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四人の女が顔を突き合わせていた。
沈んだ顔で会議をしており、それぞれの報告で一喜一憂している。
「この結果はマズイですわね」
「地球寮以外でも使用例が出て悪くない結果ですって」
ペイル社に持ち込まれた資料にはアスティカシア学園で行われた決闘のデータ。
先日のグラスレー寮戦のみならず地球寮が他でも戦い、その結果を踏まえて提供された一部の寮でもリオンの使用が始まったのである。
「相性の悪いディランザ相手はともかくザヴォートとあまり変わらない戦績だなんて」
「仕方ないわ。あちらは飛行し続けることを前提にしてるのですもの。機動戦になれば巻き返されてしまいます」
「とはいえ、このまま放置できないのは確か」
ペイル社のザヴォートは大型ブースターでの機動戦を得意としている。
だが地形を利用し、障害物と往復しながらの戦闘はともかく……飛び続ける場合はリオンの方が向いている。これは航空機の延長上にあるリオンが、飛行システムの性能面に勝り、軽くて出力比に勝るからであった。もちろん打撃戦仕様のヘヴィ・ザヴォートやカスタム機ならば大きく優位に立てるのだが、リオンは安価なので同じく打撃戦仕様のランドリオンの数を増やされると面倒なことになる。
「いっそのこと『ファラクト』を投入してしまうのは?」
「ダメよ。ガンドフォーマットの問題がまだクリアできていないわ」
「総合性能ではこちらの方が圧倒的に上よ。露骨な対決や比較可能な戦闘を避けてしまえば巻き返しは不可能じゃない。無理してデリング総裁に目を付けられるべきじゃない……」
「……あら。みなさん、朗報よ」
会議は途中でループしそうになっていた。
それも仕方はあるまい。総合性能で圧倒していようと個々の能力では対して差が無く、相手は安価かつ必要とされる能力においては水準以上なのだ。これでは数を揃えてしまえばどちらが有利か判らないし、こういった物は印象が重要なのだ。それゆえにアスティカシアでの決闘が評価に大きく影響しているのは当然と言えよう。
「状況をひっくり返すには高度な単騎性能が重要。そこまでは一致して居るわね? なら……場に風を吹かせる役目は他人にやらせれば良いのよ」
「他社のマシンにやらせるということ? 確かに危険を我々が冒さないのは悪くないけれど……」
「必要とされるのはホルダーを獲れるほどの能力と話題性よ?」
現在問題に成って居るのは、決闘がトップを決める戦い以外にもあることだった。
成績は授業もだが決闘での結果も左右される。スポーツの親善試合よりは殺伐としているが、それは兵器産業ゆえに仕方が無い事だと言えよう。そしてトップであるグエル・ジェタークとでは相性さが激し過ぎて戦って居ない為、どうしても繰り返される中堅同士の戦いで印象が決まってしまうのである。
「それには『ガンダム』こそが判り易い例である。しかし、ガンドフォーマットには重大な倫理問題に抵触してしまう。だからこそ他社にやらせるの。もちろん我が社以外の技術でね」
「そんな都合の良い事態がありえるの?」
「はっ!? だからこその朗報ね?」
「ベルメリア以外に魔女が生き残っていたというの? でも、だとしたら……」
ガンドフォーマットを前提にしたモビルスーツ、ガンダム。
それはある種の禁忌であり、超高性能のモビルスーツを作るという意味では判り易い目標であった。パーメット粒子を大量に投入すれば高性能な反応が返ってくると判っており、その影響で死んでしまったり機械に取り込まれて植物人間化してしまうという問題がある。彼女たちは一切気にして居ないが、これを倫理問題としてデリング・レンブラン総裁が禁忌とした以上は躊躇われる問題であった。
「ええ。だからもう少し待つとしましょう。ファラクトを投入するとしてもその後でも悪くない」
「そうね。ガンドフォーマットが起こす風評被害はそいつが受け持ってくれるでしょうし」
「問題がクリアされていなければ適当に使い潰して、クリアされていれば技術協力という訳ね」
「なら最初くらいは協力してあげてもよろしいわね。では全会一致だと思うけれど決を採りましょうか」
こうしてペイル社は秘密裏に、とある企業とガンダムの登場に協力することになったという。
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「感想戦すっぞー」
「それは良いんだけどさ。なんでグラスレーの人が?」
ニーノとオージュローが何時もの様に雑談から会議に入る。
もはやここまで来ると様式美ではないかと思う程のノリだが、オージュローは本気で驚いているしニーノの方は何かメリットでもあんのかなと話を伺っていた。
「やだなあ。オレもイスルギの株主になってね。せっかくだからインサイダーにならない程度に協力することになったんだよ」
「それってどう考えてもインサイダーだよな? イスルギに話通してるんなら別に構わねけどよ」
「構えよ!? というか決闘に問題が出たら……」
そこに居たのはシャディク・ゼネリである。
ニーノは頬杖をついてもうけが出れば良いやと流しているが、オージュローは賭け以外では常識人な部分があるのか飛び上がらんばかりに驚いている。
「ははは。そこは大丈夫。もうオレが挑むことはないからね。少なくとも新型が入って来てからかな。その時はさすがに遠慮しておくよ」
「そうならいいんだけどさあ……いや、勘弁してくれってば」
「まあまあ。その辺はこちらの相談に乗ってくれるかどうかで判断したらどうかな?」
「なかなか黒い事いってくれるじゃん。まあ俺もそれでいいけどな」
朗らかに笑うシャディクと頭を抱えるオージュローはまるでコントの様だ。
周囲も適当に受け流し、スパイでなければ良いかと思う事にした。ニカの提案をオージュローが茶化すが、まあこの辺が妥協案だろう。
「とりあえず議題の件だがよ。ウチの頭を避けられて、あとの成績は頭打ち。今んところは操縦と整備の技術が上がってるだけっつー段階だな」
「リオンはコンセプトのハッキリした機体だからね。腰を据えたら勝率はこんなもんだろう」
数が動員できるリオンはパイロット候補とメカニックの良い修業先だ。
地球寮に所属するメンバーはイザという時に備え、全員がリオンの訓練と整備の手伝いを行っていた。壊れても簡単に取り換えが効くし、機体が余ったおかげでデミトレーナーはチュチュら希望者で占有できている状態である。欠点としてはあまり強くないので、一番強いオウカを避けられたら勝率は普通でしかない。
「シャディクさんならどんな手を打ちますか?」
「そうだなあ。一つは君らがやってる極限的な改造を最後までやり切る事。そしてコンセプトを丁寧に踏襲する事。それらが結実する数カ月後に、どんな戦略に打って出るかを今のうちに固めて行く事かな」
ニカが促すとシャディクは地球寮が打っている方針を否定しなかった。
フル改造されたリオンはそろそろ一番機が仕上がる段階だし、売り物として完成されたリオンはそのままコンセプト通りに使いこなすことが重要だった。そもそもシャディクとしては『今』戦争を起こされたら困るだけなので、長期計画に舵を切らせることは理にかなっているのだ。
「言いたいことは判りますけどー。うちはそこまで余裕ないですよ? 寮費だってギリギリだし」
「いくつか方法はあるけど、楽なのは『他』の生徒を引っ張り込むことかな? 御三家の縁故でも地球でもない連中はいっぱいいるからね。機体の提供やらスタッフの協力するって言えば乗って来ると思うな。例えば母体の強い月出身でもマオ社なんかは寮が無いし、リオンの利用をごり押ししなければ良いんじゃない?」
とはいえやれることには限りがあり、マルタンが悲鳴を上げるのも当然だ。
地球寮はその背景ゆえにスポンサーが弱く援助金が最低限で、当然ながら人数も少ないから学園から支給される補助費も少ない。ダブルパンチで財力面が弱いのだ。イスルギ重工だって沢山支援している一環で地球寮に手を出しているだけだし、宣伝になれば良い程度で協力してくれるので援助資金はそれほど多くないのだ。
「けっ。スペーシアンと一緒におてて繋げってか?」
「そういわないの、チュチュ。人数を割り増しして補助費を増やすって事ですか?」
「それもあるけどメンバーの分母的にね。全体人数が多く成ればパイロットもメカニックも融通が利く。リオンはスケールメリット重視の機体だから最悪、壊れたら改造用のパーツ取りに使うなり工場送りという手もある。……というのは建前で、決闘委員会やイスルギの新役員の一人としては御三家以外の学生にもチャンスを融通したいのさ」
「あー。大人の判断ってやつね」
最初から嫌な顔をしていたチュチュをニカが嗜める。
その後で気にして居ないという営業スマイルでシャディクが説明を始めた。リオンを総合的に売り込む為、そして決闘員会として決闘の回数を増やしつつ質を上げて行くための案であった。確かに回数がこなせなかったり、能力はあっても浮いている人間というモノは多いのだ。そこに数があるリオンを提供するというのは経営判断として間違ってはいない。
「あくまで提案だから話し合ってもらって構わないよ。それと、確認するけど地球寮側でのアテは? 追加人員が多いならこの案は廃案でも問題ないと思うけど」
「リューネさん……。ビアン博士のお嬢さんと数名の方だけですね。リューネさん以外はあんまり……」
シャディクが廃案になる可能性の高い情報を確認するとラトゥーニが情報を確認。
リューネ・ゾルダークがパイロットもメカニックもこなせる人物としてやってくる以外は、パっとしない追加人員らしい。この学校は新入生が新年度に集中するだけで他の時期にも入って来るのだが……それはそれとして真円度ほど追加の学生が多いわけではないのだ。
「んじゃ様子見ってとこか? どうしても必要なら採用くらいで」
「そうね。正直機体が浮いてるのはもったいないしウチの人数が足りてないのは今に始まった事じゃないけど、納得が難しい所でもあるかな」
「好きにすればあ? あーしは認めないけどな!」
どちらかといえばポジティブなニーノとニカが妥協案を出す。
悪くないとは思うが即座に食いつくわけではなく、理由があれば採用するが今のままなら無理に採用する必要はない。だからどうしても人員を増やしたい! という時にのみ利用すると提案したのだ。いずれにせよ、スペーシアン嫌いであるチュチュの機嫌は直滑降であったのだが。
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そして物語は動き出す。ちょっとしたアクシデントが起きて人が宇宙に投げ出される……。
という事故だと本人が自己主張する事件が起きた。よくあるミオリネ嬢脱出事件の一つでしかないのだが。
『生体反応発見。生体反応発見。リューネ、オキロ。リューネ、オキロ』
「あん? いまので誰か投げ出されたのか? 急いで救助に……ああ。もう! そういや正規ルートで検品させてるんだった!」
AIの報告にストレッチしていたリューネ・ゾルダークが起き上がる。
何が発生しているかは大まかに聞いていたが、生体反応発見との報告があったという事は、授業の一環ではなく事故なのだろう。そして事故であるならば、付近の船は救助に向かうのが宇宙航法上の『慣例』というやつであった。慣例ではあるが、無視したらそいつは船乗りから総スカンを食う事になっている。
何のことはない。その慣習と、救助者が求める『寄港先をある程度』は受け入れることになっているという……シンプルかつ強引なエスケープである。
「ちくしょう! ヴァルシオーネさえあれば!」
昭和の特撮に最強ロボを無くして悔しがる悪役が居る。
その台詞を思い出したわけでもないが、リューネは作ってもらったばかりの愛機が手元にないことを残念がった。ヴァルシオーネという機体は、とある問題回避のためにベネリットで倫理検査中なのだ。
そして物語の配役はそのままに、お姫様を救うお婿さんが現れる。
という訳で原作開始時間に。
シャディクが厚顔無恥に地球寮へ入り込んでるのと、シンセーが組んだ相手が違うのが差分です。
成績はオウカ・スレイ・チュチュの順で後は平均的。
能力が判り易いので、対策されたらそれほど優位性が無い感じですね。
(逆にいえばチュチュが出てくるとメタを外して負け越す)