ありふれた職業で世界最強 新生譚   作:虚無の魔術師

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天職と王剣

「やあ!よく集まってくれたな!」

 

 

翌日の昼時。

エリュシオンの秘書、エラによって集められたハジメ達は兵士達の訓練に使用される練兵場で、一人の男に迎え入れられた。

 

 

「俺がお前達の教官となるメルド・ロギンスだ! これからもよろしくな!」

 

 

壮年の男性 メルドはニッカリと笑いながら、自己紹介をした。全員がよろしくお願いします! と挨拶した直後に、エラが補足するように告げた。

 

 

「王国騎士団副団長のメルド様です。今日から皆様に訓練を施してくださります」

 

「ハハッ、エラさん。その呼び名で呼ばれるとインパクトが薄くなってしまいますよ………」

 

「事実ですし、悪意はありませんよ。貴方は王を除けば、七番目に強いんですから」

 

「…………辛辣だなぁ」

 

 

丁寧だが、容赦なく言ってのけるエラに、メルドは苦笑いで応えるしかなかった。

 

しかし話を聞いた光輝は驚いたように目を剥く。そして、彼等の話にあった言葉に食い付いた。

 

 

「七番目……?メルドさんより強い人がそんなにいるんですか!?」

 

「ああ、というよりも。その七人は、俺よりも立場は上なわけだしな」

 

 

そう言えば、と刃は思う。

先程メルドは副団長と呼ばれていた。本来通りなら団長がいてもおかしくない。それに、王との対談の際、自分達を見張っていたのも丁度それくらいの人数であった。

 

 

「《王の剣(エリュシオン・ナイツ)》。エリュシオン王が信頼する七人の戦士、王直属の剣と揶揄された精鋭さ」

 

 

メルドの言葉に、何人かが反応する。オタクであるハジメや、隠れオタクであった清水は、「よくあるヤツだ!」と言いたくなるのを抑え込む。そして、殆どの生徒達がエリュシオンが信頼したという言葉に、唾を飲み込んでいた。

 

そんな彼等に、メルドは丁寧に説明をしていた。

 

 

「俺達の団長、『神速剣』イガル・ハヤテ団長。厳格な法の眷属、『執行官』スピリアス様。医療騎士団の団長、『聖姫』ヒナ・シュトル団長。この三人が有名だな、名実共に。他の四人も、実力者揃いであることには違いない」

 

「…………メルド様。申し訳ありませんが、それについては座学で話すつもりです。今はやることを優先してください」

 

「おっと、分かりました。エラさん」

 

 

軽く咳き込んだエラに、メルドが本来の目的を思い出したかのように動く。そして、エラが連れてきた兵士が持ってきた銀色のプレートを一人ずつ渡していく。

 

 

「このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くさないようにな?」

 

 

その後、メルドやエラの説明で、自身の血を垂らすことで自分達の基礎能力────ステータスが数値化されるということを知った。そんなゲームや漫画の世界でもあるまいし、と思ったのは仕方ない話だろう。

 

実際に試してみると、プレートに数値が示された。其々のステータスを見て、多くの生徒達が反応する。

 

色々と説明を受けた後に、メルドやエラによるステータスの鑑査が始まった。生徒達各々のステータスを確認し、アドバイスをあたえるというものだが、それを初めてすぐに驚きの声があった。

 

 

光輝のステータスの殆どが100であり、本来の平均10を越えているということ、そして彼がここ百年現れたことのない勇者という天職であったことへの驚きだ。メルドはおろか、クラスメイトの大半も光輝への憧れの声を見せていた。

 

 

しかしそれは、次にプレートを見せた咲夜の番によって大きく変わる。

 

 

『岸上咲夜 17歳 男 レベル1

 

天職:大賢者

 

筋力:50

 

体力:50

 

耐性:100

 

敏捷:50

 

魔力:500

 

魔耐:250

 

技能:全属性適性・全属性耐性・魔力感知・高速魔力回復・高速詠唱・多重詠唱・瞬間記憶・術式拡張・言語理解』

 

 

「魔力500………それに、大賢者とは!魔法職の最上位、賢者の上に位置する天職だ!凄いぞ!」

「技能であれば、天之河様に及びませんが、魔力はやはり底上げされていますね。彼も、中々の人材ですよ」

 

 

喜びながら賞賛するメルドに、鉄面皮ながら感心するエラ。自分達以上のステータスと天職にクラスメイト達が驚きの声を挙げながら、反応を示す。一方光輝は理解が追い付かず、呆然と硬直していた。

 

 

疲れたように一息を漏らす咲夜に、広大と雨音が駆け寄ってくる。

 

 

「スゲーな!委員長!まさか勇者越えとか!やるじゃねぇの!」

 

「………その天職を活かせないと意味がない。それと、お前達はどんなものだ?」

 

「俺はガーディアン。どっちかというと、防衛ってか、タンクって感じだな」

 

「私は舞踏家ですね。踊って戦う。どちらかという、武闘家寄りですけども」

 

「んー、雨音が踊るね………。あんま合わないな、そういうの」

 

「セクハラですよ」

 

「いや、どこが!?」

 

 

軽い漫才に耳を傾けていた刃は、ふとハジメの様子を確認しに行く。自分のステータスにあまり興味がない故に、親友はどうなのか見に行こうとしたら、

 

 

 

「南雲ぉ~、このステータス弱すぎだろぉ!」

 

 

───見たくない連中が、親友に絡んでいた。嫌なものを見たという顔をした刃は、むんずと歩み寄る。気付かない馬鹿達はメルドに南雲の天職────鍛冶師がありふれたものだと聞き、更に馬鹿にし始めた。

 

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

 

 

「────あ?じゃあテメェらを肉壁にしてやろうか、クズども」

 

 

プレートを奪い、ハジメに返さないように嫌がらせをしていた檜山達が凍りつく。真後ろに立っていた刃はプレートを持つ檜山の手首を掴み、力を入れながら脅すように言う。

 

 

「今すぐそれを返すか、腕を捻られるか。好きな方を選べ、檜山」

 

「いた、イダダダダッ!分かった!分かった!返すっての!」

 

 

慌てて地面に落としたことで刃は舌打ちをかましながら、檜山から手を離す。「落とすなよ」と苛立たしそうに口にしながら、手に取ったプレートをハジメに返す刃。

 

 

そんな刃を憎々しげに睨んでいた檜山は、ふと思い付いたように口を開く。

 

 

「刃!お前もステータスが出来たんだろ!なら、俺達に見せてくれよ!」

 

「そ、そうだ!そうだ!お前も威張れるような天職なのかよ!」

 

「…………ふんッ」

 

調子づいたように勢いを見せる檜山達に刃は不愉快そうな顔をしながらも、プレートを見せつけた。それを見た檜山達は一瞬呆然とし、大声で愕然とした。

 

 

慌ててメルド達が見てみると、

 

 

『黒鉄刃 17歳 男 レベル1

 

 

天職:剣帝

 

筋力:200

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:5000

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・魔力感知・剛力・剣聖・無限剣・千剣創造・■■』

 

 

「筋力200………魔力、5000だって!?」

 

「…………しかも、この天職は『剣帝』。まさか実在しているとは」

 

 

あまりのステータスにメルドは信じられないと立ち尽くし、エラは冷や汗をかきながらも答える。それを見た光輝は一気に目を見開き、声を荒らげた。

 

 

「め、メルドさん!エラさん!これって!故障じゃないんですか!?最後の方の技能も可視化されてませんし!刃だけ、表記がおかしくなっているんじゃ───」

 

「有り得ません。これに関しては我々も調査や実験をしていますが、壊れたことは一度もありません。唯一壊れた場合は、プレートでも把握できないほどの桁外れの力であるのならですが………まだ日の浅い貴方達に限って、そんなことないです」

 

 

食い掛かる光輝の発言に、エラはハッキリと断言する。それでも不満があった光輝だが、反論すらできず諦めたように肩を落とす。

 

刃として気になるのは皆の反応だ。驚きはしているが、疑う声が少ない。何でだと思いはしたが、

 

 

「いや…………刃なら、もしかしたらって思ったから」

 

「魔力に関しては驚いたけど………筋力は妥当かなって」

 

「まぁ確かに、筋力200はまだ納得できるわね」

 

「だな。お前、中学生の頃から何十人の高校生の不良をボコボコにしてたもんな」

 

「お前ら俺のこと何だと思ってんだ」

 

「「「「「暴君」」」」」

 

 

あんまりな扱いだと不平不満を唱えようとしたが、自分の行いを振り返った結果、何も言えなくなった。実際に大人のチンピラをボコボコにした経歴が、自分の悪名というか故障を現実のものにしてる気がする。

 

 

呆れ果てていた刃だが、突如現れた気配に意識を向ける。

ザッ、と練兵場に誰かが入ってきたのだ。咄嗟に視線を向けると、白衣の男が立っていた。

 

 

「─────少し、いいか?」

 

 

黒髪を逆立てた目付きの悪い男性。ギロリと剥いた瞳は蛇のように縦長で、とてもじゃないが善良な人間には見えない。

 

自分に向けられる好奇心の視線に辟易としながらも、男は白衣の中に手を入れ、無愛想な顔をしていた。

 

 

「な、なんですか?」

 

「ここに南雲ハジメってヤツはいるか?」

 

「あ、はい。ここです………」

 

「…………お前か」

 

 

男は興味など感じさせぬ顔のまま、ハジメを見据える。見定めるような眼を伏せながら、男は言う。

 

 

「お前の訓練はここじゃない。シュトライゼ様がお前を指名してるんでな、着いてきて貰うぞ」

 

「シュトライゼ………様!?まさか、あの人が!?」

 

「メルドさん!?知ってる人なんですか!?」

 

「『王の剣』の一人、ハイリヒ王国の軍事強化を担当されているという………」

 

「軍事強化?何でそんな人が南雲を────」

 

「俺が知るか。使いとして来たんだ、コイツを連れてくが構わねぇだろ?」

 

 

ぶっきらぼうに言った男はハジメに「着いてこい」とだけ言い、背を向ける。慌てて後を追うハジメは、自分に集中する視線に居心地の悪さを感じていたが、それは練兵場から離れるまで消えることはなかった。

 

 

そうして、城の廊下を歩いていくハジメと男。人の気配が少なくなっていくことに不安を覚えながらも、ハジメは怖じ気づきながらも聞いた。

 

 

「あ、あの………えっと」

 

「クラックだ。どうした?」

 

「は、はい………クラックさん。どうして、僕が呼ばれたんでしょうか?」

 

「…………あの人は気紛れだからな。お前に光るものを感じたのかもしれねぇし、そもそも関係ないかもしれねぇ」

 

遠い目で呟いていたクロックだが、ふと何かを思い出したらしく一瞬立ち止まる。そして振り返り、ハジメに対して同情するような眼を向けていた。

 

 

「だが、一つだけ確実なことはある」

 

「はい………」

 

「お前があの人に気に入られたってことだ。気を付けろよ、色々と面倒な人だからな」

 

 

…………行かなきゃダメなのかなぁ、というのがハジメの感想だった。面倒、と言われて大半ロクな事じゃないのが彼の人生だ。刃から心底面倒というか関わるなと言われていた光輝は悪意がないだけで非常に面倒な人間だったし、正直信用できないし、疑ってしまうのが普通だ。

 

 

辿り着いた部屋の扉を見た瞬間、ハジメはすごく入りたくなかった。関係者以外立ち入り禁止と殴り書きにされたその看板に、赤いシミが見えてる。もう、危険な感じしかしない。

 

 

「ボス、例の奴を連れてきました」

 

「────ご苦労、クラック」

 

 

扉から入り、部屋に入ってきたハジメはその声の主の方を見る。色んなガラクタを積み重ねたような道の先にいるのは、白衣を着込んだ白い長髪の美男であった。

 

 

腰まで伸びたボサボサの髪を束ねることも整えることもしない、優雅というべき顔は口元に刻まれた不気味な微笑みによって打ち消されている…………いや、逆に上書きされて、ヤバさが増している。

 

 

その男性は手に取っていた部品を机に置き、品定めするような眼でハジメを見下ろした。

 

 

「─────キミが、南雲ハジメかな?」

 

「……………は、はいっ。そう、です」

 

 

吟味するかのような眼は長い間続いた。機嫌を損なえば、容赦なく屠られる。それが明確に分かってしまう。エリュシオンという圧倒的な重圧を受けた直後だからこそ、理解ができた。

 

しかし満足したのか、男性は不敵に笑う。椅子に腰掛け、男性は優雅さを見せつけるような仕草を示しながら、自己紹介をした。

 

 

「私はシュトライゼ。シュトライゼ・ラグタ・ゼーレ。『王の剣』が一人、エリュシオンに従う戦士の一人という扱いに収まっている。以後、よろしく頼むよ?」

 

 

髪を払いながら名乗るシュトライゼに、思わず立ち尽くし言葉を失うハジメ。悪い意味ではなく、本気で反応できなかった。一体どのように応えるべきか分からず、一種の憧れを覚えたと言うべきか。

 

 

そんなシュトライゼの真後ろから、小さな影が現れる。

 

 

「キヒヒッ!マスターも脅かしすぎだよぉ。あの子、怯えてると思うけどぉ?」

 

「怯えてる?────違うな、私の圧倒的なセンスとカリスマに見惚れているんだろう?いや、確かに怯えてるかもしれないな。私という存在に、畏敬を覚えてのことなら!」

 

 

………ドヤ顔で宣言するシュトライゼ。チラチラと反応を求めるように、ハジメの様子を伺っている。どうするべきか悩んでいたが、ふと突然来た小さな影────ゴーグルを頭に被せた義手の少女が視界に入ったことで、昨日のことを思い出した。

 

 

「君は………あの時の」

 

「ウン!昨日ぶりだね!錬成師クン!私、ガトリー!よろしくね!」

 

 

両手の鋭利な爪をヒラヒラと振りながら、ガトリーはギザ歯を見せて笑う。そんな彼女の後ろで未だドヤ顔をかましていたシュトライゼが自然な空気で話を切り出してきた。

 

 

「さて、私がキミを指名した理由は他でもない。キミに光るものを感じたからさ」

 

「光るもの………ですか?」

 

「そうさ!鉱石のように、磨き方や精錬によっては素晴らしい素材となるように!キミは鍛え方次第では、私達すら越える怪物になる!────安心したまえ、褒めているさ。キミの内なる才能を!」

 

 

興奮していたのが一転、くるりと様子を切り替える。呆然と立ち尽くしていたハジメに軽い調子で語りかける。

 

 

「という訳で、まずはキミの力を高めるための基礎訓練をしようと思う。そこの椅子に座るといい、弟子三号」

 

「は、はい…………ん?」

 

 

納得して席に着こうとして、自分の呼び名がおかしいことに気付いた。

 

 

「あの、弟子三号って………」

 

「キミの呼称さ。南雲だのハジメだの、私としては名前で呼ぶのは距離を感じてしまうのでね。どうせなら、偉大なる私の存在を噛み締めるような呼び名の方が良いだろう?あと、どうせなら私のことを師匠を呼んでくれても構わないよ?」

 

 

露骨にチラチラと確認してくるシュトライゼ。反応に困っていたハジメだが、わざとらしく部品を落としたクラックが部品を拾うとしてハジメに近付く。

 

その直後、ヒソヒソと小声かつ早口で捲し立てられる。

 

 

(…………従っとけ、南雲)

 

(で、ですけど………)

 

(あの人、拗ねるとガチで面倒くさいぞ。大の大人がそんなことでウダウダ言ってくるから、余計なことになる前に従った方がいいぞ)

 

 

苦労してきたであろう先駆者の言葉を、ハジメは信じることにした。

 

 

「分かりました。よろしくお願いします………師匠」

 

「─────フフッ」

 

 

シュトライゼの笑顔が、震える。ピクピク、と込み上げる感情を押さえるようなシュトライゼ。一瞬対応に間違えたかと不安になったハジメだったが、すぐに違うと理解した。

 

 

───この人、喜んでいる。

 

 

「師匠、師匠か。やはり良い響きだ………良いだろう!弟子三号!キミの実力を私が限界まで高めてあげよう!キミの師匠であり、唯一無二の天才科学者!シュトライゼがね!!」

 

「よっ!流石マスター!今日もイケイケ!いえ、絶好調とや絶好調ですねぇ!キヒヒッ!」

 

 

楽しそうに盛り上がる二人に、着いていけずに困惑するハジメと同じく疲れたように一息吐き出すクラック。この勢いに諦めたハジメは大人しく椅子に座り、机を前にシュトライゼに聞いた。

 

 

「それで、僕はどうすればいいんでしょうか………?」

 

「何、単純な話だ。キミはそこの紙にあるものを描いてくれればいい…………キミの世界の兵器や文明について」

 

「…………え?それでいいんですか?」

 

「無論さ。むしろ私は知りたいのだよ。キミの世界の技術力について。あわよくば、その技術力が我々にとって新しい発明を見出だす可能性すらある。キミの能力を鍛えるためにも、有益なことだと思うがね」

 

 

ここまで自信満々なのだ、素人が気にしてはいけないと考え、素直に紙に描き始めるハジメ。まず自分が思い付いたものとして、ライフルを描いてみることにした。

 

絵心があるわけではないが、下手というわけではない。むしろ自分なりに上手に描けている部類だとハジメは思う。

 

ある程度描き終わった所で、静かに観察していたシュトライゼが口を開いてきた。

 

 

「────失礼、早速だが、これは何かね?」

 

「これは、銃って言う兵器です。この中に、弾丸を詰め込んで、引き金を引くとそれが射出されるという構造でして………」

 

「フム、弓矢の簡易式、砲台の小型化という感じか。それで?サイズはどれ程かな?やはり、私達の半分くらいか?」

 

「えっと…………このくらいです」

 

「──────ウソだろう?」

 

 

ピシリ、と硬直するシュトライゼ。因みにそんな反応を示したのは、興味本位で話を聞いてきたガトリーとクラックも同じであった。余程意外だったのか、凍り付いたように止まっている。

 

咄嗟に戻ったシュトライゼは慌てた様子でハジメに食いかかる。そして、更なる説明と自身の結論の成否を求めた。

 

 

「このくらいのサイズだと!?一体どのようにして打ち出している!?そ、そうだ!重さは!?重さはどうなんだ!?これくらいなら大人三人で動かすのが妥当───」

 

「いや、一人でも運べますよ。それどころか、僕の世界ではこれを兵士一人一人が持ってたみたいですし………」

 

「しかも個人が扱うための量産型だと………!?何だその発明は!素晴らしい、素晴らし過ぎるだろう!キミの世界は!!」

 

 

激しい興奮を隠せぬまま、高揚に打ち震えるシュトライゼ。自分が知りもせぬ科学の先、その進化形を模倣として見て、言葉として耳にしながらも、全てを理解し、全てに称賛を示していた。

 

ハジメから銃について、銃の種類について知ったシュトライゼの反応は明らかに大きなものであった。少なくとも、ハジメの話を疑うこともなく、純粋な真実として信じて、受け入れていた。

 

 

「驚いた。まさかこれほどまでに技術力が発展しているとは、このシュトライゼすら予測できなかった。だが、この兵器が我々の力になることは確かだ」

 

「…………あのぉ」

 

「?何かね?弟子三号」

 

「銃って兵器じゃなくてどちらかと言うと武器です………」

 

「…………………………………ン?」

 

 

今度こそ、シュトライゼは理解不能という顔をした。ハジメは宇宙猫のように上の空である自らの師匠(呼ばされてるだけ)に、銃を越える兵器が沢山存在している事実を話す。

 

 

何十秒か、思考停止していたシュトライゼだったが、すぐに再起動したかと思えば、

 

 

「─────フフフッ、フハハハハハハハ!!」

 

 

込み上げた笑いを押さえることなく、盛大に笑い出した。直後に眼を光らせたシュトライゼは一気に動き出す。

 

 

「ガトリー!編纂していた『機甲兵発展計画』を持って来るんだ!ああ、ダメだな!一つではなく全部だ!計画書を一から練り直そう!」

 

「ハァーい!分かりました!マスター!」

 

「クラック!あるだけの紙を!彼の話を聞くだけでもインスピレーションが湧いて止まらない!これからは忙しくなると思うぞ!」

 

「はいはい、分かりましたよ………ったく、あの人は。ま、こんなもん見せられてやる気が増してる俺も、人のコト言えねぇか」

 

 

未知の技術の存在にウキウキとした三人が、ハジメから元の世界の技術について聞き出すのに一日を、その後も含めて三日も要した。その事実を知る者は、何やってるんだと呆れたように観察していたエリュシオンだけである。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「………こんなところで、俺は何をするんだ?」

 

 

王国から少し離れた修練場、刃はそこに呼び出された。突然のことだった。皆と同じく練兵場で鍛えるつもりだったのだが、エラが唐突に修練場に向かうようにと言ってきたのだ。

 

 

ハジメと同じように使いすら来ないのか、と不満はあったが、修行の一貫かと一人でスタスタ歩いていく。それから半時間経ち、ようやくそこに辿り着いたということだ。

 

 

「………ってか、そもそも。俺を呼んだ人って一体誰なんだ?まさかハジメのように『王の剣』の奴じゃないよな?」

 

 

 

ハジメから借りた漫画とかの知識から、ふとそう呟いてしまう。一度あることは二度ある。親友がなって、自分がならない道理はない。

 

そんな訳ないか、と軽く笑おうとした────直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ほう?やはり勘の鋭い奴だ」

 

 

そよ風に乗った声が視界に入る。誰かいる、と気付いた刃は真後ろにあった気配に対応しようと振り返る。拳を握り締め、その相手に対応できるように身構えていた。

 

 

しかし、相手は速かった。

振り返ろうとしたその時には、自身の脇腹に刀らしきものが滑り込んでいた。気付いた時にはもう遅く、斬撃が(ジン)に炸裂する。

 

 

「────ぐ、ガッ」

 

 

あまりの激痛に膝をつきかける。しかし、刃は意識を落とさなかった。相手は自身の間合いにまだいる。それを理解し、刃は渾身の力を込めた拳をそちらに向けて放った。

 

 

だが、風が吹いたかと思えば、攻撃は空振ってしまう。馬鹿な、と刃は混乱した。この距離でなら間違いなく拳は当たっていた。喧嘩を繰り返してきた経験上、相手の動きは大体分かる。なのに、回避されるとは思いもしなかった。

 

 

「─────良い反射神経だ。俺の攻撃に反応し、一撃を打ち込もうとするとは。実力はソコソコ、才能も覚悟も問題ない。勇者一行の中でも一番のレア物だな」

 

 

背後に立っていた男、茶髪の男が戦意に満ちた笑みを見せる。騎士の制服らしきものを着崩し、その上に複数のベルトを重ね掛けしている姿に騎士らしきものは感じられない。

 

が、その背中には六本の刀剣が方陣を描くように装着されている。その左右に三本ずつ差し込まれた刀剣とは違い、縦に装備された巨大な大剣。斬るというより相手を力で圧倒することを目指したような造形の武器には、殺意すら感じる。

 

 

「アンタ、は………」

 

「イガル・ハヤテ。騎士団団長にして王国最強の騎士であり、剣士だ。メルドの奴が軽く世話になったようだな」

 

 

両腕を組んだイガル・ハヤテがフッと笑いながら答える。その笑みにはやはり強い気迫が感じて止まない。無論、ハヤテの方もそれを抑える気はないのだろう。

 

 

「俺がお前を呼んだのは、お前を鍛えてやるためだ」

 

「………ザックリっすね。なら、他の奴等も一緒にやった方が良いんじゃないんすか?アンタが一番強いんだし」

 

「────フン、あいつらか。そこまでの魅力を感じないな。メルドにしごかれてもう少し出来るようになれば、俺が鍛えてやってもいいが…………あんな雑魚どもに、進んで構う理由はない」

 

 

随分と辛口な意見だと思う。おそらく、勇者として持て囃された光輝も、ハヤテのお眼鏡には叶わなかったようだ。仕方ない、というか無理もない。自分だってあんな奴を鍛えたくはない。

 

 

「勘違いするな。お前もまだ、その雑魚の一部だ」

 

「………」

 

「俺の一撃に反応し、対応しようとした。それは褒めてやった。だが、それだけだ。実戦だと一撃で殺されていた。それは理解できるだろ」

 

「言ってくるじゃねぇか。なら、アンタのお望み通り強くなってやるよ。それで満足だろ?」

 

 

フンッ、とハヤテは鼻を鳴らす。近くの木に掛けてあった木刀を、凄まじい勢いで刃に投げつける。咄嗟に両手で受け止めた刃の掌に血が滲む。

 

 

眼を細めたハヤテは片手に木刀を持ち、軽く振るう。ビュッ! と空を斬るどころか、風すら生じる一振。それを放ち、ハヤテは尋常じゃないほどに鋭く細めた瞳で刃を見据える。

 

 

「言っておくが、俺はメルドのように甘くはねぇ」

 

「………っ」

 

「加減はする、木刀でやってやる。だが、本気で斬る。お前は何度も俺にぶちのめされながら、俺の剣を止められるまでに反射神経を鍛えろ。異論は許さねぇ、結果だけ出せ」

 

 

言った瞬間、刃は飛来してきた斬撃に薙ぎ払われる。この日から、刃にとって人生で一番の地獄が始まった。

 

 

◇◆◇

 

 

崩壊した廃墟。辺り一帯は爆撃にでもあったかのように凄惨な状態となっており、近くにいた動物はその場から逃げているか、巻き込まれて潰されているのも多い。

 

 

自身の顔を覆うマスクを外したイクスは呼吸を整える。マスクをしていると、外気を吸わないで、激しい動きが出来る。呼吸が乱れるような心配はないが、そのせいでマスクを外すと外気に適応するのに時間が掛かる。

 

 

イクスは呼吸を整えながら────自分の目の前で倒れ伏すノイントを見下ろす。

 

 

「神の使徒………増援は来ない。主に見捨てられたか」

 

 

仰向けに倒れるノイントの胸元には、小さな穴が開いている。一発の銃弾で抉られたのだろう。しかし、異様であるのは事実だ。

 

イクスが使っていた武器、今も持っているのはマシンガンとグレネードランチャーの二つ。これらの武器は破壊力がある過ぎる為、相手を殺した場合間違いなく損傷が激しい状態になっている。

 

 

しかし、一発の銃弾だけがノイントにあった傷であった。放たれた弾丸が心臓を撃ち抜いているのは確かだが、何らかの力が彼女を殺したという可能性は、確かに存在していた。

 

 

「憐れなヤツだな。最後まで心棒した主に見限られるとは。殺したオレが言える立場じゃないが────いや、ヤツにとって本望か」

 

 

ノイントを殺した直後に、何も反応はなかった。エヒトとやらも何かをしてくるとは思ったが、いくら待っても反応はない。つまりエヒトは此方を刺激することを止めた、要するにノイントは見殺しにされたのだろう。

 

 

同情しようとして、イクスは首を振った。自身も神を信じる側の人間。信仰心に関して優劣をつけるつもりはない。彼女の神への軽蔑を覚えようとも、彼女の死に様を笑うつもりも悲惨なものとするつもりもなかった。

 

 

だが、それはそれ。これはこれ。

損傷の少ない彼女の肉体、神聖さを有した新鮮な死体を前に、イクスは合理的な考えを下した。

 

 

───この死体を、有効活用しようと。

 

 

「お前には、オレの駒になってもらう。神殺しを、魔神殺しを達成するためにな」

 

 

ふと、武器から離した手を虚空へと伸ばす。バチッ、と黒い火花が走ったと思えば、彼の手には一丁のリボルバーが握られていた。

 

 

真っ黒。

どす黒い闇を体現した色のリボルバー。片手に掴んだそれを大きく振るい、イクスはシリンダーに銃弾を込める形を整える。

 

空いていた片手を反対側に伸ばし、イクスは告げた。

 

 

「─────ヴェーレ」

 

 

直後、彼の掌に禍々しい不気味なモノが蠢く。霧のように形が掴めないそれは、イクスの掌に集まると────九つの杭のように、円を描くように宙に浮かぶ。

 

イクスは自身の手首を機転として円を作る杭を見つめながら、一言。

 

 

「───支配(クオンタ)

 

 

すると、九つの杭の一つが光る。それは右から順番に一つになるように重なり、最終的には一つの杭が残った。それはイクスの掌の上へと移動し─────突然落ちたと思えば、一発の銃弾と化していた。

 

 

それを手に取ったイクスはシリンダーの穴に銃弾を差し込み、装填する。一発の弾丸が入ったリボルバーを、死んだノイントに向けたイクスは、迷うことなく撃ち抜いた。

 

 

再び心臓を抉るように撃ち込まれた弾丸。それはノイントの肉体を破壊する…………どころか、逆に彼女の胸に空いた傷を一瞬で修復させていた。

 

そして、光に包まれたノイントがゆっくりと眼を開く。体を上げ、眼をパチパチと開く彼女に、イクスは平然と告げた、

 

 

「ノイン。それがお前の名前だ。これからはオレがお前の主だ。オレの駒として、役に立て」

 

「────分かりました、主よ」

 

「………………」

 

 

死した存在を蘇生させ、隷属させる能力。実際には、撃ち込んだ相手のあらゆる力や機能、全てを支配するという力である。彼が乗っ取ったのは、彼女に組み込まれていた特殊な術式。おそらくは、彼女を神の使徒足らしめていた機能である。

 

 

それを支配すれば、彼女は従順な人形として自分の駒になる。それはいいと思ったが、何処か腑に落ちないイクス。それが何なのか少し考えていたが、すぐに答えは出た。

 

 

「…………やっぱり無しだ。オレのことはイクスでいい、様も殿も無しだ。呼び捨てでいい。お前は駒だが、相棒として振る舞え。いいな?」

 

「了解しました、イクス」

 

 

未知の存在と元神の使徒。本来であれば絶対に共闘するはずのない二人のコンビが、今出来上がったのだった。




戦闘シーンすら割愛されたノイントさんに合掌…………ま、ノインさんとして生まれ変わったからセーフセーフ(アウト)


王の剣
エリュシオンが最も信頼する七人の精鋭。ハイリヒ王国の守護する最強の戦士達。かつては王子として旅に出ていたエリュシオンの仲間達。両親を失い、王国を建て直そうとしたエリュシオンを支えるために世界中から集まってきた。


あと補足として王の剣には存在しない八人目がいる。その八人目に関してエリュシオンの前で言及してはいけない。暗黙のルールである。

清水の今後について

  • 生存その1(生き残るけど戦えない)
  • 生存その2(護衛組の一人として戦う)
  • 死亡(無慈悲に死ぬ。全員曇る)
  • 意識不明の重体として途中退場
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