……オレ、ミズキじゃね? 作:抜け忍
オレはミズキだ。
……今はもう、名実共にそうだと言える。本物のミズキの精神エネルギーは、オレの精神エネルギーと一体化する事で、オレに『経験』という形で影響をもたらした。
その最もわかりやすい例として、印を素早く結べた事が何よりも挙げるべきものだった。
忍としてのオレは、まだ始まって三日目などという下忍レベルのそれだ。なんならナルトやサスケ、サクラらの同期みたいなレベルまである。ただ、それはオレが『オレ単体』でこの忍界に放り出されていたらの話だ。今のオレは違う。ミズキの経験がある。
「──ミズキさん。やっぱりここでしたか」
「……あぁ、イルカ先生。ナルト君とは話しました? 少し見ない間に、良い目になっていましたよ」
公園のベンチで座って団子を食べていたオレを見つけて、イルカ先生が隣に座ってくる。その手には同じ店で買ったのだろう団子が握られていた。オレは昼食を終えたナルトと話したあと変わった目を見てそう判断し、イルカ先生に話す。まだまだはしゃいでいる部分はあったが、チームを意識するという観点は、初任務の前から持っていて損は無い。
「それは───ははっ、アイツも忍らしくなった、ってことですかねぇ。先生としちゃ嬉しい限りです」
イルカ先生は晴れた空を見ながら団子を頬張る。まだ会っていなかったか。だがオレからナルトの様子を聞いて、その光景を想像したらしい。団子を飲み込むその口元は笑みを湛えていた。
「……そういえば、イルカ先生。アカデミーは放っておいて大丈夫なんです?」
時間的にはまだ昼過ぎ。昼食を摂った後の次の授業がある頃合いだったと記憶している。しかしオレの懸念を、イルカ先生は笑う。嘲笑うような感じでは無い、爽やかな笑いだった。
「ミズキさん、今日は卒業試験翌日ですよ。オレのクラスに次期新入生が来るまで、業務は午前で終わりです」
「あっ! そうでしたね……ハハ」
どうやらナルト含め生徒が全員卒業したので、生徒が全員いなくなったから次の生徒の受け入れ準備などのみの業務で終わり、それは午前で終了するのだとか。これはオレではなく
オレとイルカ先生はその後、ほとんどの時間を何も話さずに過ごした。決して話す話題が無いとか、あるいは話したくなくなったとかではない。公園に幼い子ども達が遊びに来たのだ。滑り台やブランコのような遊具で無邪気に遊んでいるのを見ていると、守らなければという庇護欲に駆られる。それはイルカ先生も同じらしかった。
「そういえばミズキさんはこれから任務なんです?」
イルカ先生がベンチから降りて公園を出る前に、オレにそう聞いてきた。やはり忍なだけあって、鋭い。
「ええ、まあ。……Bランクの任務ですね」
───オレは火影様や役員らのいる部屋で依頼を受注していた。依頼主は火の国の警
問題はその窃盗団の構成員にある。真偽の程は不明だが、忍術らしきものを使う者がいたという報告があった。つまり非正規の忍……どこかの隠れ里から抜け出した『抜け忍』である可能性が高いという話だ。
「──久しぶりの任務で抜け忍の処理を兼ねるとは、少しヘビーかもしれんぞ?」
「問題ありません、火影様。ボクも鈍った身体を動かしたいと考えていたところですから」
初めての交戦相手が忍であるかもしれないというのは少しおっかなくもあるが、失敗した時の保険はある。むしろ自分の実力を図る良い機会だった。
「まあ、お前の任務経験からして、そろそろ上忍昇格の打診も行おうかとも考えておったし、これを機に検討してみるかのォ」
おお、上忍になれるのか! ……と、喜ぶのは早い。むしろやめて欲しい。みんなからしたらオレは上忍に相応しいかもしれないミズキだが、中身は完全に対忍者戦初のミズキ(偽)である。まだ本物を名乗るには経験値が不足にすぎる。
……しかし、火影様が斡旋した依頼を無下にするのもはばかられて、オレは依頼を受けざるを得ないのだった。
そうして任務開始時刻である午後11時を待つ為の暇つぶしの一環で公園で団子を貪っていたところ、昼過ぎにイルカ先生がやってきたというところである。
Bランク任務の内容自体は、そこまで恐ろしいものでは無い。ベテランの上忍なら余裕、中忍でも小隊を組んで頑張れば対応可能というレベルのものだからだ。しかし、それはあくまで忍に限っての話である。オレは元々一般人だ。
一般人が忍の体と技術を得たとして、その他の要素をカバーできるかと言われたら、多分無理だろう。判断力や精神力、瞬発力なんかはオレが一般人の時のままのはずだ。
今の実力を測りたい。その為にも、イルカ先生にダメ元で頼んでみるか……。
「イルカ先生、頼みがあります」
「ん……? どうしました? 困った事でも……」
「ボク、いや……オレと、組み手をしていただきたい」
ボク、ではなく『オレ』としての本音をぶつける。
「オレは依頼を数こそこなしていますが、実の所自分の実力を測りそびれています。それ以上に、教師生活でチャクラを練ったり術を発動させたりはしていましたが、本気の組み手をやったことは終ぞありませんでした。オレは、自分の本当の実力を……
イルカ先生はオレのその本音を聞いて、その後にオレの瞳をじっと見つめた。オレはイルカ先生の視線から一片たりとも目を逸らさなかった。それが今オレに出来る誠実さの証であったろうから。
やがてイルカ先生が折れたように目を閉じると、こくりと頷いた。それは間違いなく受諾、肯定であった。
「……いいでしょう。ただし! ミズキさんには任務が控えているんですから体術のみの組み手です。それで良ければ相手しましょう」
オレは嬉しくて、イルカ先生の手を掴んだ。
「ありがとうございます! オレ、また仕事の手伝いに行きますから!」
「おっと! …へへ、その言葉だけで嬉しいです。 ──場所はどうします?」
それはもう、忍の顔だった。場所の指定は特にない。腕を試せるならどこでも良い旨を伝えると、イルカ先生は立ち上がったオレに、組手開始の合図をする。
「では───」
ガッ。
オレとイルカ先生の拳が音を立てて当たる。そして離れた。後ろに跳躍し、距離を取る。動きは問題なし……。
「───始めッ!」
そこから先手を取ったのはイルカ先生だった。足にチャクラを集約させ、それを地面を蹴る時に一挙に解き放ち、瞬発力を得る。加速したイルカ先生の掌底が、オレの頬を掠った。
……速い。が、見切れる。これも本物のミズキの経験のおかげか。イルカ先生の突き出した右腕に掴みかかり、体を捻って関節を極めようとするが、イルカ先生はそれを更に前転して回避し、オレの背をかかと落としの要領で蹴りつける。
痛みを耐えながらもオレは手を離してしまう。そのまま距離を取られると厄介だと直感し、二回、三回と両拳による連撃をイルカ先生に狙って放つ。牽制の一撃目、本命の二撃目は避けられたものの、保険の三撃目はみぞおちに直撃する。ベストを衝撃で貫くような感覚と共に、イルカ先生が空気を吐いた。
イルカ先生がそれ以上の追撃を防ごうと、足を軸に体を回転させた。そのまま利き足をオレの胴体に当ててくる。対するオレは四撃目を当てようと欲張ってしまい、体勢を低くして構えていたイルカ先生の体術に対して、中途半端にしか反応する事が出来なかった。腕を組んで防ごうとするが、それは不完全だった。
「木ノ葉旋風!」
「ぐぉ!」
回転によって鋭さを増した回し蹴りが、いくらガードしたとはいえその上から体内に響くダメージと衝撃を以て、オレを少し吹き飛ばす。
だが、それだけで負けを認める訳には行かない。見切れるのも、思い通りに動けるのもわかった。反撃の時間はこれからだ。
吹き飛んでいたオレは、地面に足をつける直前に足の裏へチャクラを溜め込み、イルカ先生がやったように地面を蹴って急加速する。それはイルカ先生も見切っているようで、同じく飛び上がり、互いの拳が交差する。
オレとイルカ先生双方の頬を拳が掠めたあと、そのまま足をつけて止まり、振り返る直前に裏拳を繰り出す。
木ノ葉旋風よりは威力が低いものの、回転を伴った拳による殴打は、クリーンヒットすれば意識を削り取ることも容易い。
だが、振り返り際に攻撃して少しでもダメージをと考えていたのは、イルカ先生も同じだったようだ。オレは裏拳を、イルカ先生は下段回し蹴りを。
お互いの攻撃が命中する。オレは左足に強い衝撃を受け地面から足が離れて転倒し、対するイルカ先生はオレの裏拳が顎を直撃し、気絶こそしないが意識をすり減らしたかのように膝を地に着いていた。
お互いダメージが大きい。オレは受け身を取れずに頭を強打し、イルカ先生はオレの裏拳を受けて立ち上がるのがやっとというところだ。
「ぐほっ……ぅ、いってて……」
「うぅ、ぐ……」
痛みや吐き気に意識を取られ、お互い同じ量のダメージを受けている。だが、任務や明日の仕事に支障を来すほどではない。それに、ミズキの肉体が自分の体としてどのぐらい馴染んでいるのかもわかった。
「こ、このぐらいで止めておきましょうか……」
「そうですね……げほっ!」
とりあえず停戦、というか中止する。オレもイルカ先生も表面的にはめちゃくちゃ痛いはずなのに、忍の身体からしてみれば、あくまでも身体を痛めた程度のダメージなのだろう事が、今こうしている間にも少しずつ楽になってきていることから伺える。
「……っつぅ〜……」
起き上がりつつ頭を抑える。バンダナをしていなかったからか、痛みがモロに来た。忍はこれよりずっと痛い思いしてんのか……。
「……いやぁ、イルカ先生さすがですね……」
「いえ、ミズキさんこそ……」
強くなった(というか元々強かったっぽいミズキの体の)オレとこうまで張り合えるとは……やるなイルカ! ……先生。
なんかNARUTO読んでた時のナルトの先生呼びと、教師だった時の呼び方もあって、やっぱりイルカ先生って呼んじゃうんだよなぁ。
それはともかく。どれだけ動けるか分かったので、あとは夜まで待つばかりになった。立ち上がって体がもうあまり痛まないのを確認する。
「じゃあ、ボクはこれで。ありがとうございます、わざわざ付き合って下さって」
「いえいえ、オレも久々に体を動かせましたから。任務、頑張ってくださいね」
オレはイルカ先生に礼をし、イルカ先生も礼を返したのを見て、自宅へと戻って行った。気付いたのだが、ベンチの上に食いかけの団子を残してきてしまっていた。
オレは考えていた。ミズキさんは上忍にも並ぶ実力を持っているはず。オレと
もちろんミズキさんは中忍だ。だがオレとは文字通り重ねてきた依頼の数が違う。同じ中忍でもそこにはかなりの差がある筈だった。それが、今は互角だった。体が鈍っていたで説明の出来るものではない。
なにか酷い怪我をして、それを隠して任務に赴こうとしているのか、あるいは実力を十分に発揮できない理由があるのか。
それをオレは測りかねていたし、本人に聞こうとも思えない。なにか含むところがあってわざわざオレに組み手を頼んだ事はわかっていたからだ。
「ミズキさん……いったい、何があったんだ」
わからない。わからないが、口を出すべきでは無い。彼が望んで自らを鍛えようとしているのに、それに意見をしてねじ曲げては、彼のためにならないと思ったから。
時刻は午前3時。オレは火の国にある広大な森に居た。森の中にある移動ルート上で潜伏し、窃盗団が通りがかった時に強襲して捕縛、という作戦だ。
本来なら森の中で待ち伏せするなど無能の所業だが、オレはこの通り、忍だ。既に窃盗団のアジトを発見し、その通り道も割り出している。火の国への行商を襲うあたり、窃盗団というよりはもはや強盗団であるが。
それに、もし本当に窃盗団の一味に抜け忍がいるのだとすれば、火の国の警邏隊では荷が重いのも頷ける。それこそ木ノ葉隠れの忍の出番である。
木の枝の上に立って、けもの道を監視する。ここを通ることも知っているし、敵のおおよその数も判明しているが、唯一の懸念である抜け忍とやらが未だ確認できていないのが気に掛かるところだった。
「(敵は12、忍はいない)」
楽勝だな、と思ったところで自分の考えを否定し、気を引き締めた。人間物事を楽な方に考えがちで、そういう時に限って悪い方向に陥るのだ。忍たるもの、常に最悪の事態を想定して動け、みたいな事をカカシ先生が言っていたのを思い出した。
窃盗団の数は12名。それで全員捕まえれば壊滅、晴れて依頼は達成される。問題は忍の姿がまだ見えないこと。しかし懸念に足を引っ張られて好機を逃せばまた被害が及びかねない。決断は今だった。
通りがかった隙を狙って、最後尾の男の足にクナイを投げつけ、刺した。クナイが命中した男は苦痛の声を上げて呻き、倒れ込む。前を歩いていた窃盗団員が木々に隠れた。そこまでは想定通りである。
ここからはクナイや手裏剣による死角からの攻撃で敵の数を減らしつつ、敵の忍を燻り出す。
木から木へと飛び移り、こちらに気付いていない様子の男に二度目の攻撃を仕掛ける。手裏剣はスムーズに足へと吸い込まれていき、深々と刺さる嫌な音と同時に森に悲鳴がこだまする。
「あ、集まれェ!!」
頭領らしき男の指示で、隠れていた窃盗団員が全員集まって走る。バラバラのまま逃げて各個に倒されるより、集まって抵抗する方がマシだと判断したのだろう。残念だがそれは悪手だ。
集団の中央に着弾するように起爆札付きのクナイを投げ、そしてそれは爆発する。威力は抑えられたものだが、それでも至近距離での爆発を受ければ大抵の人間は無傷では済まない。
煙が晴れ、全員が倒れているのを確認すると、その中心を目掛けて飛び、着地する。そして全員の顔を確認する。
「(全員生きているか。忍はいなかったって事で──)」
10人目を確認しようとした瞬間に、後ろから手裏剣が飛んでくる音を聞いた。振り返ってクナイを取り出し、どうにか防ぐと、今調べようとしていた10人目の女が消え、代わりに枝が何本も束ねられたものが置いてあることに気付いた。
幻術ではないだろう。分身の術と変わり身の術の合わせ技という所か。同時に10人目の女が忍である事も証明できた。問題はどの程度の実力者であるか、という点だ。もし性質変化を扱えるほどの実力を持っているのであれば、今のオレでは絶対に手に余る。使える手も限られるだろう。
となれば、やることは一つ。火力で沈めよう。
チャクラを感知する、言わば感知タイプの忍者という訳では無いが、オレは敵のチャクラをある程度感じられた。多分だが、本物のミズキがオールマイティに立ち回れるタイプなのだとして、オレことミズキ(憑依)が感知能力を僅かに持つタイプなのだろう。訓練すればチャクラを正確に感じ取っていくことも可能かもしれないが、今は目の前の脅威に集中する必要がある。
更に三枚の手裏剣が草陰から飛来してくる。それを全て弾き、或いは避けると、その草むらを目かげて印を結び、構える。
「(風遁・大突破!!)」
先日使えることを確認していた術をそのまま打ち出すと、かまいたちのような風の刃が群れとなって草むらを切り裂く。そのまま飛び込み、素早く敵の姿を確認する。額当てはしていない。だが確かにこの女からはチャクラを感じる。チャクラを練られるという事は少なくとも下忍は確定した。
敵の忍もクナイを取り出して構えるが、よく見るとカタカタと震えている。その様子がどうも気にかかって、構えを解かずに話しかける。
「……何処の抜け忍だ?」
「な、なんだよ……聞いてねーぞ、こんなの! ガトーの野郎、騙しやがったな!」
「な……ガトー?」
悪態をついて放たれた言葉は、オレに取って衝撃的なものだった。抜け忍の女が言ったガトーという名前は、間違いなくNARUTOの読者なら聞く名前だった。
「ガトーって、あのガトー・カンパニーの? 詳しく聞かせてもらう必要がありそうだねぇ」
「!? うわ、やめっ───」
分身体を囮に、変わり身の術でたまたま抜け忍の背後にいたウサギを注視して入れ替わり、後ろから女の膝裏を拳で強打して地面に叩き伏せると、そのまま両腕を掴んで縄でキツく結び、更に足も結ぶと、両手に太い木の棒を握らせて固結びする。少し過剰だが、忍には抜け縄の術があるからこれでいいだろう。最後のは片手で印を結べるかもしれない事への対策である。
しかし、女はその過剰なまでの拘束で戦意を喪失したらしい。がくりと項垂れると、オレが目の前に立っている事に対して諦めたように口を開く。
「いってて………どーせ牢獄送りなんだろ? 減刑されてーし、なんでも聞きなよ。その代わりに少しばかり刑期を減らして──むぐっ!?」
手でマスクに覆われた口元を握ると、そのまま本当の事を話す。
「残念だけど、何処の抜け忍だろうが捕らえられた以上その他里への引渡しが決まっている。情報を抜き出した後でね。言おうが言わまいが刑は変わらないよ」
「むー!むむーっ!! ……ぶはっ! クソ、そうかよ!」
しかし、オレはあることを思いついた。それは悪い考えだが、今後のことを考えると悪くない事だった。
「……けど場合によっては考えてやらなくもないよ」
「な、なんだよそれは? は、早く教えろよぉ!」
捕まってるのに食い気味なあたりアホなタイプだ……。
とにかく話すだけ話して、大丈夫そうだったら
「それは、君を逃がしてあげる代わりに、君をオレの
──つまりは、この女を今ここで逃がす代わりに、オレの情報源になれという事だ。例えば村や里、国に寄ってその地域の情勢などを確かめてくるなど、そういう活用方法である。もちろんこの女が逃げないために、ある種の術を使わせては貰うが。
「や、やるやる! やるから早く解いてくれ!!」
「よし。一応言うが逃げようとしても無駄だからね」
縄を解く前に印を結んでチャクラを練る。今からやるのは、術で行う契約の一種だ。もちろんオレが知っている……というか、ミズキが知っていた術である。
相手が自分の意思と反する行いをした場合、痛みを以てそれを諌めるというものだ。
「な、なにすんだよ!?」
「大丈夫だ、約束を破らなきゃ痛くない」
「それってつまり痛いってことじゃねーか!!」
オレはそれを鼻で笑う。
「それじゃ約束を破るって明言しているようなものだよ」
「うっ! ……それは、その通りだけどさぁ……」
訂正しよう。スゲーアホだ。ただしそういうのは手綱を握りやすくもある。わかりやすい拠り所を示してやれば、あとは言う事をよく聞いてくれる存在になる。
…ま、代わりにBランク任務だったからっていう理由で追加報酬をせびることは出来なくなるが。それでも今後において情報源の有無は助かる。
「で、名前は? その後にガトーについて聞かせてもらうよ」
娘はブスーっと不服そうな顔をしてマスクとバンダナを外した。流れるような紺色のショートヘアだが、手入れはされていないらしくボサボサだ。まったくこれではくノ一の役目を果たせないじゃないか。
だが、顔からして恐らくは10か11……行ってもナルト達と同い年ぐらいか。かなり若い。
「……名前は無ェ。抜け忍でもない。ガトーには抜け忍と思い込まれて雇われただけだ」
「忍じゃなかったのか……じゃあ、変わり身の術は? 分身の術も使っていたじゃないか」
「……一緒に雇われてた抜け忍から教えてもらった。名前はわかんねー。なんかデカい刀持ってたけど」
その言葉でオレはハッとする。ガトーに雇われていた抜け忍という情報に加えてでかい刀っていう事は、それは十中八九桃地再不斬で間違いない。霧隠れの抜け忍で、ナルトたち第七班が最初に相対する強敵だったはずだ。
そしてこの子は、再不斬から短期間とはいえ薫陶を受けていた。恐らくは再不斬の部下のハクのように、自分の手駒として不自由の無いように育てる腹積もりだったのだろう。それを、何らかの理由でガトーによって切り離された……そんなところか。
意図が掴めなければ、再不斬がこの子を育てようとする理由も分からなかった。再不斬がハクを育てていた理由はハクに氷遁という血継限界があったからだ。だがこの子には何も無さそうだ。名前が無いという事は親に捨てられたという事。そんな子がチャクラを練って忍術を使えるようになった、その程度でハクみたいに気に入られるはずがない。何か理由があるのだろう。問題は、オレがその理由に対する答えを完全に忘れてしまっている事だった。
「……考えても仕方ない。忍じゃないのなら、さっきの件は無しかな」
「え? ……って事は、まさか牢獄に入れられんのか!? イヤーーッ!! 嫌だ!!」
ギャーギャーと喚く少女の口を押えて静かにさせる。何も投獄する訳では無いということを伝えると、コクコクと頷いた。そして手を離すと、何をするのかとばかりにこちらをじっと見てくる。
「よし。今日から君はオレの部下だ」
「わかっ……………ん? ん?? …………………は?」
よっしゃ原作介入だ!! こっから忙しくなるぞォ…!
「おいどういう事だよッ!! 説明しろ、説明ッ!!」
名無しっ娘の名前、感想にてお待ちしております。しっくり来るものがあれば採用させていただきたく思っています。
ミズキ(真)
本物と一体化して初めての任務。大した相手ではなかったので苦戦はしなかったが、思わぬ出会い、もとい拾い物に驚いた。部下発言をして飽きられているが、気に留めてもいない。今回の仕事で追加の報酬を得られないことを少し残念に思っている。
名無しっ娘
ガトー・カンパニーに抜け忍と思われて雇われていただけの少女。再不斬に鍛えられていたらしい事が本人の口から明かされ、ミズキを困惑させている。ミズキの部下確定発言に思わず疑問の声が漏れる。