……オレ、ミズキじゃね?   作:抜け忍

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七班

 

 

 

 

 ナルトが卒業試験に合格したという話は、アカデミー中で話題の種となっていた。オレことミズキが教えたのが理由で、万年落ちこぼれだったナルトが、苦手だった分身の術を使えるようになったというのが理由らしい。

 そして、そのオレの話を聞き付けたのか、教室ではオレの話で持ち切りだったらしい。万年落ちこぼれをたった一つのアドバイスで卒業まで導いたエリート教師忍者だとかって……。

 

 いや、褒めすぎだろ。適当に言っただけなのに。

 

 という言い訳じみた理由を言うわけにもいかず、なされるがまま子供たちにチヤホヤされているのがオレである。

 

「せんせー! ぼくにも教えてー!!」

「ミズキせんせ!! わたしも!!」

 

「こら! いくらでも教えてあげるから、今は静かにしなさい! 授業中です!」

「「はーい!!」」

 

 これである。聞き分けは良いのに、こうして教えてもらおうとする生徒達が後を絶たない。オレも教師をやるより忍の技を教えてもらいたいんだけど……。

 

 でも、昨日帰ってから自分の書類見つけてみたら28歳で、イルカ先生の23歳と5歳差なんだよな。ギリギリ30歳行かないぐらいの年齢でしかも中忍なのに、誰かに教えてもらうのは流石に先生としてダメだな……。

 

 いや、オレは先生じゃねーよ。教鞭を執りながら、オレは心の中で自分に突っ込んだ。今の格好が一番先生らしいのに自分で気付くまで、少し時間がかかったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、オレはイルカ先生と一緒にアカデミーの空き教室へと歩を進めていた。

 各合格者の分隊への割り当てと、それからの流れ、下忍としての心構え、そして任務を受ける事が何たるかを説明する。まあオレ任務受けたこと無いんだけど。

 

「しかし、ナルトが合格したおかげで賑やかになりますね」

「少し寂しくもありますがね。ですが、教え子の成長が我々にとっては一番嬉しい事ですから」

 

 うーん本当によくできた人格者だ。そうこう話していると、教室に近付いてきているのが子ども特有の喧騒でわかった。

 

「着きましたね。じゃあ早速始めていきましょうか」

「ええ」

 

 名簿を手に、イルカ先生が教室へ入っていく。オレもそこに続いた。

 

 ナルトがボコボコに殴られたあとのようだ。隣に座っているのは春野サクラと、その更に隣にうちはサスケが座っている。こう見るとホントこの子達美少女だし美少年だし顔整ってるわ。オレの子どもの時とか鼻水垂らして鬼ごっこしてたけどね。忍って子どもの頃から凄い。

 

「あ! ミズキ先生!!」

「ふふ、静かにね、ナルト君」

 

 知ってる顔を見るだけで嬉しくなるのを抑え、ナルトに静かにするよう伝え、ナルトも素直に言うことに従ってくれる。やはりあの時あの上忍を説得してよかった。イルカ先生にも頭が上がらない。

 

「さて!」

 

 イルカ先生が話し始めた。

 

「君たちは今日から、めでたく一人前の忍となったわけだが、しかしそれ以前に君たちは新米の下忍! 本当に大変なのは、ここからだ!」

 

 うんうんと相槌を打つ。

 

「えー、これから君たちは里からの任務が与えられる訳だが、今後は三人一組の上に、隊長に上忍が着いてフォーマンセル(四人一組)の班を作り、その上忍の指導の下、任務をこなしていくことになる。そして───班の力が均等になるよう、振り分けはこちらで済ませた!!」

 

「えーーーーーーっ!!!」

 

 子供たちからのブーイングが凄い。だが本当に好きな人同士とか強い人同士で組まれると、班別に戦力が別れてしまって依頼が来る班、来ない班で別れてしまう。それは間違いなく平等ではない。それはいけないことだった。

 

「────第六班は以上だ! じゃ、次。七班。春野サクラ! うずまきナルト!」

 

 ナルトが明らかに両手を突き上げて喜び、サクラがあからさまに肩を落としてしょんぼりしている。

 

「──うちはサスケ!!」

 

 そして今度は反対で、ナルトがしょぼくれ、サクラが喜んでいる。ナルトが立ち上がってイルカ先生に直談判する。

 

「ま、待ってくれってばよイルカ先生ェ! よりによって()()なオレが!! なんでこんな奴と一緒の班になんなきゃならねーんだってばよ!!」

 

 イルカ先生はふぅ、とため息をつく。仕方ない事だが、説明しなきゃ納得してくれないだろうから、彼は心を鬼にするようだ。

 

「ナルト! サスケは今期卒業生27名の中で、ダントツの一番! 対するお前はダントツのドベ!! いいか? 班の力を均一化すると、自然にこーなんだよ」

 

 先生の正論にむぐぐと口を噤むナルトに、二つ隣のサスケが追い討ちをかける。

 

「せいぜい足を引っ張ってくれるなよ。 ……ドベ!

「ムッキィーー!! なんだとサスケェー!!!」

「いい加減にしなさいよ、ナルト!!!」

 

 これが生で見られた感動よりも、この班はこの先上手くやっていけるかの心配の方がオレの中で上回っていた。

 自分で思うよりもずっと、オレは先生なのかもしれない。それともこれは、ミズキとしてのオレの心なのか。その答えはまだわからなかった。

 

「じゃ、午後から上忍の先生達の紹介があるから。それまで解散!」

 

 イルカ先生のその言葉で、生徒達が疎らに散っていく。スリーマンセルを組んでいる者達が集まって抜けていき、バラバラだったのはナルト達を含め二班だけだった。

 

 ……本当に大丈夫かなぁ。後でナルトを訪ねてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 班の振り分けが終わり、時計は午前11時半を指している。そろそろ昼飯でも取る時間だが、ナルトは既に食べ終えたのか何やらコソコソしている。

 これは多分、アレだな。サスケに化けようとしてるな。気取られないように後ろからこっそりと近付き、声を掛けた。

 

「やあ、ナルト君」

「どぉわっひゃぁぁぁっ!!? ……ミ、ミズキ先生!? ど、どうしたんだってばよ……?」

 

 冷や汗が垂れている。誤魔化すのが下手っぴだなぁ、この子は。それがまた可愛らしくもあるんだけど。教え子ってこんなに可愛いものだったのか。オレ教職員に就職してたら良かったかもしれへんな……。

 じゃなくて。ナルトを引き止めて、何をしようとしてたか尋ねる。

 

「どうしたんだい、コソコソして。もしかして、誰かとかくれんぼでもしてるのかい?」

「かくれんぼって……もうオレは子どもじゃねーってばよ、ミズキ先生!」

「フフッ、ハハハ、悪い悪い。そんなに怒るなって。 ……そうだ、サスケ君とサクラ君、どうだい? 君の下忍としての初めての仲間だよ」

 

 ナルトは二人の名前を……というか、サスケのだが。それを聞くや否や、嫌そうな顔をする。

 

「何でオレってば、サスケなんかと組まされなきゃなんねーんだってばよ? オレって凄いのに。ミズキ先生も見たもんね?」

「うん。あんな影分身の数は見たことがなかった。君は凄い忍になれるよ。ボクやイルカ先生だけじゃない。この里の上忍誰よりも凄い忍にね」

 

 まあ本当はあれより凄い影分身見たことあるけど。あくまで漫画の中だしね。本当に目にしたのはあれが初めてって事で。オレの肯定の言葉を聞いたナルトは、調子が戻ってきたのか元気に話し出す。

 

「でしょ! でしょ! やっぱしサイコーの忍者になれるんだよなーオレってばさ!!」

「うん、なれるとも。でも、その前に大切なことがある。聞いてくれるかい?」

「もちろんだってばよ!」

 

 ナルトは元気よく返事する。良い返事だが、今からする話は少年には少し酷かもしれない。だが今後のナルトの為にも聞いておいてもらいたい話だった。九尾の存在を知らないという事へ対する釣り合いをどこかで取らなければ、という判断である。

 

「大切な事っていうのは、仲間の話だね。ナルト君が敵に捕まった時。助けてくれるのは誰? もちろんそこには里の忍者はいない。君の第七班がいるだけだ。さあ誰だろう」

「それは! ……第七班だってばよ?」

「そうだね。そこにいる仲間は第七班しかいない。じゃあ逆に、第七班の皆が捕まった時、誰が彼らを助けられる?」

 

 ナルトは喉を鳴らす。

 

「……オレだけだってばよ」

「正解だ。やっぱり君は良い忍者になれるよ、ナルト君。必要なのはチームなんだ。個人で優れていたって、守ってくれる人がいなきゃいつかは負けてしまうんだよ」

 

 ここまで言えばナルトもわかってくれるはずだ。

 

「でもさ、でもさ。やっぱしオレってばドベなの?」

 

 そういうナルトのこちらを覗くように見る目は、忍者になりたての12歳の少年らしく、大人の答えを待つ子どものようだった。

 

「何度も言うけれど、君に必要なのはチームだ。それ以外は本当に良い素質を持ってる。チャクラ量とか、火影への熱意とかね。書類上はドベかもしれないけど、君が内側に秘めるポテンシャルは、どの忍にも引けを取らない。だから仲間がピンチの時には仲間を助けてあげること。そうすれば君がピンチの時、仲間も助けてくれる」

 

 じーん、と心に沁みているような、感動しているような。そんな感じを出しながらナルトは勢いよく立ち上がった。

 

「わかったってばよ、ミズキ先生ェ……! オレ、仲間を守れるぐらい強くなるってばよ!!」

 

 ……わかってるのかなぁ。と、あまりわかっていなさそうなナルトにニッコリと笑って頭に手を置き、撫でる。

 

「わわっ……先生、恥ずかしいってばよ…」

「おっと、悪いね……なんだか弟がいるみたいで。まあ16歳差だけど……ボクに弟がいたらこんな感じかな、と思ってね」

「おとうと……」

 

 ナルトはぽつりと呟く。オレはあまり引き止めては悪いかと手を離し、立ち上がる。

 

「時間を取らせてしまったね。 ……ナルト君。君にはいつか話さなければならない事がある。でもそれは、君が強くなってからだ。それまでは一生懸命、任務に励んで欲しい。 ……約束できるかい? チームを大切にするって」

 

 ナルトはしばらく俯いたあと、しっかりとこちらの目を見据えて言った。

 

「……もちろんだってばよ、先生!! オレ、スゴイ忍者になって仲間も里も、ミズキ先生も守るってばよ!!」

「いい答えだ」

 

 ナルトが九尾の保有者(キャリアー)、つまり人柱力である事は、まだ本人は知らない。伝えるはずのオレが伝えていないのだから当然だが、それでも本人の力だけではどうしようもない程の窮地を、九尾のチャクラに頼って脱さねばならない時が来る。その時はオレが伝えるか、あるいは第七班班長のカカシ先生に任せる事にしよう。

 

 ナルトは子どもとは思えない決意を秘め、第七班の集合場所である教室へと戻っていった。

 

 その後ろ姿を、本来のミズキは拝むことが出来なかったのだと思うと、余計なことをしたな原作ミズキって思わざるを得なかった。これが見られないの損すぎでしょ。

 

 

 

 

 

 

「……ナルト。珍しいわね、アンタがじっとしてるなんて」

「ニシシ、オレってばスゴイ忍になるもんね! だからこのぐらいなら余裕で待つのだ!」

 

 サクラはナルトと話す時、何かアホなものを見る目で見ている。いや、正確には()()。今のナルトは、つい数刻前に顔を合わせた()()ナルトとは思えない落ち着きぶりを見せていた。

 

「ねぇ、ナルト、この時間にいったい何が──」

 

 サクラが聞こうとしたそのタイミングで、教室のドアが開く。現れたのは上忍のベストを着用し、木の葉の額当てを斜めに下げて左目を隠している。跳ね上がった白髪に、見えている右目は三人を見据えている。

 

「ん、遅れちゃって悪いね」

「遅すぎてもうみんな行っちゃったってばよ!!」

「あ………この人が、私達の班長の……」

 

「ハハハ、悪いね。ま! でも最近は落ち着きの無い下忍達もいるし、そういう点ではお前らの事、嫌いじゃない」

 

 白髪の上忍は着いてくるよう全員に促してから三人を連れ出した。廊下の奥でミズキが見ているのを見逃さなかった上忍は、ミズキとアイコンタクトを取り、面倒そうに頭を掻いてため息を吐きながら、アカデミーを出ていった。

 

 

 

 

 

「んじゃ!軽く自己紹介でもしてくれ。好きな物、嫌いな物……将来の夢とか趣味とか、ま! そんなとこだ」

「あのさ!あのさ! それより先に先生が自分のこと紹介してくれよ!」

「そうね……見た目ちょっと怪しいし」

 

 上忍の指示に、ナルトが食いついた。それに少し便乗するようにサクラが言う。サスケはあまり興味がないとばかりに顔を背ける。しかし耳だけはしっかりと上忍へと傾けているようだ。

 

「オレか……オレは『はたけカカシ』って名前だ。好き嫌いをお前らに教える気は無い! 将来の夢……って言ってもなぁ……」

 

 首を傾げて自分の夢に思いを馳せているのだろうか。しかしすぐには思い当たらなかったらしく、そのまま続けた。

 

「ま、趣味は色々だ。次はお前らの番だぞ。右から順番に言っていけ」

 

 そう言ってカカシが一番右にいたナルトを指差す。サクラはナルトと一緒に、わかったのは結局名前だけじゃ……など細々と言っていたが、ナルトが指名されて口を閉じ、ナルトは自分の自己紹介を始めた。

 

「オレ? オレさ、オレさ!名前はうずまきナルト!好きなものはカップラーメンて、もっと好きなもんはイルカ先生に奢ってもらった一楽のラーメン!! ……嫌いなものはカップ麺にお湯入れてから三分間」

(こいつラーメンのことばっかだな)

 

 カカシの変なものを見るような視線がナルトを刺すが、当の本人は気付いてないようで、将来の夢を口に出す。額当てを両手の指で指して、高らかに宣言した。

 

「将来の夢は、火影を()()!! ンでもって、里の全員にオレの事を認めさせてやる!!」

 

 ナルトが宣言した後、カカシが少しナルトを見ていたがすぐに目を細める。そのままサクラへと視線を移す。

 

「次、女の子」

「春野サクラです。 好きなものは……ってゆーかぁ、好きな人は……。将来の夢も言っちゃおうかなぁ………キャーーーッ!!」

 

 サクラはチラチラとその目線をサスケに移していたが、黄色い悲鳴を出して悶える。サクラがサスケに恋をしているのは、もはや誰の目から見ても明白だった。

 

「嫌いなものはわがままな人です!」

 

 ナルトはサクラに嫌いと言われずに済んだことにほっとしている様子だった。最後に全員の視線がサスケへと移ると、サスケはぽつぽつと話し始めた。

 

「……名は、うちはサスケ。嫌いなものならたくさんあるが、好きなものは別段、無い。夢なんてものはないが……野望はある!」

 

 サスケがカカシをじっと睨みつける。カカシも同じように視線を合わせる。サクラとナルトの二人はその両名を交互に見るしかする事がなかった。

 

「一族の復興と、ある男を必ず……()()ことだ」

 

 ナルトが生唾を呑み込み、サクラがぼうっとサスケを見つめる。カカシは表情を唯一伺える要素である、右の目の眉を少し歪める。何か思うところがあったのだろう。左目のあるところの額当てをトントンと指で叩くと、ま! と切り出して空気を両断した。

 

「自己紹介はここまでだ。今日は解散、明日から任務やるぞ」

 

 ナルトがその『任務』の二文字に昂っていく。テンションが上がって敬礼を取る。明らかにワクワクしていた。

 

「はっ!どんな任務でありますかァ!?」

 

「『サバイバル演習』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「サバイバル演習だ」

 

 カカシ先生がそう言うシーンを、オレは遠くからバッチリ見ていた。午後からはもう授業がないのでじっくりと見ることが出来る。もちろんカカシ先生にはバレているが、少し書店に置いてある18禁のとある新作を握らせたところ、邪魔をしないという条件付きで特別に許可を得たというわけである。

 オレは原作にあったシーンを見る事が出来てとても感動していた。ナルトら第七班結成! これを生きて現実で見ることができるだなんて、夢のようだった。

 

「演習ゥ?」

「先生、演習なんてアカデミーで散々やったわよ」

 

 ナルトとサクラがカカシ先生に聞いている。そう、確かに演習訓練ならアカデミーでも教える。しかしそれは、あくまで他生徒が多くいる状況で先生という保険も付いての事だ。

 下忍となってからのサバイバル演習は、条件も様々であるがアカデミーでの演習の比ではない。

 

「じゃあさ、じゃあさ。どんな演習なんだってばよ?」

「……クックックックククッ……」

 

 ナルトが聞いてすぐ、カカシ先生は含みのある笑いを捻り出す。その様子にナルト、サクラはおろかサスケでさえ少したじろぐ程だった。確かにあの人が急に悪役みたいな笑い方したらオレも不気味すぎて引くかもしれない。

 

「何がおかしいのよ先生?」

「クク……いや、まぁな! ……ただ、オレがこれ言ったらお前らみんな絶対()()から」

「は? ……引くゥ?」

 

 カカシ先生の言葉にナルトが疑問をぶつける。カカシ先生は顔を俯かせ、視線だけを上げて三人のほうを向き、わざと影を作り出してから話し始めた。

 

「卒業生27名中、下忍として認められる者はわずか9()()! 残った18名は再びアカデミーに戻される。……こいつは脱落率66以上パーセントの、()()()()()だ!」

 

 せっかくだからと言わんばかりに貯めて放った脱落率66パーセント以上という言葉と超難関試験という単語が全員の心を折りにいったらしく、それで折れこそしないもののかなりドン引きしている。対するカカシ先生は手を叩いて乾いた笑いを見せた。

 

「アハハ、ほら引いた」

 

 いち早く立ち直ったナルトが、カカシ先生に反撃する。

 

「ンなバカな! じゃーあの試験は一体なんだったんだってばよ!?」

「ん!? アレはな、下忍になれる可能性のある奴を選抜するだけ! ま、とにかく明日は忍道具一式、持ってこい。それと明日は朝食うな! 吐くぞ」

 

 ナルトとサスケは震え、サクラはあからさまにサスケと離れそうなピンチに頭を抱えている。

 

「ま! 詳しい事はプリントに書いといたから。言った事忘れるなよ。 明日は遅れて来ないよーに!」

 

 カカシ先生は三人にプリントを手渡す。サクラは大事に読み込み、ナルトは一通り読んだあと(読めてるからわからない。斜め読みなんかもしていた)すぐにポケットにしまい込んで、サスケはそれをクシャクシャに握りしめた。

 

 カカシ先生は歩いてその場を去り、ナルトやサクラ、サスケらもそれぞれの帰路に着いて、七班は一度解散した。そしてその様子を遠巻きに見ていたオレの後ろに─────。

 

 

 

「どーも、ミズキ先生」

「カカシさん……ありがとうございます。ボク、ナルトに大層な事言った手前、心配になってしまいまして」

 

 ──カカシ先生が立っていた。

 

「まー、教育者ってのはそういうもんじゃないんですか?」

「そういうものなのでしょうか……」

 

 自分でもよくわかっていない。先生始めたの2日前なんだが。それでもミズキ先生としての経験が補佐してくれてるおかげでどうにか教えられている感じはあるが……正直、辞めて修行に専念したいという気持ちの方が大きい。

 

 それに、 オレはまだ自分の事を知らなさすぎる。『ミズキ』という皮を被っただけの一般人に過ぎない。

 

「カカシさん。ボク……イヤ、()()は強くなりたいんです。アカデミーの教師も、本日付で引退しようかと考えていまして。……イルカ先生には悪いですがね」

「ふうん……ま、いーんじゃないです? あなたが望むんなら。ね、そこの()()()

 

「え……ええ。 ……え? ……まさか……!?」

 

 カカシ先生の含みのある言い方に、思わずたじろぐ。そしてカカシ先生には写輪眼があることを思い出し、オレは自分の胸…というか、見透かされた気がするはらわたを守るように手で庇い、半歩下がる。

 

「い、いつから気付いてました……?」

「んー、出会った時からかな。ま! その時はあまりにも自然すぎて目を疑ったけどね。普通身体エネルギーと精神エネルギーの量はお互い高められていく、それは知ってますよね」

 

「ええ、もちろん。しかし、時折強い精神を持って産まれてくる子がいる、ですよね」

「最初はその線を疑ったんですけどねー。 ……どーにも違和感が拭えなかったんですよ。ま、ビンゴでしたね」

 

 オレはカカシ先生の言葉の先を待っていた。ほとんど予想は着くが、それでも言葉として聞くまでは信じていたくなかった。それは、なぜなら自分という存在が否定されそうだからで。

 

「どっちがどっちなんでしょーねェ……ミズキ先生? ……じゃ、オレも行きます。イチャパラの件はどーも」

 

 カカシ先生はオレのことを気遣ってか直接的には言わないでくれていた。しかしその言葉は、もう答えを知っているも同然だった。そしてそれは、オレの嫌な予感を的中させたことも。

 

 カカシ先生が去っていくのに対して、オレの表情は暗かった。

 

 彼は写輪眼を持っている。写輪眼とはチャクラの動きや質、それら全てを完璧に見切る瞳力がある。加えてどんな素早い印だろうと正確に見抜き、チャクラの流れからどんな性質の術を繰り出すかまで、その判断が容易なのだから。

 

 そしてそんな写輪眼を持っているカカシ先生からの『どっちがどっち』という発言。もう間違いはなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだろう。それはオレの精神エネルギーと、もうひとつは間違いなく『ミズキの精神エネルギー』だろう。

 

 で、どっちがどっちかわからないとカカシ先生は言っていた。元々似た精神エネルギーを持つ人間同士だから、何かの折にミズキの体の中にオレの精神が入り込んだ、ということなのか?

 

 ……しかし、それ以上考えても答えは出そうになかった。多分これを知っているのはカカシ先生だけで、他に知られる可能性があるとすればチャクラの質を見分けられそうな熟達の感知タイプか、あるいは写輪眼を開眼する予定の者……つまり、サスケぐらいだろう。後は抜け忍のうちはイタチ。

 この時に出会う確率はそこまで高くないのだろうが、警戒するに越したことはない。多分普通に戦うとなると瞬殺だろうが。

 

 考えを巡らせるだけじゃ、始まらない。今は午後2時だ。まだイルカ先生もアカデミーで業務をこなしている頃合だろう。……辞める、ということを伝えなければ。

 それが少し、心苦しかった。

 

 

 





 ミズキ(本人)
 多分精神体のミズキとして閉じ込められている。しかし何かの拍子にミズキ本人としてと片鱗らしきものを見せるよう。例えば、教員としてものを教えたり、印を結べたり、その際にチャクラを練れたりなど。

 ミズキ(憑依)
 本物のミズキの精神エネルギーと酷似した精神を持っていたためか、ミズキの体に憑依している。忍者の体に憑依したとはいえ、忍のスキルは皆無だが、身体能力はミズキのものを引き継いでいる。

 ナルト
 無事にアカデミーを卒業。うずまきナルト、春野サクラ、うちはサスケの三名を、上忍はたけカカシが班長を務める形で纏めあげた。最初のサバイバル演習が、第七班としての最初の戦いである。

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