行だが、少しして彼等の足が止まる。

 

 

「居たぞ!侵入者だ!」

 

「主様………後ろからも」

 

「────チッ!数が多すぎる!」

 

 

通路の前後に並ぶ兵士達の波。数人で全員を相手するのは難しくはないが、時間が掛かり過ぎてしまう。歯噛みした刃が何か解決策を見出だそうとする中、黙り込んでいたシノが、口を開いた。

 

 

「先に行って………主様」

 

「…………ンだと」

 

「このままじゃ時間稼ぎをされるだけ。早くしないと王女が此方に向かってくる。そしたら全てが無意味になる───主様が、今回の作戦の鍵だから」

 

 

ここは任せて先に行け、その発言に応えることが出来なかった。言い方を変えれば、彼女達をこの場に置き去りにするということ。

 

そんなこと出来るか、と口出しすら躊躇う。実際に、今回の作戦の主軸となるのは黒鉄刃ただ一人だ。彼以外にクーデターを止めることが出来る人間は、囚われた王女を助け出せる者はいない。

 

数秒の迷いを、一瞬にして切り捨てる。歯を割る程の力を込め、刃は自身にも言い聞かせるように叫んだ。

 

 

「────前の奴は潰していく!他は任せた!!」

 

「…………任せて、主様」

 

「あ、あの!私達は大丈夫ですけど!無茶はしないでくださいね!」

 

 

一瞬だけ空いた敵陣を突き破り、刃は前へと走り出す。二人の激励を受け、彼はひたすらに走り出す。抜けられたことに気付いた後続の兵士達が盾を構えながら向かってくる。

 

 

「くッ!行かせるな!何としてでも───」

 

「邪魔だァッ!!」

 

「ぐああっ!!?」

 

 

生成した大剣を勢い良く振るい、兵士達を薙ぎ倒す。僅かに揺らいだ人の壁を抜け、刃は振り替えることなく突き進む。途中、彼の背中を狙う兵士達もいたが、彼等の攻撃は全てシノとラナールが防いだ。

 

 

「…………主様の、邪魔はさせない」

 

「治癒師である以前に私は騎士。実力に不足はありません!」

 

 

◇◆◇

 

 

追っ手を退けて前身した刃は、フローアヴェール城の中心に位置するエリアへと辿り着いた。全速力の疾走と戦闘続きによる疲弊は残っているが、止まるわけにはいかなかった。

 

 

魔力感知の技能を使ってみれば、目的の場所はすぐに分かった。魔力が濃い部屋が一つだけ存在している。踏み込んでみると、周囲の空気に圧迫され、呼吸が厳しくなった。

 

 

「────ッ、これが…………水神の魔力ッ」

 

 

厳密には、水神の魔力を宿す装置『メルトリア』。クライスの話によれば、水の国 スティシアの動力源として、魔物だけを阻害する魔力障壁や都市の運営に利用される水力エネルギーの生成。それらを管理する装置はこの国に三つ存在している。魔力障壁を管理する装置こそが、この『メルトリア』であった。

 

 

同時に、魔力を引き剥がす機能が存在しているのもこれである。現に、メルトリアの下には今も眠っている少女 ソーナがいた。

 

 

「────ソーナ!」

 

 

駆け寄ってみるが、彼女の意識は目覚めない。それどころか肉体から魔力が吸い上げられている。王族が宿す水神の魔力を分離させられているのだろう。彼女の肉体から特殊な魔力がメルトリアへと集められているのが見えた。

 

 

(………あの人の言うことなら、衝撃でも与えれば魔力の吸収は解除できるって話だが────)

 

「チッ、迷う暇ねぇよなッ!」

 

 

ギャンッ!! と、空中を剣の軌跡が滑る。飛来する風の刃がメルトリアの表面を軽く打ち付けた。直後、半透明な球体に波紋が伝わり、魔力の反応が変化した。

 

これで彼女から魔力を吸い上げられる心配はない。僅かに気を緩めた刃だが、目の前に広がる異変に気付き、顔をしかめた。

 

 

 

「…………何で、魔力が増えてやがんだよ」

 

 

冷や汗を滲ませる一方で、ふと思い出した。ハジメが快く貸してくれたゲームによる知識が一つ。こういう装置、コアらしきものは安易に攻撃してはいけない。

 

何故なら、防衛機能が取り付けられている可能性があるからだ。実際に、そういうボスの相手をしたのだから、忘れるわけもない。

 

 

『─────』

 

 

女性の歌声のようなものが、周囲に響き渡る。反響するメルトリアの内側から水の塊が渦巻き始め、這い出るようにソレが姿を現した。

 

 

水で形成された乙女。両手を胸元で握り締め、背中に四枚の翼を広げ、腰が魚のようになった神秘的な姿。人魚姫 セイレーンのような形をした水の化身が此方を見下ろすや否や、魔力を高め始めた。

 

 

「クソッ!ンな所でボス戦かよ!」

 

 

両手に魔剣を展開した刃が戦意を剥き出しにする。臨戦態勢へとなった彼の前で、水の化身─────メルトリアの防衛機能『水体精霊 セイレーン』が歌声を響かせた。

 

その音色に聞き入りそうになった刃だが、慌てて正気に戻る。受かれるな、と頭を叩こうとした次の瞬間。

 

 

「────うおッ!」

 

 

ドドドッ!! と、水の雨が床を抉った。並大抵の威力ではない。生身で受ければ肉塊になる程の破壊規模である。人並み以上の耐久力はあるが、何発も受けていられるものではない。

 

タッ! と横へと走りだし、セイレーンが放つ水の雨を回避していく。ホールの壁や床を飛び回り、何とか炸裂弾から逃がれる。

 

 

(アレを潰せばやれるか!? いや、駄目だ! 多分、アイツは本体じゃねぇ! メルトリアを何とかしねぇとジリ貧だ!)

 

 

親友との趣味で得た知識から、刃はメルトリア自体をどうにかする方針に決めた。だが、また大きな問題に直面する。メルトリア自体を、破壊することは出来ない。今の自分はきっと、それを破壊するには足りない。

 

 

─────なんて、弱気になるつもりはなかった。

 

 

 

 

「─────やっぱ、俺って」

 

 

周囲に十本の魔剣を造り出す。自身が造り出せる中でも、強力な魔剣。両手に白と黒の魔剣を握り、刃は降り注ぐ雨を前に、立ち尽くす。

 

 

その上で、笑みを深めた。

 

 

「正面からブチ抜く方が得意だなァ!!!」

 

 

─────全力で、前へと跳ぶ。

ガガガガッ!!! と水の雨を浴び、全身の肌が切り裂かれる。だが、致命傷には至らない。皮膚を切る水の弾丸を受けながら、十本の魔剣を従えて刃は前へと突き進む。

 

 

「この程度で、俺が止まるかよォ!!」

 

『─────』

 

「そしてェ! 狙いはテメェじゃねぇ! 大人しく歌ってろ!」

 

 

綺麗な音色を響かせ、炸裂砲弾を放とうとするセイレーンに刃はそのまま突進した。怯むことなく前進する刃はセイレーンに激突────することなく、通り抜けた。

 

あくまで、このセイレーンは水で作られた分体。攻撃の為だけに展開された水の人魚には、実体などない。形作る水はただの水であり、特殊な液体などではない。だからこそ、触れることも出来なければ、セイレーンも身を呈して止めることも出来ないのだ。

 

 

そして、意表を突かれたセイレーンよりも早く。刃はメルトリアへと攻撃を繰り出す。両手に握る白黒の魔剣を放ち、球体へと斬撃を直接叩き込む。

 

『斬るごとに攻撃力を倍増させる』黒い魔剣と『斬るごとに速度を引き上げる』白い魔剣。二つのコンボにより、刃の斬撃は数秒で音速の破壊乱舞と化していた。

 

 

『────ッ!』

 

 

ピシッ! とヒビが入ったと同時に双対の魔剣の方が限界を迎えた。塵となって消える魔剣に手を伸ばし─────その掌をメルトリアへと向ける。

 

直後、刃の周りを浮遊していた十本の鮮やかな魔剣が射出される。弾丸のように飛来した魔剣はメルトリアの表面へと突き立てられ、見事に貫通した。

 

 

「────ォオオオオオッ!!」

 

 

円状にヒビを入れられたメルトリアに、刃は最後の一押しをする。身体を捻り、全身の力を身に任せ────メルトリアへと蹴りを叩き込んだのだ。

 

ヒビが入る程の猛攻に、トドメの飛び蹴り。それが限界を迎えたのか、メルトリアの表面に大きな亀裂が入り、勢い良く砕けた。

 

 

『───────っ!!!!!』

 

女性の悲鳴と共に、水の人魚はその姿を崩すことになる。光を失い、沈黙するメルトリアから降りた刃は台座で寝かされていたソーナを抱える。

 

 

「これで借りは返したぜ、ソーナ」

 

 

抱き抱えた少女を連れ、この場から離れようとする刃。ふと、破損して沈黙するメルトリアを見上げ、呟きを漏らす。

 

 

「…………ブッ壊れてねぇよな? 流石に怒られるか?」

 

 

◇◆◇

 

 

「────ッ!」

 

 

一方で、広場で交戦していたソフィーとクライス。大量の水の魔法を放ち、自身の身体を水へと変えようとする彼女であったが────液状化しようとしても、叶わない。

 

自身の身体が水に濡れたまま変化がないことに困惑するソフィー。その姿を見たクライスはニヤリと笑みを深める。

 

 

「やってくれたみたいだな、アイツらが」

 

「………何を、したんです」

 

「────魔力が戻った、それだけのことです」

 

 

クライスを睨んでいたソフィーであったが、背後から聞こえてきた声に全身を震わせる。慌てて顔を上げた彼女の視線の先には、一人の女性が立っていた。

 

 

「やぁやぁ、女王様。お元気なようで」

 

「────貴方こそ。今は、クライス・ストラーダと名乗っているんでしたね」

 

 

水の都 スティシアの現女王 ソルティア・F・スティシア。先代の巫女であり、ソフィーとソーナ、二人の王女の親である存在だ。クライスも認知しているのか、ペコリと礼儀正しく頭を下げる。

 

そして、事実を理解しようとするソフィーにもう一つの事実を突き付けた。

 

 

「────メルトリアは停止しました。剣帝の少年により、貴方の目論みは頓挫しましたよ。 ソフィー」

 

「…………失敗、そういうことですのね。母様」

 

「その通りです、ソフィー。後の事は分かっていますね」

 

 

女王が手を上げた途端、兵士達が現れる。自身を囲む兵士達を前に、ソフィーは静かに全身から力を抜いた。反抗の意思は無いと判断した兵士が彼女の手首に拘束具を取り付ける。

 

連行される直前、ソフィーは女王に向けて告げた。

 

 

「それでも私は、教会を許さない」

 

「………」

 

「アイツらのせいで、メアは………エリュシオンは────」

 

 

そう言い残し、ソフィーは兵士たちに連行されていった。少しだけ、深い息を吐き出す女王。彼女は静かに眼を伏せながら、クライスへと声をかけた。

 

 

「さて、今回の件の功労者たちを労うことにしましょう」

 

 

────彼女たちは気付かない。先の、衝撃で王国を覆う水の障壁が消滅したこと。その僅かな隙を、海の向こうに潜む脅威が逃さないことを。

 

 

◇◆◇

 

 

「────さて、王国から訪れた客人の皆さん。色々と、ご迷惑をお掛けしました」

 

 

数時間後、玉座の間と呼ばれる広い場所に招かれた刃たち。何とか兵士たちを退けたシノとラナールは余裕そうだ、伊達に実力者ではないと理解させられた刃は、ふと目の前のことに意識を戻す。

 

玉座に座る穏やかな女性 ソルティアが微笑みながら、言葉を紡いだ。

 

 

「私は、ソルティア・F・スティシア。改めて、今回の騒動を止めていただき感謝しますわ────異世界からの来訪者の御方」

 

「…………黒鉄刃………っす、いえ、です。 此方こそ、光栄…………す」

 

 

敬語が苦手なのか、しどろもどろになる刃。相手も偉い人だと分かっているため、何とかちゃんとしようとしているのだろう。心配そうなラナール、チラチラと気になっているシノ、そして端から爆笑しているソーナとクライスの姿が見えた。何笑ってんだオラ、と心の中で罵倒が出るのも仕方ないと思う。

 

この空気を切り替えようと、刃は常々思っていたことを口に出した。

 

「そういや、その…………ソフィーって人、どうなったんすか」

 

女王が開放されたことで捕縛された現巫女の女性の行方。それを問うと女王は複雑そうな顔をした後に、静かに語り出した。

 

「娘、ソフィーは反逆の罪で牢に入れてあります。事態がすぐに落ち着いた為、処罰も重くはありませんが………あの娘のやろうとした事は、容認できるものではありません」

 

「…………教会への、報復っすか」

 

「────かつて起きた、人類の同盟軍と魔神連合との戦争はご存知ですね?」

 

話には聞いている。

数年前に起きた、魔人族────彼等を率いた四体の魔神による宣戦布告。それに大きく反意を覚えた教会の旗の元、世界中の国々が手を取り合って魔神連合と戦争を起こした。

 

────だが、その結果人類は無慈悲なまでの敗北を味わった。かつて存在していた国の一部は、魔神の尖兵である四魔王に滅ぼされ、人類は致命的なまでの痛手を負わされた。今は魔神連合側の都合で停戦しているが、彼等がその気になれば人類はいつでも滅ぼされる。それを阻止するために、教会ことエヒト神は刃達、異世界の人間を呼び寄せたのだ。

 

 

「その戦争で、多くの命が失われました────エリュシオン王が愛し、ソフィーの友人でもあった少女も」

 

「…………」

 

「彼女は強かった。ですが、大量の魔物に太刀打ち出来ず、致命傷を受けて亡くなったのです。…………ソフィはそれを、教会のせいだと信じて疑ってません」

 

「………まさか、教会の奴等が?」

 

「恐らく、見殺しでしょうね。あの時、教会は戦力の保持の為、私達を含めた多数の国に戦力を出させて、静観に徹していました。彼女が戦っていたのも、教会が担う防衛ラインを維持する為────大量の魔物の発生の際、彼等は前線を即座に放棄し、彼女一人に殿を押し付けたのです」

 

「たった一人に………正気かよ」

 

「当時の彼等は、罪悪感など感じていないでしょう────見殺しにされた彼女は、聖光教会が忌み嫌う『亜人』ですから」

 

静かに目を伏せる彼女の言葉に、刃は心中を察するしかなかった。恐らく、教会は意図して見殺しにしたのだろう。彼等の『亜人』への差別心は常軌を逸している────亜人であることが、罪だとされるくらいだ。

 

そんな彼等が、亜人を見捨てることに何の躊躇もしないはずだ。だから、殿を押し付けて勝手に撤退していったのだろう。彼女が、どんな思いで殿を受け入れたのかも、欠片も考えずに。

 

 

────友を殺された王女が、胸の内に憎しみを溜め込んでいたことも。愛する人を奪われた王が、絶対神への反逆を決意するであろうことも。

 

 

「────胸糞悪ぃ。やっぱ連中はクソだ」

 

「………そうかもしれませんね」

 

刃は吐き捨てた独り言に、女王は穏やかに同調する。

彼女としても、思うところがあるのだろう。少なくとも、この場にいる全員は同じ考えらしい。

 

 

「さて、話が逸れましたね。貴方達は、エリュシオン王の導きを受けたと聞きます────この国に、何用ですか?」

 

「…………原初の神々、それだけで分かるって王様が言ってた……ました」

 

「────」

 

 

その瞬間、女王の顔に驚愕が過ったのを見逃さなかった。しかし彼女はすぐさま感情を落ち着かせたように、近くに居たクライスを見据える。

 

 

「ようやく、なのですね」

 

「────ええ、これからが反撃の時ってことで。エリュシオンのヤツも本気ってことさ、女王様」

 

 

二人にしか分からない言葉であったが、待ち望んだものであることは明確であった。女王 ソルティアは慈愛深い眼で刃に視線を向け、言葉を続ける。

 

 

「貴方達が探している原初の女神────フローヌヴェーテ様がどうなっているかは私達も分かりません。ただ、神の力は未だ健在ということだけ」

 

「…………?巫女って、女神の力を受け継いでいるんじゃ………分からないってことはないだ……でしょうか?」

 

「敬語でなくても構いませんよ、恩人に不敬などと言う気はありませんから」

 

 

優しく微笑む女王は先程から敬語に言い直そうと悪戦苦闘する刃にそう諭した。コホン、と咳き込んだ刃は女王に「感謝します」と一言言うと、ようやく肩の力を抜く。

 

 

「フローヌヴェーテ様はスティシアを守る為にその力と全てを無機物へと変換したと言います────それこそが、このスティシアの核であるメルトリアです」

 

「っ!?じゃあ、あのデカブツが女神様って────ッ!」

 

 

そこで刃はメルトリアを自分が半壊させて機能停止させたことを理解する。明らかに青い顔をしたと思えば、慌てて地面に手をついて謝罪しようとした所で、女王がそれを制した。

 

 

「大丈夫です。メルトリアは今現在自動で修復されています。何より、あの状況下でメルトリアはソフィーの手にありました。貴方がメルトリアをあそこまで破損させたことで、ソフィーを止められたのですから…………気に病まないでください」

 

「………いや、ホントすんませんした………」

 

ひたすらに頭を下げる刃、不良ぶっているが性根はまだまだ優等生に近しいところはある。全面降伏で平伏するしか無かった刃を落ち着かせた女王や未だ不安そうな刃を他所に、ラナールやシノが疑問を口にした。

 

 

「でも、あの装置が女神様だとして、どうすればいいんですか?私達は神様を探せって言われてましたが、そのあとはどうするかは分からないのですけど…………」

 

「────後、必要なのは貴方です。黒鉄刃、神々との誓約を有する『剣帝』に目覚めた、貴方の力が」

 

「主様の………『剣帝』の、力?」

 

 

そのことについて、三人の疑問は共通した。

まるでこの天職、『剣帝』が特別であるかのような言い方。神々に関係するかのような内容に、自分の力がどういうものなのか気になってきた刃。そんな彼の疑問に、心中を察した女王はポツリと語り始めた。

 

 

「貴方の天職『剣帝』は、太古に存在したとある剣士から誕生したものです」

 

「太古の………剣士」

 

「とある剣士は類稀無い剣の才能と、無限に剣を創り出す力を有していました。創り出せる剣は魔剣でも聖剣でも、神剣すらも創り出せる────それに目を留めた全能神は彼女にある誓約を成しました」

 

────遠いその時、君のその力が必要となる時がある。世界の為、その力を天職として後世に遺すようにしたい、と。

 

 

「全能神がそうしたのは────『剣帝』が創り出した神剣により、旧六神それぞれとの誓約を結び、世界の脅威に立ち向かうこと。貴方には、六神との誓約を結んだ神剣により、神々の力を受け継いで欲しいのです」

 

「要するに、俺の創り出した剣で神様と誓約ってのを結んでその力を手に入れろ、ってことか。そんなことが、俺に出来るのか?」

 

「可能です。だからこそ、私達は貴方を待ち続けていたのです。フローヌヴェーテ様も、同じように思っているでしょう」

 

思ったよりも壮大で、責任感のある話だ。

刃としては今更断る理由もなければ、拒否するつもりもなかった。神々とやらの誓約はどんなものかは知らないが、きっと普通なものではないはずだ。刃もそれを理解した上で、納得していた。

 

 

(神々ってのが何を望んで、俺に何をさせたいのかは知らないが、俺は魔神とかをぶちのめして皆をあの世界に戻す。コイツらや、王様も無視はできねぇ。俺にしか出来ねぇのなら、やってやろうじゃねぇか)

 

そう思っていた中、話は進んでいく。水神フローヌヴェーテが変化したメルトリアに刃が再度接触し、神との意識が繋がるようにするとのこと。

 

巫女であるソーナが協力するらしいが彼女は「安心しなさい!無事に貴女を女神様のところに送ってあげるんだから!胸を預けて待ってることね!」と自信満々に告げていた。相変わらず元気だな、と刃は呆れる。

 

 

 

 

「女王様!大変です!」

 

そんな最中、王の間に兵士が飛び込んできた。慌てた様子で、転びそうな勢いの兵士の様子に只事ではないことを察知した女王が、「何事です」と問い掛ける。兵士は荒い呼吸を整えながら、捲し立てた。

 

 

「近海に、巨大な魔物が複数!この王国に近付いて────」

 

 

瞬間、凄まじい轟音と共に衝撃が襲った。何が起きたのか、その場に居た何人かにしか気付けなかった。刃は突然の事に反応しきれず、「主様ッ!」という声を聞いた後に、意識を失う。

 

 

 

 

 

 

────崩落した、城の一部。王の間を的確に破壊した攻撃はそれだけではなく、スティシアの街をいくつか襲っていた。それが水を圧縮したブレスであることに、気付いたとしてもスティシアの民は理解したくないだろう。

 

水の砲撃を行った、巨大な水竜がグルル………ッと唸る。口に水を溜め込んだ巨龍は静かに首をもたげ────水面の巨大な影に立つ少年 レヴィの命令を待った。

 

 

「よし、これくらいで充分だね。ハルドラーナは数分おきにブレスを飛ばして、街を破壊して────グランドラーガ、出して。全部」

 

直後、レヴィの立つ巨影────巨大クジラのような魔物が、大口を開く。それと同時に、溢れ出す無数の影。レヴィが産み出した魔物、海魔獣(メシス)が殺到していく。

 

その狙いはスティシア王国。

血に飢えた魔物の軍勢の波が王国に踏み込んでいく。海魔獣の背中に乗った少年は口元を緩め、狂気的な笑顔を刻む。

 

大魔王に従う人間。そんな特殊な立場である少年は敬愛、心酔する大魔王から与えられた使命を思い出し、恍惚としたまま空を見上げ、叫んだ。

 

 

 

 

「────見ててください!大魔王様!大魔王様の脅威になる、水の都も!旧き神も!ボクが、レヴィが!全部呑み込んでみせますから!!」

 

 

魔なる悪意が、水の都を呑み込まんと迫る。生命を貪り、神すらも喰らうために。

清水の今後について

  • 生存その1(生き残るけど戦えない)
  • 生存その2(護衛組の一人として戦う)
  • 死亡(無慈悲に死ぬ。全員曇る)
  • 意識不明の重体として途中退場
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