ARKの世界で縛りプレイすることになった転生者のサバイバル日誌   作:げんこ2

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1~2日目

 

 今日から日記をつけてみることにする。この現状では資材はあまり無駄にできないが、紙くらいなら無限に生産できるらしい。それに日々の些細なデータを重ねていくのも人間の重要な武器だ。いつか必ず役に立ってくれるはずだ。

 

 さて、一日目という事だし、まずは自己紹介と現状把握から済ませよう。

 

 俺の名前は芦名鉄平。ただの陰キャオタクで、社会人歴は数年が経過。ブラック企業に勤めて残業に追われる日々を送っていたどこにでもいるただのサラリーマン…だった。

 

 しかし、俺はどうやら一度死んで、転生してしまったらしい。死に方は最悪で、不摂生からの脳梗塞からの孤独死。こんな事になるならブラック企業なんてとっとと辞めればよかったと後悔している。

 

 ただ、死んでしまったという事実は取り消せない。俺は魂となって死後の世界に行ったのだ。

 

 そこで、俺は神に選ばれてしまった。

 

 創作物の中では、転生と一言にいっても色々とあった。宗教的な意味での転生だったり、ラノベによくあるような転生だったり。そして後者では、神が慈悲を、とか神が誤って、とかさらに展開が枝分かれしていた。

 

 俺の場合は、その中でも最悪な部類に入るだろう。神の娯楽として、ただの駒として選ばれてしまったのだから。

 

 奴らは『ゲーム』をしていた。人間が作る死にゲーにそっくりな世界を作り出して、そこに人間を転生させるという趣味の悪いゲームだ。

 

 転生者には試練が課せられて、達成できなかったら完全に死亡し、達成で来たら生存し続けることができる。

 

 全く糞みたいな話だ。

 

 そして俺は転生させられた。ARKというゲームの世界に。

 

 ARKをご存じだろうか。ご存じない方は別にそのままでもいい。マイクラに恐竜や死にゲー要素を足しまくったゲームだという事だけ知ってもらえてたら恐らく不足は無いだろう。

 

 恐竜というのは、文字通りの意味だ。ARKは恐竜が実際に生きて生態系を形作っている世界が舞台なのである。

 

 サバイバーと呼ばれるプレイヤーの分身は、そのような過酷な世界で生きていく事になるのである。

 

 俺はそんな世界に転生させられた。これがどれほど最悪な事なのかお分かりだろうか。

 

 基本的に、この世界ではサバイバーは恐竜に勝つことができないようになっている。一部の恐竜を除いて、ありとあらゆる恐竜がサバイバーよりも強く、更に敵対していることが多い。

 

 サバイバーはそんな世界で、拠点を作り上げ、装備を整え、恐竜をテイムして生きていく。最終的にボスを倒せば攻略は完了という形となる。

 

 その為、装備が整うまでは沢山死ぬことになる。熟練のサバイバーでも死ぬことになる。

 

 その上、装備が整った後も油断すればすぐに死ぬことになる。

 

 ボスも凶悪で、サバイバーがどれだけ勢揃いしてもまず勝つことは不可能。巨大な恐竜を複数揃えて、さらにサバイバーにも質のいい装備を装備させてやっと倒すことができる相手だ。

 

 さて、そこで神々から与えられた試練なのだが、その内容はこうだ。

 

『リアルっぽくなったARKで全ての洞窟、ボスの攻略』

 

 俺は思うね。神々って心の底からクズなんだって。

 

 リアルっぽく、というふわふわした言葉が、事ここに至っては死の宣告と同等だ。

 

 ゲーム的要素が廃されている、という事なのだろうが、ではゲーム的要素とは何だろうと考えると、俺は真っ先にテイムが思い浮かんだ

 

 ARKにおける恐竜のテイムは、一部例外を除いて割と単純だ。打撃を与えたり、麻酔薬を利用したりして眠らせて、眠っている間にその恐竜の好物をあげればいい。そうするとテイム値が上がっていき、最終的にはテイムすることができる。

 

 これが基本的なテイム方法で、これは小型恐竜も大型恐竜も変わらない。

 

 当然、近づけば逃げる恐竜もいれば、攻撃してくる恐竜もいるので、それぞれに対策は必要だが、そこさえクリアすれば大型恐竜でも簡単にテイムすることができる。

 

 運が良ければ、最初の段階で最強クラスの恐竜だってテイムしてしまえるのである。

 

 リアルっぽくなれば、そんなゲームだからこそ起こる可能性は完全に潰えるだろう。そもそも、テイムすらできるのかどうか分からなくなる。

 

 実質テイム縛り。であれば、ボスの攻略はほぼ不可能に近い。

 

 つまり詰みである。そもそも最初からクリアさせるつもりがないのだろう。

 

 さて、俺が転生してきて、既に二日が経過している。

 

 転生したマップはアイランドと呼ばれる、原点にして頂点のマップだ。初期地点は最もイージーな海に近い場所。砂州というのだろうか。海が一部だけ陸側ににょきっと浸蝕している独特な地形だ。

 

 この二日で、俺は何とか藁の小屋を建てることに成功した。

 

 本当に大変だった。まず判明したことを纏めるが、俺の腕にはサバイバーの証であるクリスタルが埋め込まれていた。

 

 このクリスタルは、ゲームでは自分のステータスを確認したり、アイテムを異次元に収納したり、クラフトもできる高性能なものだった。

 

 しかしリアルっぽくなったこの世界では、性能が若干変わっていた。まずステータスだが、HPやスタミナと言ったゲーム的な表記が消え、部位ごとの健康状態を示すようになった。

 

 レベルは存在するらしい。ステータスも健在だ。レベルが上がった事で手に入れたステータスポイントを割り振って、自分の身体が強化されたのを確かに確認した。変化は、HPが耐久に、スタミナはゲージではなくどれだけ高いかを示す数値に変わっていた。

 

 ちなみに俺のレベルは今は5である。これでも頑張った方なのだが…やはりドードーを倒したくらいではレベルは全く上がらない。

 

 アイテムインベントリやクラフトは変わらずに使えた。ただし、耐久度に関しては無くなっていて、藁の小屋相応の耐久度になってしまっている。つまり、腕でずぼっと貫通させられる程度の耐久度だ。恐竜に襲われたら恐らく一秒も保つまい。

 

 クラフトは手作業とオートを選べるらしく、オートは品質は最低限のものができ、手作業だと上手くいけば少し質のいいアイテムが手に入るようだ。しかし時間が無い為今はオートで全てを済ませている。

 

 革などもいくらか入手したので、寝袋は最優先で作った。どうやらリスポーンしなければいくらでも使えるらしく、夜寝れることも確認した。

 

 問題は資源の採取である。ゲームではそこら辺の茂みを突いていれば木の実や繊維が手に入ったし、木を殴れば木材や藁が手に入った。

 

 しかしこの世界では、木の実を見つけるならそれが成っている場所まで行って採取しなければならないし、木材も木の枝を折ったりして手に入れなければならない。藁に関しても、木から取れるのではなく藁になる背の高い草を採取しなければならないらしい。効率がゲームの時よりもかなり低くなっている。

 

 その上、恐竜の存在もある。

 

 俺がこの二日間で殺された回数は1回。ディロフォサウルスという小型の恐竜に襲い掛かられたのだ。

 

 ディロフォサウルスは大型犬程度の大きさのエリマキトカゲによく似た生物だ。ARKを知っている人なら、そんな恐竜にやられたのか、と思うかもしれない。実際ゲームだとこいつは動きが遅く、注意すべき点と言えばたまに吐いてくる毒液だけ。間合いやタイミングさえつかめれば、素手でも倒すことができる相手だ。

 

 しかしこの世界のディロフォサウルスはヤバい奴らだった。

 

 まず2,3体の数で群れている。そして動きは素早く俊敏で、茂みから急に飛びかかってくることもしばしば。首を狙われるとひとたまりも無い。

 

 足の速さは俺の全速力に難なく追いついて攻撃してきたレベルだった。

 

 おかしいだろ。ディロフォサウルスレベルでこれって。一番最初にテイム候補に挙がる最弱の肉食恐竜だった筈なのに。

 

 死んだ後は、ゲームと同じだった。ランダムリスポーンを選ぶかベッド、寝袋を選ぶかすることができる。その時はまだ小屋すら作れておらず、寝袋も無かった為、俺は仕方なくランダムリスポーンで全てをやり直した。

 

 その後は運よくドードー(足の遅い鶏)くらいしか恐竜がいない場所にやってこれたので、そこに小屋を建てて周囲を壁で囲って簡易的な拠点を作ることに成功。やっと文明を積み重ねる土台を作ることができた訳だ。

 

 しかし問題が発生した。人が転がり込んできたのである。

 

 俺と同じように転生させられた人が、俺の他に3人いた。

 

 女二人と男一人。全員高校生くらいで、女子二人は美人だと言えた。

 

 しかし実際の年齢を聞いてみると、ちゃんとした高校生だったのは女子の内一人だけで、もう二人は成人済みだった。

 

 どうやらこの世界に転生させられた際に最盛期の身体で転生させられるらしく、若返ったようなのだ。俺は鏡もないしステータスの変動もあったしで気づかなかったらしい。

 

 ちなみに三人ともゲーム知識は皆無だった。

 

 しかしどうしたものか。三人の食い扶持なんてかき集めるだけで一日が終わってしまうぞ。

 

 三人ともかなりグロッキーで、動ける状態じゃないようだ。死んだショックとこんな訳の分からない世界に来てしまったショックでかなり参っている。

 

 早いうちに回復して、手伝ってくれたら嬉しいのだが。

 

 

 

 

3日目

 

 今日は食い扶持を稼ぐために、槍を持って外に出かけた。

 

 結果的に何回も死んだ。相手はディロフォサウルスだ。何回も死んではランダムリスポーンして、元の場所に戻って自分の死体からアイテムをはぎ取ってまた攻撃してを繰り返すゾンビ戦法で何とかディロフォサウルスを全員殺した。

 

 体力なんてものが無い世界なので、足を重点的に狙って動けなくし、一匹一匹弱らせる事で何とか倒せた。そしてピッケルを振り下ろすことでちゃんとアイテムとしての肉をゲットすることも確認した。ただし、アイテム名は生肉(ディロフォサウルス)と表示されたので、恐らく恐竜ごとに味が変わるのかもしれない。

 

 肉を持って帰って焼き肉を作っていると、それを見て気分を悪くした女子が吐いた。どうやら生き物を殺してきた俺に嫌悪感を抱いたらしい。

 

 お互い現代っ子だったので気持ちは分かるし、何度も謝られたので相手自体には思う所は無いが、流石にちょっと傷ついた。

 

 しかしちゃんと料理された肉は食べられたようで安心だ。衰弱死なんてされたら気が滅入るからな。

 

 ちなみにディロフォサウルスの肉はかなり不味かった。食えなくはないが、硬いし獣臭いしで普段食べていたものと比べると質が大きく落ちた。

 

 臭み消しについて調べる必要がありそうだ。ティンベリーと呼ばれる食用に適した実があるので、それを塗り付けて香り付けでもしてみようか。

 

 サバイバルなんてしたことないし、試行錯誤が続きそうである。

 

 

 

4日目

 

 今日もゾンビ戦法で生肉を取り、木材をかき集め、藁をかき集める。石もしっかりと集めておく。レベルが昨日と今日で9まで上がったので、すり鉢やベッドなどと言った必需品を解放できた。

 

 早い段階で何とか作っておきたいが、ベッドを人数分作るとなると素材がいくらあっても足りない。特に皮。

 

 俺達は現在生態系ピラミッドで最も下に位置する存在だ。つまり皮が欲しければ上位存在を殺す必要があるのである。ムリゲーすぎる。

 

 一応対抗策はあって、ボーラと呼ばれる足を止めるための道具が存在する。しかしこれが中々難しい。作るのに皮を消費するし、当てるのにも技量を要求されるのだ。皮が欲しいのに皮を消費して作って、しかも失敗したら逆に減ることになってしまう。

 

 ただ、今日は運が良かった。草食恐竜のパラサウロロフスが近くにいたのである。ボーラの練習台になってもらって、そのまま糧になってもらった。

 

 皮も結構取れた。牛程度の大きさだし、取れる量はディロフォサウルスよりも上だ。

 

 ちなみに、今日は男子が外に出て、ベリーなどを採集していた。話しかけると、今まですみません、これからは手伝いますと頭を下げられた。

 

 話を聞くと、どうやら俺がゾンビ戦法をしている所を目撃してしまったらしく、このままじゃダメだと心を入れ替えてくれたらしい。

 

 眼鏡をかけた知的な男子で、名前は宮野というらしい。ベリー以外にも食べられそうな食物を自分の身体を使って開拓しようとしていた。

 

 是非そのまま続けてほしい。メモ用紙をいくつか渡した。

 

 女子に関しては、まだグロッキーらしく家で内職の様なものをして過ごしていた。

 

 何か仕事を与えてやった方が良いのかもしれない。

 

 

 

5日目

 

 女子に仕事を与えることにした。色々悩んだが、クラフト関係で作れそうなものを作るよう指示。更に、料理に関してもただ肉を焼くだけではあれなので、改良も頼んだ。

 

 一人は気乗りしないようだが、もう一人は黙々と作業に当たってくれた。そして二人とも夕方には多少明るい顔になって作業をしていた為、やはり何もすることが無く鬱々と過ごす時間はかなりしんどかったらしい。手を動かして心を入れ替えることができたと言った感じだ。

 

 布の服もかなり量産してくれた。洗いながら交換して使えるようになったため、何気に一番うれしい話だった。

 

 女子は料理上手な大人しい子が花畑恵果、しっかり者の方が加口理央という名前だった。

 

 とりあえず協力関係が築けるようになったので、トライブに入ってもらった。トライブとはMMORPG的に言うとパーティーみたいなものだ。作っておいて損はないだろう。

 

 しかし、どうしたものか。いくらでも死ねるとは言え、女子二人は一度でも死を経験したら心に傷を負ってしまうだろう。実際かなり痛いしな。

 

 死なないようにする保障なんて、この世界ではできない。例え家の中にいたとしても、大型恐竜に襲われて家ごとぶっ壊されるなんてこともあるのだ。

 

 せめて、一番年上の俺が少しでも守ってやれたらいいのだが。

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