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グエルとの再戦がレース形式に決まった後……。
メンバーの調達に困って居たスレッタたち株式会社ガンダムの元へエラン・ケレスがやって来た。
「協力を申し出にやって来た理由として、先にペイル社の苦境を説明させてもらうよ。今、ウチの商品は評価価格が下がって居てね。決闘しても直いのに無いのに評価が下がり、では戦おうとすれば避けられているんだ」
「そうなんですか? ちょっとソレおかしいですよね」
「……ああ、お生憎様ってやつね」
無表情なエランよりもスレッタの方がオロオロしている。
何かに気付いたらしいミオリネだが、御三家嫌いともあってヒラヒラと手を振って居た。
「ど、どういうことなんです? 評価無しで性能を決めつけられるのっておかしいですよね?」
「この場合は格下の筈の対抗者が、ペイル社の得意分野だけほぼ同じ性能ってのが問題なのよ。性能自体はザヴォートの方が上でも、機動性能が同じで総合性能が低い上に新型のリオンがいるなら、そりゃデータ盗むにしても実績稼ぎにしてもリオンを狙うわよ」
軽中量級で機動戦重視のザヴォートは御三家の製品とあって性能も良い。
しかしリオンは機動戦専用の機体で、飛行性能のみを比べたら同じか向こうの方がやや上なくらいだ。そのくせ新開発だから挑むならリオン、量産性の為に総合性能が低いので地道な勝負をすれば勝ち易いのもリオン戦。この評価で固定されてしまい、ジリジリとペイル社の株価が下落している為、決闘を挑むな活躍させるなと親元から注意されている者は多いだろう。
「だから協力するって? どうせ条件として決闘しろ、それも機動戦でって言うんでしょ? そんなのこっちの不利になるだけなんだから受けないわよ」
「人手はどうするの? 協力者が揃う事はないだろうね。ボクらは同じ運命の呉越同舟さ」
「船の操縦だけなら何とかなる。航法も相手を追い掛けるだけなら……」
ミオリネは即座に断ろうとした。良い条件ではないと判っているからだ。
しかしエランが口にした通しメンバーが足りないのは確かだ。リューネが可能な範囲で協力してくれるとしても、舵取りと航法要員で精一杯、補給やら武器交換をスレッタ一人でやる羽目になるだろう。唯一の勝機はグエルを撃破する事だが……そんな状態でグエルが一対一の勝負を受けてくれるとは思えなかった。
「あんたを信用するとしても、ペイルの連中を信用できないって言ってるの! データを引っこ抜く程度ならまだマシよ! エアリエルに何か仕掛ける程度の事はやるはずよ!」
「確かに否定できねえな。どうせ指定宙域にロボットカメラくらい仕掛けてんだろ? トレーサーがありゃあ後は簡単だ」
「なるほど。それは通りだ、では別のモノを賭けよう」
問題なのはペイル寮で親の言いなりになっている連中だった。
場合によっては工作員を送り込み、トレーサーでカメラを動かし、レースで見せたデータを全て記録。それだけではなく、次の決闘になったときに誘導性の高い攻撃を使うためにトレーサーを使えば相当有利になるだろう。
「別のモノ?」
「ああ。協力を申し出るのはペイル社じゃなくて、ボク。賭けるのは進退じゃなくて、ペイル社の重大な……まあ今となってはそう重要でもないけどね」
エランは自分の胸に手を置いて、視線は周囲に向けた。
そのいずれもが盗聴器の類を仕掛け易い場所であり、ハッキングを掛ければ監視記録を盗み易い場所でもある。
「あんたなんか貰っても意味はないんですけど? 別に面食いじゃないし」
「ふふふ。ボクなんかあげても意味ないよ。何時まで価値が有るか分からないしね。まあ、ボクの命をベットするという意味じゃあ嘘じゃないけど」
「……とりあえずジャミング掛けとくぜ。この話を続けるんだろ?」
エランとミオリネはリューネの問いに頷いた。
ミオリネたちが困っているのは確かだし、普段顔色を変えないエランが自嘲気味に笑ってまで重大情報を漏らそうというのだ。盗聴など許せるはずはないし、十代でなくとも個人のプライバシーを利かせる訳にもいかないだろう。
「それで?」
「ボクはガンダムのパイロットなんだ。ペイル社に魔女の末裔が居てね」
「っ!?」
そう言ってエランは腕まくりをした。
その上は細く、当然ながら筋肉を見せつけたいわけでもない。その生態組織は傷ついており、もし細胞学の権威であるか……そこまでいかずともパーメットの過剰流入による異常を見た者ならば劣化した体を見て取れるだろう。
「お生憎様という意味ではボクの方がザヴォートより酷いかな。完全自立型AIに任せてパーメットの問題なし? はは……この時点でボクの境遇は何だったのか笑ってしまえるくらいだね」
「エランさん……」
ザヴォートとリオンの関係はまだ良い。
性能評価が終わり、やはりザヴォートの方が優秀となれば。大量購入でコスト勝負しないならば身内びいきも合わせてザヴォートにしようという購入者は多いはずだ。しかしエアリエルがパーメットを幾ら流入してもデータストーム問題を全く起こさないのであれば、既存技術の延長戦でしかないペイル社のガンダムと……そのパイロットであるエランはくたびれもうけどころの話では無かった。
「それがペイル社の秘密……」
「正味三割ほどだよ。もっとひどい秘密もあるけれど……まあ話を聞いてもらうための下拵えでしかない。同じ船に乗っても良いという程度の秘密であって、ズブズブの共犯者になってもらえるとも、なりたいとも思えないからね。ペイル社に対する想いと、そこから抜け出したいと言う想いだけ理解してもらえば良いさ」
ミオリネの目が少しだけ優しかった。
会社に良いように扱われて酷い目に合っているという意味でなら、ミオリネ達はエランとよく似ている。傷を舐め合って生きるような性格はしていないが、詳しい話を聞いても良いかと思えるような気分に成ったのは確かだ。
「復讐に力を貸せ、その為に共犯者に成れって事ね?」
「より詳細には境遇からの脱出……まあそれが無理ならどこかでビアン教授の伝手で探して欲しい分野の科学者がいるくらいかな」
「治療か? オヤジなら構わねというと思うぜ」
ミオリネとリューネは話を聞くことにしたようだ。
元より食事を差し入れてくれたエランにスレッタとしても協力したいと思っていた。そもそも困っているのはこちらだし、もっとはやく協力を申し出ても良かったくらいだろう。しかし話を聞いていたスレッタは、治療と聞いて複雑な笑みを浮かべたエランの表情が気になるのだった。
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結局、ペイル寮からの手を借りることになった。
決め手となったのはエランからの紹介で、ひも付きではなかったり、他社に務める事が出来る者を優先的に紹介してもらった事だろう。また決闘委員会のロウジ・チャンテが個人的に協力してくれることになったのも大きい。
「よろしく! エアリエル」
「うわっ……あんたいつもとテンション違うんじゃない?」
ブリオン寮からやって来たロウジは大のメカ・マニアだ。
普段はボーっとしているような印象があるのだが、世界で唯一の完全自立型AIだと聞いてキラキラした目でエアリエルを見上げている。一応は同じ寮であり決闘委員会に所属するセセリア・ドートが若干引いているようだ。
「でも良かったの? 決闘委員会は『公正』ってことになってるんでしょ?」
「うはっ。ばっかみたい。今時そんなことあるわけないじゃない。まあこいつは今回こうなるだろうと見越して、最初から関わって無かったけどね。意地でもこの機体を触るんだとか、ビアン教授大好き―とか言ってんの」
「あー。偶にいるよな」
どうやらセセリアは協力しないようだが、ロウジに情報を止められていた様だ。
もし知って居たらロウジが協力する時に、同じブリオン寮だから話すかもしれないと予防していたらしい。まあセセリアは何処にも協力する気が無いので、残ったシャディクが今回の立ち合い人となり、得た情報を各方面に売り払うだろうことは、予想していても黙っているのだが。
「とりあえず自動制御のロボットアームを何種類か用意したんだ。全部が全部じゃないけど、基本作業はコレで短縮できる。作業台自体を監視するプログラムも付けているから、その辺りはエアリエルに権限を渡しておくね」
「ここまで笑顔でやってるとむしろ信用できそうな気がしてくるわ……」
「そこは同感。でも、あたしはこれ以上協力する気はないから、後は好きにしてれば?」
時に傍若無人過ぎると、一周回って信用が置けるから不思議なものだ。
ミオリネはひとまずロウジとセセリアを今回ばかりは信用することにした様である。もっとも人手を借りたとしてもやる事が多過ぎるので、ようやく勝負が挑めるかという程度でしかないのだが。
「ええとミオネリさん。時々この船に戻って補給。後は情報を集めながらコースを回るという事でよろしいんでしょうか?」
「そうね。ショートカットできる場所は相手にもバレバレだから、そこを上手く使う必要はあるだろうけど。後はギミックを拾う時に、何処まで頼るって事かしらね」
基本的なコースは既に発表され、ポイントを回って点数を稼いでいく。
時間でも点数になるが、ショートカットし過ぎるとマイナスだ。また計測は幅を広くとる方が正確になるし、詳細なポイントが途中まで分からない以上、マイナスになるほど無理してショートカットするほど時間への点数配分は多くはない。もちろん直接戦闘での一発逆転もあるので、どこで仕掛けるかは重要だろう。
「ギミック……ですか?」
「そっ。大型ブースターにサポートの飛行システム。燃料にEパックに補助武器その他もろもろ。そういった物を回収して、勝負に持ち込むか否かも重要なファクターね。機雷なんかは拾ってもそのままじゃただのデットウェイトだけど、アステロイドで戦うつもりなら悪くはないわ」
「船に持ち帰っても良いしな。そういう意味じゃ人手はマジで助かるよ」
レースはデータを貰いながら詳細なポイントを回っていく。
だがその中には必要だから回っていく以外に、コースの途中に設けられたギミック供給ポイントがある。鉄球がブースターで飛んで行くようなトンデモな武器もあれば、メガ・ビームライフルやシールドなどもあるという。途中で拾ったそれらを活かすも捨てるもメンバーやAIの判断次第という事だろう。
という訳でスレッタ側の準備とレースの大雑把な説明です。
ついでにペイル社の株が下がり、エラン四号の勝ちがストップ安になった件。
なお、この話は次回でレース終了。
次にペイルとの話が出て、その辺で第一部の話が終わる感じになります。
その後に今回みたいな、原作に無い話をでっちあげるかは微妙な所。